KPM作品紹介

2018年11月22日

KPM ベルリン 風景のプレート テオ・シュムツ‐バウディス 釉下彩 ユーゲントシュティール

先日、妻と多摩川の川原を散歩していると、雨上
がりの雲の下に僅かに夕日がのぞいている風景
に出会いました。日常よく出会う風景だったので
すが、このような当たり前の風景をモチーフとした
作品があります。


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写真1)KPMベルリン 風景のプレート 1911年頃

何という平凡な風景でしょう。釉下彩で描かれた雲
と林と小道です。もちろん、このプレートが作られた
ドイツの風景なのでしょうが、日本でも普通に見られ
る一瞬であり、朝でも夕とも、曇りとも晴れとも特定
できず、人もいません。この意味では時間も空間も
超えた普遍的なモチーフの作品といえます。


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写真2) 同上 クローズアップ

作者はテオ・シュムツ‐バウディス。以前にもこの
ブログで紹介したユーゲントシュティール時代の
大芸術家です。日本趣味ジャポニズムを嗜好した
人物で、浮世絵などから大きな影響を受けていま
す。本作はバウディスの49歳の時の作品ですが、
既に単なる日本趣味を脱し、独自の境地に達して
いるように感じます。



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写真3) 同上

釉下彩=アンダーグレーズの技法で描かれた雲の
表現です。釉下彩は磁器の彩色技法としては、非常
に制約が多く、極限られた色しか使えませんが、そ
れが返って磁器というやきものでしか成しえない芸術
表現になっていると思います。
こうしたモチーフを描くと、自由に彩色できる上絵付の
技法よりもリアルに見えるような気がします。個人的
にはこの釉下彩は、磁器芸術の究極と考えています。

この雲の表現、一体[どのような筆使いで描いたので
しょうか。


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写真4) 同上

構図の下側は、十字方向に小道が描かれています
が、草原の部分に彫ったような模様があるのを、写真
でお分かり頂けるでしょうか。これは、極薄い「パテ・
シュール・パテ」か、絵の具を引っかいて描く「リッツ・
テクニック」という技法が使われていると考えています。

繰り返しますが、本当に何気ない風景に、実は非常
に高度なテクニックを用いているのです。
さすがバウディス!



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写真5) 同上 裏面 マーク

裏面のマークをご覧に入れます。KPMの杓杖のマー
ク、第一次大戦中の帝国ドイツのマーク、釉下彩を表
す青の宝珠のマークが入れられています。
青の宝珠のマークは1911年から用いられるので、本
作はこの時期に作られたものと推察しています。



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写真6) KPMベルリンの資料

作品番号は8927、最初にこの作品が作られたのは、
1908年です。100年以上前にこのような前衛的な作
品は作られていたとは、本当に信じがたい事です。

釉下彩の微妙なニュアンスが写真で表現できている
かどうか分かりませんが、詳細は是非実物を見て頂
きたいと思います。




アンティーク西洋陶磁器専門店 
   アンティーク アーカイヴ  東京 二子玉川
         TEL-03-5717-3108
   ホームページはこちらです  
http://archiv.jp/





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2018年08月25日

KPMベルリン  ケレスとテオ・シュムツ=バウディス

今回のブログでは、KPMベルリンの芸術家 テオ・シュムツ
=バウディスとその代表作である「ケレス」を紹介しましょう。


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写真1)KPMベルリン「ケレス」ティーC&S 1975年頃

写真1)は「ケレス #16 ゴールド」のティーC&Sです。オリジ
ナルが作られたのは1910~14年頃ですが、KPMベルリンの
傑作シリーズとして現在でも非常に有名です。


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写真2)テオ・シュムツ=バウディス 

写真2)は1908年頃にKPMベルリンの工房で撮影されたバウ
ディスです。彼は1859年生まれ、ミュンヘンで絵画を学び、デン
マークで陶芸の技術を学びました。バウディスは1900年のパリ
万博でその個性的な作品が認められ、大きな成功を収めます。
この功績により、プロイセンの商工省はKPMベルリンに彼を招
聘し、1908年にはアートディレクターの地位につきます。


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写真3)日本趣味の衣装のバウディス

ユーゲントシュティール時代の多くの芸術家がそうであった
ように、バウディスもまた日本の文化芸術に多くの影響を
受けた一人でした。写真3)は1890年頃に撮られたものです
が、この時代ドイツにも所謂「ジャポニズム」が大流行してい
ました。


バウディスはKPMベルリンで多くの作品を作りますが、その
最高傑作が「ケレス」です。

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写真4)「ケレス」 #17多彩色

「ケレス」はギリシャ・ローマ神話に登場する女神で、大地の
収穫や豊饒の擬人像です。サービスのレリーフは果物や穀物
をかたどっており、周囲の金彩は麦の穂をデザイン化していま
す。白磁の余白を充分に残し、ユーゲントシュティールらしい
まろやかな曲線は、それまでの歴史主義的様式とは、一線を
画す画期的なものでした。

特にティーC&Sにおける機能性は独特で、右にカップのハンドル
を位置すると、ソーサーの余白には小菓子を置けるようになって
います。


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写真5)「ケレス」 #16金彩

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写真6)「ケレス」#15グリーン 釉下彩


「ケレス」には、バウディスのオリジナルデザインとして3種類
が存在します。写真4)の多色と写真5)金彩、そして写真6)
の釉下彩のグリーンです。

当時、KPMベルリンでは、白磁も販売していたため、非常に
多くの外絵(KPM以外で絵付けされたもの)が存在します。
私も「ケレス」のオレンジ色や赤色のものを見たことがありま
すが、これらはKPMのオリジナルではないと考えています。

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写真7)バウディスのイニシャルとマーク

写真7)は1910年前後のバックスタンプですが、釉下彩のグ
リーンでTSBとあるのがテオ・シュムツ=バウディスのイニシ
ャルです。1910年前後のオリジナルの彼の作品には、この
TSBが入ることが多いです。1902年から使われていましたが、
現在では使われていません。

左の宝珠の朱色のマークは、絵付けがKPMベルリンで行わ
れたという証であり、外絵付けの作品には、このマークを使う
事ができません。

染付けの錫杖のマークは、白磁がKPMで作られて事を意味
しています。外絵付けの作品にもこのマークは入っています。

鉄十字(ナチスの鍵十字とは別のもの)はドイツを象徴する
マークで、KPMでは1914年から18年まで、第一次世界大戦
にかけて使われたマークです。


個人的に、バウディスはユーゲントシュティール時代の磁器
芸術家として最も好きな人物です。彼が釉下彩で作った風景
画などは、雲と大地をだけ描いた非常にシンプルな作品で、
ジャポニズムやユーゲントなどの様式など超越して、すでに
わび・さびや無の境地に達しているとさえ感じます。
こうした作品はまたご紹介するつもりです。



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2018年06月22日

KPMベルリン ベース 「ウスバキチョウ」の絵  蝶の絵付け

今回のブログでは、KPMベルリン「ウスバキチョウ」のベースを
紹介します。

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写真1)KPMベルリン ベース 「蝶の絵付け」 1958年

第二次大戦後、KPMベルリンのデザインはモダンなものにシフト
していきますが、その中でジークムント・シュッツの存在は忘れ
る事ができません。シンプルで無駄のないデザインは、シュッツ
の真骨頂であり、戦後のKPMベルリンに大きな方向性を与え
ました。本作の器型デザインも彼の手になるものです。


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写真2)ジークムント・シュッツ 

シュッツは1906年の生まれ、ドレスデンのアカデミーで、マイセンの
芸術家カール・アルビカーの元で彫刻を学びます。1932年より、フリ
ーランスとしてKPMベルリンで働き始めますが、その後1970年まで
KPMベルリンの芸術家として仕事する事になります。彼の創作した
ティーサービス「アルカディア」は、KPMベルリンの代表作です。



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写真3)「ウスバキチョウ」の絵付け

当店では過去何回かこの絵付けの作品を扱っていますが、昆虫
少年であった私は、この絵付けには特別な思い入れがあります。
ここに描かれているのは、多少デザイン化されてはいますが、「ウス
バキチョウ」に間違いありません。



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写真4) ウスバキチョウ

昆虫少年であった私にとって憧れ中の憧れがこのウスバキチョウ
でした。この蝶は「高山蝶」と呼ばれる特別な種類で、日本では
大雪山山系にの高い標高にしかいない貴重な蝶です。もちろん、
国の天然記念物であり、採集など思いもよらない事ですが、一度
でも見たい蝶でした。

初めて見た時には、この様な作品がKPMベルリンにある事は
本当に驚きでした。


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写真5)エルゼ・モェッケル

ウスバキチョウのデザインを考案したのはエルゼ・モェッケル
という女性芸術家です。1901年に生まれ、1925年から1928
年までKPMベルリン窯の陶芸特別クラスで学びます。同時に
装飾絵付け師として働きますが、KPM窯で彼女独特のスタイル
を創造し、磁器芸術に大きな影響を与えました。
モェッケルは画家でもあり、植物や昆虫などの自然が常に発想
の原点でした。



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写真6) ウスバキチョウの装飾 手描き

本作は、個人的に、写実性とデザイン性を兼ね備えた究極の
磁器装飾と考えています。もちろん全て手描きで描かれており、
蝶は器上部の縁にとまらせています。縁はプラチナで装飾さ
れており、極シンプルなデザインでありながら、氷河期の生き
残りといわれるこの蝶の性質もよく表していると思います。



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写真7) 同作品

花器として作られていますので、実際に植物を活けてみました。
高山のウスバキチョウが枝に止まっているように見えるでしょうか。
エルゼ・モェッケルはこうした効果も計算してデザインしていたの
でしょう。



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写真8) 大雪山 這い松に止まるウスバキチョウ 

残念ながら実際のウスバキチョウはまだ目にしていませんが、本作
を目の前に思いを馳せるばかりです。



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写真9) 同作 裏面のマーク

最後にマークをお見せします。釉下青の錫杖のマークは白磁
がKPMで作られた事を意味します。赤の宝珠のマークは絵付
けがKPMで描かれた事を意味します。1832年以降はこの二つ
のマークが存在して、初めてKPMベルリン窯の作品とされます。

どうぞ、当店にて実物をご覧ください。




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2017年06月27日

KPMベルリン  ジャポニズムのプレート  蒔絵写し 

今回は、100年以上前に作られたKPMベルリンのプレート
を紹介します。

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写真1)KPMベルリン ジャポニズム プレート 1900年頃

万博の時代には、日本の美術や工芸品がヨーロッパに紹介され、
陶磁器においてもこれに影響された作品がたくさん作られました。
こうした日本趣味の事を「ジャポニズム」と称し、日本でもユーゲン
トシュティールと同様に広く紹介されるようになりました。


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写真2)日本の蒔絵の例  部分

特に、この時代に最高レベルの技術を持っていたKPMベルリン窯
では、日本の蒔絵を磁器に写そうとした作品が見られます。これら
は、マイセンやセーブルにも見られない完成度を誇るもので、この
時代のKPMベルリンの特徴と言えるものです。

KPMベルリンおける蒔絵写しの例は、以前にも紹介した事がありま
す。(2014年4月17日の記事) 
こうした一連の作品は、アンティークの市場で最も高価なアイテム
の一つで、数も少なく、現在ではほとんど見られなくなってしまいました。


以下、本作のディテールをご鑑賞下さい。

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写真3) 作品のクローズアップ

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写真4) 作品のクローズアップ

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写真5) 同上

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写真6) 同上

いかがでしょう。
レイズゴールド(盛金)、プラチナ彩、深緑の顔料を使いながら、
団栗と柏の葉を表現しています。地色はコバルトブルーですが、
アップで見るとまるで蒔絵のように見えませんか。


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写真7) 同上

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写真8) 同上

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写真9) 同上

写真7)8)9)はプレートの周囲に配された花ですが、これも
日本を感じさせるモチーフです。
この時代のKPMベルリンの技術力、創造性は、正に世界最高の
水準にあった事は間違いありません。


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写真10) KPMベルリンのマーク

作品裏面のマークです。プルーの杓杖のマーク、朱赤の宝珠の
マークは二つあるのが、KPMベルリンで作られた証です。

是非、手にとってご覧ください。




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2017年06月20日

KPMベルリン 絵付け師のスケッチ

先日、妻がデザートにパイナップルを買ってきました。

以前、コレクションしたKPMベルリン絵付師のスケッチに、パイ
ナップルのモチーフがあったのを思い出し、探し出しました。
デザートにする前に写真に撮っておいたので、このスケッチと
一緒にご覧に入れます。


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写真1) KPMベルリンの絵付け師のよるスケッチ 

1975年に描かれた習作で、パイナップルがリアルに表現されて
います。この時代はKPMベルリンでも、手描きの作品がたくさん
つくられていました。果物や花の描写は磁器絵付けの基本であり、
こうしたスケッチはたくさん描かれていたと思います。しかし、こう
した二次資料は、あまり表に出て来ることはなく、その多くが廃棄
されてしまっている現実があります。


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写真2) スケッチ クローズアップ

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写真3) 実物

デザートのパイナップルを同じ角度から写真に撮りました。当時
のKPMベルリンペインターの力量が伺えると思います。



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写真4) スケッチ クローズアップ


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写真5) 実物

二つに切って、同じ角度に並べてみました。このスケッチは
1975年に描かれたものですが、当時ベルリンでは、こうした
南国の果物は大変高価な贅沢品でした。KPMベルリン磁器
工場は西ベルリンにありましたが、東ドイツでは統一するまで
バナナやパインは憧れだったと言います。


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写真6) サインと日付

この水彩の作者はノルベルト・ユーデ(Norbert Jude)。
日付は1975年4月29日と読めます。


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写真7) 絵付け師のデータリストより 2行目

磁器芸術家・絵付け師のリストによると、20世紀のKPMベルリン窯
の絵付け師とあります。現在のKPMベルリンでは、手描きの果物の
作品などはほとんど作られておらず、アンティークの素晴らしい絵付
け作品を見るに付け、残念な思いでいっぱいです。



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2015年04月25日

KPM ベルリン 大皿 蘭の花 カトレヤ オーキッド

今回はKPMベルリンの大作を紹介致します。

所謂ユーゲントシュティール時代の比較的初期に作られた大皿
です。直径40cmの飾り皿です。本作は純粋な装飾用の大皿
ですが、このサイズのプレートを、料理の盛皿という意味で、チャ
ージャー(Charger)などという言い方もしますね。

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写真1)KPMベルリン 飾り皿 「カトレヤ 蘭の花」

柔らかなタッチで、「カトレヤの花」が描かれています。完全に絵画
調であり、自然主義様式というよりも印象主義様式の花絵と定義
づけるべきでしょう。
本作が造られたのが1900年前後ということを考えると、カトレヤの花
はとても希少なものだったでしょう。原産は中南米の森林地帯といい
ますが、本作を鑑賞すると、背景や色使いなどにそうした雰囲気を
とても感じます。当事としては非常にエキゾチックな感覚だったと思い
ます。

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写真2) 花部分のクローズアップ

個人的には、こうした作品は絵画などのファインアートと同等の
価値があると考えています。マイセンの名画シリーズなどが、オール
ドマスターの作品とすれば、本作は印象派の作品といえるでしょう。
もちろん、一点もの(ウニカート 独語)でしょう。

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写真3) 金彩部分 クローズアップ

金彩もすばらしいですね。レイズゴールド(盛金)の技法で、装飾
されています。ここが陶板画と決定的に異なるところで、陶板画は
絵画の代用品として額装されるので、金彩や透かし彫りなどの装飾
部分はほとんど見られません。陶板画が単に絵画の模写で量産され
たのに対して、本作のような飾り皿は磁器芸術としてやきものの一つ
の頂点と考えています。

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写真4) サイン

KPMのこれらの作品には、絵付師のサインが入る事が多く見ら
れます。本作にもサインがはいっていますが、はっきりとしません。
F.Ismer というように見えますが、このペインターの個人的情報は
まだ見つかっていません。しかし、Miethe や Aulich と同様、この
時代のKPMを代表する技量を持った芸術家といえるでしょう。

芝 東京プリンスホテルの美術骨董ショーにて展示致します。是非、
実際にご覧ください。



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