花とマイセン

2018年05月15日

マイセン プレート  自然主義様式の花絵付け           ナスタチウムとアスター

今回は、自然主義様式の花絵のプレートが新入荷しましたので、
これを紹介しようと思います。

z-2C8T1816









写真1) マイセン プレート「自然主義様式の花」 1890年頃

まるで水彩画のように柔らかく描かれた「自然主義様式の花絵」
です。19世紀末は、マイセンの花絵付け師ブラウンズドルフ教授
が、マイセン付属素描学校ので教えていた時代で、彼の絵付け
技術や様式を製品に強く反映させていました。

マイセンの愛好家や研究家の間では、最も素晴らしい花絵付け
の時代と評されている期間で、出来のいい作品はアンティーク
市場でも大変に高価で取引されています。


z-2C8T1818








写真2) 同上 クローズアップ

白い紙の上に、摘んできた花をポンと置いて描いたような自然な
表現が「自然主義様式の花」です。現在でもマイセン花絵付けの重要
なカテゴリーであり、とても格式の高い絵付けです。

本作はナスタチウム(キンレンカ)とアスター(エゾギク)がモチーフに
なっています。


z-2C8T1820








写真3) ナスタチウムの絵付け

ナスタチウム-1










写真4) ナスタチウムの花と葉

写真3)4)でお分かりの通り、植物学的にも正確な表現で
描かれています。花芯や丸い葉の形状など、柔らかいタッチ
でありながら、絵付け師はきちんとこれを捉えています。


z-2C8T1819







写真5) アスターの絵付け


アスター-1








写真6) アスターの花

アスターの花絵付けは、本作のハイライトでしょう。微妙な彩色で影
をつけながら、見事な立体感を描いています。こうした表現が植物
の生命を感じさせるのでしょう。
自然主義様式の花絵は、筆数を極力抑えて、最小限のタッチしか
使っていません。この時代ならではの、最高の表現と考えています。


z-2C8T1822







写真7) 同作品  窓絵の表現

紺の地色にカールトゥーシェ(ロココ風の渦巻き文様)の窓、中心に
自然主義様式の花絵をあしらった表現を「アムステルダム様式」と
呼びますが、これはマイセンの花絵の中でも最高の花(FFブルーメ)
というカテゴリーに入ります。
現在でも作られており、とても高価な値段がつけられていますが、
こと花絵に関しては、19世紀後半の作品には遠く及びません。



z-2C8T1823








写真8) 同作品 裏面の剣マーク

最後にマークをお目にかけます。マークや絵付けから、19世紀末に
作られた作品に間違いないと推察しています。

どうぞ、当店にて実際にご覧ください。


アンティーク西洋陶磁器専門店 
        アンティーク アーカイヴ  東京 二子玉川
            TEL-03-5717-3108
      ホームページはこちらです  
http://archiv.jp/








dresdner220 at 17:29|PermalinkComments(0)

2017年05月14日

マイセンの花絵付け      様式的な花 古典画法の花 最上級の花 

このブログは、絵付けをなさっている方が、本当にたくさん見て
下さっているようです。先日もホビーペインターの方から、通常の
花絵と古典画法の花絵の違いが、先生に聞いてもよく分からない
とのご質問を頂きました。
今回は本ブログで、より具体的に見ていきたいと思います。

今回は以下の3種類に花を取り上げます。

*様式的な花束の絵        装飾番号 110110 大型ベース
*花と果物の絵 古典画法   装飾番号 210113 28cmプレート
*FFブーケ 最上級の花絵  装飾番号 204032 25cmプレート



s-2C8T0896











写真1) ブーケ花束の絵 様式的な花

写真1)は所謂「マイセンフラワー」とか「様式的な花絵」と呼ばれる
マイセンでは最も一般的な花絵です。本作が大型ベースの絵付け
ですが、6種類以上の花が描かれたブーケの絵付けです。
明るい色調で生き生きと描かれていますが、この花束の構図でその
まま自然界に存在するものではなく、マイセンの長い歴史の中で作
られてきた磁器装飾ための構図です。マイセンの作品の中でも私
たちが最もふれる機会の多い絵付けでしょう。


s-2C8T0895












写真2)花と果物の絵 古典画法

写真1)と比べると、はっきりと違いがお分かり頂けると思います。
渋い色調は、絵の具を混ぜ合わせる事によって作られます。18世紀
当時の銅版画を手本としているので、様式的な花よりグラフィックな
線描で花や果物が表現されています。様式的な花の軽やかなタッチ
と異なり、写実的な描写とは離れて細密に描きこんでいます。



s-2C8T0897












写真3)FFブーケ 最上級の花絵

写真3)も古典画法の花絵ですが、写真2)の描法をさらに推し進め
た究極の古典画法といえるものです。線描の細さ精密さは、磁器絵
付けにおいては、これ以上不可能とも思える出来です。マイセンの
数ある花絵付けの中でも、「印象主義様式の花絵」と共に最上級の
位地にあるため、この名称で呼ばれます。


いかがでしょうか。
本ブログでは絵付け技術的な解説は省きますが、一般の様式的な
花絵と古典画法の花絵の違いがお分かり頂けると思います。

熱心なホームペインターのために、以下バラの花だけをクローズ
アップしてご覧にいれます。3種の描法の違いをより具体的に感じて
頂けるのではないでしょうか。


s-2C8T0898










写真4)様式的な花 バラのクローズアップ



s-2C8T0899










写真5)古典画法の花 バラのクローズアップ



s-2C8T0900










写真6) 最上級の花 バラのクローズアップ

写真4)から順に手の込んだ描法であるのが明らかです。西洋の一
般的な価値観では、手がかかればかかるほど価値が上がっていく
ので、古典画法の花絵はとても高価になります。古典画法は様式的
な花絵の2~3倍の手数を要すといわれ、価格もそれに比例してい
ます。ましてや最上級の花絵の価格は驚くほど高いものです。(因み
に、現在、コーヒーC&Sで、1客100万円近くします)

一見、同じような花絵でも、実はこうした大きな違いがあるのです。




西洋陶磁器専門店
 
アンティーク アーカイヴ  東京 二子玉川
     TEL-03-5717-3108
 ホームページはこちらです  
http://archiv.jp/




dresdner220 at 17:53|PermalinkComments(1)TrackBack(0)

2017年03月14日

マイセン付属素描学校 東独時代の記録帳

今回のブログは、本当に貴重な資料を紹介します。


マイセン磁器製作所付属素描学校の生徒の古い記録帳です。
この学校はマイセン工場の敷地内にあり、マイセンの絵付師や
職人を養成する目的で設けられました。「Zeichenschule」 は
養成学校とも訳されますが、これまで素描学校で通っているので、
今回はこれを採用しました。


x-2C8T0766







写真1) マイセン付属素描学校の様子 東独時代

今回紹介するのは、この学校の生徒が残した学習の記録です。
マイセンの職人がどんな教育を受けてきたのか、非常に興味が
あります。今回はその一部を紹介しますが、これはあくまで東独
時代のものであるという事をご理解ください。


x-2C8T0758
















2) マイセン素描学校 記録帳  

写真2)がノートの表紙です。付箋の部分には生徒の名前があるの
ですが、公開にあたってプライベートな事項は伏せる事にします。



x-000
















写真3) ノートの見出し

ノートは1959年から4年間に記録されたもので、計4冊になります。
今回紹介するのは、その一冊目の最初の部分です。マイセンで学
校の生徒たちがどんな教育を最初に受けるのかを見ていきます。

先ず、名前と生年月日、出生地が記されています。この生徒は19
40年の8月、マイセン市の生まれです。教育の目的は、磁器芸術の
習得とあります。入学は1959年、4年間の教育を受け、1963年の8月
末日に終業予定です。

下段には養成所に住所が書かれています。マイセン国立磁器工場
内の素描学校とありますが、VEBというのは、人民公社という意味
です。これは東独時代のマイセンの正式な名称です。

このノートは、恐らく東独時代の共通の報告書記録書であったよう
で、マイセン工場のためだけのノートではないようです。寄宿舎の
住所などもありますが、これもマイセン工場内です。

最後にはノートのNo.1である事、1959年に9月1日から記録を始め、
1960年の8月31日までつけていたことを示しています。

x-2C8T0760
















写真4) 2ページ

一日ごとの作業報告が書かれています。
一番下には、実習に対する先生の評価がなされています。
赤字で2+という評価ですね。


x-2C8T0761











写真5) 提出された素描



x-2C8T0768
















写真6)3ページ 学習の内容と感想

この生徒は、先ず、鉛筆画とペン画で植物の日向と陰の描写を
学んだようです。マイセン素描学校の生徒は、デッサンの試験を
通って入学しますから、さすがに端正な描写です。


x-2C8T0767















写真7) 次の課題である花の絵 彩色と鉛筆画

次の課題は鉛筆と彩色された花の素描です。慣れたタッチに見えます。

x-2C8T0763















写真8) 木の葉の絵 水彩

x-2C8T0765
















写真9) 同上

写真8)9)は提出された課題作です。水彩で木の葉を描いています。
もちろん、これらにも学習の過程や学んだ事をレポートの形式で、詳
細に書き綴っています。
尚、写真9)の濃茶色の木の葉は本物で、この生徒が本物の木の葉
を傍に置きながら、デッサンの習得に励んでいた事が伺われます。


今回は以上ですが、さらに高度な修練が延々と4年間続きます。
マイセンの絵付師は、こうした修行の連続ということがよく分かります。

マイセンの絵付けには、こうした高度な教育の裏づけがあるのです。



西洋陶磁器専門店
 アンティーク アーカイヴ  東京 二子玉川
     TEL-03-5717-3108
 ホームページはこちらです  
http://archiv.jp/








dresdner220 at 18:05|PermalinkComments(0)TrackBack(0)

2015年06月23日

高島屋のバラとマイセン

二子玉川は高島屋のお膝元なので、高島屋のバラの紙袋は
いつも見かけます。今日はこのバラの包装紙についてのブログ
です。

s-2C8T7657











写真1) 高島屋のバラの包装紙

高島屋といえば、このバラの包装紙はあまりにも有名です。
おなじみの方も多いでしょう。あまりよく見ることもないくらい
見慣れてしまっていますが、実は芸術的にもとても素晴らしい
作品と評価されています。よく観察すると分かりますが、まるで
香ってくるような花絵で、柔らかで迷いの無いタッチは、見事
と言うほかにありません。

この原画を描いたのは誰でしょう。
実は、バラのリースの7時ごろの位置に、サインがあるのです。

s-2C8T7658







写真2) 同包装紙のバラにある作者のサイン

印刷になってしまっているので、よく読めませんが、実は、フォルク
マール・ブレッチュナイダー、その人です。

「エエッ!」と思った方、かなりのマイセン通です。
「知ってるよ」と思った方、すでにマイセン病です。

サインは「、V.Bretschneider 1980」 と記されています。

マイセンファンならフォルクマール・ブレッチュナイダーの名前は
ご存知でしょう。ハインツ・ヴェルナー等と共に、マイセンで「芸術
的発展のための集団」を結成し、20世紀のマイセンを芸術的に
リードしたアーティストの一人です。彼は花絵付けの名手であり、
マイセンでも花絵付けで彼に右に出る人はいない、と言われた
人物です。特にバラの絵は自由自在です。

ブレッチュナイダーは1980年に初来日しています。
この年(昭和55年)は、高島屋で「マイセン磁器300年展」が開催さ
れました。これは記念すべき日本初のマイセン単独展であり、また
高島屋創業150周年でもあり、大きな規模で非常に充実した内容
の催事でした。

s-2C8T7660





写真3) 1980年(昭和55年) マイセン展のチケット半券

当事のドイツは西と東に分断されており、互いに独立国として覇権
を競っていた時期です。マイセンは東独に属していましたが、日本
と東独は1973年に国交が樹立されたばかりで、両国共に文化的
経済的な関係を強めようとしていた時代でした。
この意味で本催しは単なるイベントではなく、国家単位の重要な
文化交流あり、東独から政府関係の要人も来日していました。


s-2C8T7659








写真4) 1981年当事のV・ブレッチュナイダー

フォルクマール・ブレッチュナイダーもマイセン側の芸術分野を代表
とする要人として来日していました。そして、これに際し、この包装紙
のデザインの元となった飾り皿を高島屋に贈呈しました。マイセン磁
器は東独を代表する贈り物として使われていましたので、この時に
ブレッチュナイダーのバラが採用されたのもよく理解できます。推測
ですが、マイセン側も高島屋のバラの包装紙を知った上で、この飾り
皿を贈ったのではないでしょうか。とすれば、この作品をバラ絵付け
の名手であるブレッチュナイダーに描かせたのは、とても納得ゆく事
です。


ta-ba







写真5) 高島屋 高岡徳太郎による旧包装紙のバラ

2007年、高島屋新宿店のリニューアルオープンを機に、包装紙の
バラのデザインが一新されました。この時に選ばれたのがブレッ
チュナイダーの絵付けからのデザインでした。
それまでは洋画家高岡徳太郎のデザインが採用されていました。
高島屋ではこれを、「モダン・ローズ」から「イングリッシュ・ローズ」
への変更とコメントしています。


余談ですが、このときに一緒に来日していたハインツ・ヴェルナーは
高島屋に関する絵画を残しています。

s-2C8T7663













写真6)絵画 「高島屋の女性」 H・ヴェルナー 1980年

高島屋のデパートの女性がヴェルナー独特の筆致で描かれて
います。きっと高島屋での体験がヴェルナーの印象に強く残った
のでしょう。

この後、ブレッチュナイダーは何度か日本を訪れる事になります
が、このときの話はまた折に触れて語る事にしましょう。



アンティーク西洋陶磁器専門店 
               アンティーク アーカイヴ  東京 二子玉川
                        tel 03-5717-3108
           ホームページはこちらです  http://archiv.jp/


dresdner220 at 17:51|PermalinkComments(0)TrackBack(0)

2015年03月29日

マイセン 「クロッカス・サービス」 ユーゲントシュティールの文様

あちこちで桜の話題が聞こえ、満開も間近のようです。
先日は妻と近くの公園まで散歩へ行ってきたのですが、
クロッカスの可愛い花が咲いていました。

マイセンには「クロッカス・サービス」というユーゲント時代
の有名な作品があります。

s-2C8T7509








写真1) マイセン クロッカス・サービスのC&S 1900年頃

マイセンの芸術家であったコンラッド・ヘンチェルによって1898年
にデザインされました。それまでの伝統的なマイセン作品を見慣
れていた顧客にとっては、もはや奇異に感じられるような革新的
な作品でした。21世紀の現在においても、その先進性は明らか
で全く古さを感じさせないデザインです。

ところで、何故この文様と器型を「クロッカス」と命名したのでしょう?
作者のコンラッド・ヘンチェルに直接聞いてみたいところですが、
彼は1907年に35歳の若さで急逝しています。

s-2C8T7511









写真2) コンラッド・ヘンチェル 1905年頃

「クロッカス・サービス」は器型・装飾ともに全く新作であり、それ
までのマイセンに類例のないものでした。装飾はマイセン伝統
の花絵ではなく、抽象的な文様です。クロッカスの花ではなく、
花開く前の芽葉を表しており、器型の含めて全体でクロッカスの
成長を表現しているといいます。

b0181081_19151654







写真3) 西洋のクロッカス

kurokkasu-1







写真4) クロッカスの芽

クロッカスの開花時期は2月から4月とされますが、春を前にぐん
ぐんと伸びてゆく芽葉は、生命の勢いを感じさせます。コンラッド・
ヘンチェルもきっと同じように感じたのではないでしょうか?

s-2C8T7510












写真5) マイセン「クロッカス・サービス」 オープン・シュガー

こうして見てくると、器型からも文様からもクロッカスをイメージ
できるのではないでしょうか?
花絵付け・花模様を極めたマイセンで、こうした作品ができ上
がった背景には多くの物語があるのですが、これはまた改めて
紹介する事に致しましょう。

「クロッカス・サービス」は1900年のパリ万博に急遽出品され、
ここで大評判を得ます。これを機にマイセンはユーゲントシュ
ティールの方向に大きく舵を切っていく訳ですが、クロッカス・
サービスは、この時代の磁器芸術にとってもエポックメーキング
な作品だったのです。磁器芸術の歴史をたどる上でも、必ず押
さえておきたい作品ですね。


アンティーク西洋陶磁器専門店 
               アンティーク アーカイヴ  東京 二子玉川
                        tel 03-5717-3108
           ホームページはこちらです  http://archiv.jp/


dresdner220 at 14:06|PermalinkComments(0)TrackBack(0)

2014年05月18日

バラの季節  マイセン ブラウンズドルフ教授のバラ       印象主義様式のバラ

先日、お客様のK様より、バラの花束を頂きました。
K様はご自宅のお庭でバラを育てていらっしゃる方で、この時期は
たくさんのバラが花をつけるとの事。本当に手にいっぱいのバラを
届けてくださったのですが、その一部をショップに飾りました。
今回も花の紹介になってしまいますが、どうぞご覧ください。

s-2C8T2410







写真1)ショップ内のキャビネットのバラの花

作品を展示してあるキャビネットケースに飾りました。お店の中が
パッと明るくなったようで、ご来店のお客様にも喜んで頂いており
ます。

s-2C8T2413










写真2) 同上 

花瓶(=ベース)はKPMベルリンのものです。1935年にトゥルーデ・
ペトリによりデザインされた作品です。美しいブルー一色のベース
ですが、実際に花を生けると、どんな花にもとてもよくマッチします。
当店ではとても出番の多いベースです。


ということで、マイセンのバラの傑作中の傑作、ブラウンズドルフ教授
の「印象主義様式のバラの絵」も、ここで紹介してしまいましょう。

brauns-5







写真3) マイセン 大皿「印象主義様式のバラの絵」 1890年頃

コバルトブルーの地色に、大輪のバラの花束はあふれるように描か
れています。クローズアップでみるとまるで油絵のようですが、本作は
れっきとした磁器絵付けです。このタッチ、この光、ブラウンズドルフ
教授しか描けない独自の境地に達していると思います。


s-2C8T2415








写真4) 五月のバラ

K様、こんな素敵なバラを頂き、本当にありがとうございました。



                 アンティーク西洋陶磁器専門店 
             アンティーク アーカイヴ  東京 二子玉川
                 TEL-03-5717-3108
           ホームページはこちらです  http://archiv.jp

dresdner220 at 13:36|PermalinkComments(2)TrackBack(0)
プロフィール

dresdner220

月別アーカイブ
記事検索