海を飛ぶ夢

  • author: driftingclouds
  • 2005年05月19日

25歳のときに海で事故に会い、首から下が麻痺してしまったラモン・サンペドロ(ハビエル・バルデム)それ以来、兄と義姉の献身的な介護を受けて26年寝たきりの生活を送っていた彼だが、ついに自らの死を求めて訴えを起こす事にする…

重い重いテーマの作品だけれども、映画の印象は決して暗くはないです。
それは、ハビエルの素晴らしい演技にかなりの部分を負っているでしょう。
映画の90%をベッドに横たわったままで、自分よりも遥かに年上の実在の人物を演じるというのは難しい事であったと思いますが、実に魅力的な人物像を作り上げてくれました。
ラモンは映画の中でたくさんの女性たちに愛され、家族に愛され、多くの友がいますが、それが少しも不思議に見えない、むしろ、彼の事を好きにならないものなどいるはずがない、と思ってしまいます。
そんな彼がなぜ死を望むのだろう?とも。
しかし、ラモンは言います。「僕のように、何もかも他人の手を借りなければ出来ないようになると覚えるのさ、涙を隠す方法をね」
彼を支援する為に訪れ、深い感情で結ばれる弁護士のフリア(ベレン・ルエダ)のもとへ彼が想像の力で飛んでいくところ。この映画の最も美しいシーンであると同時に、最も切ないシーンでもあります。
想像ではどこへでもいける、けれども…
「君と僕との距離はわずか1メートル、だけど僕にはその距離が無限なんだ」
絶望に裏打ちされた微笑み、そこから発せられる「死にたい」という望み…

この映画の素晴らしいところは「何が正しい」という結論を決して出そうとしていないこと。
たぶん、見る人の数だけ思うところは違うのでしょうね。
彼に手を貸す人々も彼が死ぬのを望んでいるわけでは決してないし、生きていて欲しいと思う自分の感情を押し殺し、じっと黙って耐えている人もいる…
特に、もの静かであまり言葉を発しないお兄さんが、自分の気持ちをラモンにぶつけるところに激しく感情を揺さぶられ、最後、ただ黙って見送っていた姿に涙…
「僕を愛するという事は、僕を死なせてくれる事」と言われたら、自分ならどうするのか、考えてしまいました。
あるいはラモンのようになったら自分は何を望むのだろうか、とも。
死を考える事は生を考える事、改めてそう思います。

ああだから、最後に「自分の人生には何の意味もなかった」なんて台詞は(それが実際のラモンが言った言葉だったとしても)出来れば言って欲しくなかった。悲しすぎる。

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海を飛ぶ夢

自ら死を選ぶ状況っていったいどんなだろう? 死にたいって思うことはあっても、それ

  • [ たりん堂@blog ] 2005年05月23日 02:07

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