『再見阿郎』役柄チェック22

  • author: driftingclouds
  • 2006年01月22日

032
どうでもいいんですが、yasasiaさんよ〜この映画〈古惑仔〉とは何の関係もないんですけど〜



監督・製作:杜[王其]峰(ジョニー・トー) 製作・原創故事:韋家輝(ワイ・カーファイ) 
脚本:游乃海、銀河創作組
國際電影事業有限公司、銀河映像(香港)有限公司 1999年

さて、ブログスパム攻撃にすっかり嫌気がさしていたんですけど、気を取り直して頑張りますわ。
私のもっとも愛するラウちんの作品ですからね、気合い入れますよ。

この映画のタイトル、直訳すれば「さよなら、阿郎』だと思うのですが、この映画の主人公は阿郎という名ではないので、一体阿郎とは誰の事なのか?という疑問があるのですが、この場合は“ある男”みたいな意味なのですかね?
ちなみに同じタイトルの1970年の柯俊雄主演の台湾映画があるのですが、それのリメイクというわけではないようです。

刑務所を出所したばかりの張東郎(映画中では主に”大哥”と呼ばれるので以後はそう呼びます)(劉青雲/ラウ・チンワン)という黒社会の男が主人公。
出所そうそうにタクシー運転手(演じているのは長年、杜[王其]峰の助監督を務める羅永昌)とトラブルを起こし、流れ着いたのは国際飯店という安宿だった。
そこは、小雪(黄卓玲/ルビー・ウォン)という未亡人が切り盛りしていた、大して繁盛している様子もなく、独り息子の小忠と共にひっそりと暮らしている。
翌日、九叔(林雪/ラム・シュー)という刑事がやってきて大哥を連行する。じつは九叔は昨日のタクシー運転手のいとこだった。
「先に手を出したのは運転手の方」と小雪が証言したため釈放されるが、以後、九叔はヘビのように大哥を付けねらい、小雪たちにも嫌がらせをするように。
大哥は昔の仲間を訪ねるものの、既に実権は昔の弟分が握っており、彼の居場所は無くなっているのだった。
九叔たちの嫌がらせで客が減り、ローンが払えなくなった小雪はとうとうホテルの立ち退きを迫られる、それを知った大哥は…


ラウちん演じる大哥は「俺の名前はこの界隈で知らないものは無い」とか「こんなホテルなんて何百と買えるくらいの金を動かせるんだ」とか大言壮語するわりに、出所の時に出迎えの一つもなかった事でもわかるように、既に黒社会には居場所がなく、鬱憤を暴力で訴える事でしか表せないダメな男なんですね。
その男が、一人の女性と出会う事によって本当の強さとは何かという事を知るという、その変化をホントに素晴らしい演技で表現しています。

それにしてもこの映画のラウちんは本当に男前だなぁ、衣装のせいもあるのかもしれないけど凄くほっそりして見えるし、カッコいい。いつもの200%増ぐらい。

小雪はいつも化粧気もなく疲れた感じなのですが、芯のとても強い女性。
杜[王其]峰の映画の女性はたいがい男性より強いですね。杜先生はよく女をひどい目に遭わせるなんて言われますけど、女性をお飾り程度にしか考えてない他の多くの映画より、彼の映画の方が真っ当に扱われていると思いますけどねぇ。
閑話休題。
黒社会の男である大哥にも、はっきりとものをいい(ex.小忠を酷い目に遭わせた九叔に復讐した時も「あなたはいつもこうやって暴力で物事を解決しようとするのね」)
大哥の別れた妻が、自分から別れた上に彼の金で両替商なんかやって新しい男とよろしくやってるくせに、大哥に新しい女が出来たと聞いてわざわざ見に来て「こんな冴えないおばさんだなんてがっかりだわ」とのたまったのには「たしかに私は普通の女よ、だけどここは私の縄張りなんだから出て行ってちょうだい」とぴしゃりと言い返したりします。

ちなみに、せりふはものすご〜い意訳+想像で訳しております。あしからずご了承ください。

大哥が小雪に惹かれるのはよくわかるのですが、正直、小雪が大哥のことをどうして好きになったのかは今ひとつ良くわからなかったりして、何となく母性本能をくすぐるタイプだったのかも。(お〜い!)

そして、敵役の九叔、ほんとに憎たらしくて嫌らしい男、でもたまに滑稽だったりします。だって林雪ですもの。

メインの登場人物はこの3人だけという地味〜な映画で、香港でもほとんどお客は入らなかったみたいですが、私はこの映画がラウちんの映画で一番好きかも。(どれが一番というのは迷う所ではありますが)
それはやはり、この3人の演技が素晴らしいのと、テーマがとても心にしみるからでしょうか。
たぶんこの映画って、香港人よりも日本人の感情にマッチするような気がするんですよね。

私、常々この映画は高倉健と倍賞千恵子でリメイク出来そう、もちろん監督は降畑康男で、と思っていたんですけど、いくらなんでも二人とも歳とり過ぎか。
そして、ラウちんには“無法松”を演じてみてもらいたいなぁ、とふと思ったりしました。

さて、この先はおもいっきりラストまで触れています。

立ち退きになったホテルを救う為に元妻のところへ談判しにいく大哥。
「俺の金を返せ」「返してもいいけど、あの女の為だったら嫌よ!」…ともみ合いになるうちに警察に通報されやむなく立てこもる羽目になってしまう。
やっぱり事件を起こしやがった、と大喜びの九叔。そこへ小雪があらわれ、説得に向かう…
「俺は強盗をしにきたんじゃない、自分の金を取り戻しにきただけだ」
「信じるわ」
「俺の事を信じてくれるのは君だけだな」
「わかってるわ、私の為にしたのね。もう旅館の事はいいのよ、忘れて。バカな事はやめて」
「俺は長い間刑務所で過ごしてきたし、あちこちのホテルや旅館にも泊まった。だけど、どうしてか国際飯店の206号室が一番居心地が良かった。あそこにいると幸せだった、たぶん自分の家ってのはこういうもんなんだろうって気がしてさ…黒社会の奴は10人中9人が悲惨な最期を迎える、俺には家なんてふさわしくないと思ってたのに」
「国際飯店があろうとなかろうと問題じゃないわ。私がいるかぎり、あなたには家があるんだから」
それを聞いた大哥は、顔をくしゃくしゃにして子供のように泣きます。
虚勢を張り、暴力に訴える事でしか感情を表現できなかった男が、本心を告白し涙を流す事で生まれ変わる…この時のラウちんの表情が本当に何ともいえずいいんだよねぇ、私はこのシーンで必ず一緒になって泣いてしまいます。

大哥は人質を逃がし、自首すると伝えます。そこへ乗り込んできた九叔が既に投降している大哥に殴る蹴るの乱暴を加えます。
しかし、本当の強さとは何かを知った大哥はじっと耐えます、たまらず近くにあった灰皿で九叔を殴る小雪。
「俺はもうけんかはしないと決めたのに、君が奴を殴るなんて」

3年後、出所した大哥がタクシーに乗り込み、タバコに火をつけようとする、差し出されたライターの先を見ると運転手はなんと九叔、しかし、別人のように穏やかな顔をしています。
「最近、あの女性と子供さんを見ませんね」「2人はポルトガルに行ったんだ、俺も2、3日したら向こうへ発つんだよ」「そりゃぁいい」
そんな短い会話の後に流れる穏やかな時間…大哥が3年前に自分の居場所を見つけたように、九叔もこの3年の間に大切な人と、帰る家を見つけたのかもしれない、そんな事を考えたりしてしまいます。
そういえば、林雪は今までで一番満足しているのがこの映画の演技で、なかでもこのシーンが一番好きだとか。
ほんとに短いシーンですが、とても広がりがあって二人の演技もとても素晴らしい、名シーンだと私も思います。

実はこの映画、一度だけ九州の映画祭で『再見アーロン』というタイトルで上映された事があるそうです。
その時の字幕が残ってるだろうから、贅沢は言わないからDVDででも出して欲しいんだけどなぁ…

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『再見阿郎』

再見阿郎(1999/香港) 【監督】ジョニー・トー 【出演】ラウ・チンワン/ルビー・ウォン/ラム・シュー ジョニー・トー第27弾。 刑務所から出てきた黒社会の男大哥(ラウ・チンワン??

  • [ 愛すべき映画たち ] 2006年02月10日 12:57

この記事へのコメント

「再見阿郎」!
この間、ついにDVDを見ました。
いいですよね〜!
劉青雲はもちろんいいのですが、
ルビー・ウォンもいいのですが、
林雪がいつも(笑)以上によい。
ジョニー・トーだし、
これも是非公開してほしいものです。
「暗戦1・2」「再見阿郎」「十萬火急」で
劉青雲&ジョニー・トー祭りなんて、いいと思うのですが(イー・トンシンを入れても可)。
ところで、最後は葡萄牙だったのですね。
澳門だと思ってました。

1. Posted by きたきつね 2006年01月22日 09:30

私もこの映画は大好きです。主人公の名は「張東郎」なので「阿郎」。阿は接頭語で、名前の最後の字につけて「○○君」とか「○○ちゃん」といった呼び名になります。またこの「阿郎」は、同じくダメ男が再生する話で、杜[王其]峰監督の周潤發主演の《阿郎的故事》へのオマージュと、公開当事は言われていました。たしか『電影双周刊』にもそういった文章が載っていたと思います。(ちなみに撮影はすべてマカオだったように記憶しています。あの宿はいまはあるのかな? 見直して捜してみようかな)。

2. Posted by 茶通 2006年01月22日 12:41

ボクもこれ観て即座に、〈 遥かなる山の呼び声 〉を思い出しました。ラストに写る国際飯店の窓という窓に、ハンカチがかかっていたら、面白かったのに(笑)。

3. Posted by 森と海 2006年01月22日 21:31

>きたきつねさん
ほんとに3人の演技は誰ひとり欠けても成り立たないくらい素晴らしいですよね。
ラウちん&ジョニー・トー祭り、やって欲しい〜

>茶通さん
そうか、愛称としての阿郎なのですね。なるほど、勉強になりました。ありがとうございます。
>《阿郎的故事》へのオマージュ
そういえばどこかでそんな事を読んだ記憶が…(もしかして茶通さんの所だったかも)
あれは最後が…でしたけど、これは気分よく終われるのがいいと思います。
私もマカオに行く事があったら国際飯店を捜してみたいです。まだあればいいんですが…

>森と海さん
私はどっちかと言うと「遥かなる山の呼び声」というよりも『居酒屋兆治』あたりの健さんのイメージがあるんですけど。
山田洋次はウェット過ぎて、あんまり杜[王其]峰ぽくない気が。

4. Posted by KEI 2006年01月23日 00:31

きょうKEIで、暴力みたいな連行すればよかった?

5. Posted by BlogPetのlauchin 2006年01月23日 09:24

KEIさん、お誕生日おめでとうございます。私、恥ずかしながら阿○で○ちゃん、○君ていうのは、流星花園で知りました。金庸の小説を読んで知ったことにしておこうかしら。

6. Posted by KIKI 2006年01月23日 23:22

>KIKIさん
ありがとうございます。<誕生日
よく考えたら阿○で愛称って知ってたんだけど、なんでだか人の名前だと思い込んでました。
てことは中華圏の人は阿の字は人の名前には使わないんだろうな。
やっぱ日本語的にものを考えてるのが良くないのね。

7. Posted by KEI 2006年01月25日 00:27

こんにちは。
自分もようやくUPしたのでTBさせていただこうと思いましたが、そういえば、TBは制限されてましたね。
大哥が泣く時のラウ・チンワンの表情いいですよね〜。自分も泣きました・・・。
この映画、ラウ・チンワンとラム・シューが素晴らしいのは言うまでもないですが、ルビー・ウォンが素晴らしかったです。今まで観たルビー・ウォンの中で一番良かったです。

8. Posted by micchii 2006年02月08日 12:26

>micciiさん
こんにちは。
ルビー・ウォン、良かったですよね。いわゆる華やかさはないですが、とてもいい女優さんだと思います。
杜先生のが長年重用しているのも頷けます。
TBの件、すみませんでした。
ちょっとだけ制限を解除してみるので、お試しください。

9. Posted by KEI 2006年02月09日 22:16

KEIさんこんにちは。
わざわざ制限解除すいません、無事TBできたようです。
自分が使用しているFC2も以前はトラックバックスパムが醜かったんですが、次々打ち出された対策によって今はまったく問題ありません。
でも、ライブドアはそれどころじゃないでしょうね・・・。

10. Posted by micchii 2006年02月10日 13:00

>micchiiさん
引っ越しも考えてはいるのですが、何しろ過去記事が375ぐらいあるのでそれを手作業で移すことを考えると、なかなか踏み切れません。
データのエクスポートが出来ればねぇ…

11. Posted by KEI 2006年02月11日 02:14

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