僕の大事なコレクション

  • author: driftingclouds
  • 2006年06月09日

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原題:Everything is illuminated
監督:リ−ヴ・シュライバー 2005年 アメリカ

この映画、邦題とポスター(これはアメリカと同じビジュアルなんだが)でずいぶん損してると思うよ。
これだとまるでイライジャ扮するオタクの話みたいじゃないのさ、やっぱり宣伝下手くそだな、○ーナー

祖父の時代にウクライナからアメリカに渡ってきたユダヤ人のジョナサン(イライジャ・ウッド)、彼の趣味は家族にまつわるありとあらゆるものを蒐集すること。彼の部屋の壁には一面に家族の思い出の品がジップロックにいれられ、飾られている。
祖母が亡くなる直前、一枚の写真を渡される。そこには若い頃の祖父と見知らぬ女性が写っており「アウグスチーネとトラキムブロドにて」と書かれていた。
祖父の命の恩人だというその女性を捜しにウクライナに渡ったジョナサンは、アメリカかぶれのアレックス(ユージーン・ハッツ)と眼が見えないと言い張っているその祖父(ボリス・レスキン)、それに祖父の盲導犬(!)サミー・デイヴィスJr.Jr.と共にトラキムブロドを訪ねる旅に出る。

前半はほとんどコメディ。それを引っぱるのはアメリカ文化、特にヒップホップに憧れ、間違った解釈とでたらめな英語を話すアレックス。まるでクストリッツァ映画の登場人物のような彼の言動には大いに笑わせられます。
演じているユージーン・ハッツは実際にウクライナ移民で、ゴーゴル・ボーデロというジプシー・パンクバンドを率いるミュージシャンだそうで、映画のサントラにも彼らの曲が使われています。このサントラも秀逸。
ですが、後半、ジョナサンの祖父の歴史をたどる旅のはずが、いつしかアレックスの祖父の過去への旅へと重なっていくにつれ、だんだんと重苦しいトーンへ変化していきます。
祖父が「ユダヤ人は嫌いだ」と言い放ち、失明した(でも車は運転出来る)と主張するその理由は観たくなかったものから眼をそらし、思い出したくないことから逃げるための方便でした。
ですが、この旅を通して祖父はそうやって忘れてきた過去と向き合うことになるのです。
祖父を演じたボリス・レスキンもロシアからの移民。旅の途中でだんだんと表情が変わっていき、複雑な内面を覗かせる素晴らしい演技でした。
正直、イライジャはこの二人の影に隠れていささか影が薄いような気がしたくらいです。
じっとコレクションを見つめる彼のビー玉のような眼が、この映画には不可欠ではありましたが。

やっと辿り着いた場所は、目の醒めるようなひまわり畑の中にありました。
あのひまわり畑!今まで観た映画の中の3大ひまわり畑(あとの二つは『ひまわり』と『黒猫白猫』)と呼びたい。
そのひまわり畑のおかげか、語られる出来事はとても陰惨な出来事なのにどこかおとぎばなしめいていて、だからこそ余計にその悲劇に胸を突かれるような気がしました。
その後の祖父の行動は判るような判らないような。彼は自分の過去を取り戻し、そしてそのことに満足したのか…

ですが、映画の終わりの方ではとても解放されたような不思議な気持ちになりました。
ものを集めるというのは、その行為が目的なのではなく、ものに託された想いを受け継ぐということ、そして、それをまた未来へと繋いでいくこと。
過去は現在のすぐ隣にあり、未来へと繋がっている。。

監督のリーヴ・シュライバーは本業は俳優、そう言われればよく見かける顔かもといった程度の認識だったのですが、喜劇と悲劇、リアルとおとぎ話の同居するこんな奇妙で複雑で、魅力的な映画を撮れてしまうとは、ただ者ではないかも。

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この記事へのコメント

駅のホームでの出迎えのシーンなんか、楽団員を引き連れて、まるでクストリッツァ映画みたいでしたね。
音楽も、バンドのことを知るまでは、ノー・スモーキング・オーケストラかと思ってたくらいでした。
監督、ただ者じゃないと思います。2作目が楽しみですね。

1. Posted by micchii 2006年06月13日 21:42 5

micchiiさん、こんにちは。
リーヴ・シュライバー、今ナオミ・ワッツとつき合っている(婚約中?)らしいです。ますますただ者じゃ…

2. Posted by KEI 2006年06月14日 01:24

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