街のあかり

  • author: driftingclouds
  • 2007年07月18日

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Laitakaupungin Valot/Lights in the Dusk
製作・監督・脚本:アキ・カウリスマキ フィンランド=ドイツ=フランス

『浮き雲』『過去のない男』に続く敗者三部作の完結編。

舞台になっているヘルシンキの西地区周辺に私の泊まったホテルはあり、そのおかげで場所の空気みたいなものを少しですが実感することが出来ました。
再開発が進むといっても、やはり街外れという雰囲気がある(原題は「街外れのあかり」の意)ことは否めないちょっと寂しい地区です。
昔からの建物は少なくて、新しいガラスとコンクリートの建物が建ち並ぶ街はちょっと無機的な感じもします。
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あんまりいい写真じゃないけど、ホテルの周辺はこういう感じ。
冒頭から、うわ!あの道、私通ったよ!とか、あ、あれはあそこじゃん!とか、さすがに大人なので声に出したりはしませんが、心の中では叫びっぱなし。ちょっと落ち着け、自分。
そんな訳で全然冷静になんて観れてないですよ。
それで言うのもなんですが、うんうん、やっぱり、イイネ!

以下ややネタバレ気味…かな?

家族も友達もいないコイスティネン(ヤンネ・フーティアイネン)が、マフィアの情婦ミルヤ(マリア・ヤルヴェンヘルミ)に騙され、画に描いたような転落を辿る。
自分にそんな幸運が訪れるはずないなんて、冷静になればわかりそうなもんなのに、つい有頂天になってしまうバカさ加減、すべてを知って、それでも敢えて罠にかかることを選択するロマンチストぶり。
「犬のように忠実で、どうしようもなくロマンチストな馬鹿」と評される彼の、まったく報われない人生に、はあまりにベタで笑ってしまうくらい。

社会から無視され、利用され、捨てられて、ささやかな希望すら踏みにじられる。
真面目なものだけが馬鹿を見る、この世界の不条理をコイスティネンは一身に背負っているように見えます。
ですが、彼の「孤独」は一面では彼自身が創りだしたものであるという言い方も出来るでしょう。
皆から馬鹿にされ、無視される、ということがあったにせよ、他人を受け入れる努力をせず(自分を唯一見守ってくれている存在にも気づかず)、周囲への呪詛を募らせ自我ばかり肥大していた彼が、刑務所で見せる一瞬の笑顔は、最後に訪れる希望への予兆だとは、そう穿った見方でもあるまいと思うのですが。

私が滞在中も、街なかで明らかにアル中と思われる人、ホームレスの姿を数多く見かけました。
それはハイテク大国とかフィンランドデザインといった綺麗なイメージとは違った、影の部分です。
(一応フィンランドの名誉のために言っておきますが、数は東京よりはよっぽど少ないです)
そういう皆の隠したい影の部分、忘れられた人々に暖かなまなざしを向けて来た、自称”心優しき老人”(50才で老人と言われても困るよ)アキは、光の中に居ては見えないもの、影があるからこそ輝いて見えるあかりを灯してみせます。
その美しさを、私は愛しています。

それにしても、ここでも「Volver」を聞くとは思わなかった。

ロケ地の写真を少し載せておきます。
映画を観ずに行ったので、アングルとかは全然違ってますが。

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コイスティネンが勤めていたルオホラハティのショッピングセンター
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ミルヤとの初デートで行く”ディスコ”タヴァスティア・クラブ(昼間なので営業してませんでした)
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刑務所は現在ではホテル・カタヤノッカというデザインホテルに生まれ変わっている。
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刑務所を出たコイスティネンがバスを降りるのが建設中のショッピングセンター”カンッピ”の前、現在は完成して上にはホテルが。バスターミナルは地下に移っています。
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ラディソン・SAS・シーサイドホテルのレストラン「ヴィオラ」。コイスティネンが出所して皿洗いとして働き始めるのがここじゃないかと思うのだけど、違うかな?

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