『恋の紫煙』ティーチイン
- author: driftingclouds
- 2010年11月23日
ちょっと前にtwitter上で、彭浩翔が今の香港映画の代表みたいになってるのってどうなの?というような意見が出ていて、作品的にいえば、それも頷けない事も無いと思うのだが、なんだかんだ言って、こんなにマメに作品を持ってきてくれて、なおかつ、かならず本人が来てティーチインをしてくれる、という人は他に居ない。
そういう意味で、やっぱり彼が“アジアの風”の香港映画の顔である事は間違いないのだよな、と思う。
年に一度、みんなで集まって、彼の映画を一緒に観て、ティーチインを楽しみ、サイン会をする。
司会の人がいみじくも言ったように、これは私たち香港映画ファンの同窓会なんだと思う。
去年はこれが無かったせいで、どうも気持ちが盛り上がらなかったものね。
そんなこともあってか、平日の昼の上映にも関わらずもちろん満員。
司会の方も去年は来てくれなかったですね、待ってたんですよ〜と、まず皆様に一言お願いします、と。
彭「またお会いできて嬉しいです。昨年来られなかったのは、今日観ていただいたこの映画を撮っていたからで、ここでまた皆さんにお会いできたことをとても嬉しく思っています。」
Q「煙草を吸わない監督がこの映画を撮るのは大変だったのでは?」
彭「自分はタバコを吸いません。この映画を撮るきっかけは、友人と食事をして、その友人の会社に行ったら、エレベーターホールでその友人がいろんな女の子と挨拶してるんです。どうも会社の同僚でもないし、同じフロアにある会社の女の子でもないのに、なぜかよく知ってて、なんでかと聞いたら、室内で煙草が吸えなくなって外でタバコを吸うようになってから知り合ったんだと聞いたんです。
その話を聞いて、自分はタバコを吸わないから、そうやっていろんな女の子と知り合う機会を無くしていると思って頭に来て、嫉妬もしました。(笑)
室内でタバコを吸えなくなってから、路地が新しい人と知り合う社交の場になっているという事を知って、自分もタバコを吸わないけどその場に行ってみんなといろいろ話をしているうちにこの「恋の紫煙」の構想が湧いてきたんです。
みんながタバコを吸ってる場所ていうのは、煙がこもってて酷いんですよ、でも、自分は監督として演技の指示を出したりしなくてはいけないんですが、行きたくないので、助監督にトランシーバーを吸い殻入れの奥に貼付けておいてもらって、トランシーバーで指示を出してました。」
Q「映画の小道具としてはタバコは便利なものだと思うのだけど、世の中タバコを吸えない場所が増えると、それが使えなくて不便になってくるのでは?監督としてその点をどう思いますか?」
彭「タバコを吸えなくなってるというのは、日本と香港だけではなくて、いろんなところがそうなってると思います。この映画は中国大陸でも上映されたんですけど、やはりタバコを吸うシーンが多いという事でかなりカットされています。
それ以外にアメリカなどでもタバコを吸うシーンはなるべく出ないようにという流れにある事は確かです。
ただ、今回のこの映画はタバコを吸うというのがテーマではなくて、タバコが室内禁煙になった事によって、普段は行かなかった路地が他の人と知り合う社交の場になっているという、それが本来この映画で伝えたかった事ですので、皆さんタバコを吸いましょう、という映画ではないんです。」
Q「女性が年上のカップルにした理由は?またそれを楊千[女華](ミリアム・ヨン)と余文樂(ショーン・ユー)にキャスティングしたのはなぜ?」
彭「女性の方が年上っていうカップルは香港では多くて、普通なんですね。自分の知ってる役者にもそういう人はいますし、実際、楊千[女華]の旦那さんは年下ですし、余文樂がつきあう彼女はいつも年上なんですよ。だから二人にとって、この役造りは難しくないだろうと思ったんです。
少し大変だったのは、楊千[女華]は本来タバコを吸わないので、吸う練習をしてもらわなくてはいけなかったことです。
ただ、余文樂に関しては、煙草も吸うし、普段から粗口もバンバン使うので(笑)、全然問題ないだろうと思ってました。」
Q「過去の作品との関連で「イザベラ」の時に梁洛施が最後には煙草を止める。今回も最後に禁煙するというオチは同じだが、関係はあるのか?」
彭「自分の友人の中で煙草を止める動機っていうのは、好きな人のために止めるっていうのが多いんです。好きな人のために決心する、その人と約束したから止めるというのは、自分にとってとても感動的な事に見えるんです。
その止めたと言ってた人がまた吸っていたら、ああ別れたんだな、と。(笑)
人のために止めるというのがとても感動的なので、2作品ともそれを入れました。」
Q「禁止されている場所でタバコを吸うシーンが多いが、撮影はすんなり許可されたのか?」
彭「今禁止されているのは室内での喫煙で、撮影は屋外が多かったのあまり大きな問題はありませんでした。屋外でも吸っては行けない場所もあるので、そのへんは気にしなければいけませんでしたが、それよりも、撮影のためにタバコをたくさん用意しているのに、クルーの中にタバコを吸う人がいて、彼らがどんどんタバコを吸ってしまうので、それを吸わないように注意するのが大変でした。」
Q「この映画は年齢制限があるようだが、汚い言葉を使っているせいなのか?またそのレーティングは誰が決めるのか?」
彭「この作品は三級映画、つまり18歳以下の人は観てはいけないというランク付けをされています。
これが三級にランク付けされて、自分としてはとても意外に思っている。今まで映画を作ってきて、これが初めて三級に指定されたのですが、今までにだって、いろいろ変なの撮ってきたじゃないですか。(爆笑)
ですから、自分の妻には「なんでこんなのばっかり撮るの?もうちょっと健全なものを撮ればいいのに」と言われてまして、今回すごく健全なものを撮ったつもりなのに、それがかえって三級に指定されて非常に意外に思ってます。
香港の映画のレーティングを決める機関があるんですが、今回三級と決められて、会社の人と、なんでこれが三級なのかと話をしました。
この映画が三級に指定されたのは粗口がたくさん出てくるからなんですね。だけども、自分の前の前の作品「出エジプト記」その中でも同じように粗口がたくさん出てきてるのに「出エジプト記」は三級には指定されてないんです。
それで係の人に、なんで『出エジプト記』は三級じゃなくて、今回はそうなんだ?と理由を聞いたところ、「出エジプト記」の場合は、役者が頭に来て怒り心頭に達してるところで粗口を発している、それは許せる、と。
でも、今回の映画の場合はみんな嬉しそうに話しながら粗口を話す。それは子供の教育上良くないと。(笑)
もしそれが最初にわかってれば、余文樂がそういう言葉を使う時には、少し怒りを持たせて言わせたのに。(爆笑)」
司会「2年前の「些細な事」の時に、そういうレーティングや規制には負けずに好きなものを撮りたいと言っていた監督が、最近、北京に引っ越した(!)と聞いてすごく驚いたのだけど、北京生活はどうですか?」
彭「北京語は苦手なので、北京語で会議をするとか言うと気持ちが重いです。でも実際北京に引っ越して、今、次の作品を中国大陸で撮ったりもしてますし、またプロデュースしている作品もあります。
既に一部短編で出来上がっているのがあって、それはこないだ「些細な事」の小説で映画化しなかった作品の1つで、爪切りを食べる妖怪の話(?)で、インターネットで公開されているので興味のある人はぜひ観てください。」
採録の中で(笑)とか書いてるのは、ホーチョンが笑ってたわけじゃなくて、会場の反応の方です。
パン君は、例によって本気なんだか冗談なんだか読めない、いつもの表情でした。
それにしても、北京に引っ越したっていうのはショックだったわ〜
ホーチョンよ、お前もか!と。
さて、twitterにも書いたのだが、彼は“今”を取り上げるのが非常に上手い人だと思う。
今回の作品も、禁煙法の施行というタイムリーな時事ネタから、そこから派生した身近な変化をうまいことネタにして作品に仕上げている。
お話としてはボーイ・ミーツ・ガールのなんてこと無いものだけど、いかにもありそうなリアリティにちょっとひねりの加わった会話や行動が、非常に楽しく観ることが出来ました。
二人の関係がちょっとずつ深まっていく感じとかすごく自然に描かれてたし、お互いにとって少し都合のいい勘違いが、決定的なきっかけになったりとか、あるある〜って思った。
粗口にしても、親しいもの同士だと無意識のうちについ出ちゃうってのはわかるし、そんなに目くじらたてなくっても、と思うけどな〜
ミリアムもショーンも、いかにも今どきの若者って感じで嵌ってて良かったです。
次はその大陸で撮ってるという作品なのかな〜?一体彼が大陸でどんな作品を作るのか、興味津々です。
北京でプロデュースした作品ていうのはこれだよね?監督はホーチョン作品では役者でもおなじみの曾國祥(デレク・ツァン)
- driftingclouds at 00:22
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この記事へのコメント
こんにちは!
先日の台湾日帰り旅行で、隣になった咲良です。ブログにコメントありがとうございました。私も、お邪魔させて頂きます(笑)。
さてさて、KEIさんがすごく香港映画に詳しい方でびっくりしました。
私も昔は廣東語を勉強するくらい香港映画にハマっていたのですが、最近はすっかり韓国映画を見る機会の方が多くなってしまいました(汗)。
では、また遊びに来ま〜す☆
きゃ〜咲良さん、ごめんなさい!
うわ〜、やってしまった!
自分のコメントも承認しないと表示されないという事をすっかり忘れてました(滝汗)
ご訪問ありがとうございます。広東語勉強されてたなんてすごい。
これを機会にまた香港映画の方へ…なんて誘ってみたりして。
更新の滞りがちなblogですが、よろしくお願いします〜