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緑のルーペ ☆☆☆☆☆ 既刊3巻

<紹介>
 成人向け漫画家の緑のルーペによる「ブラパ THE BLACK PALADE」以来の一般向け作品。作者お得意の心につき刺さるストーリー漫画。高校生の頃に想いを寄せていた女の子が16年後に突然帰ってくるが、すでに自分には彼女が居て・・・という作品。こう書くとハーレムものっぽいですが、そういう作品ではないです。絵は成人向け書いてただけあって特に人物の表情はうまいです。

久しぶりにレビュー書きたくて仕方ないと思えた作品。
4巻とIF本も読みました。その結果もう一度読み直さなければいけなくなってしまったので、更新はもう少し待ってください、

<感想>
 うわあ・・・、これはまたえげつないストーリーを書いたなあ。まあ、そのわりに暗くなりすぎてないけど。わりと暗いトラウマ回と明るい日常回がはっきりしてて、明るい部分があるだけ、暗い部分がより際立ってるのがいい。
 主人公の鳥羽は、みい子とこのまま結婚すれば絶対幸せなのに、高校生の頃恋したさくらを助けてしまう。しかもそれを「めんどくさい」って思っちゃってるけど、でもさくらをほっとくことは出来ない。この迷い・・・割り切れない感じがなんとも人間らしくていいっすねえ。ポイントは助けた動機が「困った昔の友だちを助けたい」では決してない点ですよね。あきらかにさくらへの特別な思いがあるからだし、それを心の何処かで未だに引きずってるからだしほっとけないし。でももちろんみい子のことが今では好きだから、そっちも大事っていうこの煮え切らなさ。でも、きっと人間こんなもんですよ。この状況だったら誰でも「めんどくさい」ッて思いますよ。この漫画の最高なところは、主人公のこの妙なリアルさ。
 そして途中からは主人公の煮え切らなさに容赦なく突っ込みが入るようになる。本当にスキがない完成された鳥羽を追い詰める構造。たしかに誰が悪いかと言われれば多分鳥羽なんだけど、人間なんだからそのくらいの迷いや矛盾は許してやれよ・・・ってところをこの作品はガンガン責めます。鳥羽の運命やいかに。
 ほんと、緑のルーペ先生こういうのうまいっすね。管理人の大好物っすよ。人間の弱さ、醜い葛藤をかける漫画家はたくさんいるけど、それをこんなに生々しく、それでいてどこか美しくかけるのはこの人以外知らないです。

<各巻の感想>
・1巻
 いいですねえ。P22の倉橋「ほれ いやあ同級生の手作りとか初めて食ったわ うまかったぞ」って、うわああ。これは鳥羽つらいなあ。P31の3コマ目、カチンと来た表情描くのうまいなあ。P32のさくら「鳥羽なんていなくなっちゃえばいいんだ!!!」って、あーあ。自分が悪いとはいえこれはトラウマになるわ。P38、そうなんですよ。つらいことがあっても、人生は続いちゃうんですよ。ゲームと違ってGAMEOVERで「はい終わり」ってわけにはいかないんですよ。P48、鳥羽が金髪になってる。絶対倉橋の真似とかなんだろうなこれ。P53、そして未だに引きずっている。P69のみい子に「なんか変な女」の張り紙してあるの地味に笑った。P88の鳥羽「僕 彼女いるし」←さくら「・・・は?」って、あんな啖呵切って迎えに来た奴がそんなこと言ったら、まあそらそうなるわな。まあこの矛盾が物語の決定的な核ですね。P92の鳥羽「もしかして妬いてんの?あはは」→みい子「妬いてるよ」って言う返し方好き。P100のみい子「・・・やっぱり納得いかない」←ですよね。当然。P106のみい子「さくらちゃん!いつまでもうちに居てくれて良いからね!」って、いいんかい(笑)。まあ個人的にここはひとつこの話のポイントだと思ってます。P110の鳥羽「16年も経って今更さくらのい未練なんか・・・」←「ホ ン ト ニ ?」って、まあなかったら助けないですね。この「ホ ン ト ニ ?」の描き方最高。P132のみい子「・・・そのキスマーク私のだからね?・・・誤解されないでね?」って、うーんかわいい。さっき言いかけた気がしますが、みい子をよく描くことで「手の届く幸せ感」を強調してるのがひとつポイントな気がする。P144、ぺかーっ(笑)。P151、そして倉橋は黒髪になっている。ていうかこの二人仲いいのか。P153の倉橋「お前今さくらが帰ってきたらどうすんの?」はニヤリとした。背景の心情描写がいいっすなあ。P154の倉橋「お前の氷のハート溶かした彼女も気になるし 今度お前の家遊びに行かせろよ?」って、これNTRフラグじゃないかなあと、緑のルーペ作品だと思ってしまう。P156、そうきたかあ・・・。今後に期待。

・2巻
 最高の出来。震えた。P18の倉橋「直前に他の男に告った女に告ってどうすんだ!! 宇宙一成功率低いだろが そんなん!!分かれや!!」って、ぐうの音も出ないほどの正論だな。そりゃそうだ。P19、鳥羽が殴ったのか、というかこのペラペラな鳥羽の描写は呆然自失っぷりが出てていいな。P22の倉橋「・・・まあなんだろうな 結局のところどんな思いも少しずつ忘れていくじゃん?悲しみ続けても落ち込み続けても・・・・ 段々ただのフリになっちまうだろ? そんでさ かつて抱いたはずの想いを完全に失ったと気づいた瞬間 俺達・・・はきっと立ち直っちまうんだ だから・・・想いを心の外側にある何かに刻みこむんじゃね お前のこれもこんな感じだろ?」って、いやあ詩人ですねえ。「思い」と「想い」を使い分けてるところにセンスを感じる。てか金髪にはこういう事情があったんですね。P34の鳥羽「セックスは好きだ 相手の深部に触れることには責任が伴う その束縛が青春の毒から僕を守ってくれる気がするのだ」ってことは、自分自身に迷いが残ってるのこと裏返しでも・・・。P56の梅子「汚くて醜いものを否定し続けるだけじゃなくて 飲み込んで自分の血肉にする時がきっとくるよ」って、これまた深い言葉をですねえ。ルーペ節連発。P62の梅子「ほら まことが世界で一番大好きな女の子だよ」って、えっぐい展開だなあ・・・(歓喜)。またこれをさくらがみてるっていうのがもう・・・。てか1巻の最後辺りの倉橋のセリフって伏線だったのかよ。P68、誘惑に負けたのか(笑)。P78の梅子「私はただ 貴方が私のものになってくれないなら せめて一番おっきな傷をつけたいだけ 愛だよ まこと」←いやあ最高のセリフ。しびれる。P104、タバコかっこ良く吸えるキャラって憧れるわ。P122の倉橋「さくらはさ 俺のことまだ好きなんだよな?」→「じゃあ鳥羽のことはどう思ってんの?」って、こいつ・・・。いろいろかき回してくれるぜ。P131のさくら「そんなの・・・嫌いになれるわけ・・・ない!」って、あーそうくるかあ。さあ鳥羽どうする。 (ページ表記がないので変えます) 13話P9、梅子とあの関係3年半もやったのか・・・。とはいえこんなの10年も続けられたら・・・嫌いなんて言えないよなあ。13話P20の鳥羽「十和なんていなくなっちゃえばいいんだ!!!」←ひどい・・・。自分からあんなに啖呵切って助けといて・・・。まあ気持ちはわからないでもないけどさ。13話P24の鳥羽「かつて彼女は言っていたのだ 自分のものにならないなら せめて 一生消えない傷を」←うわあここでその言葉持ってくるかあ・・・。この鳥羽の影の悪魔のような表情ですよ。

・3巻
 惚れ惚れするようなクオリティ。ささやかな幸せがガラガラと音を立てて崩れていく・・・。P5の鳥羽「最適の選択が無理なら いっそ最悪の選択を」:分かる、ショッキングなことがあると全てをめちゃくちゃにしたくなるんだけど・・・「勿論これは あくまでゲームの話」というように実際にそれをやるほど自暴自棄にはなれないこの感じ。P6、全部読んだ後で、もう一度ここらへん読むとみい子の明るさが逆に心に刺さる。P14、さりげなく鳥羽と買いに行ったブラですね。P20、重要な物語の転換点。ここで完全にさくらの気持ちは倉橋から鳥羽に移ったと思う。このさくらの表情の変化の描き方がすげーわ。P28の鳥羽「一個得意なことがあったら一個苦手くらいが丁度良いですよ」:うーんいい言葉。そしてみい子のこの表情。P29の鳥羽「じゃあ もう一回呼んでみてくださいよ」→みい子「えーっ まことくん?」→鳥羽「もう一回」→みい子「・・・まことくん」→鳥羽「もう一声」→みい子「・・・ もう許して」:うーん思わずニヤけるこのやり取り。ラブコメ部分がこうやって明るいのがこの作品の肝です。P31の書き置き「追伸 酔ってるフリ、あまりに下手なので僕以外には使わないほうがいいと思います。」:ばれてた(笑)。P42の倉橋「げーっひゃっひゃ!!馬鹿な男よ!ペラペラと手がかりを喋りおる!! さくら!出かける準備だ! 鳥羽のとこまでぶっ飛ばすぞ!」←おいふざけんな(笑)。この状況でさくら連れて突撃って鳥羽にとって迷惑すぎんだろ。P47の倉橋「・・・腑に落ちねえな ・・・あれから別に変わった様子はない 普段通り それが却って・・・ いつの間にか物語の外側に追いやられたような 嫌な感じだ―」:鋭い。この倉橋の鋭さが鳥羽を苦しめる要因ですよね、特にこの後・・・笑。P54の鳥羽影「めんどくさあ・・・」:でたーこの影。3巻のMVP。P61の鳥羽影からペラペラの鳥羽になって鳥羽本人も耳をそむけたくなるような心の何処かの本音を喋る表現ほんとたまんないっす。P62、ペラペラの鳥羽の「醜い欲望(P64でそう表現されてる)」全開、ブラパでも「汚い本音」と表現されて印象的だった男特有の葛藤。P64の鳥羽「そう信じるしか彼女の助けになる術はないんだ」←ペラペラ鳥羽「と 思い込むことでこの状況を罪悪感なく楽しめるんだね」:うっふふふ(歓喜)。こいつ痛いところついてくるなあ、最高だわ。鳥羽の都合の良い解釈を容赦なくついてくれるぜ。P73のまこと「あ 倉橋やみい子には内緒にしてね」:みい子はともかく倉橋にも内緒なところが、今の状況で倉橋が厄介だから・・・ってだけじゃないと思うのは深読みしすぎだろうか。でもそのあとなにげに映画デートしてるしなあ。P77のペラペラ鳥羽と鳥羽「「嬉しい」」:とうとう意見あっちゃったよ。P80の鳥羽「『制御できる』なんて言い訳までしてさくらの傍に・・・ そんなことをいつの間に僕は肯定してた?」:ですよね、でも「仕方ない理由がある」って自分に言い訳して自分をごまかして、行うべきでないとわかっているはずの行動を本心に従ってやってしまうって実はすごくよくあることだと思う。そしてそれを無意識のうちにやってしまうことも・・・。
(ここから下が更新した分です)
P81のさくら「・・・でも まことはみい子と結婚するでしょ?」:後ろのペラペラに「ぼこっ」っとダメージがいってるのが、うまいなあ。P81「半年間で生まれた大きな傷 それを僕は十六年間反芻してきた 繰り返し繰り返し 何度も何度も その度 傷口から零れ落ちるのは苦悩の蜜 その蜜を吸って育った恋の偶像 僕の頭の中だけの『十和さくら(かたおもい)』」:いやあ最高。素晴らしく詩的で的確な叶わなかった恋の心情説明。また絵のさくらが全部生まれたままの姿なのが生々しくもリアルですよね。恋とエロスは切っても切り離せません。P85のペラペラ「嫌だ ここにいてよ さくらと離れたくない こうなるなんて知らなかったんだ 結婚なんてしたくない!!!」:そして未練の権化が悲鳴を上げる・・・。そこから逃げようとする主人公っていうのがまさにこの物語の縮図ですね。P88、プロポーズの言葉、「好き」とか「愛してる」ではなくこの言葉。自分に言い聞かせてるようにも聞こえる。とくに「ずっと居たいってそう思えるよ」ってところが。考えすぎだろうか。さっきもそうだったがこの話台詞や行動の一つ一つに作者の意図がこもってる気がしてつい深読みしてしまう。P108の澤「いや なんでアンタが行くの おかしくない?」:あーこの事情を知らないがゆえの正論が鳥羽につきささる。てかこいつも鳥羽追い詰め要員か。あと直後のみい子の表情が絶妙。P110の澤「私浮気されたの お相手は高校時代の元同級生 初恋の女の子なんだって 馬鹿みたいよね」:あーあそういうこと言っちゃうかあ。この話、倉橋が「・・・それに 俺にとっちゃ上牧の方がよっぽど部外者だ」というように(P106)、今までこの鳥羽の葛藤の中でみい子は状況の割に安定した存在であり続けて、その意味で「部外者」的なところがあって、それが鳥羽の中での救いになってたと思うんです。しかしこの澤というキャラはその鳥羽の心の安住の地さえもこうやって危うくしてしまう模様。P117の澤「上牧さー 彼氏の元カノと仲良くできるのすごいねー 私ムリだー」←ほんとこいつ・・・笑。空気読まないってこういうこと言うんだな。みい子が固まってるのは、やっぱり内心思うこところがあったことの現れですね。まあ逆に気づかないでいてくれるのがみい子の良さな気もするが。P119、おい人の黒歴史を婚約者の前で曝露とか止めて差し上げろよ(笑)。みい子動揺しまくりやぞ。P124の倉橋「・・・でもお前と帰国直後に会った時さ お前 さくらが帰ってたこと隠しただろ 『友達』ならそんな必要ないよなあ?」:また痛いところついてくるねえ。でもまあその通りですね。P128の鳥羽「どうしても忘れられない片思いをしてるヤツはどうしたら良い?」:気持ちはとてもわかるけど・・・厳しいこと言うと忘れようとしてないですよね。毎年消えた日に消えた場所に行ってるし(1巻)。忘れないために刻み込んだ金髪も未だに貫いてるし・・・。P134の鳥羽「ほら倉橋 お前がそんなこと言うから 僕はとうとう頭がおかしくなっちまったぞ?」:あちゃー、鳥羽に矛盾があるとは言え、これは同情を禁じ得ない。P140、あーあとうとうこの物語の最後の救いまでもが壊れ始めてしまった。もう二度と元には戻れない。P147のさくら「いつだって まことは一番に私を追いかけてくれるんだね」:くぅーこの状況、読んでるだけで思わず声が漏れる(歓喜)。あとたばこを吸うさくら、完全に作者の趣味です。いい味出してると思うけど。P148、初めて自分に正直になった鳥羽。P149の鳥羽「そんな恋愛があることを彼女は教えてくれたんだ」:言いたいことは分かるが・・・みい子はからすると自分が「一番好き」じゃないと嫌に決まってるでしょ。P156の鳥羽「最適な選択はもう望めない だとしたら残されたのは・・・ ―きっと 最悪な選択だけ」:うわぁーそこにみい子いるのかぁ。この時のみい子どんな表情なんだろうか・・・。てか最悪な選択ってそれは「勿論これは あくまでゲームの話」だよな・・・?
次巻に期待せざる得ない。超楽しみ。

・4巻
 完結。P9のさくら「大丈夫?」ってええ・・・(困惑)。いやこうなったの誰が原因だよ。読者の心情を代弁するかのような澤の表情である。P13の倉橋「・・・鳥羽のヤツに言ったんだよ『向き合ってちゃんと気持ちを伝えてやれ』って 俺はさ『上牧に』って言ったつもりだったんだ」:うわあ。その枚違いはだいぶ致命的だったぞ。でもそれをみい子に言ってもそれはそれで傷つけた気もするが・・・。P16の澤「簡単な正解さえ分からなくなるのが 恋だもの 私ね旦那に迎えに来てほしかったんだぁ ―だから遠くまで逃げたの 電話して欲しかった ―だからケータイの電源切ったわ 愛して欲しかった ―だから愛されるわけないくらい汚れてしまいたい」:」:いやぁ分かってらっしゃる。それが間違ってると心の何処かで分かっていても、そうしちゃうときってあります。P26のさくら「ごめんね ずっとここが気になってたからさ でも良かった バラバラに追っててもちゃんと最後にはつながるんだね」って、それは単にゲームの話じゃないよな・・・?どういう意図なんだ?P28のみい子「行っておいでよまことくん 別に帰ってこなくて良いから」:ああ・・・みい子のメンタルが・・・。普段おちゃらけてるだけ突き刺さるこの詰めたい言葉。てかそれ言う前の鳥羽のはっきりしない態度が悪いよなあ。P35の鳥羽「好きなんだろ・・・倉橋のこと」→さくら「は?イラッ」:ほんと・・・もうなんだろうねこの主人公。P37のさくら「そんな時間と理由で 16年も私のこと忘れられなかったんだ?」:うふふふ(歓喜)。なんかさくら随分言うようになったな。P38の「恋はメカニズムだ (中略) 人は全てが生まれ変わる」:詩人だなあ。こういう語り大好き。その後「理屈で恋が出来たらこんなに苦しくはないだろうに なんて理不尽!!」:ほんとだよな。理屈じゃないから・・・忘れられないわけだしな・・・。