20170318130025
監督:大友啓史 原作:羽海野チカ ★

<紹介>
 NHKでアニメ化された羽海野チカのヒット作「3月のライオン」の実写映画版。17歳でプロ棋士になった主人公の桐山零が様々な人との出会いを通じて変わっていくという原作のお話。

ごめんなさいあまりに言いたいことが多すぎて、とっちらかった感想になりました。
<感想>
 また一つひどい映画を見てしまった。原作を読んでなければ楽しめたのかもしれないが、原作ファンからすると違和感を通り越して嫌悪感を感じるようなひどい映画。一番ダメだと思うのは、登場人物がみんなオラついてて、やたら性格悪かったり、暴言を吐きまくったり、常識はずれな行動をしたりするせいで、全体的に雰囲気がえらく殺伐としてる。原作ファンにわかりやすく言うと全員が後藤や香子になった感じ。そのうえ、ひとりひとりについて掘り下げるようなシーンもカットされてしまったため、
全くもってどのキャラにも愛着が持てない。というか、原作もアニメも見てない人は「こいつ誰だ?」ってなるんじゃないだろうか・・・。「3月のライオン」って、変わり者揃いだけど憎めないような温かいキャラクターばっかりの中で主人公に桐山くんが少しずつ変わっていくみたいな作品なのに、その温かい雰囲気は少しも表現されなかった。

ひとりずつ振り返ってその酷さを表現すると
三姉妹:零と出会うシーンをなぜか回想ではなく描いてしまったため、
そこそこ付き合いがあるって設定での距離感を初対面に近い状態からやることになり違和感覚えた。あとこの一家の説明がされなかったため、初見の人はこの一家の事情とか理解できないままに、ひなが川辺で泣くシーンになってしまうし、そのせいでひなが泣きながら初見の人向けの事情を説明せざる得ないという残念な感じに・・・。
あと単純に配役ミスでひなちゃんデカすぎです。

二階堂:いちばんひどかった。将棋にすべてを懸ける情熱的な人物っていうのを表現できず、ただの常識はずれなDQNという印象しかなかった。とくに桐山くんの学校で拡声器で殴り込みみたいなのをしたのはひどかった。また、テレビで熱く「自分を大切にしてくれ!!」って言う場面も、それまでのシーンでまともに描かれていなかったため「突然何言ってんだこいつ」感があり全く響かなかった。あと永世新人王について「不名誉に決まってるだろう!俺たち新人全員の!」というかっこいいセリフも、零が「あ、なるほど!」とうまいシャレを聞いたかのような軽い反応をしたため台無しにだった。こんな感じだったため、はっきり言ってただのさっむいネタキャラにしか見えず、極めて残念。

香子:主人公の次くらいに時間をかけて描いたにもかかわらず、「将棋で挫折して、傷ついてグレてしまった」というよりも、ただただ性格の悪い義姉という感じになってしまっていた。原作にあった後藤に殴られた零を心配するようなシーンはカットされ、零に意地悪ばかりするどうしようもない性悪女に。あと細かいこと言うと「足冷えた!トイレ行きたい」ってセリフを「足冷えた!(主人公の耳元で)おしっこもれそう」にしたのとか本当意味分からなかった。

島田さん:この中では良い人物として描かれたキャラクター。でも対局中の零へのテレパシーはさすがにギャグにしか見えなかった。貴重な笑えるクソ要素。その後も彼の人となりを描くようなシーンが少なかったせいで、なんで零が島田さんを尊敬するかとか伝わらなかったんじゃなかろうか。というか他にも山形への思い入れとか、二階堂との関係とかすべてにおいて説明不足感が否めない。
あんまり掘り下げてない島田さんが後半目立ってるのは初見の人からすると違和感あったと思う。

林田先生:これまた、ひどかったキャラ。零を励ましたり、かっこよく助言したりする重要キャラクターなはずが、ただ将棋好きでずけずけ物を言ってくるってとこしか描かれず、あんまり零に影響を及ぼさないサブキャラに。
零が後藤に気を取られて島田さんに負けるシーンの前に林田先生が「気を取られて当たる前にまけとかやめろよー」こと言ったのは監督アホかと思った。なんでその後の展開をわざわざばらしてしまうのか。その助言を受けたのに、本当にその通りになる零はただのバカにってことになっちゃうし。たったセリフ一つで大事なシーンが台無し。

スミス&一砂:本来零にかまってくれる温かい先輩二人だったはずが、なーんか本当に嫌な先輩に。

 何より原作の大きな特徴であるモノローグ(零の心の声)を排除した結果、零さえも「孤独ながら優しい青年」ではなく「ただの無口なネクラ」っていう印象になってしまうし、なによりモノローグを通して描かれるはずの零の心境の変化が描かれないままに展開していくので、ストーリーが薄っぺらく見えることこの上ない
。例えば安井さんに勝った後叫ぶシーンをろくすっぽ将棋や零の心情を描かないまま序盤に持ってきたせいで、零がすごい将棋に対してエゴ全開な人物に見えた。新人戦に優勝したところも、二階堂への思い入れがないまま、もっと言えばひなちゃんのいじめ問題による零の決意がないままに描かれても、意味ないと思った。だって決意した零が本当に勝ちたいって思うようになったからこそ、二階堂の言葉が心に響くわけだし、だからこそ勝てたってお話でしょ?そこを描かないで表面の優勝したってとこだけ描いてどうするの?

 この映画は漫画の実写化において常にネックになる「キャラクターと俳優のイメージが合わない」というのはひなちゃん以外はそんなになく、
零役の神木隆之介や後藤役の伊藤英明などすごいはまり役だったと思う。また、「進撃の巨人」などと異なり、実写化するにあたって撮影するのが困難なシーンは存在しない。理解が難しいような複雑なストーリーなわけでもない。それにもかかわらず脚本がクソだったせいでこの映画の出来は目も当てられないと言わざる得ないものだった。何よりあの素晴らしい原作からこんなにもクソな脚本が生まれたのは驚き。

「様々な人間が何かを取り戻していく、優しい物語です。」、というこの単行本の裏表紙に書いてある言葉を監督は理解できていなかった。それがこの映画の最大の敗因ではないだろうか。