2014年02月06日
アステラス製薬が、日本において2013年3月に承認申請していた選択的SGLT2阻害剤 「スーグラ®錠 25mg、同50mg」(開発コード:ASP1941、一般名:イプラグリフロジン L-プロリン、以下「スーグラ錠」)について、2014年1月17日、2型糖尿病の効能・効果で製造販売承認を取得したとの事。
2014年4月にも薬価収載になるという噂なので先取りして、頂いた資料から勉強してみようと思います。
まず、選択的SGLT2 阻害薬の開発の原型は1835年にさかのぼる。
リンゴの樹皮から発見されたフロリジンという配糖体あり、実験動物の高血糖を改善させる試薬として現在でも使用されているらしい。
しかし、フロリジンはSGLT-2およびSGLT-1を非選択的に阻害するため、臨床では低血糖や消化管機能障害の懸念があった。またフロリジンの構造もO-グルコシド型構造でβーグルコシダーゼにより分解され易いという難点もあった。(最終的にC-グルコシド型への構造変更する事によりSGLT-2の選択性を高め、βーグルコシダーゼによる分解も回避し治療薬として臨床開発が進められた。)
SGLTとはなんぞや?
そもそも、血中のグルコースは腎糸球体で100%が原尿中に濾過され、近位尿細管を通過する過程でほぼ100%が再吸収される。
グルコースは疎水性で脂質二重膜に対して透過性を持たないため、濃度勾配に逆らって再吸収されるにはNaイオンの取り込みと連動させた能動輸送を行う必要がある。
近位尿細管の管腔側でこの再吸収を担う輸送体がNaイオンとグルコースを共輸送するSGLTである。
このSGLTにはSGLT-1およびSGLT-2がある。
※SGLT-2の特徴
・腎臓の近位尿細管に特異的に発現している。
・グルコースの輸送について、1分子のNaイオンしか必要としない。
・グルコースに対して低親和性。
・グルコースの再吸収の90%を担う。
※SGLT-1の特徴
・腎臓だけでなく骨格筋や心筋、特に小腸において高発現している。
・グルコースの輸送について、2分子のNaイオンを必要とする。
・グルコースに対して高親和性。
・グルコースの再吸収の残りの10%を担う。
まとめ
Naイオン濃度勾配が小さくともグルコースを輸送できるSGLT-2はSGLT-1よりも輸送能が高い。
今回新たな血糖降下薬として期待される選択的SGLT2 阻害薬の作用機序
腎臓の糸球体で濾過されたグルコースが、近位尿細管のSGLT-2を介して再吸収される過程を阻害することで過剰な血糖を尿糖として体外へ排泄させる。
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
選択的SGLT2 阻害薬のメリット(他の血糖下降薬より優れた点)
☆インスリン非依存的な作用機序から、あらゆる既存の血糖下降薬との併用が可能であり、また単剤での低血糖リスクも低い。なぜなら、選択的SGLT2 阻害薬投与時はSGLT-2が完全に阻害されるが、SGLT-1を介するグルコース再吸収能(再吸収全体における10%)を残しているため。
☆尿糖排泄促進に伴い余分な糖質エネルギーの消失により、代償的に脂質の利用が亢進するので体重減少。しいては脂肪組織、特に内臓脂肪が減少する。
☆体重低下によりインスリン抵抗性の改善により、さらなる血糖降下に寄与する。
☆体重低下作用と血糖降下作用は必ずしも相関しないので、血糖低下作用が減弱する腎機能障害患者(腎機能障害→尿糖排泄能低下→尿糖再吸収抑制効果薄い→血糖低下の作用減弱)においても体重低下作用は維持される。
☆若干の血圧低下作用、トリグリセリド、尿酸の低下作用
☆脂肪肝の軽減や膵β細胞機能の改善が期待できる。
☆腎保護作用(糖尿病性腎症の原因の1つである腎糸球体での過剰濾過はSGLT-2を介したNaイオン再吸収がもたらす尿細管糸球体フィードバック機構が関与していると考えられるため。)
う~んと、高血糖→SGLT-2発現増加→グルコース再吸収に伴いNaイオンの再吸収もSGLT-2により同時に行われる。→尿細管内のNaイオン濃度減少→濾過量の増加のループで過剰濾過になるって事かな?
なんかメリットばっかりだが、デメリットもあるはず。
選択的SGLT2 阻害薬のデメリット
☆多尿・頻尿、尿路・性器感染症
☆腎機能障害患者では尿糖排泄能の低下によりHbA1c低下作用の減弱。
あんまりデメリットはなかったです。。。
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
その他のSGLT2にからむ豆知識としては
健康人では、糸球体から近位尿細管へ流入するグルコース濃度が低いため、SGLT-2を介したグルコース再吸収能は余力を残した状態にある。一方、高血糖状態が続くと腎臓におけるSGLT-2の発現が増加し、グルコース再吸収の亢進が示唆されている。
ちなみに糖尿病モデル動物において、腎皮質でのSGLT-2の発現は正常動物と比較して1.3~4.8倍に増加している。また2型糖尿病患者と健康人と比較してSGLT-2の発現は4倍に増加し、このときグルコースの取り込みは約3倍に更新する事が報告されている。
この一見不要に思えるグルコース再吸収システムは、昔の飽食時代以前では重要なエネルギー源であるグルコースを逸しないための効率的なシステムであった。
このグルコース再吸収システムも高血糖下でSGLT-2の発現が無尽蔵に増加することはなく、閾値を超えるとグルコースは再吸収される事なく体外へ排泄される。
ヒトでの腎臓におけるグルコース再吸収システムの閾値は、血糖値180~200mg/dl程度との事。これ以上の余分なグルコースは尿糖として体外に排泄される。
以上、選択的SGLT2 阻害薬について頂いた資料からまとめてみましたが、画期的すぎて糖尿病ではないですが、体重減少の効果を期待して飲んでみたくなりました。
危惧する所は性器・尿路感染症ぐらいで、他は副作用も気にならないしインスリン分泌に関係しないんで肥満にも使えるんじゃないかと思ったりします。
薬剤師 ブログランキングへ
この記事へのコメント
1. Posted by 履歴書の書き方の見本 2014年05月22日 10:08
とても魅力的な記事でした。
また遊びに来ます!!
また遊びに来ます!!
2. Posted by 通りすがり 2014年05月27日 14:12
SGLT2で検索していてひっかかりました。
期待の大きい薬ですが、まだわからないこと・わかっていないことが多いので、最初は限定的な適応で慎重にとの意見があります(URL参照)。
欠点は
●腎機能に依存するので、腎機能低下患者には使えない
推算糸球体濾過量(eGFR)が30~60mL/分/1.73m2(中等度)には「投与の必要性を慎重に判断すること」、30未満(重度には「投与しない」。
●浸透圧利尿で体液量が減少→口渇や脱水などが起きやすい
が挙げられていました。
期待の大きい薬ですが、まだわからないこと・わかっていないことが多いので、最初は限定的な適応で慎重にとの意見があります(URL参照)。
欠点は
●腎機能に依存するので、腎機能低下患者には使えない
推算糸球体濾過量(eGFR)が30~60mL/分/1.73m2(中等度)には「投与の必要性を慎重に判断すること」、30未満(重度には「投与しない」。
●浸透圧利尿で体液量が減少→口渇や脱水などが起きやすい
が挙げられていました。
3. Posted by マコト 2015年10月17日 00:38
初めて処方されました。
仕事にならないくらいおしっこが出る
倦怠感がヤバい。
仕事にならないくらいおしっこが出る
倦怠感がヤバい。