2009年04月27日
ラム酒の魔境に迷い込む
こちらのタフィアは前回の記事で書いた渋谷にあるBar Sol Cubanoで紹介していただいたBarだ。ラム酒がとても豊富で、南米音楽が流れる空間は非常にゆったりとしていて居心地が良いということだった。僕は早速ヒルズで腹ごしらえをしてから西麻布へ向かった。
西麻布は私にとって不慣れな場所だ。全く行かないというわけではないが、行くときは大抵深夜になっている。さらに、地理は先輩に任せてタクシーで行くことがほとんど。だから方向感覚には自信のある僕でも結構迷ってしまう。タフィアの場所も最初は良くわからなく、店の前を何度も何度も往復してしまった。ひっそりとした看板を見逃すとそこがBarだと中々気づかないので、初めて行く人は細かな番地まで調べてから行くことをお勧めする。
店に入ると一人の若者が南米ジャマイカのビール、レッドストライプを飲んでいた。若い女性のバーテンダーさんがカウンターに案内してくれて、私は一番端の席を選んだ。正面にはやや奥行きが深くて小ぶりなバックバーがあって、ラムのボトルがびっしりと並んでいる。カウンターの下にも色々とラムがあるようだ。

レッドストライプ ジャマイカ瓶355
メニューが無く、どんなラムが飲みたいか感じを言ってもらえればお勧めを色々と出してくれるということだった。僕はまず最初に一番はまっているマルティニーク島のラムを2杯飲み、そろそろ違った種類のものが飲みたいなと思い始めた。そこで、これまで何となく敬遠していたホワイトラムで何か面白いものをオーダーすることにした。
僕がホワイトラムをこれまで飲んだことが無かったので何かお勧めのものがあればそれを飲みたいと言うと、若い女性バーテンダーの方がとても喜んでくれた。彼女曰く、ホワイトラムの魅力はラム好きの方でもまだまだ未開拓な人が多く、是非ともその世界に足を踏み入れて欲しいということだった。そこで彼女が出してくれたのが写真のRhum Bologneだ。
このBologneは私がダークラムにはまったマルティニーク島の近くのグアドループ島で作られている。海の香りと深く重い甘味から「ホワイト・ラムの王様」と称されているようだ。雑味が少ないがコクがあり、美味い酒だ。彼女が飲んだ初めてのホワイトラムもBologneだったようで、あまりの美味しさにその後彼女は自宅にBologneのボトルを常備して寝酒としても活用しているとのことだった。僕はせっかくなので今日はこの後もホワイトラムで〆ようと思った。
そんなこんなでかれこれしていると店主の女性がお店にやってきた。それと時を前後してお客さんも増え始めた。私はBologneを飲み干して次もまたお勧めのホワイトラムをもらうことにした。そこで出してもらったのが写真のRHUM BLANC DU PERE LABATだ。何でもラム好きの心をわしづかみにして離さないほど愛好者が多いラムらしいのだが、口に合わない人には合わない個性の強いラムだということだ。まずは一口飲んでみる。想像していた味とは全然違う味だ。一体何なんだこの味は?いろんな種類の何かが複雑に交じり合っている。そのどれもが個性的で口の中で主張する。飲み干すとじんわり喉もとが熱くなる。度数が59度もあるという以外の作用もはたらいていると思われる。
僕はグラスを手にとってもう一口飲んでみる。やはり一口では理解できない何かがたくさんある。僕は急に酔っ払いだした。
すると店主の女性が話しかけてきた。彼女はボトルを手にとってまじまじと眺めると、「素晴らしいラム酒です」と言った。僕は正直に、「ラムを飲み始めたのが最近で、PERE LABATは今まで飲んできたラムとは全く違う何かをはらんでいて、まだ体の中ですんなり受け入れることはできない」と言った。彼女はそれを聞いて、「このラムは人によって両極端なんですよ」とポツリとつぶやいた。
後で聞いたところによると、このPERE LABATは造り方もわが道を行っていて、仕込水は雨水で、その桶には葉っぱやら蚊やらが浮いているらしい。その浮遊物を蒸留所の人が素手でかき集めて捨てて、それで綺麗にした(?)仕込水を釜に入れて作るらしい(本当か?)。加水する水の量も目分量で、近世以前のような手法で作られているとのことだ。
色々な原料や独創的な作り方を総合するとあのような不思議な味わいのラムになるのだろう。僕はまだ純粋にそれをおいしいとは言えず、今回はラム酒の魔境に迷い込んだような気分だ。そんなPERE LABATも昨年、蒸留所が大資本に買収されて、現在では設備を最新式のものに入れ替えているらしい。それを聞くと、PERE LABATの味わいがやっとわかるようになった頃に、もうあの頃のそれには出会えないような気がしてなんだか惜しく感じた。
| 採点:★★★★ |















