うちに、寄せては返す波に足元の砂が削られて、海に引きずり込まれていくように感じた。
 遥も隣でジーンズをまくり素足を浸していた。遠くを見つめながら深呼吸する彼につられ、澪も思いきり両手を上に伸ばして深呼吸して、潮風と細波を受けながら全身でこの風景を感じ取る。
「ねえ、あの国ってここから近いんだっけ劉芷欣醫生?」
「この前の出入り口は船で数十分のところかな。国がどんなふうに広がっているのか知らないけど、もしかしたらこの真下にも続いてたりするのかもね」
 この直下で暴発が起これば、間違いなく島の一部が破壊されてしまう。集落の真下なら惨劇になるだろう。もっともあれほどの暴発はめったに起こらないらしく、可能性はほとんどないだろうが、澪はついその光景を想像してしまいゾクリと身震いした。

「遥さん、澪さん!」
「あ、おはようございます」
 道路の方から声を掛けられて振り返ると、きのうから世話になっている宿の主人がいた。ふらりと散歩にでもやってきたのだろうか。手ぶらでサンダル履きというラフな格好をしている。彼はニコニコと人懐こい笑みを浮かべながら、砂浜へ続く石段をゆっくりと降りてきた。
「のどかに見えると思いますが、海には気をつけてくださいね。天候が良くても、急に高波が来ることもありますから。それほど頻繁にあることではないのですが、一週間ほど前にそういう高波が来たばかりですし……幸い、夜だったのでもいなかったのですが」
 澪と遥は互いに目を見合わせた。一週間前の高波というのは、おそらく澪たちがあの国に行ったときに起こったものだ。メルローズの魔導の暴発か、溝端たちのミサイル攻撃か、そのどちらかが原因ではないかと容易に推測できる。
 遥が砂浜へ上がっていく。
 澪も水しぶきを上げながらすぐにあとを追った。踏みしめた白砂のあたたかさにほっとしつつ、遥とともに宿の主人の方へ向かう。
「それで、きれいなところなのにあまり人がいないんですね」
「いえ、それはそもそも観光客が少ないから