2012年05月

防衛大臣の機能不全を改めよ

防衛大臣が参議院での問責決議を受け、大臣として機能できない状態になっている。6月2・3日にシンガポールで開かれるアジア安全保障会議にも、野党の反対もあり出席を見合わせるとのことである。

この会合には、アジア太平洋諸国を中心に30カ国の国防大臣が出席し、同時に関係諸国との2国間協議が行われる場でもある。

現在のわが国の安全保障環境は、北朝鮮の核・ミサイル開発への対応、中国の戦力増強への対応、さらに米軍再編に伴う沖縄海兵隊の移転問題など多くの問題を抱えており、会議に参加する意味は大きい。

このような時期に防衛大臣が機能を発揮できないのは由々しき事であり、民主党が笑われるだけではなく、国が笑われる結果になることを考えておかなければならない。

田中防衛大臣は、「防衛省としての業務が停滞しているということは一切ございません」と言っているが、相当に停滞していると認識しなければならないだろう。

他方、防衛大臣は防衛行政を司る閣僚であると同時に、「陸海空の三自衛隊の指揮官」としての任務をもっている。

総理大臣の命を受け、自衛隊を直接指揮する指揮官としての任務である。

その下で、自衛隊員は日夜黙々と自らの職責を果たすために訓練している。勿論、防衛出動や治安出動、災害出動などに備えるためであり、政治情勢がいかに混迷しようとも、そのことは変わらない。

防衛大臣がその機能を十分に発揮できないという事は、25万の隊員の士気に大きな影響を及ぼしている。

指揮官として防衛大臣の職責をしっかりと認識し、機能不全な状態を速やかに改善しなければならない。それは防衛大臣の努力と同時に総理大臣の努めでもある。

民主党内のゴタゴタに乾坤一擲の思いで臨む前に、処置すべき事ではないのか。

(松島悠佐)

韓国企業が北方四島択捉島で港湾事業開始

  新聞報道では小さな記事だが、529日の読売に「韓国企業が択捉島で港湾事業開始」と報じている。

わが国の基本的な立場は、「北方四島における第三国の経済活動をロシアが許可する事は、あたかも当該地域の管轄権がロシアにあることを示す事になり、わが国としては容認できない」として、再三にわたって申し入れを行なってきた。

今回も、山根外務副大臣がモスクワでモルグロフ外務次官に申し入れを行なっているが、何時ものように結果は無視されているようである。

ロシアとの交渉においては、力を背景にして、長期的にかつ一貫した姿勢を貫く事が必要であり、力がないとロシアは見向きもしない。(「極東ロシアの軋轢」参照)

ロシアに限らず、国際社会での交渉は皆同様であり、話し合いをいかに重ねても、約束を強制出来る力がなければ何の意味も成さない。

シリアの事態も同様である。

平和ボケと言われるわが国では、「盟約は剣なくして何の意味もない」と言ったトーマス・カーライル(Thomas Carlyle,1795~1881、英歴史学者)の言葉を、事あるごとにかみ締めなければならないだろう。(松島 悠佐)

日本戦略研究フォーラム主催の討論会

  5月24日(木)午後、日本戦略研究フォーラム主催の討論会に当研究所代表 松島悠佐が出席しました。

主題は「東日本大震災」についての教訓から、災害派遣と本来任務、統合のあり方、米軍との協同など多岐にわたり、非常に有効な討論でした。メンバーは阪神淡路大震災で指揮を執った松島悠佐元中方総監(当研究所代表)赤星慶治元海幕長、田母神俊雄元空幕長及びまとめ役の山根峯治氏で、オブザーバとしてDSI副代表 島本順光が参加しました。

いずれも実体験を持つ論客ですので、2時間以上にわたって熱心な討論が行われました。詳細は後日「日本戦略研究フォーラム」から冊子が発行される予定です。

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 (写真左から松島元総監、奥、田母神元空幕長、山根氏、手前、赤星元海幕長)

金環食

平成24年5月21日午前7時前後、我が国は「金環食」に沸いた。

東京でも、雲の間に、あるいは薄雲を通して「金環食」が見えた。

わずか数十分であるが、NHKはじめ主要テレビ局もトップニュースで報じている。

わずか数十分であるから、我が国の国民は大きく反応するのであろうか。

  東シナ海の尖閣諸島周辺、日中中間線付近のガス田開発、わが国の領土内で進む用地買収や、企業買収。それらは雲間に見えた「日食(日蝕)」である。見えないところでは、どのような日蝕が進んでいるのかさえ分からない。

しかし、この「日蝕」は、部分的にしか見えていないにせよ、長い年月をかけて確実に進んでいるということは明白である。

  巨大な経済規模と人口、そして軍事力をもつ隣国「中国」、長期戦略に基づくその弛み無い「日蝕」に我が国国民全体が気付き、対応を図るべきである。

台湾の馬 英九総統は昨20日の記者会見で、経済的関係については、より中国との関係を強めるが、政治的には慎重に一線を画する旨の発言をしている。

我が国も経済的には中国とすでに深い関係にある。しかしこれは相互に必要とする関係であり、中国にとっても我が国は最重要国の一つである。ただ、「市場」として中国を考えている国とは違った関係にあると考えられる。

しかしながら一方で中国は言うまでもなく「共産党一党独裁政権」が運営する国家である。我が国とは国家体制を全く異にする国家である。したがって、政治的な関係では明確な一線を認識し、政治、軍事などについては警戒心を持って接すべき国家である。

  そうでなければ、わずか数十分で終わる「金環食」ではなく、長期(永久)に及ぶ「部分日蝕」から「皆既日蝕」になってしまうであろう。いや、もうすでに「部分日蝕」は進んでいるのであるから。

(尖閣諸島周辺の事情については当研究所発行の「尖閣諸島が危ない」を、ぜひご覧いただきたい。)

 (島本順光)

FX(F-35A)の6月契約に関して

昨日(5月10日)、防衛省が次期戦闘機FXとして昨年末に選定した米国製F-35Aを取得するための契約を、この6月に実施する旨の報道があった。

このHPの論文欄に詳しく述べているが、F-35Aは現状で既に一機120億円(記事では42機購入で一機あたり190億円と計算)を上回ることが確実である。にもかかわらず、24年度予算で認められた一機あたり89億円での取得を目指しているとのことである。
 さらに、開発と並行して生産をしているため、2016年度に取得予定の4機は、開発完了していない。言い換えれば運用するためには改修が必要な機体である事がほぼ確実である。しかも、この改修は、我が国で実施できない公算が高く、米国へ搬送しなければならない事態が予想される。その場合の改修費用などを考えれば、天井知らずの値段になってしまいかねない。さらに、このようなことから必要とする年度には間に合わないのは必定である。

 しかも、この契約はFMS(有償軍事援助)契約であるので、我が国は米国の内容(価格、納期等)変更などに対抗できない。

F-35Aは第5世代の戦闘機で、先進技術を駆使したすばらしい機体である。計画がスムースに進めば我が国の航空防衛力は向上するし、米国との関係も良好な方向に向かうであろう。

しかし、現状を見る限り、決して計画通りに進むとは思えない。価格も大幅に上回ることがほぼ確実である。また、重要な要素である我が国の防衛産業への寄与が非常に少ない。

解決策として、論文に示したように、米国が約束を守れない場合の予備として、同じくFX候補だった、F/A-18Eを購入することを米国に認めさせ、防空網に穴が開かない方策を講じるべきである。
  (島本順光)
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