eco 一部で注目されていた林紘一郎編著『著作権の法と経済学』(勁草書房)を入手。まだザーッとしか目を通してません。自分が学んできた経済学が音楽でこれだけ役に立つとはあんまり考えなかったな。

 消尽理論の経済分析では、裁判所の示した消尽理論の根拠の妥当性を著作者の利潤最適化の観点から指摘している。
 経済学ではありがちなことだが、今回の消尽理論の分析でも簡単な前提条件のモデルで分析しているので、現実とは乖離しているところがあるのは否めないが、このような研究が必要ないということではなく、むしろ有用なのだ。社会科学という実験ができない学問においてモデルの設定はとても重要。
 今回の場合では、著作者である生産者が1人であるという仮定に立っており、著作者間には競争がないということが想定されている。もちろん隣接権者もなしという仮定。しかし、ここでの著作物は譲渡する過程で品質に違いはないということを前提としているから、著作者は転売市場の影響を受けるので実質的には独占者ではない(競争にさらされる)というように仮定されている。
 そうした際の、著作者が自ら著作物を販売した市場と転売市場の両市場を同時に考慮した際に著作者がとる行動の最適化が分析されている。細かい内容については本是非読んでほしいけれども、消尽理論の法と経済学の部分は基本的な経済学もしくは数学の知識が必要。しかし、それ以外のところはそうでもなさそう。

 「インセンティヴ論の経営学:音楽著作物生産の協働体系」「音楽著作物流通と集中管理の可能性」といった論文からは、得るべき部分がありそう。両論文は1967年生まれと1970年生まれの2名がそれぞれかかれている。特に「インセンティヴ論の経営学:音楽著作物生産の協働体系」の方では、昨今のメディア環境下においての音楽著作物の生産にかかわる問題を経営学のインセンティヴの概念を援用して検討されていて、流し読みだが面白そうだ。経営学の最初歩の話が出てきたりして、グレイトフル・デッドやリンプ・ビズキット、アラニス・モリセットなどという固有名詞の中で経営学の話を読むのも面白い。