2006年12月26日

オマール海老の逆襲

久しぶりの更新です

忘年会、クリスマスの忙しさも落ち着き

通常のロベール・デュマに戻り、年末のオードブル料理まで

ホット一息なシェフです。


クリスマス期間中、若き恋人たち、ご夫婦、ファミリーから

男性カップルまで?

ご来店誠にありがとうございました





今回のクリスマスメニューの中で、

沢山の活オマール海老を使用したのだが

夢を見てしまった

オマール海老の大群が襲ってくる夢を

もう一つ、こんなことも




えびちゃんはもえがお好き?



2006年12月03日

レアなRMと小さなグランメゾン

近頃レストランでもワインショップでも頻繁に耳にするようになった

RM(レコタン・マニュピラン)
  自社ブドウのみからシャンパーニュを造る
  小規模生産者

大手メゾンの特性が、収穫地、収穫年の違うブドウで造った

ワインを混醸するというブレンドの安定感にあるのに対して

土地や畑、品質、造り手の個性がはっきり表れた味わいが

魅力だというRM


デュマにも僅かながらあります

その筆頭が、個人的にも好きな「ジャック・セロス」


カリスマ的人気の「ジャック・セロス」

ジャックセロス

















左から
ジャックセロス シュプスタンス
 JACQUES SELOSSE SUBSTANCE


シュブスタンス(=本質)という名を付けられた、
ジャック・セロスのフラッグシップ的シャンパン!

独自のソレラシステムにより醸造されるNVシャンパンで、
ジャック・セロス最高の原料ワインと言われる
アビーズ産のシャルドネを使用しています
生産量は250ケース(1500本/1ケース6本)


ジャックセロス ロゼ
 JACQUES SELOSSE ROSE


年間350ケースと少数しか生産されていない、
シャンパーニュ通の垂涎の的

ピノノワール種の赤ワインとシャルドネをブレンドして造られていて
ピノノワールにはウーリエのピノノワールを使用している
高次元でバランスの取れたロゼと呼び声も高く、
シャンパーニュのロゼでも屈指の逸品として、大変な人気がある

アンセルムは「このワインは非常にデリケートで特に光に弱く、
セラー保管する際には照明を当てないように
ボトルに紙を巻くか箱に入れて保存してほしい」と言っている


「派手な宣伝を行わないため、
      知る人ぞ知る存在の小さなグランメゾン」


ジャクソン
   キュベ #730

   グラン・クリュ・アヴィズ 1996



1798年以来、200年以上の歴史と伝統をもつメゾンで、
古くはナポレオンに寵愛されたシャンパンとして、
ナポレオンの結婚式においてジャクソンのシャンパンが振舞われ、
ナポレオンがメゾンを訪問した際には、その素晴らしさを讃えて、
メダイユ・ドール(メダル)を贈ったほどだという
また、ジョセフ・クリュッグも、ジャクソンで修行した後、
自身のメゾンを設立したという歴史がある


今や、トップクラスのメゾンとして知られるジャクソンは、
世界のトップクラスのソムリエ達が選ぶ
「世界No.1ソムリエが選ぶ2002年度ワインガイド」において、
No.1メゾンの栄光に輝き、また「ゴー・ミヨ」2005年版では、
エグリ・ウーリエ、ジャック・セロスといった
トップクラスのRMと並ぶ評価を得るなど、
その素晴らしさはヨーロッパの数々の専門誌も認めている実力派


「サロンのシャンパーニュは
   しばしば“幻”という形容がされるくらいの希少品で、
                 世界中の愛好家垂涎の的」

 
    SALON サロン 1990
 
                1995



サロン社で生産されるシャンパーニュは、
原料は白ぶどうの産地コート・デ・ブランの
グラン・クリュ100パーセント格付けの最上質のシャルドネ種のみを用い
黒ぶどうであるピノ・ノワール及びピノ・ムニエ種は使用していない
そしてヴィンテージ表示をする
これは、単一の生産年のぶどうのみで
シャンパーニュを仕上げるということに他ならなく、
高緯度にあるこの地方では至難の業
そのため、サロン社が1911年に生産を始めて以来毎年製品を
送りだせたわけでなく、よい年に限って製品化しているため
現在の時点でわずか32・33?(ちょっと忘れました、調べておきます)
ヴィンテージしかつくられていない



サロン社、ドゥラモット社社長
ディディエ・ドゥポン氏


4年程前(2002年頃)に「サロン」の1995年がリリースされ

輸入元のラック・コーポレーションは

サロン社とドゥラモット社の社長を兼任する

ディディエ・ドゥポン氏を招き、

金沢、東京、仙台、などで95年産のお披露目試飲会の開催があった

リリースされた95年産とともに

90、88、85、83、82年のボトルが開栓され、大変貴重な

体験をさせていただいた記憶がある


サロン社長、ディディエ ドゥポン氏は
『特別な人と飲んでほしい』と言っていたのが印象的であった


dumas_1996 at 16:29|この記事のURLComments(1)TrackBack(0)お酒 

2006年12月01日

シャンパーニュでやけ酒

今年も残すところ後一ヶ月

年頭にその歳一年の目標を設定するが

今年も到達できないまま終わってしまいそうだ

年初めに、自己啓発本を読みあさり、

「よし今年こそは」と意気込むが

果たせない目標を設定する空しさがここ何年も

続いているような・・・・・・・・・・・

一層のこと来年からは、夢に日付をいれずに

「人生成り行き次第、運を天に委ねてみるか」と

思う今日この頃

この無念さを晴らすため

「さあ、今日はシャンパーニュでやけ酒だ」

    ちょっと待てよ!

シャンパーニュではピンと来ないな

やけ酒のイメージは、焼酎、日本酒又は度数の高いテキーラ?

やはりシャンパーニュは知的に、優雅にといきたいところ

               (すこし話の展開が強引すぎたかな?) 


バブル(泡)人気の到来なのか!?

そんな気にさせる最近のシャンパーニュブーム

店でもシャンパーニュは人気である

シャンパーニュ一本だけでコースを通される方も時々いらっしゃる

一口にシャンパーニュといってもさまざまな種類がある

大手メゾン(NM)、RM、ノンヴィンテージ、ブラン・ド・ブラン、

グラン・クリュ ets


ロベール・デュマにもあります、数々のシャンパーニュが

ちょっと覗いてみますか、デュマのシャンパンリストを!



グラン・キュベ・シャンパーニュ

左から

ポル・ロジェ 
 キュベ サー ウィストンチャーチル 1995


英国の政治家ウインストン・チャーチルを称えて造られた、
キュヴェ「サー・ウィンストン・チャーチル」は、一番良い畑の一番良い葡萄から
最高のヴィンテージの年にしか造られない、最高級のシャンパーニュ

アラン・ロベール メニル・トラディション 1986

明るく輝く薄い金色。これがシャンパーニュ界最高級の色合いなのかと、
しげしげと見つめることしばし
木目細かい泡がシャンパングラスに舞い上がっている
香りにはムルソーを思わせる燻し香、バター香などが優雅に立ち込め
時間と共にカラメル香も身体をくすぐってくる
口に含めば、すっきり滑らかな泡、この軽さは爽快であり
軽いのに深い味わいと長い余韻このアンバランスさに思わず絶句する

クリュグ クロ・ド・メニル 1990

クリュグ ヴィンテージ・シャンパーニュ 1985

     
     
クリュグをこよなく愛する人を称してクリュギストというが、
世界三大クリュギストは
「ココ シャネル」「ヘミングウェイ」「マリア カラス」という
また、「シャンパンでこれぞ極め付きの一本を選んでもらうとすれば、
それは多分クリュグになるだろう」……山本博「シャンパン物語」にもあるように、
シャンパンの第一級品といえば何をさておいてもこの「クリュグ」になるのだろう



大手メゾンシャンパーニュ
     ノン・ヴィンテージ
 
国内でもよく目にする大手の生産者

NM=ネゴシアン・マニピュランと呼び、自社畑だけでは必要なブドウを

賄いきれず、他の農家からブドウを買い入れている

ノン・ヴィンテージとは収穫年の記載されていないシャンパーニュ

複数の異なるヴィンテージの原酒をアッサンブラージュ(ブレンド)

しているため、ヴィンテージュがつかないシャンパーニュ





次回はここ最近注目のRM=レコタン・マニュピュラン

自家畑栽培のブドウを使ってシャンパーニュ造りを行う

小規模生産者のレアなシャンパーニュを紹介します

dumas_1996 at 16:31|この記事のURLComments(0)TrackBack(0)お酒 

2006年11月24日

ランジス市場の思い出

トントントン、トントントン

「起きろイデ、行くぞ」 

ドアの向こうから統括シェフの大きな声がする

イデとは当時のあだ名である

ある11月の早朝4時、辺りはまだ真っ暗である

眠い目をこすりながら急いで仕度をし、4t車の助手席に乗り込む

目的地は約100km離れたランジス市場である

約1時間半かけての食材の仕入れである


フランスでの最後に働いた、パリから120km程南下した

小さな町 ジョワニー

オーナー・シェフ ミッシェル・ローラン率いる
(現在は息子のジャン・ミッシェル・ローランに交代し
 父ミッシェル・ローランは引退し、ワイン造りに没頭)

レストラン「ラ・コート・サンジャック」

若い見習いの料理人が交代で、仕入れの荷物持ちをする

早朝4時出発、眠い、寒い、そして毎回シェフに叩き起こされる

15歳から料理人をやっているという、統括シェフの名前は・・・・・?

失礼ながら忘れてしまった

前日の夜12時まで一緒に仕事をし、何時に寝たのか知らないが

朝4時には部屋の前に立っている

タフである、基礎体力が違うのか脱帽であった

最初の頃、緊張のあまり何も話せず、車中は基本的に無言

市場への道のりは長い長い1時間半、次第に慣れるにしたがって

会話もできるようになり、挙句の果てには車に乗り込むと同時に

寝てしまう始末


ランジス市場に着くのが5時半、いつもの市場内のカフェで

カフェ・オレを飲みながらクロワッサンをほお張り、

「さあ、行くぞと」とシェフのテーションはうなぎ登り

というのも訳がある

今回の最大の目的は今期初めての「ジビエ」の調達である

ランジス市場を簡単に説明すると、

パリの環状線(高速道路)の南約6キロに位置する
ヨーロッパ最大の卸売り市場である
世界一の規模だとする声もある
敷地面積232ヘクタール、建物面積55万平方メートルである

市場は、果物・野菜類、肉類、日常品、水産物類、園芸産物類の
大きく5つの部門に分けられている


冬のランジス市場は自分も初めてである

短い間だったが四季を通して、フランス人の肉食文化には、

フォアグラをはじめ、内臓類まで、だだ驚かされるばかりだったが

冬のランジス市場はその極めつけかもしれない

森林や野原に、自然の状態で生息していて、食する事のできる

野禽獣をフランス語で「ジビエ」という

毛皮や羽がついたままの鹿、野うさぎ、野鴨、キジ、山ウズラ

山シギ、そしてイノシシまでもが天井から吊り下げられている

日本では鳥の羽を剥がされた姿でさえ、

あまりお目にかかったことがないのに、

正直な感想は、その光景はあまりにも残酷

「本当にいいのかよ、こんな生き物を食べて」と・・・

しかしシェフは、野ウサギなどを見るとうれしそうにポンと撫で

次々と買い付ける

大きな荷台は、ジビエでいっぱい

その荷台を転がすのが自分の役目である

目を合わす事ができなかった

帰りの車中のシェフは一段とハイテーション、頭の中は

どう調理するかでいっぱいなのであるだろう

自分は?  「意気消沈」

その時、自分にとってのフランス料理はフランス人にとって

のフランス料理とは違うことがわかった

フランス人にとっては、いつもそこにあり、当たり前にある料理

自分にとってのフランス料理は、

意識して突進していかなければならない料理

奥が深いと感じた瞬間だった

そして


これが最初で最後の、真冬のランジス市場であった



2006年11月23日

ジビエの季節

いよいよジビエの季節到来

とは言っても、ここ2,3年店ではマニアックなジビエ料理は

作ってないかもしれない

以前は、野うさぎ、猪、ペルドロー(山ウズラ)など

ジビエの王道を好んでフランスから取り寄せ提供していた

得意分野だったはずなのに・・・・・・・・なぜだろう?

確かに,高価である

他に美味しいものがあるのに、どうしてそこまでして

日本で食べなくてはならないのか?というお客さんの指摘

迷いがある!



「そもそもジビエって何?」

飼育ではない、野生の獣と野鳥のことを指す

たとえば、野獣だと

Marcassin マルカッサン 猪の生後6ヶ月未満
 サングリエは成長した猪で、料理するには硬くてあまり使用されない

Chevreuil シュルブルイユ 鹿 
2歳のものがいちばん美味しいとされ、雄よりも雌のほうが
肉が柔らかく、脂ものっていて美味しいという
日本ではえぞ鹿が有名

Lievre リエーブル 野ウサギ
ジビエの代表 飼育の家ウサギの肉質が白身で淡白なのに対し
野ウサギの肉質はまったく異なり暗赤色で野性味に富む


野鳥類だと

Col−vert コルベール 真鴨
フランスでは「col=首,vert=緑」と名付けられた
日本でも通称「青首」と呼ばれる
フランス料理では、一番ポピュラーな存在である

Pigeon Ramier ピジョン ラミエ 山鳩
低木林や雑木林などに棲む野生のハト
肉質は脂がのっていて柔らかく、香がいい
個人的のも好きな食材である

Becasse ベカス 山シギ
ジビエの中でも第一級に位置づけられる
しかし、フランスでは数が激減したため、保護鳥の指定を受けたため
売買禁止、輸出入禁止となっている
よって現在は、フランスのレストランでベカスを食することはできない
(趣味で撃って、自分で食べることは許されているらしい)
日本に入ってくるベカスはベルギー産などフランス以外のものである

その他、ペルドロー(山ウズラ)、フザン(キジ)などがある

狩猟解禁日

日本では、北海道が10月1日〜1月31日
北海道以外の地域では11月15日〜2月15日
ヨーロッパでは国や地域によってまちまちで、
およそ10月から1月末くらいらしい

産地

輸入のジビエはほとんどがフランスのランジス国際市場から通してであるが
ただ、窓口がフランスであるということで、
ジビエのすべてがフランス産であるわけではないらしい
イギリス、ベルギー、ドイツ、オーストリア、ハンガリーなどから
フランスに集荷された上で日本に入ってくる



しかし、フランス人の肉食文化にはただ驚かせるばかりである

「ジビエ」

真冬の市場はその極めつけかもしれない

フランスの修業時代、最後に働いた「コート・サンジャック」という

レストラン

月に二回ほど、パリ近郊のフランスの胃袋、いや今では世界の胃袋

ランジス中央国際市場に食材の仕入れを手伝っていた


「ランジス市場の思い出」 次回に続く

2006年11月18日

愉快な酒豪たちのヌーヴォー祭り

恒例の「名前のないワイン会」のメンバーたちによるヌーヴォー祭り

今回は、M上氏が集めた自然派ワインが中心のボジョレー・ヌーヴォー


総数14本(内白2本)詳細はこちらへ

2006ヌーヴォー











ワイン好き者一堂に会し、新年を迎えるかのように

Happy  Beaujolais Nouveau

ワインが飲めること、健康であることに感謝を込めて

グラスを合わせる


結局、ヌーヴォーの味わいなんてどうでもいいのかもしれない

「仲間とワイワイ楽しめる、それがワインのいいところ

 言ってみれば、たかが酒

 おいしく飲めればそれでいいじゃない」とメンバーのM峠氏


しかし、よくぞここまで集めたものだ

M上氏のボジョレー・ヌーヴォーは

小売の酒屋さんでもこれだけは集めないだろう


お店でも時々、ワインコレクターに遭遇するが

常日頃、酒の揃ってる酒屋の売り場などこまめにマークしているほか

インターネットで探し、買いまくる

自分も珍酒なんか見つけると、時々買い込むが、

先立つものが乏しいので、一種一本程度、それも

ワイン仲間が集まれば見せびらかし、挙句の果て一緒に飲んでしまう始末

後はワインの名前だけが記憶に残るだけ

ところが本格派なるコレクターは少なくとも三本は買い込み

一本はワイン仲間に披露して飲み、一本は自分の飲み分

そして残りの一本は保存用にストックする

理想の買い方である

大きい声では言えないが、店では持ち込みも”OK”なのだが

そういうコレクターの一杯のおすそ分けを頂くので

ありがたいことに普段は飲めないような、

珍酒や古酒に接する機会が多くなる


結局、何が言いたいかといえば

 「珍酒、奇酒、古酒は大歓迎」

    いつでもどうぞ!



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2006年11月16日

シェフの遠足

ウィスキーフラスコにシングルモルトを満タンにし

ウィスキーフラスコ





電車に乗り込み、行って来ました

エリック・クラプトン ジャパンツアー

おぼしき「大人」たちの大群とともに

うーん。

周りを見渡しても、この空間に混ざっても全然違和感がない

40代、50代のおやじたちがゴロゴロ

これぞ”おやじロック”の真髄


クラプトンを知った青春時代、頼れるものはレコードと

中身の薄い音楽雑誌のみ

他の情報源が乏しい時代、ビデオもなく

たとえ来日公演があったとしても、行くには学生であったり

そんな過去の怨念が・・・・・・・・・・・

仕事を忘れ、家族を忘れ

時間とわずかな小金に融通が利くおやじになった今

時空を超え、昇華してきた







開演19:00、クラプトンのギターが鳴り響くと同時のスタンディング

終盤の「いとしのレイラ」、「コカイン」にはもう鳥肌が立ち

アンコールの一曲「クロスロード」では、

自らの思春期をむさぼり食うかのように、走馬灯の如し甦り

涙腺がウルウル

そんな感じの約2時間

このツアーに関わった人すべてに感謝です




コンサート終了後、大阪城ホールからの道程なんてまるで

おやじサラリーマンたちの“帰宅ラッシュ”のようであった




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2006年11月13日

スカボロー・フェアを聴きながら

村上春樹ワールドが好きだという

素敵なご婦人から、一冊の本を頂いた

「もし僕らのことばがウィスキーであったなら」 著者 村上春樹

もちろん、名前は知っている

ノーベル文学賞の候補の1人と目されたことについても知ってる

だが、今まで一度も彼の作品は読んだことがなかった


なんとも摩訶不思議なタイトル

「もし僕らのことばがウィスキーであったなら」

フォト&エッセイ集

村上春樹氏と奥さんによるウィスキー探訪記である

スコットランドのアイラ島というシングル・モルト・ウィスキーの生産地と、

アイルランドにおけるパブを訪問した時の記録

この本の冒頭、「前書きのようなものとして」の中に

「僕らはことばがことばであり、ことばでしかない世界に住んでいる
 僕らは全てのものごとを、何か別の素面のものに置き換えて語り、
 その限定性の中で生きていくしかない
 でも例外的に、ほんのわずかな幸福な瞬間に、
 僕らのことばはほんとうにウイスキーになることがある
 そして僕らは
 いつもそのような瞬間を夢見て生きているのだ。
 もし僕らの言葉がウイスキーであったらな、と。」

他の作品も読んでみたくなるような

なんともカッコいいセリフではないか

これが村上ワールドなのか?  


本文の中で、一番興味深かったのは、

アイラ島の牡蠣は大変美味であったとある
「生臭くなく、小ぶりで、潮っぽい
 つるりとしているが、ふやけたところがない
 そこにシングル・モルトをかけて食べると旨い
 それがこの島の独特の食べ方なんだ
 一回やると、忘れられない

 牡蠣の潮くささと、アイラ・モルトの個性的な海霧のような煙っぽさが
 口の中で和合する、これがたまらなくうまい 至福である

 人生とはかくも単純なことで、かくも美しく輝くものだ」
 
村上春樹氏も絶賛していた

早速、店でまったく同じ事を試してみた

アイラのシングル・モルト「ボーモア15年 マリーナ」と
牡蠣は国産だが「宮城県気仙沼、三陸牡蠣」


ボーモア














殻の中の牡蠣にモルトを垂らし、そのまま口に運ぶ

殻の中に残った汁とモルトの混じったものを、ぐいと飲む

「美味しい、確かに美味しいんだが・・・・・・・・・・・」

何かが足りない、レモンを絞ってみたがダメである

本文の一節で

「ウィスキーの味にはその地方の風土や気候といった

“雰囲気のようなもの”が

 大きく影響してくるということが感じられた」
とある

その土地の特産物はその土地で味わうのが一番美味しいのかもしれない

フランスでもパンやワインはその土地独特の“素朴な美味しさ”があり、

そしてその“美味しさ”を作るのは、職人の郷土に対する誇りと、

その積み重ねによる“伝統”なのだろうという気がした


結論、同じ味を求めるのであるならば、アイラ島に行くしかない


この本を読んでいる最中に

サラ・ブライトマンが歌う「スカポロー・フェア」が流れてきた

なんだか不思議と溶け込む

ご存知、サイモン&ガーファンクルの名曲であるが

元々はスコットランドに伝わる民謡だというではないか

納得!

手軽に読めた作品であるが、味わい深い一冊でもあった


「もし僕らのことばが村上春樹であったなら」

あっ〜 もっと世界が広がるはずなのに


dumas_1996 at 16:22|この記事のURLComments(0)TrackBack(0)お酒 

2006年11月08日

職人魂

11月7日、日本海側でいっせいにズワイガニ、香箱ガニが

解禁となった

解禁日はシケのためか、例年以上に高値で取引されたらしい

聞くところによると、最高値はやはり福井県三国港の越前ガニ

初セリの価格は4杯でなんと10万円近いというではないか

ご祝儀相場とはいえ・・・・・・・・・・「ハァ」、ため息が出る

価格が落ち着いても1万5000円前後もする越前が二は最高級品


「ズワイガニのちょっと豆知識」

この時期になると、輸入ものなど地元産以外の生ガニが地方ガ二の顔をして
出回り始める
本物を見分けるには、足についているタグも一つの手段となる
福井、黄色のタグ
石川、青色のタグ
富山、白色のタグ
京都、緑色のタグ

県ごとに色分けされ、一般的にタグを付けたまま茹でられ、
お客さんの前にも出される

越前が二は福井県沖で獲れるズワイガニの名称
山陰地方は松葉ガニ
石川県産にも最近ブランドの名称が付いたらしいが?

雄をズワイガニ、雌を香箱ガニ(セイコガニ)
漁は底引き網漁、解禁日は11月6日〜3月20日
香箱ガニは産卵期にかかる1月10日から禁漁となる



(気が付いたのがすでに遅し、食べた後の写真)


昨日、初物を食した

例年この時期に訪れるのが、小さな名店、尾山町の「つる家」である

その日の最高の食材を食べてほしいという、店主の藤田氏

以前に印象に残った言葉に

「これはいいと思った食材は即買え、買って後悔して
 その繰り返しでものの見る目ができてくるんや
 なによりも素材が大切
 だからこそ見極める目が料理人には必要」と

氏の料理には、素材の持ち味を生かそうとするほど、

器の上はシンプルで、削ぎ落とされていき

計算され尽くした包丁使いなど、職人の技が積み重ねられている

「おいしい」の向こうに「なぜ」を感じ、食べに行くことが楽しくなる

藤田さんと


















そんな藤田氏も70歳近くになり

「後何年、続けられるか」と言うが・・・・・・・・

残念ながら後継者はいない

まだ一度も、っていう方はぜひ

ランプが燃えてるうちに
藤田氏の職人魂を食してほしい






2006年11月01日

アンダーグラウンド

店のお客さんと会話をしていると、

いちばん白熱する話題はやはり食べ物かもしれない

(当然といえば当然なのだが)

高級料亭、お寿司屋、イタリアン、フレンチだけでなく

安くて美味しい居酒屋まで、さまざまな情報を頂ける

「シェフ、○○寿司のお寿司が美味しいんだけど行ったことある?」

「まだないですね」と答えると

手帳を破いて住所とご丁寧に地図まで書いて教えてくれたりするが

ここだけの話、きれいに折りたたんでポケットにしまい込むだけで

まず生かしたことがない

しかし先日、食の快楽追求に関してはひじょうにマメなH氏に

なんだか気になるお店を紹介してもらい覗いてみた

「料理も美味しく、ロックも見ることができる」というお店

ロック居酒屋(勝手に付けさせて頂いたが) 「うまいぞいや哲」

一風変わった店名が気に入った

場所は新天地の奥にある、中央美食街のいちばん奥

暖簾を振り分け「ガラガラ」と戸を開け店内に一歩踏み込むと

そこは70年代にタイムスリップしたかのような錯覚に陥る空間

キング・クリムゾン、ピンク・フロイド、レッド・ツェペリンなどの

ロック好きにはたまらないポスターが天井や壁一面に張られていて

カウンターのみの小さな店だが、自分が座った後ろの棚には

映画やロックDVDがところ狭しと並べられている

ここは店主とお客たちが長い年月をかけて練り上げてきた店であろう

40代半ばと思われるお客さんが、72年頃の「シカゴ」のライブ映像を

食い入るように見ながら「この頃、僕はね・・・・・・・・・・・」と

青春時代を懐かしむかのように店主との会話を楽しんでいた


さて、肝心の料理は

なかなかどうして、新鮮なものを仕入れてるではないか

酒場定番料理はもとより、あん肝、香箱がに、刺身も豊富

山葵は、本山葵を鮫皮で擦っていた

あなどれないぞ、ここの店主は! 次回ゆっくり料理を堪能してみよう


アンディ・ウォーホール












アンダーグラウンド

辞書で調べてみると

「アングラ=地下の意の「アンダーグラウンド」の略
商業性を無視し、独自の主張をする前衛的で実験的な芸術、作品」

と記されている

派手さはないが、存在感があるいぶし銀のような

今では貴重になってしまった酒場であるかもしれない

ここはまさしく、おやじたちの美食のアンダーグランド酒場

ちょっと壷にはまりそう



dumas_1996 at 23:17|この記事のURLComments(0)TrackBack(0)酒場