2009年06月17日
レスラー
一世を風靡した人気レスラー、ランディ・
ラム・ロビンソン。しかしそれは20年も
前の話。年老いたランディは、衰えた
身体に鞭打って現役を続けていた。
しかし試合の後、ランディは心臓発作
で倒れてしまう。バイパス手術で一命は
取り留めたものの、医者からはプロレス
を引退するように言われる。ランディは
失意の中で、新たな道を模索し始めた。
『π』、『レクイエム・フォー・ドリーム』、『ファウンテン 永遠に
つづく愛』などの一筋縄ではいかない作品を生み出し続ける
ダーレン・アロノフスキー監督の最新作。主演のミッキー・ロークは
本作の落ち目のレスラー役でゴールデングローブ賞を受賞。さらに
アカデミー賞にもノミネートされ、さらには人気アメコミ映画の新作
『アイアンマン2』の敵役に抜擢されるなど、見事に復活を果たし
ました。
注:以下、ネタバレを隠してません。未見の人は注意してください。
ランディが大人気だったのは、遠い20年前。今や落ち目のレスラー
である彼に試合で十分な給料を稼ぐだけの力はなく、バイトの給料
を加えても家賃を払えない厳しい経済状態。そんな状態でも、
リングの上では全盛期の威厳を維持しなければならず、髪を
染めたり日焼けサロンに通ったりする日々。そして試合の前には
対戦相手と入念な試合運びに関する打ち合わせ。さらに試合を
盛り上げるために、自分から傷を負って流血を演出したりもします。
そんな身体的に精神的にも大きな負担のかかる仕事でも、彼は
それを辞めようとはしません。しかしそれは、彼がプロレスに対して
夢や希望を抱いているからではありません。
彼にはプロレスしかないのです。
心臓発作を機に引退を決意したランディは、疎遠になっていた
娘との絆を取り戻そうと奮闘します。プロレスなしの人生を送る
ために、新たな仕事にも取り組みます。それらは最初こそ上手く
いきますが、やがてもろくも崩れ去り、ランディは再び全てを
失います。そこから決意した現役復帰は、ランディにとっては
希望に満ちたものだったかもしれません。しかし僕にはそれが
逃避にしか見えなかった。心の痛みと戦う事をせず、自分を認めて
くれる唯一の世界へ引き篭もったように感じられたんです。
意中の女性が彼の身を案じて駆けつけてくれた時も、ランディは
彼女ではなく集まったファンを選びました。燃え尽きかけた身体に
鞭打ってリングを舞う姿にファンは大きな歓声を送りますが、
その中にランディが愛する者はいません。
寂しくて、悲しい映画でした。予告を観た時は、年老いても戦い
続ける不屈の想いを描いた作品だと思ったんですが、その点では
裏切られてしまいましたね。
とはいえ、非常に深い映画でした。
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この記事へのコメント
普通50代の男がどこかへ逃避しようにも、圧倒的多数の人間はそんな場所を持って無いものです。
その意味で、この男は確かに現状だけ見たら負け組みなんですけど、同時にそんな場所へたどり着けた事自体を羨ましく思うのです。
これは多分、おっさんのための映画です。
もし若い頃に観ていたら感想が違ったかも知れません。
>これは多分、おっさんのための映画です。
確かにそうなのかもしれませんね。僕はまだかろうじて自分の居場所を探している年齢なので、もう少し歳を取って腰を落ち着けたら、評価が変わってくるかもしれません。
ライブドアからアメブロTB出来ますが
アメブロからライブドアにTB出来ない事が多く
コメント入れさして頂きます。
TBアル http://trb.ameba.jp/servlet/TBInterface/10632381902/2f3ff1bc ですので
是非ともTB&コメント待っております。
ドキュメンタリー風で良かったですね。
淡々としたドキュメンタリー調の作風が映画に合っていましたね。もうちょっと希望に溢れたラストだったらもっと好みだったんですが。
う〜ん ランディ、不器用だなぁ〜
それに 娘との約束すっぽかすのは いかんだろ さすがに まずいぞ
そうそう・・・同じくミッキーロークが演じた'88年公開の映画「ホーム・ボーイ」知ってますか?
こちらは、ロークが アメリカ各地を渡り歩く流れ者ボクサーのジョニー役です。元妻のデボラ・フューアーと共演しています。
これ以上説明するとネタバレになりますので 省略しますが レスラーのランディーとはまた違った男の不器用さを「ホーム・ボーイ」のジョニーは持っています。
「レスラー」と「ホーム・ボーイ」 ともにミッキー・ロークの主演で、ふたりの不器用な男が主人公 ランディーとジョニー
ふたつの作品を比べながら見るのも 悪くないですよ
『ホーム・ボーイ』は観た事ないですね。ミッキーがボクサーに転向して失敗したのは有名ですが、この映画は転向の前みたいですね。そんな意味でも気になる映画です。レンタルで見かけたら借りてみようかな。
>娘との約束すっぽかすのは いかんだろ
彼がどん底に落ちていくのって、結局自業自得なんですよね。だからどうしても感情移入し切れませんでした。
凄い逃避ですよね!
親族はたまったモンじゃありません。
(娘の母もわからんままだしw)
親だったら許せないし、人間的には最低だと思うんですけど、男というか、「漢」って
こんなダメな生き物なんですよねぇぇぇ・・
何だか胸に突き刺さる映画でした。
大なり小なり思い当たるので、
何だか彼のつぶやきが自分に置き換わるOrz