2011年06月21日

華竜の宮4

うおぶね地殻変動によって海水面が異常
上昇し、多くの陸地を水没させた
大災害。生き延びた人類は激変した
環境に適応するため、自らの遺伝子
を改造し海上での生活に適した
「海上民」と、彼らと共生する生物
「魚舟」を生み出した。人類は再び
繁栄を手に入れたが、それは
束の間のものに過ぎなかった。



『SFが読みたい!』2011年版で、国内SF小説第一位に
輝いた海洋SF小説。
著者である上田早夕里の短編小説
『魚舟・獣舟』と世界観を同じくする物語です。

物語世界の構築の見事さは、『魚舟・獣舟』の時から驚かされて
いましたが、今回はさらにそれが広がりを見せています。
温暖化ではなく、ホットプルームによる海底地盤の隆起によって
海面が上昇する現状をはじめ、多くの陸地が水没した世界での
海上生活や新たな国家体制などの情報量はすさまじく、非常に
読み応えがあります。主人公である青澄が海上民との政治的
交渉を行う外洋公館の職員というポジションにいることもあり、
環境が激変した世界での政治的な駆け引きや地球規模での
共存や生き残りを賭けたせめぎ合いが大きな見せ場になって
います。そういった駆け引きがメインなので、海洋冒険ロマン
みたいな物語を期待するとちょっと肩透かしを食うかも
しれません。

この世界の象徴とも言える魚舟と獣舟の生体もさらに深く描写
されています。魚舟は海上民の家であり「朋」でもある存在。
海上民の子供が母親の体から生れ落ちた時、一緒にお腹の中
から出てきた魚舟はやがて20〜30mの巨体に成長し、背中の
居住殻に朋である海上民を住まわせます。しかし対となる人間を
失った魚舟は凶暴な獣舟と化し、海ではなく陸上で繁殖する
ために陸を目指すようになり、陸に住む陸上民を襲います。
この設定だけでもかなり独創的で面白いですが、ここからさらに
獣舟の脅威の生態が明かされます。

設定は素晴しいものばかりなんですが、正直それら全てを活かし
きれていない
、という風に感じてしまいました。たとえば
さきほどの獣舟の生態。元を辿れば人間が起源である獣舟が
あのような形に進化したことは、人類にとって、物語上の説明
以上に重要な意味合いがあるはず。環境の激変に耐えうる
あらたな人類として、地球の次の支配者になる可能性だって
ある訳です。
ほかにも、環境が激変した「リ・クリテイシャス」や、
クライマックスの混沌も、もっと多くの物語を描けるはず。

かなりボリュームのある物語ですが、まだまだ足りない。
著者もこの世界の物語をもっと広げて行きたいという想いを
あとがきで綴っています。
この世界がもっともっと拡張されていく姿を是非観てみたい
ですね。続編(もしくは姉妹編)、期待してます。

e5125aspaceodyssey at 23:30│Comments(1)TrackBack(1) SF・ファンタジー小説のレビュー 

トラックバックURL

この記事へのトラックバック

1. 『華竜の宮』  [ 天竺堂通信 ]   2011年08月18日 13:42
 「運が悪い」としか言いようのない自然災害が、いつもどこかで起きている。営々と続いてきた住民の暮らしが、またたく間に崩壊し、消え去る事態も少なくない。  巨大な地球に ...

この記事へのコメント

1. Posted by ������������   2013年10月01日 22:31
2 ��с�����筝��蘊�������.

この記事にコメントする

名前:
URL:
  情報を記憶: 評価: 顔