SF・ファンタジー小説のレビュー

2011年10月18日

ダークタワー3/荒地4

あれち暗黒の塔を目指し旅を続ける
最後のガンスリンガー・ローランド。
ニューヨークから呼び出した旅の
道連れ、エディ、スザンナと共に、
ローランドは塔へと通じる「ビーム
の道」を発見する。しかしその
一方で、過去の重大な変化に
よってローランドの精神は二つに
引き裂かれつつあった。



映画化の企画が中断している間に主演のハビエル・バルデムが
『007』の新作に持っていかれてしまってますますピンチな
『ダークタワー』。このまま塔は倒れてしまうのか。
いや待て。ハビエル・バルデムが降板となれば、次に声が
かけられるのは有力候補の一人だったヴィゴ・モーテンセンか!
彼こそ理想のガンスリンガー。是非ヴィゴにこのピンチを
救って欲しい!
そんな妄想を抱きながら、今回は第三部『荒地』のご紹介です。

今回は物語が明確に2つに分かれている(上下巻で分かれて
ますが、ちょうどそこで分割されている)のが特徴。前半は
4人目の仲間を救出するエピソード、後半は荒廃した都市・
ラドでの冒険になっています。

4人目の仲間は実に意外な人物で、エピソードの半分が、
彼がニューヨークから主人公のいる中間世界に召喚される
までの話に費やされます。現実世界と空想世界が密接に
絡み合う『ダークタワー』シリーズの魅力はここでも健在です。
もっとも、ここからしばらくの間は、現実世界を冒険する
機会は失われてしまいますが。
後半に入ってすぐに、少々奇妙な動物が仲間に加わることに
なります。主人公ローランドを長として、前巻で仲間に
なったエディとスザンナ、今回加わる一人と一匹。これで
この物語の主要な登場人物は出揃いました。 後々もう一人
仲間に加わるんですが、その人は他のメンバーに比べて
非常に出番が少ない。だから実質ここでフルメンバーです。
『ハリー・ポッター』と同等である全7部の物語なのに、主要
キャラはたった4人と1匹。
しかしその分、彼らの人物像は
非常に深く掘り下げられていて、これこそがこの物語の
最大の面白さだと思います。

ラドでの戦いを経て、次なる試練に立ち向かう所で今回は
幕を閉じます。第四部ではついにローランドの過去の一端が
明らかに。でも一番の見せ場は冒頭のブレイン戦なんです
けどね。

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2011年08月29日

ジェノサイド5

ジェノ傭兵のイエーガーは、不治の病の
息子のために莫大な報酬の出る
コンゴでの特殊任務に参加する。
薬学を学ぶ古賀研人は、急死した
父親から謎のメッセージと、
用途不明の2台のノートパソコンを
託される。この2つの出来事が、
繋がる時、人類絶滅のシナリオが
浮き上がる。



『本の雑誌』2011年上半期ベスト1に選ばれた一級
エンタテイメント小説。
いろんな本屋で平積みされていて、
普段ハードカバー小説を買わないようにしてるのに欲求に
負けて購入しました。結果は大正解で、今年ナンバー1の
面白さと胸を張ってオススメできる小説
に巡り会うことが
できましたね。

冒頭から語られる人類絶滅の危機。その引き金になる存在の
正体は書籍解説などでもあえて伏せられているのでここでも
言及しませんが、隕石落下や核戦争、ウィルス危機などとは
違う、これまでのディザスター物語とは全く異なる脅威が
我々人類の前に現れます。
物語は多角的に展開します。真実を伏せられたまま謎の
暗殺任務に駆り出されるイエーガーら傭兵部隊。父の残した
メッセージを解明するうちに、謎の組織から狙われるように
なる大学院生・古賀研人。人類絶滅の引き金になる存在を
抹消する「ネメシス作戦」を展開するアメリカ政府。
それぞれのエピソードが複雑に絡み合い、最初から最後まで
ノンストップで物語が展開します。
退屈になりそうな移動シーンなんかは1行2行で終わって
しまい、見せ場となるシーンに文章の大半が費やされて
いるので、展開が非常に早くなっているのも魅力です。
僕はいつも仕事の休憩中に小説を読むんですが、見せ場の
連続できりの良いところがなく、休憩が終わるたびに「ああ!
今いいとこなのに!」と歯痒い思いをしてました(笑)。

大量の伏線も実に小気味よく、中盤以降は次々明らかになる
驚愕の事実に驚かされっぱなし。科学考証なんかはどこまで
正確か解かりませんし、鍵となる存在「ヌース」が少々
都合よく描かれ過ぎてたりする気もしますが、それらが
面白さに直結しているので全く問題になりません。

スピード感とパワフルさに溢れた最高に面白い小説です。

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2011年08月18日

オルタード・カーボン4

978‐4‐7572‐1763‐8おるた進歩した科学技術は、遂に人間の
「魂」までをもデジタル情報として
記録し、保存する事に成功した。
遥か彼方の星で命を落とした男・
コヴァッチもまた、残された情報が
地球に転送され、新しい身体を与え
られて蘇生した。コヴァッチに課せ
られた任務は、地球有数の権力者
の自殺の真相を調査する事だった。



フィリップ・K・ディック賞を受賞したSF小説。練り込まれた
SF設定が魅力の、ハードボイルド・サスペンスです。
人間の記憶や人格、つまりは「魂」と呼べるものを司る脳内の
情報と、コンピューターなどのデジタル情報の境界線。
『攻殻機動隊』や『マトリックス』などでも描かれてきた
テーマが、本作ではさらに発展して描写されています。

この物語の世界では人間の魂は完全にデジタル情報として
解析され、たとえ脳が損傷したとしても首筋に埋め込まれた
メモリー・スタックが無事なら、新しい身体さえ用意すれば
生き返る事が出来ます。十分な富を持つ権力者などは、
身体が老衰によって役に立たなくなったら新しい身体を
都合し、何百年と生きてさえいます。さらにそういう人間は、
万が一メモリー・スタックごと破壊された場合に備えて
定期的に「魂」の情報をバックアップ保存してさえいます。

地球の大富豪・バンクロフトは、誰もいない部屋でメモリー
ごと頭を撃ち抜かれて死亡しました。警察は自殺と断定
しましたが、メモリーをバックアップしていたバンクロフトは
難なく蘇生。蘇生すると解かっていながら自殺するなど
ありえないとバンクロフトは考え、元特殊部隊員の
コヴァッチを呼び寄せ事件の真相を調査するよう
依頼します。
SF設定をたくみに使ったこの基本設定が面白く、序盤は
グイグイと物語に引き込まれました。しかし、それ以降
しばらくはなかなか捜査が進行せず、コヴァッチの行動も
意味があるのか解からず若干ダレてしまいます。もちろん
そんな場面にも伏線が張られてるんですが。
物語が後半に入り、事件の全容が明らかになってくる辺り
から本格的に面白くなってきます。本書は上下巻に
分かれているんですが、下巻に入ってからはノンストップで
物語が進行し、読み応えバッチリです。これで上巻が
ダレなければ完璧だったんですけど。

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2011年07月07日

ダークタワー2/運命の三人5

うんめいのさんにん暗黒の塔を目指すガンスリンガー・
ローランドは、謎のロブスターの
怪物の襲撃を受け大怪我を負って
しまう。さらに怪物の毒に犯され、
死の恐怖がすぐそこまで迫る。
そんなローランドの前に現れた、
浜辺にたたずむ不思議なドア。
そのドアの先に広がっていたのは
現代のニューヨークだった。



スティーヴン・キング原作の壮大なダークファンタジー第二章。
今回から暗黒の塔探索の旅が本格的に進行します。物語の
完成度も前作『ガンスリンガー』よりも格段に向上しています。

『運命の三人』最大の特徴は、他の章に比べてコメディ要素が
多い事。今回は魔法のドアを抜けて、主人公ローランドが
ファンタジー世界から現代のニューヨークにやってきますが、
そこで出てくるカルチャーギャップがとにかく面白い。
初めて食べたツナサンドの味に驚愕するローランド。コーラを
飲んでその甘さに感動するローランド。弾丸を箱買いしたら
予想以上に弾が沢山入っていて狂喜するローランド。
ローランド自身がかなり実直なキャラクターなので、数々の
驚きっぷりが実にオーバーで楽しいです。大筋はかなり
ハードな話なので、こういう箸休めは嬉しいですね。

今回、ローランドの旅の道連れとして仲間に加わる人物。
その中の麻薬中毒者・エディは、このシリーズだけでなく僕が
読んできた小説の中でも屈指のお気に入りキャラクター。
真面目なローランドとは対照的に、いつもふざけていてどんな
時にもジョークを忘れないお調子者。はじめのうちこそ麻薬が
抜け切れていなかったり心に隙があったりして未熟な面が
目立ちますが、徐々に成長して一人前の男になっていく姿は
とても感情移入し易いです。暗黒の塔到達のために人間味を
押し殺しているローランドを補うかのような、人間味タップリの
キャラクターも魅力です。

もう一人、いや二人の重要人物、オデッタとデッタも凄い。
二人は一つの身体を共有する多重人格者。穏やかなオデッタは
エディと恋に落ち友好的な関係を築きますが、凶暴なデッタは
旅を妨害し、隙あらばローランドとエディの寝首を掻こうと
狙っています。さらに彼女は人種差別が横行する時代から召喚
された黒人女性で、両脚が無く車椅子で移動します。映像化の
企画が現在どのような状況か解かりませんが、このオデッタと
デッタのキャスティングが一番難しいのではと思ってます。

シリーズの中でも一二を争うくらい好きなエピソードです。
突拍子もないのに多彩な面白さが詰まっている、このシリーズ
ならではの魅力が詰まっていますね。


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2011年06月21日

華竜の宮4

うおぶね地殻変動によって海水面が異常
上昇し、多くの陸地を水没させた
大災害。生き延びた人類は激変した
環境に適応するため、自らの遺伝子
を改造し海上での生活に適した
「海上民」と、彼らと共生する生物
「魚舟」を生み出した。人類は再び
繁栄を手に入れたが、それは
束の間のものに過ぎなかった。



『SFが読みたい!』2011年版で、国内SF小説第一位に
輝いた海洋SF小説。
著者である上田早夕里の短編小説
『魚舟・獣舟』と世界観を同じくする物語です。

物語世界の構築の見事さは、『魚舟・獣舟』の時から驚かされて
いましたが、今回はさらにそれが広がりを見せています。
温暖化ではなく、ホットプルームによる海底地盤の隆起によって
海面が上昇する現状をはじめ、多くの陸地が水没した世界での
海上生活や新たな国家体制などの情報量はすさまじく、非常に
読み応えがあります。主人公である青澄が海上民との政治的
交渉を行う外洋公館の職員というポジションにいることもあり、
環境が激変した世界での政治的な駆け引きや地球規模での
共存や生き残りを賭けたせめぎ合いが大きな見せ場になって
います。そういった駆け引きがメインなので、海洋冒険ロマン
みたいな物語を期待するとちょっと肩透かしを食うかも
しれません。

この世界の象徴とも言える魚舟と獣舟の生体もさらに深く描写
されています。魚舟は海上民の家であり「朋」でもある存在。
海上民の子供が母親の体から生れ落ちた時、一緒にお腹の中
から出てきた魚舟はやがて20〜30mの巨体に成長し、背中の
居住殻に朋である海上民を住まわせます。しかし対となる人間を
失った魚舟は凶暴な獣舟と化し、海ではなく陸上で繁殖する
ために陸を目指すようになり、陸に住む陸上民を襲います。
この設定だけでもかなり独創的で面白いですが、ここからさらに
獣舟の脅威の生態が明かされます。

設定は素晴しいものばかりなんですが、正直それら全てを活かし
きれていない
、という風に感じてしまいました。たとえば
さきほどの獣舟の生態。元を辿れば人間が起源である獣舟が
あのような形に進化したことは、人類にとって、物語上の説明
以上に重要な意味合いがあるはず。環境の激変に耐えうる
あらたな人類として、地球の次の支配者になる可能性だって
ある訳です。
ほかにも、環境が激変した「リ・クリテイシャス」や、
クライマックスの混沌も、もっと多くの物語を描けるはず。

かなりボリュームのある物語ですが、まだまだ足りない。
著者もこの世界の物語をもっと広げて行きたいという想いを
あとがきで綴っています。
この世界がもっともっと拡張されていく姿を是非観てみたい
ですね。続編(もしくは姉妹編)、期待してます。

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2011年05月24日

ダークタワー1/ガンスリンガー4

ガン何もかもが歪み、時間さえも正しい
法則を失った、変転した世界。
黒衣の男は砂漠の彼方へ逃げ去り、
そのあとをガンスリンガーが追って
いた。
この追跡行こそが、ガンスリンガー
の「暗黒の塔」への探求の旅の
始まりだった。




スティーヴン・キング原作の壮大なダークファンタジー第一章。
映画化の企画がちょっと暗礁に乗り上げている本作ですが、
応援の意味合いも込めて、原作小説の紹介をしたいと
思います。

一大サーガの第一章ではありますが、原作者自身がまえがきで
語っているように、この第一章だけは物語全体から少し逸脱
している感があります。この物語に必要不可欠である仲間達は
まだ登場しないし、何よりこの時点での主人公の旅の目的は
黒衣の男の追跡であって、暗黒の塔を目指す旅はまだ始まって
いない、という見方も出来ます。どちらかといえば長めの
プロローグ
といった印象ですね。なので、この章は作品の
雰囲気と主人公のガンスリンガー・ローランドのキャラクターが
見所になっています。

西部劇を思わせる舞台設定や変転して終末が目の前に
迫っている世界など、色々と独創的でとっつきにくい内容だと
思います。何よりキツイのが主人公ローランドのキャラクター。
黒衣の男に追いつく=暗黒の塔へ近づくためなら、愛した女を
平気で殺す、家族同然の子供まで見捨てる、という捻じ曲がった
性格をしています。ゆえに感情移入するのは相当難しいと
思いますが、そんな非人道的な行動は全て彼の隠れた実直さ
ゆえでもあります。だからなのか、そんな極悪なキャラクターが
非常に魅力的に見えてしまうんですよね。ローランドの内面は、
次巻以降でさらに掘り下げられていきます。キャラクターの
描写が実に見事なのが、このシリーズの最大の魅力ですね。

第一章は古本屋でも結構見かけるので、入門編として手にとって
もらえると嬉しいです。面白かった場合は是非次巻もどうぞ。
ちなみに今出回っているのは、最終巻が完成したあとに手が加え
られた修正版。久しぶりに読んだんですが、後々に繋がる
シーンなんかが沢山あって面白かったですね。最後まで読んで
から読み返してみると、(完結の仕方もあって)新たな発見が
あります。

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2011年05月04日

異星人の郷5

ハンス14世紀。ドイツの山岳部にある
小さな村に起きた異変。村の神父・
ディートリヒが森の奥で発見したのは
旅の途中の事故で地球に不時着した
船と、自らをクレンク人と名乗る
バッタに似た姿の奇怪な異人達だった。
この出会いから、クレンク人と村人
との不思議な交流が始まる。




『SFが読みたい!2011年版』海外部門で第1位に輝いた
SF小説。
中世の時代で起きた宇宙人とのファーストコンタクト
を描いています。虫のようなエイリアンとのコミュニケーション
ということで、去年公開の傑作映画『第9地区』を連想しますね。
事実、共通点もいくつかあり、なにより『第9地区』同様に
非常に感動的な物語が綴られています。最後の方なんて
泣きながら読んでました。ハンスぅ(泣)。

舞台が中世ヨーロッパであり、主人公がキリスト教の神父と
いう設定が実に見事です。発達した科学文明を持ちながらも
蟻のように個体の役割(階級)があらかじめ定められている
クレンク人と、神を信奉しキリストの教えに救いを見出す
地球人。水と油の二つに人種が次第に距離を縮めていく様子が
緻密に描かれていて非常に面白い。
「主はあらゆるものに姿を変え、あらゆる奇跡を起こすのです」
「お前の首領とは物理現象を操作するエネルギー生命体か?」
といったズレた会話から、
「我々は空の彼方の世界へ帰りたいのだ」
「生命の終わりを迎えれば、天の世界へ旅立てるのです」
というどこから突っ込んでいいのかわからない認識の違いなど、
笑える要素もいっぱいあります(本人達が至極真面目に
やり取りしている姿も可笑しい)。
こんな感じで、おそらく宗教という概念自体が無いクレンク人
ですが、故郷への期間が絶望的になるにつれてキリスト教に
救いを求めるようになるのが興味深いです。

中世パートと平行して描かれるのが、二人の科学者が主役の
現代パート。中世パートに直接影響を与える事はありませんが、
残された文献から歴史に葬られた上ホッホヴァルト村の真実を
紐解く展開は読み応えがあります。時空間移動に関する
理論の構築も、足りないSF分を補う良いアクセントになって
いました。

しかし何より素晴しいのは、奇怪なクレンク人に難なく感情
移入が出来てしまうことですね。ディートリヒがクレンク人を
理解していく工程を綿密に描写したからこそ成せる事でしょう。
クラッツァーと秘薬の話は、(外食がてらに読んでいたので)
涙を我慢するのに必死でした。

ベスト1の称号も納得の傑作SFでした、中世が舞台という
ことでファンタジー的な要素も出ているので、そういう小説が
好きな人にもオススメです。

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2011年02月26日

メタルギアソリッド ガンズ・オブ・ザ・パトリオット4

けーかくこれまで幾度と無く世界を救って
きた伝説の英雄、ソリッド・スネーク。
彼は今、自身の身体を蝕む急激な
老化現象に襲われていた。そんな中、
宿敵リキッドが中東で暗躍している
との情報が入る。スネークは、
朽ちかけた身体と戦いながら、
自分の運命を全うすべく最後の
ミッションに挑む。



若くしてこの世を去ったSF作家・伊藤計劃さんは、TVゲーム
『メタルギアソリッド』シリーズ(厳密に言えばゲーム作家の
小島秀夫監督)の大ファンを公言しており、小島監督とも
親交がありました。そんな縁で、『メタリギアソリッド4』の
ノベライズ版として伊藤計劃さんが生み出したのがこの
『メタリギアソリッド ガンズ・オブ・ザ・パトリオット』です。

これまでのシリーズ全体ではなく完結編のノベライズという
形ですが、この本だけでも楽しめるように過去の出来事や
細かな設定なども言及されています。しかし流石に全てを内包
するのは不可能で、ゲームをプレイせずに読むのはいささか
ハードルが高いように思えます。
何より、スネークの過去の
激闘や因縁、仲間達との絆は、小説数十ページで語り尽くせる
ものではありませんからね。

「ゲームの物語を補完する別視点の物語」というのが一番
しっくりくると思います。物語がスネークの相棒・オタコンの
視点で語られるのが特徴で、バトルシーンは極力削除されて
(ボスキャラのBB部隊も出番なし)、その分ゲームでは
解からなかった一人一人の心情が深く掘り下げられています。
大まかな流れや台詞は原作のゲームをほぼ踏襲していて、
ゲームを何周もプレイしていた僕はお気に入りのシーンになると
涙ぐんでしまいました。

文庫版の巻末には、小島監督のメッセージが綴られています。
二人の出会いや伊藤計劃さんの情熱、『メタルギアソリッド3』
とその続編といえる番外編『ピースウォーカー』を一つにした
小説の構想など、興味深い事柄がたくさん載っています。
『メタルギア』ファン、伊藤計劃ファンは、ここだけでも読む
価値がありますよ。

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2011年01月06日

ハーモニー5

ハーモニー大災禍(ザ・メイルストロム)という
災厄を経て、人類は新たな価値観を
有する医療経済社会を確立した。
人々は体内にナノマシンを注入される
ことで健康状態を徹底管理され、
寿命や事故以外で死ぬ事はなくなった。
そんな「誰も死なない世界」で、
六千人もの人間が一斉に自殺を試みる
という事態が発生する。



若くして世を去った希代のSF作家、伊藤計劃の2作目の
オリジナル長編。長編としてはこれが遺作になります。
伊藤計劃氏はこの作品を病床で執筆したということで、作品は
「医療社会」や「生きる事の定義」というものに深く切り込んで
います。

長編デビュー作であり、本作と間接的に繋がりがあると思われる
前作『虐殺器官』と同様、本作もSF的世界観の構築が半端なく
上手いです。大災禍によって滅亡寸前にまで追い込まれた世界を
蘇らせるために、徹底管理された医療体制を構築するという
アイデアもさることながら、そこから派生する「絶対的に平和な
世界」
(あとがきで言及されています)へのアプローチは実に
面白いですね。

SFとしての面白さだけでなくサスペンス要素も非常に面白いです。
世界観や主人公と周囲の人々の説明などで進行する序盤の
締めくくりとして突如発生する大量自殺。そして直後に登場する
「宣言」は本当にインパクト抜群。こういう飛び抜けた展開が
SF小説の醍醐味ですね。
さらにこの小説にはある仕掛けが施されていて、主人公の
一人称にプログラム言語のようなものが付加されているん
ですが、最後に明かされるこいつの正体がまた凄い。そこに
繋がる「ハッピーエンド」も衝撃です。でもこんなハッピーな
人生は願い下げです。

『虐殺器官』と比べると洗練された印象があり、全体的にスマートに
展開する感じですが、よりパワーを感じる『虐殺器官』の方が
個人的には好みです。しかし『ハーモニー』が劣っているという
ことはなく、多くのSF賞を獲得したのも納得の完成度。
さらに伊藤計劃氏が病と闘いながら書いたという事を踏まえると、
さらに感慨深く読むことが出来ます。



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2010年12月15日

マルドゥック・スクランブル 排気 完全版4

はいき宿敵・シェルの隠された記憶を
手に入れるため、シェルの運営する
カジノを訪れたバロット達。狙いは
カジノ最大の価値を有する百万ドル
チップ。ブラックジャックで順当に
勝ち進むバロットの前に、最強の
ディーラー・アシュレイが立ち
はだかる。バロットの戦いは遂に
最終局面を迎えた。



冲方丁が生み出した日本SFの最高峰『マルドゥック・スクランブル』の
第三章。カジノでの熱い戦い、そしてボイルドとの決着が描かれ、
バロットの戦いは終結します。

第二章『燃焼』から続くカジノバトルはさらにヒートアップ。
なんと第三章の半分が、カジノの用心棒アシュレイとのブラック
ジャック対決に費やされます。真剣勝負というだけでなく、この
対決によってバロットの心境にも大きな変化が訪れ、相棒である
ウフコックとの信頼関係もさらに強固なものになっていくので
実に読み応えがありました。しかし本当に、このパートはSF
というよりも完全にギャンブル小説でした。あとがきに書いて
ありましたが、著者はこのシーンを書いてる時、極限の精神状態で
書いていたために吐いてしまい、そこで自分の書いている作品に
自信を持てたそうです。そりゃあそんな極限状態で書いた代物が
つまらない訳がないですよね。この一連のシーンの構成は実に
見事です。
後半からはようやく最初の路線に戻って、シェルの記憶に関する
謎や、ボイルドとの対決に移行します。ここからはありきたりな
バトルSFですが、やはり面白さは折り紙付き。このバトルシーンは
是非アニメーションで観たいなぁ。

全三巻を読んで、この作品が転生の物語だと感じました。
主人公バロットは不当に命を奪われかけ、その後新しい身体を
得て生まれ変わりますが、心すなわち魂は(殺されかける前から
ずっと)死んだまま。そんなバロットを相棒のウフコックや
ドクターをはじめとした人々、さらには敵という立場にあった
ベル・ウイングやアシュレイが成長させ、彼女は銀の灰の中から
蘇ります。彼女を導いた人々も、彼女の転生を目の当たりにして
自らも新たな道を見出していました。

あとがきを読んで知ったんですが、この完全版はオリジナルをほぼ
書き直して作られたんだそうです。てっきり追加シーンとかが
挿入されたのかと思っていたんですが、そういうことをせず全体を
再構築しています。ツギハギではなく、本当の意味でこの作品
自体も生まれ変わったんですね。そうなると、オリジナルの方も
読みたくなってきます。オリジナルしか知らない人にも、この
完全版を是非読んでみて欲しいですね。



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2010年11月29日

マルドゥック・スクランブル 燃焼 完全版4

0987スクランブル09法案によって、自分を
殺そうとした男・シェルと対決する
ことを選んだ少女バロットだったが、
シェルの放った刺客・ボイルドの急襲で
窮地に立たされていた。辛くもボイルド
の手から逃れたバロットは、相棒の
ウフコックやドクターがかつて身を
寄せていた研究施設「楽園」を訪れる。
しかしそこにもボイルドが迫っていた。


 

冲方丁が生み出した日本SFの最高峰『マルドゥック・スクランブル』の
第二章。第一章『圧縮』は実に気になるところで終わってしまいました
が、今回はその直後から話がスタートします。なので冒頭から激しい
バトルが展開してかなり慌しいですね。

今回の主な舞台は、オーバーテクノロジーの宝庫である「楽園」と、
シェルの経営するカジノ。
楽園は正にSF小説の世界で、食事はおろか呼吸さえ必要としない
完全な個体として創造された少年、水を媒体としてあらゆるネットワーク
と接続出来る喋るイルカ、首だけで生き永らえている天才博士等、
突拍子も無いキャラクターが続々登場。SF好きとしてはこういう設定は
実に楽しいです。

後半からは打倒シェルのためにカジノに殴り込み。ここからは
ポーカー、ルーレット、ブラックジャックでのギャンブル対決に移行して、
SFっぽさがかなり薄くなっていきます。もちろん、万能ツール・
ウフコックと超感覚少女バロットがゲームに参加する時点で、普通の
ゲームが展開するわけはありませんが、SF色が薄くなってしまった
のはちょっと残念でしたね。

『圧縮』はバロットの覚醒と、それに伴う暴走、そして挫折が描かれて
いました。今回は一貫してバロットの成長が描かれていますね。
最初の敗北によって自分の過ちを認め、楽園で自分と同じような
境遇の人々と出会うことで自身と向き合うようになります。そして
カジノ攻略の中でドクターや女ディーラーのベルと向き合うことで、
将来の道についても考えるようになります。
相棒のウフコックとの関係も、もうガッチリですね。ボイルドが嫉妬
するのも無理はない(笑)。

今回もいい所で終わってしまう物語。次はいよいよ完結編。
で、『燃焼』のアニメ化はいつ?



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2010年11月09日

マルドゥック・スクランブル 圧縮 完全版5

ま少女娼婦ルーン・バロットは、自分を
買い取った男・シェルによって命を
奪われかける。瀕死のバロットを救った
のは、委任事件担当捜査官のイースター
とウフコックだった。マルドゥック・
スクランブル09法によって最先端技術
のかたまりの体を手に入れたバロットは
捜査官らとともにシェルの背後にある
巨悪に立ち向かう。


 

冲方丁が生み出した日本SFの最高峰『マルドゥック・スクランブル』
の第一章。第24回日本SF大賞を受賞し、ゼロ年代ベストSFで
第2位に選ばれた作品です。
現在、この小説を原作とした映画が公開中。映画を観に行く前に、
ずっと前から気になっていたこの小説を読もうと思っていたんですが、
グッドタイミングで大幅にボリュームの増えた完全版が発売。
そちらを早速ゲットして読んでみました。いやぁこの話面白いわ。

少女バロットの戦いを描いた作品ですが、その戦いは実に多重的な
ものになっています。バロットは自分を買った男から命を奪われかけ
ますが、それはただ単に捨てられた訳ではなく、もっと大きな陰謀が
隠されています。その真相を暴くために、相棒のウフコック、
サポーターのイースターと共に戦う、というのが基本プロットですが、
単純なバトルものではなく、追跡劇や法廷での舌戦、情報戦などが
展開。そしてそれらが「SFとして」高次元でまとまっていますね。話が
面白いだけでなく、それらを実に面白いSFアイデアが彩っています。

物語のマスコットであるネズミ型万能兵器・ウフコック。喋れるネズミ
というキャラクターだけでなく、あらゆる物質に変身できる(正確には
亜空間に保管している物質と交換できる)能力は実に面白いですね。
そんな能力を持っている上に、バロットには無償の慈愛を与える
キャラクター性が実に面白いです。まぁちょっと万能過ぎてバトル時の
緊迫感が削がれるなぁ、なんて思っていたんですが、クライマックス
にはそんなウフコックでさえ圧倒するバケモノ・ボイルドが登場する
のでビックリ。とんでもないクライマックスが展開しますが、これでまだ
物語の三分の一なんですよね。末恐ろしい。

凄いところで終わる第一章。早速二章を買ってきてガッツリ読んでます。
早く映画も観に行きたいですね。ただ、ホントにこれを映画化するには
相当な力量が必要でしょうね。中途半端な映画になっていないこと
だけはありませんように。



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2010年08月21日

MM94

658怪獣が街を襲う「怪獣災害」が頻発
する世界。気象庁は怪獣災害に対応
すべく、庁内に特異生物対策部、
通称「気特対」を設立する。
日本を襲う様々な怪獣の規模や能力、
そこから推測される災害の大きさを
分析し、被害を最小限に食い止める
ために自衛隊をサポートする。これが
彼ら気特対の仕事である。

 

『SFが読みたい!』2009年版国内編第2位に選ばれた
怪獣小説。
怪獣大好きの僕としては非常に興味があった作品
です。このたび文庫化され、ようやく手に出来ました。
MMとはモンスター・マグニチュードの略で、怪獣災害の大きさを
表しています。タイトルにもなっているMM9は、過去に発生例の
ない、最大規模の災害クラスのことです。
ちなみに現在TVドラマが放送中なんですが、ものの見事に
第1話を見逃してしまい、大人しくDVD化を待つことにしました。
1度忘れるともう観られないからTVドラマは嫌いだ。

この小説の特徴は、怪獣災害しか描いていないというところ。
全5話のうちのほとんどが怪獣災害発生から物語が始まり、
怪獣災害が終息したところで終わります。登場人物の人となりや
日常風景なんかはほとんど描かれません。唯一第4話だけは
「気特対を密着レポートするTV番組」という構成になっていて、
ここと最終話で怪獣描写以外のもう一つの魅力にスポットが
当たるんですが、それは後述ということで。
怪獣描写に特化した事で全編が見せ場になっていて、実に
スピード感があります。気特対の仕事も細かく描写されて
いますね。怪獣の分析や実際に怪獣を相手にする自衛隊の
サポートはもちろんのこと、MMのクラスの特定や怪獣のネーミング
なんていう仕事まであります。作者自身怪獣映画大好きということで
(文章のいたるところからも作者の好みが滲み出ています)、描写に
関しては文句なしですね。いや、ひとつだけ不満があるとすれば、
怪獣が弱いのが気に入らない。登場する5体のうちの4体は、
自衛隊もしくは人間の手で撃退されています。怪獣が自衛隊に
負けるなんて!怪獣を倒していいのはライトンR30爆弾みたいな
怪しい超兵器か巨大ロボットだけなんだ!

まぁ、倒せなかったら気特対の立場がないのは解かってるん
ですけどね。

怪獣描写に匹敵するもう一つの魅力が、作品の世界を構築している
多重人間原理。この世界は人間が認識しているから存在している
「ビックバン宇宙」であり、怪獣達は人間認識の範疇から逸脱した
「神話宇宙」の存在だから、人間の認識である物理法則を無視して
存在できる。この解釈が物語後半でさらに発展していくんですが、
このアイデアは非常に面白いですね。怪獣好きであると同時に
SF好きでもある僕としては、実はこちらの方が怪獣描写よりも
魅力的だったりしました。



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2010年08月11日

深海のYrr4

3658ノルウェー沖のメタンハイドレート
層で発見された新種のゴカイ。
それは、メタンハイドレートを掘り
進む脅威の生命体だった。ゴカイの
発見を発端として、クジラの凶暴化、
猛毒クラゲの大量発生、ロブスターを
媒介とした疫病の発生など、世界
各地の海で常識では考えられない
異常事態が同時発生していた。

 

ドイツで大ベストセラーを記録した海洋SF小説。すでに映画化も
決定しているそうです。ハリウッドで作るのかな?スケール的に
ドイツでは難しいような気もします。ハリウッド資本でも一筋縄
ではいかないでしょう。それくらい大規模で壮大な物語です。

海で様々な異変が発生する中、大量発生したゴカイがメタン
ハイドレート層を崩壊させます。その衝撃で巨大な津波が発生し、
ヨーロッパは崩壊。さらなる被害の拡大を阻止するため、人類
滅亡の危機を回避すすため、各界からスペシャリストが集結して
真相を究明していきます。
文庫全3巻、総ページ数1500ページ以上という大ボリュームで、
緻密な科学描写、深いキャラクター設定、大迫力の破滅的災害、
独創的なSF発想が非常に濃密に描かれています。

SF的発想とアイデアは秀逸ですが、その根底となるYrr(イール)の
存在と設定以外はかなり現実に則した内容になっているようです。
科学考証などの取材に4年をかけただけのことはあり(巻末には
本の執筆に協力してもらった多くの方々への謝辞が載っています)、
海洋生物や船舶などの描写は非常に細かいです。

非常に面白い本なのに、残念だったのが3巻に分けて刊行
された事。
物語は、異変の兆候、大災害と対策チームの発足、
事態を引き起こしたYrrという存在の謎の解明の3つに分けられ、
本もそこを区切りにして刊行されているんですが、その結果、事態の
兆候しか現れない第1巻はひどく退屈になってしまってます。
そのせいなのでしょう、BOOKOFFには1巻だけが大量に並べ
られていて、多くの人がここで挫折した事が伺えます。第2巻の
冒頭で最初の見せ場であるヨーロッパの崩壊が描かれるので、
せめてここまでは第1巻に収めて欲しかったですね。
もうひとつ、日本語訳がおかしい部分も多くみられました。
「キーボード」が何故か「キイボード」と書いてあったり、
「し残したこと」という違和感のある表現が使われてたりしました
(「やり残したこと」の方がしっくりくると思います)。

著者は映画が好きなようで、劇中でも多くの映画が引用されて
いるんですが、同じ映画好きとしてどうしても突っ込みたい点を
一つ。津波の被害を『ディープ・インパクト』(彗星衝突で大津波が
発生する映画)に例えて説明するんですが、それを止める事が
出来ないと説明するために登場人物の一人が「現実にはブルース・
ウィリスはいないんだ」と発言します。ブルース・ウィリスが
出てるのは『アルマゲドン』ですね。
『ディープ・インパクト』と『アルマゲドン』はドイツでも混同されて
いたのか。



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2010年06月15日

第六大陸5

c70dc3af.jpg

世界有数の技術力を誇る御鳥羽
総合建設に舞い込んできた
前代未聞の一大事業。レジャー
企業エデン社が持ち込んだその
計画は、10年で月に基地を作る
という前代未聞のものだった。
国家プロジェクトに頼らない、
民間企業が挑む宇宙開発が今
始まった。


先日、無事に任務を終えて地球に帰還した日本の探査衛星
「はやぶさ」。機体はその役目を果たし大気圏でその生涯を
終えましたが、初めて月以外の天体に着陸し、そのアンプルを
持ち帰った偉業は日本中を沸かせてくれました。
この『第六大陸』も日本の宇宙開発を題材にしたSF小説。しかも
国家ではなく民間企業が宇宙に乗り出すというのが実にロマンに
溢れてますよね。個人的に国内SF小説のベストの一つです。

この小説には、銀河を渡る大艦隊も宇宙からの侵略者も登場
しません。スペースコロニーが浮かんでいることもなければ、
軌道エレベーターが赤道に建っているなんてこともありません。
それどころか、ロケット切り離しなしで大気圏を離脱できる乗り物
さえ出てきません。ロケットは全て現代同様の多段式。持っていける
荷物は最大5トン。一度の打ち上げにかかる費用は何十億円。
月基地開発における技術的課題や費用の問題などが、かなり
リアルに描写されていて、まるで本当に月開発のドキュメントを
読んでいるようです。
もちろんこれはSFなので、現代科学の範疇から逸脱した理論や
技術も登場します。しかし作者のコメントにもあるように、それらは
「今の人類でも少し背伸びをすれば可能なこと」なんです。特に
劇中に登場するトロフィーエンジンが実現すれば、宇宙開発は
本当に飛躍的に進歩できそうな気がします。

「第六大陸は、宇宙に行けない人々にも夢を与えている」という
台詞が出てきますが、これは現実社会でも同じです。はやぶさが
宇宙の長旅から帰ってきても、自分が宇宙に行けるわけでは
ありません。それでも人々ははやぶさの帰還を喜び、新たな宇宙
開発の展望が開けることを期待しています。僕が生きている内に
民間人が気軽に宇宙に行けるような時代が来る事はないとは
思います。それは叶わなくても、人類が月に基地を作り、火星に
調査団が足跡を残し、遂には太陽系を飛び出す歴史の瞬間に
立ち会いたい。それが叶ったらきっと素晴しいでしょうね。

『第六大陸』はそんな夢に溢れた物語です。はやぶさ帰還で宇宙に
興味を持った人たちに是非読んで貰いたいですね。
この小説を原作とした漫画版も連載中です。読んだことは
ありませんが、小説が苦手という人にはこちらがオススメかと。
映画化もして欲しいなぁ。そんなに派手な場面がある訳ではないから
映画化はそこまで難しくないと思うけど。



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2010年06月09日

魚舟・獣舟4

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陸地の大半が水没し、現代社会が
崩壊した未来。海に生きる海上民は
「魚舟」と呼ばれる生物を家として
生活していた。
そんな世界で、わずかに残った陸地を
目指すはぐれ魚舟がいた。人々に害を
なすそれは「獣舟」と呼ばれた。



『SFが読みたい!2010年版』の国内部門で第4位に選ばれた
上田早夕里の短編小説。
表題作として、文庫『魚舟・獣舟』に
収録されています。ラノベを中心に、面白い小説をたくさん紹介
してくれるブログ『明日は積んだ本の下で』のisaki.さんのオススメで
読んでみました。

わずか30ページ弱の短編ですが、内容の方はギュッと詰まっていて
読み応えはバッチリ。題名にもなっている魚舟と獣舟の設定が
特に面白いです。海上民の住居であり移動手段にもなっている
魚舟。怪物が人々の生活に密接に関わっているという設定自体は
珍しくありませんが、魚舟とその操舵者の<朋>という関係は実に
独創的。そしてその朋の絆が引き起こす悲劇と獣舟の脅威。
終盤に同時に展開するこの二つの事態はかなり衝撃的です。
ほとんど救いの無い、後味の悪い結末ですが、インパクトは抜群
でした。

面白いけど、この内容で短編というのは勿体無い。世界観や
設定はもっともっと広がりを持たせられると思うし、獣舟の
恐るべき生態は、まだその一片が明かされただけでしょう。
長編化の予定はないのかな、なんて思ったんですが、あとがきには
「同じ世界観を舞台にした長編の構想あり」という情報が。
これは期待できそうですね。

この文庫版には他にも、心霊現象とSFをミックスさせた
『くらびらの道』。不思議な旅館のひとときを描いた『饗応』。
妖怪の住む街が舞台の『真朱の街』。どことなく海洋SFの雰囲気が
漂う『ブルーグラス』。書き下ろしの中篇『小鳥の墓』が収録
されています。どれも小粒ながら面白かったです。



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2010年04月28日

シャングリ・ラ5

414c0d09.jpg

21世紀半ば。深刻な地球温暖化を
改善するため、世界はCO2削減を目的
とした「炭素経済」へと移行していた。
日本は、東京の強制的な森林化と
大気中の炭素の固定技術で、新たな
経済社会に君臨。その象徴が、巨大
人工地盤・アトラスだった。少女・
國子は、アトラスに移住できない民を
従えて政府に戦いを挑む。


池上永一原作のSF小説。地球温暖化問題を中心に、ありと
あらゆる要素を盛り込んだ大ボリュームの作品です。

元々アニメ雑誌『ニュータイプ』に連載されていたからなのか、
登場人物が凄くアニメっぽくて(実際アニメ化もされているよう
です)、ハードSFとは思えないくらい個性的で暴走気味の
魅力溢れるキャラクターが揃っています。

常識外れの知識と身体能力を備えた完璧超人(だけどバストは
Aカップ)の主人公・國子。國子の育ての親にして、ナイスバディ
と類稀なる戦闘能力と極上の色香を備えたオカマ・モモコ。
モモコの元同僚で巨体を武器に戦う相撲取りのようなオカマ・
ミーコ。わずか10歳で炭素経済を掌握する天才少女・香凛。
嘘をついた相手をグロテスクな肉の塊に変える特殊能力を持つ
ワガママお姫様・美邦。美邦の側近にして、最強のSっ気と
究極のMっ気を同時に兼ね備えた不死身の女
・小夜子。
そして物語後半に颯爽と現れる、家柄・美貌・頭脳・運動神経の
全てを兼ね備えた完璧なド変態
・涼子。
それと、女とオカマの活躍が目覚しい中で何とか頑張ってみる
ものの今一つ見せ場を作れない草薙と武彦という男二人。
こんな個性的過ぎる人物達が、森林化した東京と天にそびえる
大地・アトラスで大暴れします。
ちなみにキャラクターの中では小夜子が一番のお気に入り。
最初は救いようの無い変態にしか見えないけど、後半になって
彼女の人となりと美邦に対する無償の愛が明らかになると、
一変して一番応援したくなるキャラクターに大変身。新手の
ツンデレですかね、これは。

キャラがぶっ飛んではいるものの、話の方は相当本格的なSFに
仕上がっています。
地球温暖化がもたらす影響やCO2問題を
中心に、CO2を基準とした経済で世界が動く世界観を構築。その
炭素経済を舞台にした金融サスペンスから、巨大な森を舞台に
したアドベンチャー、横暴な政府とゲリラとの戦争など、一つの
テーマから様々な要素が派生していきます。さらには日本古来の
神話や伝承にまで手を広げていくのだから恐れ入ります。
気になったのは、カーボンナノチューブ(実際に開発されている
炭素を原料にした物質。強度は鉄の数百倍とか)が万能過ぎる
ことでしょうか。強度はもちろん凄いし、空気中の炭素を固定して
精製出来るのも物語の都合上仕方ないかもしれないけど、
あらゆるものに擬態できる擬態材にも使えるのはさすがに
便利過ぎ。この擬態材の万能性は反則でしょう。

大胆なSF世界を破天荒なキャラクターたちが大活躍する
とても面白い作品です。クライマックスの怒涛の展開なんかは、
ゲラゲラ笑いながら読んでました。ハードSFとアニメ、両方
好きなら読んで損のない小説です。



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2010年03月07日

虐殺器官5

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サラエボが核爆弾によって消滅し、
核抑止が崩壊した近未来。テロ撲滅の
ため、世界は徹底したセキュリティ
社会を構築していた。
アメリカ情報軍に所属するクラヴィスは
ある人物の暗殺指令を受ける。その
人物が現れた地域には、必ず虐殺行為
が起きていた。人々を狂気に追い込む
「虐殺器官」とは一体何なのか。


ベストSF2007国内篇第一位を受賞し、過去十年の内の最優秀SF
を決めるゼロ年代SFベストで国内篇第一位の栄冠に輝いたSF小説
です。ジャンルは確かにSFですが、これはそんな小さなカテゴリに
おさめるには勿体ない。現代社会で進行している対テロ戦争、
テクノロジー進化と限定化された自由、そして死。それらのキーワードが
ハイコンバインされた力作です。

映画好きとしては、文章の至る所に様々な形で映画作品が引用されて
いたのが印象的でした。『太陽の帝国』、『Uボート』、『2001年
宇宙の旅』などの作品が至る所で登場します。
特に印象的だったのは『プライベート・ライアン』。この映画の冒頭に
出てくるオマハ・ビーチの戦いは、映画ファンなら知らぬものはいない
戦争映画屈指の名シーン。主人公はドミノ・ピザとバドワイザー
(この二つはアメリカの日常の象徴として描写されます。)を手に、
お試しで観られるその冒頭シーンを永遠リピートし続けます。まるで
凄惨な戦争風景がアメリカの日常であるかのようです。
映画と同じくらい頻繁に出てきたのが、僕も大好きな人気ゲーム
『メタルギアソリッド』からの引用。メタルギアファンならニヤリとして
しまう描写が満載で、潜入ミッションの描写なんてほぼ完璧に
メタルギアと重ねられます。DARPA、HALO降下といった用語
だけでなく、「スネークイーター」という単語を堂々と持ち出してくる
辺りに、『メタルギア』に対する愛や敬意を強く感じます。
この作品が刊行された後に発売になった『メタルギアソリッド4』との
共通点が多いのもビックリしました。メタルギアシリーズは製作期間が
長いので、どちらが先なのかは解りませんが。案外情報交換とか
してたのかも。

物語はかなり衝撃的。高度な情報化と進化したセキュリティによって
社会は管理されテロ行為は激減しましたが、それに比例するかの
ように発展途上国で内戦と虐殺行為が増加していきます。虐殺の
原因は何なのか。虐殺を起こしているとされる謎の男、ジョン・ポール
の目的は何なのか。ストーリーがスリリングに展開され、最後まで
飽きさせません。

作者の伊藤計劃は、本作を含んだ長編を3作書いてその短い生涯を
終えました。巻末のあとがきを読むと、彼の短いながらも壮絶な執筆
人生と、その境遇が作品のどのような影響を与えたかを僅かながら
垣間見ることができ、作品に一層深みが出てきます。
彼の遺作であり、2009年のベストSFに選ばれた『ハーモニー』も
いつか読んでみたいですね。



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2010年02月15日

星を継ぐもの5

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開発中の月面で発見された、
真紅の宇宙服をまとった遺体。
調査の結果、その遺体は人類が
誕生する以前、5万年も前の
ものであることが判明した。
チャーリーと名付けられたこの遺体
はどこから来たのか。何故、生命の
痕跡一つ無い月面に置き去りにされて
いたのか。


現代SF作家の代表格ジェイムズ・P・ホーガンのデビュー小説。
創元SF文庫を代表する1冊を決める読者投票で見事1位に
輝いた作品
でもあります。

本格SFにミステリー要素を織り交ぜた本作。人類誕生以前から
月面に高度な技術力を持った人間が存在した。
これだけで
ワクワクさせられるシナリオですよね。
主人公ハントは、様々な視点からその真相を解明しようと
試みます。SFではありますが、異星人の襲来とか銀河崩壊の
危機とかタイムトラベルとかいう話は出てきません。なので
チャーリーの正体が未来からタイムトラベルしてやってきた
人間ということもありません。物語は「チャーリーは何者なのか」、
「チャーリーはどこから来たのか」。この二点に焦点を絞って
展開されます。
謎を紐解く手段も様々です。チャーリーを生物学的に分析したり、
チャーリーが身に着けていたハイテク機器から情報を引き出したり、
死の間際に書かれたと思しき日記帳を解読したり。
謎の中心となるのは「チャーリーが地球人であるか否か」。
チャーリーは何から何まで人間と瓜二つ。しかし5万年前の
地球人は科学技術どころか文明も持ち合わせてはいないし、
月に行く事ももちろん不可能。ではチャーリーは宇宙人で、
進化の過程でたまたま人間と同じ姿になったのか。しかし
そのためには地球と全く同じ環境の惑星が必要だし、仮に
全く同じ環境があったとしても、地球人と全く同じ進化を辿る
保証はどこにもない。物語が進むにつれて、謎はどんどん膨らんで
いきます。

専門用語や説明文の応酬で、少々読み辛い部分もありますが、
一度読み始めると先が気になって止まらなくなります。
最後に明かされる真実も実に面白い発想で感心してしまいます。

この作品はシリーズ化されていて、日本では第4作まで発売
されています(アメリカでは5作目が出ているとか)。しかし
単体で読んでも十分面白いし、僕の読んだ2作目『ガニメデの
優しい巨人』と3作目『巨人たちの星』は、本作とは趣向が
かなり変わっています。やはりこの『星を継ぐもの』が一番
面白いですね。



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2009年12月10日

ザ・スタンド4

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生き残った人々の夢の中に現れる
老女マザー・アバゲイル。夢に
導かれるように、人々は彼女の
暮らすネブラスカ州に集まる。
一方で、闇の男ランドル・フラッグ
は自分の配下となる人々を、
ロッキー山脈の向こう、ラスベガス
の地に集めていた。善と悪の対立は
次第に形をなしていく。


スティーブン・キング作による大作小説の第3巻。当ブログは
基本的にネタバレ無しでやってますが、3巻なんて中途半端な
ところの評価をネタバレなしで書けるわけもないですよね。
なので、ネタバレは嫌だという人はひとまず小説を2巻まで
読んでからレビューを読んで下さいね(そんなタイムリーに
読んでる人いないと思うけど)。

1、2巻は新型インフルエンザによる世界崩壊を描いた半分SF
のような内容でしたが、3巻からは善と悪の明確な敵対関係が
構築されていき、SFよりもファンタジーとしての特色が強く
なります。とはいえ、別に魔法大戦が巻き起こったり奇怪な
怪物が暴れまわったりする事はありません。繰り広げられるのは
あくまで人間の物語です。

登場人物たちにとって、マザー・アバゲイルの元へ到達することは
とても重要な意味を持っています。にも関わらず、最初に到達
した主人公の一人・ニックの一行以外は、マザーの居所への
到達が具体的に描かれません。スチューとフランのグループに
至っては、いつの間にかマザーの元に到達していて、その時点で
すでに結構長い事居座っています。同じような展開を描く事を
避けたんでしょう。おかげで小休止的なパートでもダレることなく
テキパキ進みます。

4巻は善と悪の戦いがさらに明確になり、最後にかなり衝撃的な
展開が待っています。
それにしても、現代社会を舞台にして、さらに剣も魔法も怪物も
登場しないファンタジー小説って凄いと改めて感じますね。



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2009年11月26日

ザ・スタンド4

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新型インフルエンザ「スーパーフルー」
によって世界人口の大半は失われ、
現代文明は壊滅した。生き延びた
わずかな人々は、一握りの希望を
求めて各々旅に出る。
彼らは夢を見る。玉蜀黍畑の先で、
ギターを弾きながら彼らを待ちわびる
老婆を。そして、大いなる魔の手で
彼らを捕まえようとする闇の男を。


スティーブン・キング作による大作小説の第2巻。第1巻では
新型インフルエンザによって社会が崩壊するまでを描いて
いました。2巻では、生き残った者達の旅立ちが描かれます。

終末を生き延びたスチュー、フラン、ニック、ラリーの四人の他に、
2巻からは今後重要な役割を担うサブキャラクターが多数登場
します。主人公達以上に個性的な面々ばかりで、その人物も
魅力に溢れていますね。コンプレックスの塊であるハロルド・
ローダーなんかは、友達としてはあまり歓迎できる人物ではない
けど、物語を掻き回す重要な要素として良い味を出してくれていて
結構お気に入りです。
さらに別行動をとっているラリーがハロルドの痕跡を見つける
展開が好きです。ラリーはその痕跡から、ハロルドの緻密な性格と
頭の良さを見出し、出会ってもいない彼に尊敬の念を抱くように
なります。しかし読者はハロルドが短気で臆病で自分に自信のない
男だと知っている。ラリーとハロルドが対面した時の展開を
考えるだけで楽しいです。

今回から一段とファンタジー色が強まるんですが、ファンタジー
作品に欠かせないのが未知なる世界への冒険や、前人未到の
洞窟の探検などのアドベンチャー要素。現代社会が舞台のこの
小説に出てくる洞窟とは、ニューヨークのリンカーントンネルです。
人間の手によって作られた必ず出口のある安全なトンネルが、
文明が崩壊した事によって、明かりが消え、死体が散乱し、追突
した大量の車によって道を塞がれた恐怖の洞穴へと変貌します。
自分達に身近な世界も、一つ見方を変えれば別世界に変貌するん
ですね。

次巻からはこれまでのサバイバルから打って変わって、光と闇の
戦いが新たな局面に移ります。登場人物もさらに増えるので、
気を引き締めていかないと。



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2009年11月05日

ザ・スタンド 5

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アメリカ国内で発生した新型インフル
エンザ。それは、アメリカ軍が極秘に
開発していた細菌兵器が流出したもの
だった。致死率99%以上のこの凶悪
ウィルスは、その異常な感染力で
瞬く間に全米、そして世界へ広がって
いく。感染を防ぐ事も、ワクチンを
開発する事も出来ないまま、世界は
滅亡に向かって進んでいく。


スティーブン・キング作による大作小説。キングの最高傑作とも
言われ、キング版『指輪物語』ともいえる作品です(キング本人も
『指輪物語』を目指したそうで、本文中にも多くの引用が
あります)。
大学時代にも読んでいたんですが、豚インフルエンザが猛威を
振るう現在、タイムリーなネタとして再読してみました。
今回僕が読んでいるのは、文庫版として全5巻で発売されている
完全版で、現在がこれが主に出回っていると思います。

全5巻で構成される大作の序章という事で、今回は物語の核心に
触れることはありません。『ザ・スタンド』は、善と悪の戦いを
描いた作品ですが(もちろんその他の要素もふんだんに盛り
込まれています)、今回は世界観の構築と、4人の主要登場人物の
描写に終始しています。世界観の構築と言うのが、新型インフル
エンザ「スーパーフルー」によって世界が終末を迎えるまでの
事象のこと。世界が徐々に蝕まれていく様を、時に緻密に、時に
駆け足で描写しています。特に中盤にある「感染者がどのような
経緯で別に人にウィルスをうつし、うつされた人がどういう経緯で
次の人にうつし、その人がまたどういう経緯でウィルスを・・・」
というように、ウィルス拡散をテンポよく説明してくれる場面が
お気に入りです。終盤に描かれる「世界の息の根が止まる直前の
様子」も良いですね。

今回登場する主要人物は5人。寡黙な性格で、ウィルスに感染
しなかったことから被験体として政府に拘束されるスチュー。
学生でありながら妊娠が発覚し、両親(特に母親)との関係に
悩む女性フラニー。自身の新曲がヒットして浮かれたばかりに
多額の借金を背負い、実家に逃げ隠れるミュージシャンのラリー。
旅の途中で暴行を受け、保護してくれた警官夫婦にやっかいになる
聾唖の少年ニック。相棒ポークと強盗を働いて警察に捕まり、
死刑を求刑される寸前の犯罪者ロイド。
スーパーフルーの蔓延と共に、彼らの人物が緻密に描かれて
います。「全体の5分の1にこれだけの要素を詰め込んで描写
不足にならないか」という心配があるかもしれませんが、この1巻
だけで500ページあるので、そういう心配は無用です。
ちなみにメインキャラの5人の中で、スーパーフルーによる世界
崩壊にこの巻で関わるのは2人だけ。もちろん他の3人の
エピソードでもウィルスの存在はほのめかされます。しかしそれを
あえて前面に出さない辺り、人物描写をちゃんと重視している事が
伺えると思います。

まだほんの触りなのに物凄く面白い『ザ・スタンド?』。次巻では
崩壊後の世界が詳しく描かれます。



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2009年09月27日

機動戦士ガンダムUC 虹の彼方に4

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遂に示されたラプラスの箱の眠る
場所。バナージとオードリー、そして
箱の鍵であるユニコーンガンダムを
乗せたネィル・アーガマはラプラス
の箱を目指す。しかし行く手には、
フル・フロンタル率いる袖付きの
大艦隊が待ち受け、さらに箱の解放を
阻止せんとするリディの駆るバンシィ
も戦闘区域に向かっていた。


福井晴敏が手がける宇宙世紀ガンダムもいよいよ最終章。
謎を秘めたラプラスの箱の中身、そしてフル・フロンタルの正体が
明かされ、完結編に相応しい大ボリュームとなっています。

前巻で各々の登場人物は心の整理をつけているので(唯一
宙ぶらりんだったジンネマンも早い段階で復活)、今回は最初から
決戦仕様で物語が進行。上下巻に分かれているうちの上巻は、
そのほとんどが戦闘場面で構成されています。その中でも特に
印象深いのが、ユニコーンガンダムの圧倒的な強さ。
グレネードランチャー、対艦ミサイル、ミサイルポッド付ハイパー
バズーカ2丁、ビームガトリングガン6丁、脚部ミサイルポッド、
ビームマグナム1丁、シールド3つ、さらに大型ブースターまで
装備したフルアーマー・ユニコーン
は、袖付きの艦隊をほぼ
1機で粉砕するという化け物じみた戦果をあげてくれます。さらに
ローゼン・ズールとバンシィという強敵をも相手にする活躍ぶりを
見せてくれて大満足。にも関わらず美味しい所はマリーダの駆る
クシャトリアに持っていかれてしまった
というのが正直な感想。
特に起死回生のバインダー・ビット攻撃は、思わずプラモが欲しく
なってしまう格好良さです(でも4725円は高い)。

下巻はいよいよ、物語の核心に迫ります。ラプラスの箱の正体は
「なるほど」と思えるもので、インパクトには欠けるものの、
確かに連邦政府を覆しかねない代物でしたね(ちなみに僕の予想
した∀ガンダムというのは大間違いでした)。
逆に残念だったのはフロンタルの正体。何故シャアに似ているのか、
シャアの記憶を有しているかのような言動をしていたのか。それらに
関する説明はありましたが、素性自体はあまり捻りがありません
でしたね。


ここからは作品全体の総括をしてみたいと思います。久しぶりの
宇宙世紀モノのガンダムだった訳ですが、それに相応しく、
作品全体を通してニュータイプが大きなキーワードになって
いました。旧来からのファンには馴染み深い設定なので受け入れ
易いですが、宇宙世紀モノ以降からガンダムの世界に入った人、
ガンダムを全く知らない人には、少々敷居が高いように感じます。
過去の宇宙世紀作品を強く意識した表現が多くあるのもハードルを
上げる一因になっていると思いますね。この点に関しては、
ちょっと過度に引用し過ぎた感もありますが。
来年にはアニメもスタートし、世界規模で展開されるそうですが、
アニメ版は万人に受け入れられる工夫が必要になるでしょうね。



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2009年08月29日

アンブロークンアロー 戦闘妖精・雪風4

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30年前に地球に攻撃を仕掛け、現在は
惑星フェアリィで人類と戦う異星体
ジャム。ジャムを調査するジャーナリスト・
リンの元に届いたのは、ジャムに寝返った
人間ロンバート大佐からの人類に対する
宣戦布告だった。一方フェアリィでは、
ジャムによるフェアリィ空軍への総攻撃が
行われており、特殊戦機・雪風とパイロット
深井零は、ジャム機の捕獲を試みていた。


神林長平の代表作『戦闘妖精・雪風』のシリーズ第3段。前作
『グッドラック戦闘妖精・雪風』は、ジャムがフェアリィ空軍=FAFに
総攻撃を仕掛けてきた、というところで幕を閉じましたが、僕は
「続編は出ないだろうな」と、漠然と思ってました。1,2作目を原作
としたアニメ版がしっかりした形で完結してしまったからかも
しれません。だから、この第3作の登場は、純粋に驚いたし、
嬉しかったですね。

1作目と2作目では作風がだいぶ変わってましたが、今回も前作と
かなり印象が変わってますね。ジャムとの戦いは新たな局面を
向かえ、「リアル世界」という概念が盛り込まれています。この
リアル世界というのが曲者で、『雪風』シリーズを読んでいれば
何となく理解できる現象なんですが、本作から読み始めるという人
(たぶんいないと思うけど)には、かなり難解な概念なんじゃない
でしょうか。『雪風』シリーズは、人間と機械の関係が重要な
ポイントになっているので、両者の新たな関係としてこういう設定を
盛り込んだのは面白いです。2作目で語られた「複合生命体」という
のはこういうものなんでしょうね。今まで人類を無視してきたジャムの
視点というのがどういうものかを描写してくれたのも良いです。

1作目は様々なエピソードが登場し、2作目では最低限のエピソード
だけを抽出して、人物の内面を深く描写していました。3作目は
これまでで一番のボリュームであるにも関わらず、物語自体は
2作目からほとんど進行しません。ジャムのFAFに対する総攻撃は
結局どうなったのか曖昧なままで、ジャムの新戦略と、特殊戦による
ジャム機の捕獲、それとロンバート大佐の追跡がメインで
描かれます。劇中時間は半日も経過してないんじゃないでしょうか。
それくらい今回は密度が濃いです。さらに前回同様、えらく中途半端
なところで幕が降ります。ええい!また何年も待たされるのか!

相変わらずSF描写が凄く面白いんですが、物語がほとんど進行
しないのは実にもどかしいですね。なにより、今回は何一つ決着が
ついていない。
ジャムとの戦争が新たな局面に突入したということを
長々と説明しているだけとも言えます。
リアル世界という概念はとても面白いと思います。ただ、その概念を
広げ過ぎた感はありました。深い描写は次作に回して、もう少し
物語を進展させて欲しかったです。



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2009年06月26日

機動戦士ガンダムUC 宇宙と惑星と3

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新たな座標を示したユニコーンガンダム
と共に、バナージとオードリー、マリーダ
とジンネマン、そしてネィル・アーガマの
面々が一同に集った。ラプラスの箱を
求めて団結したかに見えた一団だった
が、連邦軍を嫌悪するジンネマンらは、
この奇妙な連合に馴染めずにいた。
その不協和音を読んでいたフロンタル
が、ネィル・アーガマに牙をむく。


福井晴敏が手がける宇宙世紀ガンダム第8巻。いよいよ物語は
終局。今回は最終決戦前の前座といった感じで、大規模な戦闘も
なければメインキャラの脱落もありません。

今回は各々のキャラクターが自分の立ち居地を再確認するという
感じの展開。バナージは「みんなのため」と言いつつ、最終的には
惚れた女を守るために力を尽くす理想的な主人公(笑)に成長。
お気に入りだったリディはいよいよ落ちる所まで落ちてきて、もう
復活の兆しすら感じられません。なんか、このままジェリドみたいな
最後を迎えそうで怖いです。
二人の男に挟まれた形のオードリーですが、もはやリディのこと
なんかこれっぽちも覚えていないようで。進む道に迷いは
ありませんが、進んだ先に何があるのかはまだはっきりしませんね。
今まで頑なに自分を貫いてきた反動か、ジンネマンは今回一番
迷ってます。しかも彼だけが、最終的な立ち位置が保留のまま
なんですよね。最終決戦を前にどう動くのか、気になります。
フロンタルは相変わらず正体不明。アンジェロは専用機を引っさげて
ユニコーンと対峙するも決着は保留。こいつらに加えてバンシィの
相手もしなけりゃいけないんだから、最終巻はずっと戦いっぱなし
なんですかね?
今回一番格好良かったのはマリーダ。出番が全然無いにも
かかわらず、かつての愛機・クシャトリアで戦場を支配する様は
正に圧巻でした。カラーページのイラストも実に良かったですね。

次回が恐らく最後となるであろう『ガンダムUC』。最大の謎である
ラプラスの箱の正体は、やはり最後に明かされるようです。
フロンタルの正体も気になるし、はやく最終巻出てちょうだい。



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2009年04月15日

グッドラック 戦闘妖精・雪風5

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ジャムによって撃墜された戦闘機・雪風
は、新たな身体・メイヴに転生して
蘇った。パイロットの深井零も瀕死の
状態で保護されたが、植物状態で回復の
見込みは立っていない。特殊戦の
ブッカー少佐は、雪風をAIによる無人
飛行で戦線に投入するが、そこで雪風は、
司令部の命令を無視して味方の前線
基地に向かって攻撃を行った。


神林長平の傑作小説『戦闘妖精・雪風』の続編。前作は異星体
ジャムとの戦争の中で繰り広げられるフライトアクションと、人類・
機械・ジャムの関係が中心に描かれていました。しかし今回は、
その中のフライトアクションの部分がバッサリとカットされ(何と
いっても雪風がまともに戦闘しない)、人類・機械・ジャムの関係が
より深く描かれています。
前作が執筆されてから20年近く経て書かれた続編なので、文章
自体の印象がだいぶ変わっています。多少読みにくくなっては
いますが、面白さは相変わらずですね。

前作のラストでついにジャムと接触した主人公・深井零。今回は
彼の心象の変化が深く描かれています。彼の世界に対する反応や
ジャムに対する敵意、そして雪風との関係。零という人間を構築
している意識が、物語の中で劇的に変わっていきます。彼と雪風は、
二つで一つの複合生命体として、対ジャムの切り札となっていくん
ですが、主人公が兵器としてではなく、新たな生命体として異星体の
脅威になるという展開が面白いですね。どうして脅威となるのかを
しっかり描いてくれているのも良いです。

前作の倍近いページ数ではありますが、エピソード数自体は
それほど多くはありません。その分、個々のシーンの描写が濃密に
なっているんですが、終盤はちょっと話が停滞気味に感じてしまい
ました。ここが唯一の不満点です。

さて、本作は物凄く中途半端な場面で終わってしまいます。僕はこの
終わり方が好きなんですが、続編ではどんな始まり方をするん
だろう?あの状況を逆転する展開がどういうものになるのか。
続編の文庫化を楽しみに待ちたいと思います。



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2009年04月05日

戦闘妖精・雪風5

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南極に突如出現した超空間通路から飛来
した侵略異星体ジャム。人類はジャムの
攻撃を退け、ジャムを通路の向こう側・
フェアリィ星へと押し戻すことに成功
するが、戦いはフェアリィ星で30年
以上膠着状態に陥っていた。フェアリィ
空軍特殊戦三番機・雪風を駆る深井零。
彼の任務は、味方を犠牲にしてでも
生還し、ジャムの情報を集める事だった。


アニメ化もされた神林長平の代表作。かれこれ30年近く前の作品
ですが、今読んでも実によく出来たSFストーリーだと思います。
現在SFマガジンで第3作が連載中で、単行本になる前におさらい
してみました。ちなみに読むのはこれが3度目になり、僕が持って
いるのは改訂版の『戦闘妖精・雪風<改>』です。

雪風シリーズのテーマは「人工知能の発達と、機械と人間の関係」
です。1作目となる『戦闘妖精・雪風』は独立した複数のエピソードで
構成されていますが、それらすべてに人工知能=機械が関わって
きます。人類はジャムと戦争を続けていますが、その中で進化した
人工知能は必ずしもそうは思っていません。むしろ、ジャムと戦って
いるのは自分たち人工知能であり、ジャムも人類ではなく人工知能
に戦争を仕掛けている。それどころか、人間というものを認知して
いないかもしれない。
この事実が断片的に明らかになっていき、人間の価値観や意識が
根底から覆されていきます。特にお気に入りなのが第5章の
「フェアリィ・冬」。滑走路の雪掻き係という、他のエピソードと
明らかに違う視点で進行するのと同時に、「この戦いに人間は
必要ない」という事実をまざまざと見せ付けてきます。

ページ数は400未満と、決して長い小説ではありませんが、
最低限の描写で文章が進行するので、展開的にはかなりの
ボリュームになっています。第2部は倍近い厚みがあるのに、
アニメ版のエピソードはこちらがメインで使用されているくらいです。
一つの場面に長い文章を使う事がないので、テンポよく話が進める
ことが出来るのも良かったですね(少々描写不足な気もしますが)。



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2009年02月24日

機動戦士ガンダムUC 黒いユニコーン5

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ダカールの街を防衛したバナージと
ユニコーンは、直後に現れた黒い
ユニコーン・バンシィに圧倒され、
連邦軍とビスト財団にに拘束されて
しまう。捕虜となったバナージの
前に現れたバンシィのパイロット。
その正体は、ビスト財団によって
再強化を受け、変わり果てた
マリーダだった。


福井晴敏が手がける宇宙世紀ガンダム第7巻。僕は一つの小説を
だいたい一月くらいかけてゆっくり読むんですが、今回は2週間も
かかりませんでした。それくらい今回の話は面白い。今までの中で
一番
だと思います。

今回はとにかくボリュームがある上に見所が満載です。いつもは
終盤に戦闘場面が出てくるんですが、今回は中盤から最後まで
ずっと戦いっぱなし。
その内容は、トリントン基地戦とガルダ戦の
二つに大きく分かれています。
トリントン基地での戦いは、同基地が序盤の舞台となる『0083 
スターダストメモリー』の雰囲気を漂わせていますね。舞台が同じ
というだけでなく、旧ジオンの残党軍が戦闘を仕掛けてくる辺りも
『0083』の印象を感じさせます。ここで登場するカークス少佐が
とにかく格好良いですね。大出力のビームスナイパーライフルを
携行しているとはいえ、なんと旧ザクでラー・カイラムと渡り合う
という奮戦ぶりを見せてくれます。もっと活躍して欲しかったなぁ。
ガルダ戦では、怒涛の空中戦とユニコーン同士の対決が展開。
アッシマーの後継機・アンクシャの活躍があまりなかったのが残念
ですが(好きなデザインなのになぁ)、総合的には実に濃い内容に
なっていました。ユニコーン同士の戦闘は、ちょっとばかり無茶が
過ぎる気もしますが、アクシズを押し戻したサイコフレームの力を
考えれば、あれくらいは起きても不思議は無いかな?あ、でも
覚醒したユニコーンが月光蝶もどきを出した時の現象が、
ダブルオーのトランザムとかぶっていたのは気になりましたね。

ようやく一本筋が通ってきたバナージ、迷った末に自分の道を
見出したオードリー、今回も大活躍のジンネマン、意外な形で
キャラが立ってきたアルベルトなど、キャラクターも実に魅力的に
描かれていましたが、お気に入りだったリディ少尉だけは一気に
落ちぶれてしまいました。
どうもデルタプラスに乗り換えた辺りから
調子がおかしくなっているような。リゼルに乗ってた頃の方が
よかったな(デザイン的にもリゼルの方が好き)。いや、彼の変調が
『箱』のせいだっていう事は解かってるんですけどね。



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2009年02月10日

機動戦士ガンダムUC 重力の井戸の底で5

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ラプラスの史跡での戦いの末に
地球に落下したバナージは、
ユニコーンガンダム共々、ジンネマン
が指揮する艦・ガランシェールに身を
寄せていた。ラプラス・プログラムは
新たな座標として連邦政府の首都
ダカールを指していたが、ガラン
シェールは砂漠に埋もれて身動きが
取れない状態だった。


福井晴敏が手がける宇宙世紀ガンダム第6巻は、いよいよ舞台が
地上に移ります。しかも戦場は連邦の首都ダカール。これはかなり
燃えるシチュエーションですね。

これまでは出番がありながらも、あまり前面に出てこなかった感の
あるジンネマンが今回の主役。序盤以降はフロンタルに完全に
見せ場を取られていましたが、今回はバナージとの絡みも沢山
ある上に、彼を導く重要なポジションを担っています。僕はオッサン
キャラが大好きなので、オッサンの貫禄が際立つ今回のエピソード
は大満足でしたね。
二人の関係が、いわゆる疑似親子の関係だったのが良かったです。
育ての父親がいないバナージが、ジンネマンに父親の背中を感じ、
ジンネマンとの砂漠横断で一回り成長します。その後の意見の衝突
から殴り合いが始まり、そしてジンネマンから巣立っていくバナージ。
この1巻で二人の関係がここまで進展するのは意外でしたが、
おかげで大満足のボリュームになってました。

バトルの方は、初のモビルアーマー戦が展開。ダカールの街を蹂躙
する巨大MAシャンブロ。このシーンは是非アニメで観てみたい
ですね。NT−Dシステムを制御するバナージ、ユニコーンとデルタ・
プラスの共闘など、王道ではありますが、とにかく燃えるバトルが
展開します。
バトル面に関しては今までで一番面白かったですね。

ドラマパート、バトルパート共に大満足でした。さらにラストに
怒涛の展開が待っていて、嫌でも続きが気になる結末です。
クライマックスに向けて、このまま加速していって欲しいですね。



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2009年01月09日

機動戦士ガンダムUC ラプラスの亡霊3

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パラオから脱出し、再び連邦軍の
戦艦ネィル・アーガマに戻った
バナージとユニコーンガンダム。
ユニコーンに搭載され、先の戦闘で
起動したラプラスプログラムは、
謎に満ちた「箱」の在処を指し
示していた。その場所とは、宇宙
世紀の始まりに起きた悲劇の舞台、
ラプラスの史跡だった。


福井晴敏が手がける宇宙世紀ガンダム第5巻。しばらく読んでなかったら
3巻分も溜まってしまった。ペース早いよ福井さん!

第5巻はこれまでより若干ゆったりとした展開になっていますね。
今回は新たな謎が生まれる訳でも、謎の一部が明かされる訳でもなく、
次巻以降から始まるであろう地上編の前の小休止といったかんじに
なっています。
今回の主題となるのは、ガンダムの力に翻弄され、内装された
NT−Dシステムに取り込まれる自分に怯えるバナージの葛藤。
無意識の内に暴走し、多くの人間を手にかけた事で、バナージは
二度とガンダムに乗らないと決意します。自分の責任から逃げる
バナージに対して、ダグザが大人の視点からバナージを叱責する
訳ですが、バナージの心境の変化をもう少し解り易くして欲しかった
ですね。ガンダムに乗り込むための理由を、もっと明確にして
欲しかったです。

今回は戦闘にもあまり華がありません。ユニコーン起動、赤い彗星
の襲来、大型MSとの戦闘とNT−Dシステムの覚醒。これまでの
巻では、戦闘場面に大きな見せ場がありましたが、今回は
フロンタルと小競り合い程度の戦闘をするだけ。むしろ直後の
大気圏突入の方が盛り上がったような。

次回はいよいよ地上編ということで、新たな展開が期待できます。
しかし今回のガンダムの主人公は、所属陣営をコロコロ変えますね。
この巻でてっきり連邦軍に組み込まれるのかと思ってたんですが、
最後にあんなことになるとは予想外でした。



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