■描きたかった、アラビアンナイトのような世界

 平成20年に小説「ぶるうらんど」で泉鏡花文学賞を受賞した横尾忠則さん(73)の受賞後第2作となる小説集「ポルト・リガトの館」(文芸春秋)が刊行された。スペイン・ダリの館で日本人画家が経験する怪異譚(かいいたん)のほか、異国を旅する3つの物語が絡まり合う。読者が迷い込むのは、薄もやに包まれたような現実と幻想のあわい。美しく、あやしく、五感を刺激する文章が織りなす迷宮世界に引きずり込まれる。(宮田奈津子)

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 「ポルト・リガトの館」の主人公は日本人画家の唯典。スペインを旅し、巨匠ダリの屋敷を訪ねる。ダリやその妻・ガラと奇妙な問答を続けるうちに、時空がゆがみ始めて…。

 「不可思議、といわれるけれど、物語の中のつじつま合わせなんて、おもしろくない。だって、自分自身という存在自体が謎めいているわけだから。訳が分からないが、ユニークな作品を。アラビアンナイトのような世界を描きたかった」

 同著はほかにも、アマゾンを旅する元夫婦が不思議な経験に遭遇する「パンタナールへの道」、カシミールを舞台にした芸術家の物語「スリナガルの蛇」の2編が収められている。

 生と死、意識と無意識、夢と現実、輪廻(りんね)…。異境に迷い込んだかのような、めまいを覚える。私小説のようだが、私小説ではない。全体に読者を混乱させる伏線が巡らされている。だが、ある瞬間に気づく。「どんな不思議な出来事も、一人の人間の内側で起きていることなのだ」と。

 美術家として有名だが、小説家としてのデビューは平成20年。71歳だった。エッセーなどを担当していた編集者に「小説でも書いてみては」と勧められた。

 「冗談じゃない」とかわしたが、その夜書きたくなった。死後の世界が舞台の「ぶるうらんど」を一夜で書き上げた。友人の瀬戸内寂聴さんに原稿を読んでもらった。「おもしろいわよ。本にしなさい」と言われた。「“寝た子を起こされた”感じ。おだてられると調子にのるから」と笑う。

 一方で、“作家”という肩書には慎重である。絵でも小説でも創作には全身全霊をかける。どちらかがおそろかになってはいけない。今は美術家として絵を描く時期という。「ただ、ある日、小説を書きたくなるかも」。創作への意欲は次々とわき出てくる。

 「活動しないとエネルギーが出てこない。創作に入るとエネルギーが循環しはじめる。そうやって作品を作ってきた。だから、かかないと死んじゃうかも」

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