
やがて起こる悲劇的な因果と向き合い、最高の未来を求めて各人物が奔走する物語。
「天文学会」という組織に所属しているが、実態は生徒会の補佐、暴走する学生の鎮圧を役割とする実働部隊的な役割が強い。
暴力的な柔道部との殴り合いや、日常シーンで友人キャラのケニーが頻繁に殴られるなど、とにかく蹴る殴るの描写が多い。
ほとんどのキャラクターの思考と行動が不快になるほど傍若無人で、掛け合いもきわめて冗長で日常シーンは非常につまらない出来に仕上がっていた。特に副会長のヒスり&他力本願は何度殴りたくなったことか。本作の致命的な欠点である。
七難八苦と思えるシナリオを耐え忍べば古川 ゆいという最高のヒロインを中心とした秀逸な物語が待ち受けている。
彼女のいじらしさ、懸命な姿には心が打たれるし、求めたくなる未来が一つに定まっていく物語構造に感嘆とした。
★ネタバレ注(クリックで展開)★
中でも、最終ルートの一つ前で重大な決断をした奏に心を打たれた。自らの幸せを置き去りにしてゆいだけの幸せを希い、別の世界に託す姿が何より格好いい。
『動かないエレベーター』に背中を預ける一枚絵をよく描いてくれたものだ。
あのシーンと、全力で佳織を守るゆいのシーンがあったことが救いだった。
自分には合わないと感じながらも投げ出さなくてよかったなと。少しは本作を愛することができたのかなと思えたのだ。