得 点:95
シナリオ:☆☆☆☆☆
キャラ性:☆☆☆☆☆
テキスト:☆☆☆☆☆
グラフィック :☆☆☆☆
システム:☆☆
音 楽:☆☆☆
プレイ時間:40h程度
壮大な設定を広げた上で物語として綺麗に纏め上げられた、魅力の籠もった一作。運命に翻弄されるキャラクター達が生み出す歓喜と悲劇と絶望が多重に織り成されている重厚なシナリオ構成は見事。このボリュームを以てしても誰もが救いを求め続ける展開を追い続けていたらこのゲームのクリアは一瞬です。それだけの読み応えを感じました。
※以下割と重大なネタバレあり
壮大な設定を広げた上で物語として綺麗に纏め上げられた、魅力の籠もった一作。運命に翻弄されるキャラクター達が生み出す歓喜と悲劇と絶望が多重に織り成されている重厚なシナリオ構成は見事。このボリュームを以てしても誰もが救いを求め続ける展開を追い続けていたらこのゲームのクリアは一瞬です。それだけの読み応えを感じました。
※以下割と重大なネタバレあり
推理ゲームとしての様相を見せる共通ルートはカオスヘッドをやはり想起させられた。ただ、ほぼその”謎”や”世界の仕組み”に終始してしまった前作と大きく変化したのは『家族』や『部活』といった人間を繋ぐキーワードが中盤以降から主題へ変わっていく点だろう。
特に乃々ルートはそれを最も強調した個別ルートであり、驚きの展開と温かみのあるシナリオを両立した非常に良質な物語だった。
作品全体でも数少ない心落ち着くシーンであり、この家族がどうかいつまでも心健やかに関係が続いていくように願わずにはいられなかった。
こことかもう最高に可愛いんだよなぁ。
ただ乃々には心が読めない場面が散見されていてどうも完全に好きになれない、言葉では言い表しにくいモヤのようなものが心を支配していた私を、展開と真相が真正面からぶん殴ってきた。
何より乃々の正体が南沢泉理だったことには度肝を抜かれた。伏線をトリック方式で回収して非常に驚いたと同時にこれまでの事を思い出すと泉理より一層愛おしく感じられるようになった。本人としてはコンプレックスなのかもしれないがこの目つきの悪さがめちゃくちゃ好きすぎる。
二次元ヒロインって基本的に見た目は全員が可愛いから見た目にコンプレックスを持っているキャラクターってすごい描きづらいはずなんだけど泉理は明らかに乃々に比べるとビジュアルが劣っているのが説得力ありすぎて最高。
虐待、というか人体実験という命の尊厳をも奪われていた自らの心を救い出してくれたにも関わらず眼の前で亡くなってしまった友人へ、生き残るべきは自分ではなかったという哀惜が自分に望まぬ能力を与えてしまったというあんまりな運命、人体実験を目撃してしまった主人公との皮肉で運命的な出逢いを果たしてしまう、この境遇を経験しながら乃々という仮面を被って強気に振る舞っていた泉理を好きになるなと言われても無理な相談である。
顔も声も違う(声優は同じらしいが明確に演じ分けている)、それでも過ごした時間は変わらない。それは主人公を呼ぶ、親しみの込もった一言だけでも確かに分かる。本当に一緒に過ごして生きてきた女の子はこの娘なんだということに気づける。
ヒロインを攻略している最中に正体は実は別のヒロインでした、となれば大顰蹙を買いそうなものであるが不思議とそんな感情は一切湧かず寧ろ心は優しい気持ちに満ち溢れた。これも伏線を丁寧に張り巡らされていた賜物だろう、共通ルートでは全く分からないというところもいかに泉理が自分自身に対してコンプレックスを持っているか、またそのコンプレックスを抱えさせる運命がどれだけ悲痛に満ち溢れたものだったかを物語っている。南沢泉理というキャラクターひとつは、私が「CHAOS;CHILD」に対して魅力を感じた要因のほぼ全てと言っても過言ではない。
泉理を救えなかったことを主人公がトラウマとして抱えていて、その泉理が主人公を認識していたことを考えるともはや運命でしかない。その当時は救えなかったし、偶然生き延びて、仮面を被って家族になって、何年も経ってようやく主人公は泉理の心を救えた。その歓びは悲劇に浮かされている感もあるが、過去の悪夢を振り払って未来へ賭けていくという構図はあまりにも美しく、倒錯的な芸術とすら感じる。
全てを打ち明けて立ち去ろうとした泉理を抱きとめて、誰もが、いや、泉理が最も欲しいであろうこの台詞を放った主人公が一瞬で好きになった。それでこそプレイヤーの分身、それでこそ主人公だと一気に好感度が跳ね上がった。
そして乃々に成りすまして培った経験を全面に活かして南沢泉理として生きていくのはもう、最高でしかない。このボロアパートとエプロン、似合いすぎでは?????見た目から溢れる幸の薄さ、その運命を全部受け止めて主人公に添い遂げたその姿、全てが魅力的過ぎて死んだ。
ただあまりにも出番が少なくこの後一瞬で終わってしまったのが残念で仕方ならない。南沢泉理ちゃんがもう一度人生をリスタートしていくところをもっとじっくり眺めたかった。応援したかった。なので続編絶対買います。
あまりにも謎すぎる上に悲劇的な最期を迎えるうきルートとバカゲーの華ルートは個人的には微妙でした。
華ルートは爽快感ありすぎてずっと笑ってましたが。何だあれ?カオチャ無双?
圧倒的可愛さと良質ラブコメを展開しながらあまりにもあんまり過ぎる最期を迎える雛絵ルート。頼むからこの2人の幸せな未来を見せてくれ……。ハッピーエンドどこ?どこ?
ロリ雛絵の犯罪的な可愛さはさておき、『嘘』がきっかけで家族崩壊に繋がった雛絵の過去はなかなかに壮絶だった。この家族にはcampusのウソシリーズをプレイして嘘にも魅力があることを知ってほしいですね。
途中からPTSDに思考が支配されるヒロインを見ているのはただ辛かった。特に幸せを知った後だからこそ心に来た。太陽みたいに明るい雛絵のシナリオは、ラブコメで夕日のように輝き、時間の経過で訪れたシリアスという名の宵闇に支配されていってしまいました。
トゥルーに関して言い過ぎるのはよくないのでダラダラと喋るのは避けます。ただ、期待を裏切らず一寸先も読めない展開を続け、やはりあの謎の委員会は氷山の一角みたいな描かれ方をして終わったのを除いては納得のいく結末を見せてくれました。
願わくば、彼女たちの未来が平穏であることを――――――。