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得  点:78
シナリオ:☆☆☆
キャラ性:☆☆☆☆
テキスト:☆☆☆
グラフィック :☆☆☆☆☆
システム:☆☆☆☆☆
音  楽:☆☆☆☆
プレイ時間:10h未満


本作の発売前、特にティザームービーから受けた衝撃は凄かった。前作から格段にレベルアップしたグラフィック、想像を掻き立てられるテーマ性に、前作・前前作と光るモノが随所に見られたことでにわかに沸き立つ「次こそ」というブランドに対しての期待が重なり、話題を呼ぶ一作になるであろうと思わせられた。

結果としては、確かに面白くはあったが、前2作と同様この作品もやはり「惜しい」出来に。大作の誕生とはならなかったが、以下ではネタバレを織り交ぜつつこの作品の光る部分や残念な部分をピックアップしていきたい。

・共通
最近体験版をやらない運用を始めたけどこの作品に関しては正解だったと思う。SFをメインテーマとしながらも勢いで突っ走っている部分が多いので、完結前に解釈を重ねると肩透かしを食らうかもしれない。

世界の現状がどうなっているかは未来の世界の話にしてはかなりシンプルに纏まっていてわかりやすいのだが、端末の形状等が現代(2018年)と対して変わっていないのは如何なものか。技術進歩が2046年で止まったにしろもうちょっとこう、未来っぽさを感じる形に進化していた方が自然。

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例:2000~10年台を彷彿とさせるノートパソコン(背景の後ろ)

こういった形の端末を用意するなら、更に言うと現代でも既に誰の手にも渡らなくなっているラジオ端末を利用するならもうちょっと舞台設定は近代に近い方が違和感ないのでは、と思ってしまった。ハレー彗星と絡ませたかったのかもしれないけど、そこまで抜本的なシナリオに組み込まれた要素でもなかったようだし。

・水雪
義妹ヒロイン。個別ルートでは共通ルートでかぐやを失ったことでショック状態になったことやシナリオ的に肝要な部分が影響して記憶喪失となった主人公を二度と失いたくないという思いから心の距離を縮めていく。

ラプラシアンらしい軽妙なノリでシリアスとのバランスも良かった。このルートをプレイしている途中に「こんな重いメインテーマいらなかったのでは……?」とつい思ってしまった。このライターは日常や恋愛を重視した作品を執筆してみてほしい。絶対面白いと思う。

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あとめっちゃいたいけで好き。ずっと眺めたくなる黒い瞳が好き。

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それだけに何の説明もなく姿を消していったかぐやルートの主人公はマジでぶっ殺したくなった。

・秋奈
父親想いの女の子。事故の影響により、生きていながら人間の生活とは逸脱した、記憶から行動まで機械に全て管理された生活を余儀なくされる、死ぬと同等かそれよりも辛い現状にいる父親の姿を目の前で見ているため『人工鳩に肉親を奪われた』という意識が非常に強いという印象。

家族観がテーマとなっているが、秋奈の立場的にも主人公と非常に近く、主人公が父親と娘の関係に割って入るところに全く違和感はなかった。作品全体のテーマと繊密に携わっていながらもヒロインの個性を活かした良ルートだった。

残念だった点は、全ルートにも言えるが、秋奈個別ルートでは特に文量の少なさによって登場人物の行動が唐突に見えてしまうところが散見された部分。私は脳内補完でやり過ごしました。

・椿姫ルート
トゥルーであるかぐやルートの布石となる、シナリオ的に重大なポジションにあるルート。取って付けたような恋愛描写には笑ってしまうレベルだが、次々と明るみに出てくる伏線回収や舞台設定を知りつつ読み進めていくのは楽しかった。

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椿姫ルート終盤の「女の子としての弱さ」が出たシーンは可愛さとしては秀逸。展開としてはかまってちゃんみたいな行動を取り続ける主人公が残念だった。この主人公は基本的に誰にも相談せず突っ走って決定するかと思えば誰かに言われたことをすぐ鵜呑みにして方針転換していくので、人間性に共感出来なかった。

・かぐやルート
他のルートでも片鱗を表していた主人公の独善っぷりが遂に全開となるルート。
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相手の言うことに合わせて行動を捻じ曲げるの本当にやめてほしい。

展開としては面白かったのだと思うが、ここに至るまでの葛藤や熟慮するような描写がほとんどなかったのが致命的。プレイヤーに没入させる隙をもう少し作って、間を持たすことが出来ればボリューム不足と感じることもなかったと思う。

それとメインヒロインであるかぐやの魅力が全く引き出されていなかった点はかなり気になる。かぐや『ありき』で作っているのであれば、もっと主人公たちと一緒にいる時間を長めに描写したり、魅力を感じさせるようなエピソードをつぎ込んでほしかった。

主人公がかぐや一直線に走っていった理由は人工鳩の件が関係しているのかもしれないが、それにしてもプレイヤーの心を置いてきぼりにし過ぎだと思う。共通終盤・かぐやルートに限らなくとも、「何故?」となってしまうような、思いつきで動く登場人物の行動がかなり目立ったので、キャラクターの行動理念についてプレイヤーを納得させる工夫があればよかったと思う。

・総評
個々の設定や一部の展開は光っていただけに、やはり非常に「惜しい」と思わせる出来だった。美麗なグラフィックと先を読ませるテーマ性の高さはオープニングやパッケージだけでも充分感じさせる程で非常にクオリティが高い分、シナリオの細かな部分が気になるのだと思う。

シナリオとギャグパートの使い分けは上手かった。「ここではふざけちゃいけないだろ」って思う場面は少ない。ただ、シナリオが重い分ギャグもマイルドに収まっていた。ちゃんこん君とかいう異質な存在も慣れてくると普通に可愛く見えてくる(笑)。

方向性やコンセプトに間違いはなかった。あと少し、人物像の描写を丁寧に行い、魅力を引き立てるだけで同じシナリオ・展開でももっと良い出来になったはず。後2ヶ月ぐらい延期しててもよかったのでは。

・その他
先述したが、ラプラシアンの次回作では恋愛に主題を置いたシナリオを見てみたい。絶対に面白くなる気がするんだよなぁ。