2019-04-14-010759
得  点:81
シナリオ:☆☆☆☆
キャラ性:☆☆☆☆
テキスト:
グラフィック :★★★★★
世 界 観 :
システム:☆☆☆
音  楽:☆☆☆☆☆
プレイ時間:16~20h程

死の香りが漂う田舎町を彷徨いながら、仲間との親交を深め合い、真相へと近づいていく作品。

ジャンルは終末ではなく民俗学とミステリー。したがって、表題となっている『ワールドエンド』とは作中に出てきた物語がキーアイテムであることを示しているだけではなく、一人の人間から見た世界の終わり(=死)を中枢とした物語であることを意味しているのだと思う。

さて私は当作を紹介する際に、Twitter、批評空間、そしてこのブログで「民俗学×ミステリー」とジャンルを表してきたが、公式ジャンルは『ミステリー×恋愛アドベンチャー』である。作中では何度も繰り返し民俗学の概念が登場していたし、公式サイドとしてもサブジャンルぐらいには意識しているだろう。しかしあくまでも、メインジャンルは恋愛であるとしている。

恋愛

この作品における恋愛を考える。
まず、間違いなく民俗学よりも恋愛描写は”薄”く(舞美・雪乃ルートで顕著)、敢えて相手側の心理描写を描かなかったことで輝いた例(未海ルート)もあるのだが、総じて個別ルートでは何ともいえないところに落ち着いていた。

恋愛要素はどちらかというとシナリオの肝になる真相部分の深層に眠っており、おいそれと感想で書いてよい部分でもなかったが、たしかに、読み終えてみると、成る程『ミステリー×恋愛アドベンチャー』かなと思えた。

恋愛を最も意識する個別ルートを振り返ってみる。

まずこの作品にはルートロックが掛かっており、強制的に攻略順は(沙也、玲衣)→ 舞美 → 雪乃 → 未海 に固定される。可憐さではツートップを争う2人が最初となるのは少々もったいない気持ちもあったが、シナリオに深く関わっている人物ほど後に回す必然性があるのでオールクリアした今になって考えてみたら腑に落ちる。

沙也・玲衣ルートはマップ選択移動式のADVパートと相性が良く、あちこち忙しなく動き回る彼女達との邂逅を何度も楽しめて楽しかった。これが創作だから好感度が上がるのであって、現実だったらストーカー扱いされるのだろうなと余計なことを考えてしまったが……。

特に沙也は付き人として主人公をこき使っている内に距離感が縮まっていき気づけば恋愛関係になっている、お嬢様との恋愛関係の中でもかなり好きな部類だったので個人的に楽しめた。並行して紡がれた彼女の生い立ちと魅果町が抱える暗部に触れていくストーリーも読み応えがあった。しかし……最後の強烈な胸糞展開だけは度し難い。

玲衣は沙也のような強烈な終わり方は見せず、彼女の優しさと強さが随所に見られるルートだったと思う。特に大切な存在を失って今にも命が消えかかっていそうな状態で魅果町を訪れた主人公の胸には、彼女の生き方が響いただろう。

舞美ルートはルートロックが掛かっていた割にシナリオの根幹に関わっていたわけでもないし、玲衣ほどではないがある程度予想のついた正体の種明かしと全く恋愛をしている感じのしないシナリオが残念だった。本作の恋愛要素が薄いと感じてしまった要因がかなりの割合でここにある。

サバサバとした性格である舞美のデレは僅かながらも見る機会があって可愛かったが、結局のところ彼女ひとりで行動して完結しているようなシーンも多く、前述の2人と違って一般人としての立場なのに主人公へ全く依存する気配がないのも感情が入っていかない原因になっていた。

雪乃ルートは真相編でかなり印象が変わる。ルートが終わった当初の印象は「何か足りない」だった。この感情そのものが伏線となっている(?)のはやられたな、という感じだが。。。

真相編で彼女が主人公に向けて贈った言葉は単体でも涙腺を壊すパンチ力を持っており、その一言があったからこそ雪乃ルートのゆっくり絆を培っていく展開に谷より深く納得出来る。

未海は非常に可愛い。舞美ルートですら恋愛描写が薄かったのを見て、真相に近づいていくルートのヒロインこそ恋愛描写は薄いのだろうと期待値が下がっていたのが逆に幸いしたのか、感情の読めない未海の素性が本当にただの女の子で死ぬほど可愛かった。ただちょっと女の子っぽいLINEをするだけであんな可愛くなるのは流石に反則では??

特に、恋愛面での転機になったであろう夏合宿で共に一夜を明かすイベントで、未海側の心情が一切語られてないところに想像の余地があって萌える。このイベント以後主人公との距離感がナチュラルにグッと縮まっているのは明確で、物静かな未海ちゃんの、些細な感情の変化を感じさせるものだった。凄く良かった。凄く良かった!!


民俗学

民俗学は作中に色濃く出てきたが、当作を読み終えた段階では雰囲気作りの舞台装置に過ぎなかったのかなと思う。「想えば、現れる」とは黄泉還りという神への叛逆は伝承が現実になってしまったことを示しているのだろうか。ここにはもっと深読み出来る要素が隠されているかもしれない。熟考の余地あり。

ミステリー

殺人事件が何度か起こっていながらも、事故死扱いされたという不穏な状態が続いている雰囲気の中で本編がスタートしていく。刑事が主要登場人物として幅を利かせていることからもわかるように、犯人探しをする楽しみ方が出来る。黄泉人≠犯人が濃厚になっていく頃には、シナリオの全貌を含めて”だれ”が”だれ”なのか気になって仕方なかった。

生気を無くしていて騒がしくない主人公も鬱蒼とした作風によく調和しており、無駄な自己主張がないため読みやすかった。

真相編

真相編はミステリを解明する部分なのでかなり伏せるが一箇所だけ言いたいところがある。
先述した雪乃と主人公との最後のやり取りは、雪乃ルートを納得させているだけに過ぎるわけではなく、もっと原始的な感動を秘めていたシーンだった。

最後の別れは、ほんの少しの言葉しか交わせていない。ほんの少しの一言が、魅果町で出会った人々に囲まれて人間を取り戻した主人公が世の中に生きるレールから外れないための必要な最後の一押しだったのだと思う。主人公は現世に帰り、雪乃はあの世へ還っていく。その2人のつながりと別れが、どこまでも愛おしいラストだった。

作品の中心的な要素かと思わせながら残されたいくつかの謎は雰囲気を匂わせていただけの要素かなと思っていたが、どうやら続編を仄めかすものだったよう。続編など今後の展開にも期待したいところ。