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パッケージを飾り名実共にメインヒロインである涼音ちゃんの生き様は勿論、キレる頭脳とその身体でこちらに迫ってくるサブヒロイン・希星ちゃんの台詞回しにもインパクトのあった一作。

やっていることは枕営業だが業界の闇を思わせる描写があるわけではない。本作で繰り広げられるのは、ほぼ「枕営業で成り上がるヒロインがどういう目に遭い、どういった結末を迎えるか」の一点に限られる。分岐した物語で辿り着くそれぞれの結末は三者三様に感じさせられるものがあった。

以下核心部分含むネタバレ有り。閲覧注意。

・希星エンド
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このエンドでは、以前から何かを画策していた希星が、詐欺師のように巧みな話術を用いて主人公を虜にしてしまう。経験ゆえなのだろうが、枕営業で頭角を表す涼音の成功は涼音自身の能力に依るものではないことを的確に見抜く観察眼が凄い。

希星がどのように現状を打破してトップアイドルの座をより確実にしたのかの描写も欲しいところだが、依存することでアイドルである自分を保つことが出来ていた涼音が、依存対象のプロデューサーを失ったことをどう乗り越えていったのかが激しく気になるところである。

それさえあれば、希星から「何も無い」と言われていた涼音の中身を知れることが出来たはずなので、この点に関してはとても惜しい。

・トップアイドルエンド
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半バッドエンドの匂いを感じさせられる涼音の瞳が印象的。
このエンドは、「成功体験だけが必ずその人を豊かにする訳ではない」という概念をシナリオによって表したものといえる。

トップアイドルとして君臨した最後のCGでは目に光を灯し、ハッピーエンドのように締めくくられはするが、その過程で見せた瞳を見ると、あらゆる心を犠牲にして成り上がったことを視覚的なインパクトを以て感じさせられる。成功の過程で失ったものが数多い彼女は、いつまでトップアイドルとして居られるだろうか。結果の前後を想像すると、表情を崩して喜ぶことはできない。

・結婚エンド
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アイドルを辞めてしまう終わり方。この題材で言うのもなんだが、一番好きな終わり方である。

アイドルを志した理由や一年前にSNSで炎上した経緯などが一切分からない(=この作品一番の問題点)ため、何故ここまでプロデューサーに執心しているのかが不明であるのだが、ともかく事実としてプロデューサー頼りで生きてきた彼女がアイドル業で成功することによって同業者から執拗ないじめを受ければ「自分はアイドルとして続けていくべきなのか」と悩むことになるのは当然であろう。

アイドルとして食べていくということは、何かしらの事由で「自分にはアイドルしかない」と思い至ったからこそであると推測できる。ともすれば、それは生きる理由にも等しい重さになり得るわけだ。

その対象がアイドル業ではなくプロデューサー個人に変遷したのなら、即ち生きる理由はプロデューサー個人に依るということになる。全くアイドルである意味が無いからアイドルをやめるのは心から同意である。

涼音が一番自然な笑顔と心持ちでいられるのはアイドルをやめることなので、このエンドが一番気持ち良い。先程トップアイドルエンドの感想で述べた「成功体験だけが必ずその人を豊かにする訳ではない」という概念は、このエンドによって裏付けられるのだ。

その人にとって最も穏やかで、幸せな終わり方を迎えるものこそ真のハッピーエンドと私は呼びたい。幸せのない大きな成功よりも成功のない小さな幸せ、である。