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主人公がリードする恋愛かリードされる恋愛か選べる珍しいタイプの純愛ゲー。

全体を通して会話に心地よさを感じる作品である。全体に広く浸透するギャグ調の会話は勿論、要所(告白や問題解決シーン等)でも相手の発言を吟味した上で返事をする場面が多く見られ、その掛け合いの数々はコミュニケーションの理想形に近かった。

※以後、便宜上の理由で作中の表記に合わせて「リードする方」のシナリオをAルート、「リードされる方」のシナリオをBルートと書いている箇所あり。


 

四谷・グレンジャー・ハンナ

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長らくフィンランドで暮らしていた割に流暢な日本語を話すヒロイン。

サブヒロインである妹のリサ(めちゃくちゃ可愛い)がハンナよりも先に登場するので、最初はそちらに気を取られてしまうが、ハンナの純粋で優しい性格には惹かれるものがあった。

リードする方

主人公のイケメン能力が発動してから付き合う運びとなるため、このケースだとリサも主人公に対してある程度心酔することになる。葛藤するリサちゃんの姿がなんと可愛いことか。

恋人同士でイチャイチャするのもさることながら、(ハンナの)家族ぐるみでハンナと向き合っていくことになる。今を大切にするあまり過去を捨て去ろうとするハンナの暴挙を止めた主人公のファインプレーが光った。あれをしてしまえば取り返しがつかない。何をするのかとヒヤヒヤしてしまった。

リードされる方

こちらでもハンナの家族に関するエピソードを聞くことができる。本作ではAルートBルートの分岐で展開されるエピソードのタイプが異なることもままあるが、ハンナの場合はその限りでないといえる。それだけ、彼女にとって家族が心を占める大事な存在なのだろう。

リサとは関係が遠くなってしまうが、その分ハンナの両親に近づくルートである。最後の展開は芽愛の趣味もうまく絡めて、2人だけでは解決できそうにない事象を「周囲に頼る」ことで解決する心温まるエピソードだった。

才色兼備で、欠けたところなど何処にもないという先入観を抱いてしまうハンナ。彼女に蝕む孤独をより深く知ることで、主人公がハンナにとってかけがえのない存在になっていく。その過程を、手を抜かずに描いてくれていて良かった。

種村小柚子

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めちゃくちゃモテる先輩ヒロイン。元生徒会長。

泣きぼくろが象徴するように(??)茶道で有名な実家の生まれであり、厳しく躾けられてきた背景がある。

ストレスの溜まりやすい環境からか身体を動かす趣味を持っており、OPを見てもわかるがバッティングやツーリングを行うデートの数々が印象深い。主人公君が持つ唯一の趣味と思われる釣りを一緒にする唯一のヒロインである(ただし釣果はゼロ)。

リードする方

共通ルートでは振り回してくる印象の強い小柚子だが、このルートでは彼女のいくつかの弱みに触れることができる。

摩耶ルートなどでは平然とした顔で文化祭の催し物をお化け屋敷に変更すると言っていたくせに、内心はあれだけ怖がっていたのかとここで知ることができる。特別な立場に居て初めて知ることのできる情報であることをまざまざと感じさせてくれる、ニヤニヤが止まらないエピソードである。

ピロートークで甘え全開になる彼女の緩みきった表情は必見。あまりの萌え性能を前に画面を直視できなくなった。

リードされる方

共通パートのイメージ通り、振り回される恋愛を楽しむことができる。ただ、これは全ルートで言えることだが、リードされるからといって主人公の意思が突然消え失せるわけではなく、しっかりと自分の考えを持って対話を続けているところが評価出来る。

ほとんど恋愛一色だったAルートとは打って変わって、小柚子の進路問題まで踏み込むシナリオになっている。

ただここでは、シリアス控えめなコンセプトが裏目に出たのか、雲をつかむような話が飛び出したり小柚子の母が2人の現実離れした考えに理解を示し過ぎではと思ったりするような場面が目立ったのは正直な話少し残念ではある。

英摩耶

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人を恐怖でコントロールする、昨今では珍しいヒロイン。生徒会長。

本当は優しい人なのだと主人公が何度か擁護しているものの、結局「懐のでかいヤクザ」にしか見えないが劣等感を覚えがちで寂しがりな女の子で、個別ルートまで進めば可愛い一面がザクザク掘り出てくる。

特に告白シーン(B)は本作屈指の破壊力を誇る。学園青春物語の醍醐味が詰め込まれており、このシーンを見るだけでも本作に出会った価値があったんじゃないかなと思う。大げさかもしれないがそれだけのパワーを秘めていた。

Bルートは最後にもとんでもない爆弾が爆発するなど、言うに事欠かないが、小柚子のおっぱいに嫉妬したあのエピソードが兎に角印象深い。その時の私の感情については後述する。

リードする方

照れて支離滅裂な事を言う摩耶と主人公の掛け合いはずっと眺めていられるほどに楽しかった。やはり「好きな人に告白された」という事実は自信に結び付くのだろうか?終始楽しげな摩耶の姿を拝むことができる。

リードされる方

あの涙はずるいだろ

上ノ山芽愛

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主人公が通う学園の後輩であり、主人公と同じバイトをしている元気印の女の子。

いじられ体質なのをドMと決めつけて形容をする主人公の浅はかさはさておき、コロコロと変わる表情が彼女の魅力であることは疑いようがない。一緒の時間を過ごせたら日常がどれだけ彩り豊かなものになるか計り知れないヒロインである。

リードする方

雲行きの怪しい告白シーンに始まり、終盤でもすれ違うシーンが多かったルート。最終的には(本当に、文字通り)綺麗なハッピーエンドを迎えてはいるが、積極的にアタックを仕掛けることはリスクが伴う行為なのだなぁとまざまざ実感させられた。

リードされる方

芽愛に告白を決心させたことで、常に彼女らしくあれたルートだった。

このルートで主人公がイニシアチブを握ることが必ずしも最適解ではないのだなということを確信した。Aルートでは対話を繰り返すことによって幾度も訪れた窮地を脱しているが、このルートにはそもそもそれがないのだ。

Bルートで輝く常に彼女らしくある芽愛の笑顔を眺めていると、無個性な主人公の価値観に染め上げるよりも芽愛の全開萌えパワーに染め上げられる方がプレイヤーとしても幸福になれるとしみじみ思ってしまう。

(決して主人公の言っていることが間違いばかりではない。むしろ正論が多くて、誤った判断が少ないからこそ個性の色が全く見えてこないがために生じる問題である。)

それが恋愛として正しい姿勢なのか?という話になると議論の余地は数多く残るだろうが、私は美少女ゲームにおいてヒロインが主導権を握る作品が近年急増した[要出典]理由が判然として晴れやかな気持ちになった。絶対的主役はヒロイン。これは揺るがまい。