
概要
1つの幸せを掴み取るために、多くの絶望を味わう怪作。主人公・豹馬は『クロ』以外の人物を認識できない状態に陥っているので、ヒロインはたった1人。
それでいて25時間以上読ませるボリュームを持ち、1人の人間に対する掘り下げが徹底的に行われる。
とにかくクロが可愛い。
人が見えない豹馬に対して献身的なサポートをしてくれる姿がなんともいじらしくて、本編開始数時間が経つ頃には大好きな女の子になっていた。
平行世界の出現によってクロは5通りに成長するが、そのどれもが愛おしかった。
クロにとっても豹馬は自身を認識してくれる唯一の存在になるため、必然的に共依存の関係になっていく。
幼少期の偶然の出会いから2人の付き合いを描くため、ボーイミーツガールと幼馴染関係を両立していて天才だった。
あまりに微笑ましい2人だけの世界に心が満たされる
……ほど、やがて訪れる悲惨な展開がキツかった。
「最悪なる災厄人間に捧ぐ」。
このタイトルに惹かれる人は、自己評価の低い人間が多いのではないだろうか。
自分なんていない方がましだ。
そんな考えを持つ方に、本作を是非お勧めしたい。
あの絶望を、あの悲劇を。目に焼き付けて、人生についてもう一度だけ考えて欲しい。
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