得 点:88
シナリオ:☆☆☆☆
キャラ性:☆☆☆☆☆
テキスト:☆☆☆☆☆
グラフィック :☆☆☆☆
システム:☆
音 楽:☆☆☆☆☆
※修正パッチ有
戦国の世と現代を”前世”の概念で深く結び付けて人間ドラマをボリューミーに演出する、ロマン溢れる一作。特にオープニングの出来は素晴らしく、知名度が上がれば2018年のエロゲ界を牽引とまでは行かなくとも知る人ぞ知る名曲として語られるに足るポテンシャルを秘めている。
CGも美しく、シナリオもシリアスを多分に含んだ恋愛物語として時に熱く時に癒やされ時に涙するものだった。テキストも笑いありテンポ良しと厳し目に見ても作品全体を見て水準以上のクオリティは間違いなくあった。
ただ、近年では”読み物”の側面が強いADVには普段あまり必要としない『プレイヤースキル』が要求されるのは本作の大きな特徴で人によっては欠点となる。その理由は以下の通り。
作品を理解する為の難易度が高い
最近のノベルゲームにしては分岐選択肢の成否判定がかなり厳しめであったり(途中ENDに入りやすい)、シナリオの根幹となるかつて戦国時代の史実上で起こった『岩屋城の戦い』の背景である九州三国志周りについての知識理解は間違いなく必要となったりするなど、少なくともエロゲをする為に必要な一般常識の範疇は逸脱していた。これらの物語外の事象は物語を味わう上でまず取り入れていなければならない。特にシナリオに対して理解するためには歴史知識は正しく理解していないとキャラクター達の日常会話にすらついていけないシーンも存在し、世界観理解の助けとなるTIPSメニューの類が存在しないところも作品単体を楽しむ上で不親切と感じる。知識・理解力の要求レベルが他の作品に比べ高いのは間違いない。
要するに「考察ゲー」じゃない?と思う方もいるだろうし自分も最初はそう思ったが、どうやら毛色が違うようで、知識はあくまでも前提条件。シナリオそのものに考察要素はそこまではなく、個別ルートを代表に分かりやすいもの。ただ歴史要素は設定の根幹にはキッチリ関わってくるので、歴史を理解せずとも楽しめるつくりになっていないこともないといったところで凄くモヤモヤする。靄を晴らし、キャラクター達の物語をきちんと理解するために歴史知識についてはある程度理解しておくとよいだろう。
当作には過去・現在と主に2つのパートに分かれている。現在編はスマートフォンなどが台頭している現代。登場する主人公周りのキャラクターは全員前世(・前前世~)で結び付きがあり、姿形も斉しい。過去編の舞台は当項冒頭から述べたように戦国時代の九州。現代編の主人公はこの過去で起こった悲劇を回避することで現代のヒロインや主人公に祟りとして魂を巣食う前世の記憶から、後悔・未練を解消し救っていく話となる。
感想を前に、整理もかねて「ロスト・エコーズ」を織り成す世界観を構成している史実部分についての特に作中では理解し辛かった部分の解説を家ごとに分かれて説明していきたい。(記述に誤りがあれば、Twitter上でリプライして頂けるとありがたいです。)
『岩屋城の戦い』当時の状況・背景
・大友氏「ロスト・エコーズ」ヒロインは登場しない。
九州の三大勢力(大友・島津・龍造寺)のひとつであったが、今山の戦い(1570年)で龍造寺に、高城の戦い(1578年)で島津に大敗を喫したことで大友は危機的状況へ追い込まれてしまう。龍造寺が倒れ、九州統一を目指す島津に対抗するため全国制覇を目指す豊臣の臣下に下ることとなった大友は、1586年7月、大友の家臣である高橋紹運は侵攻してくる島津5万の兵をわずか763名という絶望的な兵力差で岩屋城を舞台に迎え討つ。
この『岩屋城の戦い』で粘りに粘った結果高橋の兵は全滅、玉砕という結果に終わったが半月にも及ぶ籠城戦は島津の兵の著しく疲弊させ侵攻を鈍化させたこともあり大友は豊臣の到着まで持ちこたえることに成功。最終的には島津の九州制覇を阻止する結果につながった。
・島津氏
「ロスト・エコーズ」ヒロインは登場しない。
上記の通り大友とは敵対関係にあり、九州統一を目指して大友を討つべく岩屋城を攻撃している。
・立花(戸次)氏
「ロスト・エコーズ」ヒロインでは立花誾千代(前世)/立花結佳(今世)が登場。
大友の重鎮として活躍した戸次(立花)道雪が代表的。道雪の娘として誾千代、養子として過去編で主人公が成り代わる御筥宮座主を迎え入れている。また、幼少期の神代千羽耶も保護している。道雪は岩屋城の戦いの前に死没しており、家督を誾千代が継いでいるため、本編の舞台では誾千代が指揮官となっている。
・御筥宮
「ロスト・エコーズ」ヒロインでは巫女として姫崎武緒(前世)/姫崎雛緒(今世)が登場。
大友家の後援を受けて存在しており、主人公が過去へ行く時は誾千代の半血の兄である御筥宮の座主と成り代わる。兵隊も所持していて発言力は高い。
・筑紫氏
「ロスト・エコーズ」ヒロインでは筑紫加弥(前世)/悠樹晶穂(今世)が登場。また神代千羽耶(前世)/神代琥珀(今世)も筑紫に仕える身として登場。
筑紫はその時代の強者を見極めてその家の下につくという姿勢を見せており、大友とは協力と敵対関係を繰り返している。こういった掌返しは戦国時代では珍しいことではなかったようだ。岩屋城の戦いの直前では大友側についていたようだが、戦いの最中、島津に敗れたことで作中では立花山城への侵攻を企てることになる。加弥は筑紫の姫として登場し、立花が筑紫に対する交渉相手としてのキーパーソンとなる。ヒロインの一人である神代千羽耶は加弥に救われた恩義もあるほか諸事情あって立花から離れ筑紫に仕えている。
史実と違う点
「ロスト・エコーズ」本編中で史実とは違う点として・誾千代と高橋紹運の長男である高橋統虎(立花宗茂)が結婚していない
・加弥と高橋統増(紹運の次男)が結婚していない
・筑紫の一部勢力・千羽耶含む白山城の兵が立花山城に攻めいったこと(史実ではその動きはなく、実際に立花山城へ侵攻したのは岩屋城を陥落させた後の島津兵)
・御筥宮関連
が挙げられる。
桜城十萌@sakuragitomoeこれはシナリオライターの桜城十萌先生自らTwitter上でアップしている図解。上記の設定を何とか呑み込めれば理解しやすくなると思います。ろすえこ宵ネタ帳
2018/02/27 17:36:58
以前載せたマップに思いのほか反応がありましたので、もうちょっとちゃんとしたものを用意してみました。
物語序盤で各勢力がどういう状態にあるか、わかりやすくお伝えできればと。
#petitlinge… https://t.co/xP4t3b05pR
参考サイト
戦国武将列伝Ω
九州三国志 ~九州の戦国時代~
ほか Wikipediaなど
Twitter上で質問に答えて頂いたるいす様 よねきち様 ありがとうございました。
※当項目執筆にあたり当作シナリオライターの桜城十萌様へ此方からいくつか質問し、解答を頂きました。作品設定の理解に対するご協力、また素晴らしい作品を執筆して頂いたことに感謝の念が堪えません。本当にありがとうございました。
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