この原稿を4月24日に書いているのだが、6月から支給される月額1万3000円の子ども手当をめぐり、民主党への批判は強まる一方だ。兵庫県尼崎市に住む韓国人男性が、タイで養子縁組したと称する554人分の手当約8600万円を申請しようとし、市が受け付けを拒否していた“事件”が起こったためだが、そもそもこういう事態ははじめから想定、懸念されていた。

■拙劣だった政策立案

 この韓国人男性の申請が許されないのは当然だが、認められなかったので「良かった、良かった」で済む話でもない。こうした事態を招いた責任の一端は政府・民主党にあることも見逃せないからだ。拙速な法案作りに、審議の乏しいままの年度内可決、直ちに支給という流れはすべて選挙対策目当てのばらまきであることは明白だった。

 この間、指摘された制度上の齟齬にも民主党はまじめに向き合っていなかった。海外に子供が大勢いて、日本で働く外国人が支給対象となる一方で、日本に子供を残して海外に赴任する日本人家族は支給対象から外されているという理不尽は批判の代表格であり、批判が強まった今ごろになって、外国人の養育状況を厳格に確認するとした「局長通知」を流したわけだが、これも付け焼き刃の感が否めない。

 今までの児童手当ではメールのやりとりで養育を認めていたケースがあり、全国の窓口対応を統一するため、「年に2回の面会」などを新たな条件として課したというのだが、多言語、他国の書式で書かれた証明書類の真偽をいかに窓口で確かめるのか。負担と責任は自治体に丸投げである。

 例えば「インターネットのTV電話で話しています。“面会”は毎日しているのです」とか、窓口には多種多彩なケースが寄せられ、瞬時に判断を迫られているはずである。

 高校無償化における朝鮮学校への支給の是非にもいえる話だが、だいたい、法案審議の段階までにしっかり詰め切ったうえで議決すべきで、議決後に局長通知で済ませたり、お茶を濁す話ではない。政府与党の政策立案能力が問われる話だといっていい。

■外国人参政権と子ども手当の共通点

 永住外国人に対する地方参政権付与を鳩山内閣が進めている問題では、各地の地方議会が反対の声を挙げ、法案上程が宙に浮いた形になっている。子ども手当と参政権。施策の目指すところは異なるが、ふたつは、よく似た問題点をはらんでいる。それは「思いの空回り」であり「国家意識の欠如」ではないか。

 「思いの空回り」というのは、シビアにいえば政府・与党に政策立案能力がまだ政権の担い手として十分に備わっていないということである。自分たちが実現したいと掲げた政策への「やりたい」という思いばかりが先行していて、肝心要の齟齬のない政策に仕上げることができずにいるという深刻な問題である。

 マニフェストに掲げた施策だから、これは国民との約束だという民主党の論理があるが、盲目的、無理筋で実現した政策の結果、行政への信頼が失墜したり財政破(は)綻(たん)、あるいは著しい財政負担を招いてもいいはずがない。ここまで国民が約束したつもりはないだろう(本来はそういう悪しき事態が起きないようなマニフェストを示すべきなのだが)。

 国があってこそ党がある。わが国の繁栄と国民の安定した暮らしがまず考えられるべきであって、そのうえで外国人をどう処遇するかを考えるべきである。こうした当然の順序すらごちゃごちゃに論じているから、こんな話になるのではないか。外国人政策というのは、政策としてはあくまで日本人である国民の負託にこたえる政策がまず一義的にあったうえでオプショナルに考えられるべき施策であるはずである。

 これは子ども手当だけでなく、外国人参政権にも通じる話である。「世界中のどの人類とも仲良くしたい」という思いの美しさまで否定はしない。しかし、現実の国際社会はそうはなっていないし、なかなか難しいこともよく心得ておくことも大切なのである。

 日本の周辺はとりわけ厳しい環境である。日本国という国の施策として、国籍のない外国人に選挙権を与えると、竹島がどうなり、対馬に何がもたらされるか、あるいは与那国島に何が起こるか、教育はどうなるかなど、着想したことを具体的に考えてみれば、この問題がいかにナンセンスであるかは一目瞭然(りょうぜん)である。

■政党の国籍要件

 立ち上がれ日本、みんなの党、国民新党など調べ尽くしたわけではないが。ちなみに日本の大政党で政党の加入条件を日本国籍を有する日本人に限定しているのは自由民主党と日本共産党だけのようである。

 民主党や公明党などは日本国籍を有することを条件として党の規約に盛り込んでおらず、民主党はむしろそれを党員拡大の積極的なうたい文句にしている。民主党の代表を選ぶということは日本の首相を選ぶということに限りなく等しい作業であるが、これが外国勢力の影響を受けうる状況にあるのである。

 ちなみに日本共産党の国籍条項については少し意外に思われる方もおられるかもしれないが、彼らが目標に掲げているのは日本国に共産主義政権を樹立することであって、日本国が日本国でなくなる事態ではない、という意味だろうか。外国人参政権に前向きの立場を採る日本共産党の現在のスタンスと、国籍条項で党員を日本人に限定することとの間に矛盾がないのか、整合性を取るつもりがあるのか、など興味は尽きないが、ここでは深入りしない。

■無策?無警戒?病める入管

 外国人への警戒水位が下がっているのは政党だけではない。入管当局も然りである。日本国内で永住資格を持つ一般永住者が急増し続けており、50万人に到達しつつあるのだ。

 全国の一般永住者は平成10年末で約9万3000人だったが、12年末で約14万5000人に急増し、その後年間4万人ペースだった年間での増加人数も伸びており、16年末に30万人を、19年末には40万人を突破。20年末には49万2096人とほぼ5倍の伸びを見せている。

 10年間の伸びを国別にみると、ブラジル人が9622人から11万人と突出。近隣諸国では、韓国・朝鮮人が2万6000人から5万3000人と3倍弱にとどまっているが、中国人は3万1000人から14万2000人に4倍を超える勢いで伸びている。

 急激な増加の背景には平成10年2月、永住許可の要件を大幅に緩和したことが指摘される。それ以前は原則20年の在日歴が必要だったが、ガイドラインで半分の10年と明記したのだ。大幅な要件緩和は法務省と入管当局の裁量で行われ、国会審議や政策審議会などで議論は全くなかった-という。

 在日歴の要件をめぐっては「専門知識や技術を持つ外国人」について在留歴を5年とする、さらなる緩和方針が法務省で検討されている。早ければ来年の国会で入管法の改正案を提出する予定で、今年1月、法相の私的懇談会「第5次出入国管理政策懇談会」も同様の報告書を提出するなど、一層の緩和の方向が打ち出されている。

■一年間の登録中国人で政令市ができる!

 一般永住者ではなく来日のさい外国人登録をする「登録外国人」の10年間の推移を見ると、とりわけ中国人の急増ぶりが群を抜いていることがわかる。

 平成10年の「登録外国人」のトップは韓国・朝鮮人で63万8828人。中国人はそれに続く2位だったが、同年27万2230人とトップとは大きな差があった。

 ところが、中国人の登録数は年間5万人のハイペースで急増。19年には中国人は60万6889人に達し、韓国・朝鮮人は59万3489人と初めて逆転し、20年では65万5377人まで伸びており、70万人に迫る勢いだ。70万人というのは政令市の人口に匹敵する。つまり一年間で政令市1市の人口分とほぼ同数の中国人が新たに来日、外国人登録をしているという計算になる。

 ちなみに20年に日本を訪れた入国者のうち、観光や出張などにあたる短期滞在者を除くと中国人が“圧倒的多数”を占めている。中国人の来日形態は、他国と異なり、長期滞在者や「移民」指向であるのだ。

 20年の中国人特別永住者は2892人、一般永住者は14万2469人だが、日本人の配偶者を持つ中国人や永住者の配偶者を持つ中国人、さらには法務大臣の裁量で日本での生活が認められる「定住者」などの“永住予備軍”も加えると、23万9575人に達する。これを10年の11万7486人と比べると、2倍以上の伸びだ。

 北京五輪の聖火リレーで全国の中国人が長野に結集した政治的示威行動は印象的な光景だった。特に中国人は『永住者予備軍』の層が厚い。放っておくと爆発的に伸びるのは必至で、来を見据え、国益に立った議論が本当に喫緊の課題だと思う所以である。

(安藤慶太・社会部専門職)

※次週から隔週掲載となります。

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