靴の自作工房hiro - 職人の独り言

工房のオーナー講師斎藤のひとりごとです。思いつくまま、木型についての考察や日々の発見、感じたことなどを時々更新しています。

オーダー靴製作におけるアーチ形成

IMG_0566オーダー靴がオーダー靴たる所以は履き歩行してかかとが抜けない、指先が痛くならない、長時間の歩行に際して疲れない等の基本的要因が求められる。
【木型上での配慮】
これらを可能にする為に考慮しなくてはならない木型上での配慮は多種多様であるが、まず挙げられるのは踏まずの長さ、アーチ形状だと考えられる。
特に注意するケースとして凹足、つまりハイアーチへの対応が挙げられる。
アーチが高いということは体重がかかった時点での変化が大きく、踏まずの距離やアーチ形状の変化がある。体重がかかればアーチは潰れ、足長は長くなる。立脚時と歩行時に差が生じる点である。
特に注意する点は足のねじれ、ショパール関節をもとにして足が内側にねじれる。つまり回内する事が多く見られる。
写真の様につま先立ちをしたとき、多くの場合かかとが内側に曲がる。これは靴を脱ぐ時にする行為に類似している。故に踵は抜けやすい状態での歩行となる。
また、アーチが潰れるということは、足底腱膜が引っ張られ足裏に張り出すという点も考慮する必要が生じる。この場合アーチが高い為に立脚時の踏まずに隙間ができ、アーチパットが挿入されている事が多い。が、このパットに腱膜があたり足を前に押しやり、靴の中で足が前に押されることが多い。
足のねじれに対しては靴の前後に2~3mmのパットを挿入して捻れを軽減する必要がある。足の測定時にこれらを確認しておく事が肝要である。
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パンプスの難しさ

オーダー靴には調整が絶対と言って良いほど必要である。
一旦納品し、数週間後その履き具合を確かめ、不具合が出ればお持ち願いよりその適合性を高める必要があると信じる。

例えばこのような例、
【ほぼ一日歩くと足裏に痛みを感じたと靴をお持ちになった。

店内で歩行を確認するとほんのわずかだが足が前に動いて踵が微かに上下していた。ヒールの高さが2mm程高くなっていたのでその着地位置をわずか数ミリ後ろに下げ、足が所定の位置で着地できるように調整をほどこした。
ご本人はその変化を認識できないでいたほどわずかな調整だが、また長い時間歩いて戴いてその変化を認識していただけるはずである。


靴内のわずかな凹凸が歩行時の足の動きを受け入れ且つ固定する。つまり、着地、固定、推進と足は歩行の状態で変化する。
蹴り出すには親指側に力が加わるためにショパール関節から前がねじれ楔状骨下がさがり、親指で強く蹴り出す事が可能になる。その際小指側は数ミリ浮き上がる事になるためにかかとはわずかだが外側に移動する。
このメカニズムが靴内で起こるわけであるから足のサイズに合わせたオーダーパンプスはその各人の動きの大きさに寄って調整する必要が生じる。 
足が柔らかな場合、親指に力が入らず外側の3趾で蹴りだすことになり踵は内側に動き、かかとが脱げやすくなる、この場合親指の蹴り出しを強くするパットの挿入が必要となる。

これらを歩行から読み取り適切な処置を施す技術と経験、知識が不可欠、ゆえにオーダーパンプスは難しく、それらの知識がない作り手はお客からの信頼を勝ち得る事は難しく、リピート率は低下し、生業として成り立たない状況に陥る。

どこそこで作った靴だが、と言って調整依頼を受ける事が少なくない、履いているうちに良くなると言う具にも着かない言い訳でやり過ごす業者もいるようである。
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フラットパンプス

最近フラットパンプスのご依頼が多くなっている。
脱ぎ履きが簡単で夏の装いにあっている。短めのパンツに素足で履いて大股で歩く姿はとても素敵である。
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行き帰り電車の中でもフラットパンプスを履いている女性が目立つ。ヒールのあるパンプスを履いている人より多いくらいである。
では颯爽と歩いているかと言うとそうではない。
踵がパカパカの状態でとても歩きにくそうな人も少なくない。

もう一つ目に付くのが踵が内側に倒れ込んでしまっていること。
フラットで内側に倒れ込んでいると言う表現はわかりにくいであろうが、つまり踵が内側に寄って靴の踵位置に踵が乗ってない状態とでも言えば想像がつくかもしれない。

足のねじれ、ショパール関節からのねじれであろう。またパンプスの踵芯が軟弱なためかかとを支えきれてないのも原因であろう。しっかり踵芯が入っているものが好ましいが市販されているフラットパンプスにはお目にかかった事がない。靴全体が柔らかく出来ており、丁度小学生の部屋履きズックと同じ様な作りのものが多い。安く販売する為なのであろうか、一夏履いて捨てる感覚かもしれないが好ましいとは言い難い。
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イベントでのリセッティング(調整)の啓蒙

本科シニアコースを終了し、インターン生として工房で作業を続けている生徒たちが15名を超える。彼ら彼女たちは作業場として工房を利用している。自身の工房を持ちたいのだろうがその継続に不安を覚え、しばらくは工房を作業場として活用し、自身のお客への対応も工房で行っている。月額15,000円で必要なだけ工房を利用し、必要な木型だけをその都度購入。疑問や不確かな点は私に相談してくれている。その一つ一つが彼ら、彼女らの実績、経験となり近い将来一人独立して工房を立ち上げたとき大きな支えになることは間違いない。

特にリセッティング(調整)技術の習得をするように伝えている。

リセッティングは今まで学んだ木型の知識を靴に反映させ、履きやすい靴にりセッティングする技術

オーダーをいただく前に履けない(市販の)靴を履けるように調整することでお客からの信頼を得、オーダーに結びつく可能性も大である。その調整をすることで今まで学んだオーダー靴製作の正しさを知ることにもなる。市販の靴に施されていない内容をオーダー靴作りで学んだ技術・知識で付加する事で調整は成り立つのであるから。

4月28日から始まる生徒たち主導のイベントに私も参加する。わたし自身は販売を目的とするのではない。展示する靴はサンダルのみ。この履き心地、他との違いを実感していただければと思う。その他には調整、リセッティングの啓蒙である。今履いておられる靴に調整を施し、その効果を認識して頂ければ幸いである。イベントで行う調整は1足に限り無料である。
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合わない靴を買ってしまったら

踵が抜けやすいパンプスはほとんどが自身の足の踏まず距離と靴のそれが合っていない事が殆どである。
もちろん靴のほうが長い。
市販されている靴は、全長に対しそのメーカーの規定の割合で決められている。ゆえに同じサイズ表記でも(この規定の違いで)合うものと合わないものとがある。踵が抜けやすいと感じられる場合は足の踏まず距離が靴に対して短いと判断すべきである。

では買ってしまった靴はどうすれば履けるようになるか、単純に考えればその靴の踏まずの距離を短くすればいいんだが、つま先に詰め物をするような調整では解決しない、足を痛めるだけである。

足全体を後ろに、つまり踵が靴の踵に届くように足が収まる位置を後ろにずらし歩行しても前に滑り落ちない工夫が必要となる、この処置と木型底面への処置とは同じ、木型には肉付け、靴底への彫り込みである、足に対してその結果は同じ結果を生む。

それと足が前に行き踏み下ろす位置が前に動いているために、その部分が凹んでいる事がおおく見受けられる。靴底を底材を張って着地位置を基に戻すことが必要となる。

この一連の作業で履ける靴になる、木型底面への知識があれば可能な作業である。

パンプス底面への配慮

パンプスを履くと足が前に滑ると良く聞くが、作り手は滑っているのか押されているのかを判断する必要がある。調整の手順が全く違ってくるからである。履く人にはその違いはわからない。

押されるのは歩行時のほんの一瞬であり、履いた時点つまり歩行しない状態では押されている感覚はないからである。むしろ隙間が有るくらいであるが、歩行するとその空間はふさがれ余裕がなければそこが足を押しだす。
リセッティングにお持ちいただくパンプスのほぼ全てに言えることだが、踏まず上がりに全く余裕が設けられていない、むしろ塞いでいる。
よく見るのが丸い凸型のパット、いわゆる横アーチパット、歩行時に足が後ろに下がる空間をふさいでしまっている、もっとひどいのは先端部にこれでもかとパットを敷き詰め足が滑り落ちるのを止めているつもりなのだろう、軽い人でも40キロもある体重をそんな詰め物支えられると考えるのがおかしい。
パンプスで足が滑らない様に考慮する部位はつま先に1箇所だけ。底面には5箇所存在する。これを見ても底面への配慮がいかに重要かが判る。

押していると考えられる部位は踵トップ、つまりヒールカーブ形状、立方骨下、測定腱膜、踏まず上がり、第一中足骨頭下にある。また木型だけでなく、中底製作にも配慮を要する。
中底幅は立方骨周辺は時として木型の幅より細めに製作する事が多々ある。足の下部を絞り、足を止める工夫の一つでもある。その位置だけは骨が存在しない部位である。

先日リセッティングで持ち込まれた5足のパンプスはどなたでも知っているブランドであった。全く底面への配慮がない上に、つま先にいっぱい詰め物が詰めてあった。10分も履いていられないと持ち込まれた。3日後に履き試しにおいで頂き、笑顔を見せてもらいたい。
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木型底面の修正 その2

足の立方骨位置よりやや踵よりからカーブを形成する事が肝要、足長が小さい場合はそのカーブはより緩めに形成する必要がある、また足底腱膜の張りが強く出ている場合も足を前に押し出す要因になるため、内側への肉付けも考慮すべきである。

踵骨の最後部から立方骨位置迄の距離を測り、木型のヒールシート部の長さより足のその距離が長い場合は逆に木型を削り、距離を合わせる必要があるが、プラ木型を使用している場合は靴完成時に靴内でパットを入れ調整する。

蛇足だが木型の踏まず上がり周辺に丸穴を穿、モートン病治療に使用するパット凸を埋め込めるように配慮されたものを見かけるが、足の治療対策に用いられた様式を靴に転用していると判断するが、それをパンプスに適用しているのを調整時に見かける、これは足を前に押し出すだけでなんの効果も得られない、パンプス調整時にはお客に断りをいれて全て取り除いている、代わりにだい2中足骨骨頭から指先にかけて細いパットを挿入している

踏まず上がりの位置が早めに持ち上がっている木型も見かける、木型を裏面を上にしてみると着地位置が前部より少し下がっている事が見受けられるが、これも足を前に送り出す、ゆえに着地は少し盛り上がっていることが肝要(木型底面を上にして見た場合)、その部位に足が落ち着き安定する、下がっている場合、歩行を始めると足が自然に前に動き、自身の足で着地位置を変えてしまい、しいてはヒールの高さが設定より高くなった状態になり体はのめり足は前に滑り、かかとがに隙間ができ、抜けやすくなる、また靴擦れも起きやすい。
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歩き始めると足が前に滑る 木型底面への配慮 

足入れをし立脚時はかかとも靴の踵に入っており、MP部位も足のそれと合っているが、歩行し始めると踵が上下に動くき、そのまま5分程歩行してると小指があたりだし、踵が抜けるようになる。この症状は既製靴を履いた時によく見受けられる内様である。

ヒールカーブに原因がある場合もおおくあるが、足のヒールカーブは適度にカーブがある場合を想定して記述を進める。
まずトレース画及びフットプリントで立方骨の位置を確認。その位置と木型に設けたカーブを比べてみると上記の症状が生じた場合、そのほとんどが足の立方骨の位置が木型に設けられた位置より後ろにある場合が多い。
原因は木型のカーブと足のカーブが合っていない為に生じる問題である。木型底面のカーブ起点を後ろに修正することで解消される、歩行し始めてすぐにその症状が出た場合、10~30分で生じた場合、歩き始めて1時間程で生じた場合のカーブ形成度合いが違ってくる、時間を経たずに生じる場合のほうが足との差が大きい、カーブをかなり緩める必要がある。

カーブ形成の修正場所は足裏の第4中足骨位置を頂点とした横カーブで木型内側が下がる様に形成する。
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