

本科のマスタ-コ-スでは、生徒同士が靴を作り合っている、マスタ-コ-ス終了までにおよそ12名の足に合わせた靴を作る。 採寸、木型選択、木型修正、型紙、製甲、つり込み、そこ付けの行程を経て試着に及ぶのだが、その試着には本科生が取り巻いてその成り行きを見つめる。
履き手が履いた感想を述べ、その感想に基づいて、生じた不適の原因および解消方法を討議する、でた答えを
私に報告し、その可否を問う形態である。その試着には私も同席し、成り行きを見つめ生徒達の結論が出るまで見守る。 履いた状態からその不適の原因を探し、その解決方法を見いだす事はオ-ダ-靴製作を営むものにとって不可欠な知識である、その知識を得る方法は失敗、つまり不適を不適と認め、その発生原因と解決方法を学ぶ事である、また、それ以外その知識を得る方法はない。
不適があればあるほどその事例を目の辺りにし、その原因、解決手段を経験出来るのである。 自身で修正した木型を私に診てほしいと持ってきて、不備を指摘され、それを直し、試着に臨んでいるのが殆どだが、自身で判断し、それで一度試着を行い、その不備不適の原因と修正方法の指導を受け、その指導に基づいて修正したものを再度試着し、以前の不備不適が改善されたかを自身で確認する方法が時間はかかるがより多くの事を学べるのではないかと愚考する。 私はその失敗を何百回と繰り返し、繰り返し、そこから学んできた、残念ながらその不備不適を指摘、修正方法を指導してくれる先達はいなかったが。

