靴の自作工房hiro - 職人の独り言

工房のオーナー講師斎藤のひとりごとです。思いつくまま、木型についての考察や日々の発見、感じたことなどを時々更新しています。

木型講座

木型講座

今年に入り木型講習を受講される方が続いている。1月は九州からS君、2月はヨーロッパからS君、3月は京都からIさん、4月はフランスからT君である、皆さん靴製作のプロ、長年足に合わせる事に対して試行錯誤を繰り返してこられたようである。 
ほとんど方は短靴、つまり甲で押さえて履く靴をメインに作られて来た方、故に紐靴に対しての木型理論の理解は容易なようである、これは木型の形状がほぼ頭の中で出来上がっておるが故に採寸したトレース画とフットプリント画の解読が出来、その足軸と選択した木型軸をあわせて置くことで木型への肉付け箇所が判断できる、後は木型としての形態を整える、木型を見慣れている方にはその形態を作ることは容易である。
木型を作り上げた後、その木型を基に靴を作り、足入れをすることで今までの靴との違いを認識出来、且つ、足に合わせる木型修正の在り方を理解して頂けることと思う。

デザインによる木型の違い

3月から木型講座に通われているNさん、ご自身も茅ヶ崎で教室と若手の育成に力を注いでおられるが、長い間思っていた木型に対する疑念を晴らすべく工房の休日を利用して通われている。 ご自身の足を対象にスリッポンから始まり、ロ-ファ-、紐靴へと進み、それぞれの木型の違いを認識、その都度試着靴を製作して、自身でその履き心地を体感されてきた。
昨日、何か質問や、常にお持ちの疑問はとの問いに、スリッポンの木型とロ-ファ-の木型の違いがあるのは何故なのか? スリッポンの木型で何故ロ-ファ-が作れないのか?の質問、今までは紐靴の木型でスリッポンであれ、ロ-ファ-であれ製作してきたとの事、単にアッパ-が違うだけだと認識されていたようだ。 この違いを認識されていない方は少なくないようである。
ロ-ファ-の多くは第2甲まで覆っているものが大半である、故にトップラインで足を押さえる機能がないが、紐靴は紐を締めることで甲を押さえる機能に加え、トップラインが同時に締まる、スリッポンも同様、足を入れると革が外に押され、そのためにトップラインが締まる機能を持つ、がゆえに踵をホ-ルドする形態を必用とするが、ロ-ファ-の場合はトップラインが締まらないが故に踵をカウンタ-で押さえ込む機能が必用となる。 (スリッポンでも第2甲まで覆うようなデザインであればロ-ファ-の木型と同じ処置が必要となる)
本来はそのデザインに応じて適切な木型を用意する事が望ましいが膨大な木型の量になるが故になかなか出来ない、少なくとも、その違いを認識しておいて戴きたい。

学びの心

木型講座への問い合わせや受講依頼が多く寄せられている事はすでに記したが、受講される方々の多くはすでに工房を立ち上げ、指導されている方達である、現状に満足することなく、より良い靴作りを求め、忙しい中、片道2時間をものともせず通って来られる。
彼らはより深い木型への知識を渇望している、今まで疑問に思っていたことや、納得出来ない事柄をぶつけてこられる、自身で思考錯誤し、苦しみ、答えが出せずにいた事なのでであろう。 故に一つの答えから多くの疑問や迷いが解明されるようである。
今日にいたるまで私自身も苦しみ、もがき、悩んだ末に得た答えばかり、机上の論理ではなく、実際の製作活動から生まれた答えは、すんなり彼ら、彼女らの胸におさまるようである。

調整

足の採寸から得た情報、各部の周囲と足外側線、着地ライン、外踝位置、踏まず距離等を参考にして木型の補正を行い、靴を作り上げるのだが、それだけでは足に合った靴にはならない、木型補正では出来得ない靴内での調整が不可欠となる。
足幅は十分とってあるにもかかわらず小指が当たるのは歩行時に足が靴内で外側に動くために生じる事が多い、出来上がった靴内への調整でその動きを抑制する必要が生じる。
多くの場合、プラ木型に補正して使用するが、その人のア-チが高いからといって木型の踏まずを削るわけにはいかない、故に出来上がった靴内にパットを挿入し、その人のア-チカ-ブに合わせる必要がある、足裏の形状を見て正しい位置に挿入することが求められる。
木型講座では作って来た靴に足入れをして生じた違和感を調整によって補正し、補正前と補正後の違いを体感し、調整の必要性とその処置方法も体験してもらっている、木型を識る事で得られるちしきでもある。

木型講座

最近とみに木型講座への問い合わせが多い。
問い合わせの中で多いのは「木型が作れる様になるのか?」であるが、自作工房での木型講座は木型を製作する為の講座ではない。木型を理解し、足に合う靴作りの為のものであることを承知願いたい。足に合った靴を作ることを目的としたものであり、基軸となる木型に足の採寸画や数値に基づいて修正し、試着靴をつくり、足入れをした状態からその不備や不適の原因を見極め、その不備不適を是正、調整する知識や技術を習得するものなのである。
また、足に合わせる事は木型だけでなせるものではない。
木型では是正出来ない事も多く、出来上がった靴内へのパットの挿入や中底への加工などが必要になるケースも少なくない。1mmにも満たない厚さの革の挿入によって足が感じる適合感が大幅に変わる事も多いのである。
木型講座で行う足への適合は限られた受講時間での学習であるが故に自身または他の人、ただ一人の足に対してである。
知っての通り、足は千差万別、一人として同じ足はないのであるから、その学習だけでは不足である。ただ、足と木型と靴の関係を知ることで知り得た情報、知識を基に応用、想像をする術を習得していただきたいのである。
数多くの足を見、それに合う靴を多く作ること、そこで経験した失敗や後悔、喜びの一つ一つが積み重ねられ、より理解を深めていくのである。

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