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荻野さんは現在、木型コースを受講されていて、カリキュラムももう終盤。
今回の受講についてお話をうかがいました。

Q.自作工房の木型講座に来られたきっかけを教えてください。

以前にインターネットでここを見つけ、お気に入りにしていました。「いつか行ってみたいな」と思って・・・。
しばらく前から、木型についての理解が足りないんじゃないかと、だんだんと感じてきていました。

Q.プロとしてのオーダー靴作りを重ねるうちに、足りないところが見えてきた?

そうですね。私が習ってきた先生のところでは、靴作りについては沢山のことを教わってきました。けれど、”オーダー靴を作るための木型”については、特にそれを詳しく教えてもらうことはありませんでした。だからサイズや靴の種類に合わせて木型を選ぶだけでした。

Q.それで今回の受講ということになったんですね。

直接のきっかけになったのはお客様からの返品だったんです。
これまで私がオーダーいただくのは紐靴などが多かったんですが、先日、ストラップパンプスを オーダーいただいて。それが、納品後しばらくしてからお客様から「やっぱり返品したい、・・・どうしても足に合わないみたいなので・・・。」と連絡をいただいたんです。お客様とはじっくり相談しながら作らせていただいたと思っていました から残念でした。それで、「やっぱりこのままではダメだな、合わない原因がちゃんと知りたい。」と思い、この木型コースに申し込みました。

Q.他にも、木型講座のある教室は幾つかありますが、ここを選ばれたのは?

そうですね、他のところもいろいろ検討したのですが・・・
カリキュラムが他の教室では、靴の種類によっていろいろな木型を学ぶよう でしたけれど、ここの内容だと一つの木型をもとにいろんな靴の種類によって修正の処置を変えるというやり方。これはいいなと思いました。
学んだあと、靴の種類ごとに木型 を揃えていくのは大変だけれど、ここのやり方なら全種類の木型を揃えなくても、少 ない木型で対応できる方法ですから。学んだことをすぐ実践に役立てられそうだな、と思いました。それに学ぶときも、そのほうが靴の種類が変わるときに木型が どう変わるのかがきっと理解しやすいだろうな、と。
それから受講スケジュールの問題。
他の教室は、仕事をしながら受講可能なところとなるとけっこう難しい。ここのコースなら曜日や開始時間が固定されてな く、仕事が終わった時間からでも始められるので大丈夫だと思いました。

Q.それで、受講してみていかがでしたか。

もう、すごく勉強になりました。満足度100%です!受けてみて本当に良かったです!
今まで靴作りとして学んできたとおりのやり方で作ってはいたのですが、各パーツの大きさ、向き、位置などにどんな意味があるのかまでは把握していなかった。。。理解しないでやっていた事が沢山あったんだって、ここではじめて知りました。その理解できていない ところがどんどんクリアになります。
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Q.例えばどういったことですか。

一番の違いは採寸の仕方です。ここでは私がやっていた採寸よりもずっと細かく、何箇所も確認していくんです。それに最初びっくりしました。あと、採寸 で足のトレースを取り、それがどんな種類の靴にも対応していることを学べました。また、木型コースなのですが実際には、私のやってた靴作りで理解が足りな かったところを木型以外でも随分教えていただいています。

Q.ここへ来られた最初の時期に、工房のサイズ別の試着靴もご自身で履いてみていらっしゃるんですよね。

ええ、受講スタートするときに試着靴も履かせていただいたんですが、私が今まで履いていた靴とは全然違う、踵が不思議なほどぴったりフィットしてくるんです。脱ごうと思わないと脱げない!
今まで、パンプスとか甲のあきの大きな靴は踵が抜けやすいのはある程度仕方ないものだと思っていました。だけど、ここの試着靴はストラップも何もついてい ないプレーンなパンプスなのに、踵側から靴が足を「がしっ」とホールドしている感じなんです。「足にフィットするってこういうこと!?」って、驚きでし た。

Q.木型修正の材料が他とは違いますが、これはどうでしたか。

木型修正は、早速私も同じようにさせていただこうと思って、既に購入の申込をさせていただきました。
この、ロウで修正する方法、粉塵も出ないし、修正が何度でもすぐ出来るのがすごい。
今まで、木型修正はパテなどを中心にしていたのですが、パテの場合、細かなサイズ出しは予め少し大きめにパテを塗っておいて、固まるのを待ってから少しずつ 削っていくやり方。でもパテが固まるのを待たないと削れないし、間違って削りすぎたりするとまたパテを塗るところからはじめないといけない。いち いち待ち時間がかかるぶん、修正作業が中断して、集中も途切れてしまう。でもこのロウだと、サイズに対してロウを足したり引いたりの作業はその場ですぐにできるから、細かな調整もあきらめずに納得いくまで集中して出来ます。それにパテだとずっと粉塵を吸い込んでしまうのが気になっていましたが、ロウだと心配ない。安心して作業に集中できます。それから、ゴミの問題。削りかすや固まったパテの残りは毎回全部ゴミになって嫌だったのですが、ロウだと繰り返し使えるからゴミが出ないんです!このロウを使うやり方、すごく いいです!!
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教 えていただく方法も、とても判りやすいです。
自分の足に合わせ、一つの木型からパンプスや紐靴用にロウで修正をほどこしていくのですが、どこにどん な理由で修正が必要かをその都度、具体的に説明していただきました。
実際にお客さんの靴を作っている身だからこそ、「ここがききたかった」というポイントが沢山あり、それをその場ですぐに尋ねられるのがいい。
まさに、実践で学んでいく手法。そして、その修正を反映した靴の履き心地を自分で確認し、それも先生にチェックしていただきながら、問題点を一つずつクリアにしていきます。
その中で、

・「木型修正とは、数値だけを合わせればいいという ものではない」こ と、

・トレースの情報を本当に全部木型に反映していく精密さ、

・同じトレース・同じ木型を使っても、反映のさせ方が違うとそれがすぐに履き心地の差として出る こと

・・・など、オーダー靴のために大切にしなくてはいけないポイントを惜しまずに教えていただいて、ほんとうにいい経験をさせていただいたと思っています。
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Q.それじゃぁ、このコースを終えられたあと、実践での靴作りも楽しみですね。

はい、本当に楽しみなんです。実は、ストラップパンプスを返品になったお客様に靴をもう一度作らせてもらおうかと考えています。だからそれもすごく楽しみ なんです。今度こそ、もっといいものをお届けしたいと。それに、ここで学んでいくうちに、前に失敗しても分らずにいた理由がわかってきたんです!これも凄 いことだと 思います!でも過去に作った靴を見て、今までは気付いてなかった失敗も新たに見えてきそうで怖いですが・・・(笑)

荻野さん、貴重な受講時間中、お話沢山聞かせていただきました。ありがとうございます!
荻野さんの工房・・・Hyggelig(ヒュケリ)