2006年06月04日

褥瘡について

褥瘡・・・・

聞くだけでイヤぁ〜な言葉。

その原因を知っていますか?

褥瘡の直接的な要因は当然ながら「長時間、同一部位の圧迫」ですね。

でも、「全員体位交換しましょう!」なんてマンパワーまかせの介護になったりしますよね。

だから、褥瘡のリスクファクターが高い人をスクリーニングし、

個別にアセスメントをしてから、必要な量と質のケアを提供できれば、マンパワーが褥瘡予防のみに使われずにすみますねぇ〜。


で、直接的要因が、同一部位の圧迫ですが・・・
a:一定の場所に一定時間以上、一定以上の圧力が加わること。
b:骨突起部に体圧は集中すること。
をしっておくことが大切ですね。

一般的に200mmHgの圧力が2時間以上加わると皮膚の壊死が始まります。
ただし、傷がある場合にはかなり低い圧力でも、褥瘡になるとの報告があります。

***** 豚での実験 *****
Dinsdle氏は1974年、豚の臀部に傷をつけ圧迫することで褥瘡が発生圧力を調べた。

結果
健康な皮膚の場合290mmHg 擦った皮膚の場合45mmHg で褥瘡が発生した。
*****************

ということは、やっぱり仙骨部が多いんですよね。
仰臥位は、44%臀部に体圧がかかります。そして、他の原因も絡み合いやすい部位です。

そして、同一部位に圧力がかかっていると、普通であれば自分で動くのですが、「知覚神経障害」「運動障害」がある場合は、それが不可能となるため、褥瘡が発生します。


局所的な要因としては
a:加齢による皮膚の変化
加齢によって皮脂が減少したり、皮膚が薄くなったり、皮膚自体が外部の力に弱くなっていたり、皮膚に血液が行き届かなくなったり・・・・
そして、皮膚の回復力が低下してきたりします。


b:摩擦・ずれ
ギャッジアップ・体位交換・清拭や入浴・移乗などで摩擦・ずれが起こりやすいです。
摩擦・ズレでは傷ができ、圧力が加わると200mmHg未満であっても褥瘡が発生します。

c:皮膚の汚れ
失禁・下痢・発汗で汚れていると、皮膚はダメージを受けます。
特に便はアルカリ性のため皮膚へのダメージは大きくなります。

d:皮膚疾患
皮膚に疾患(ヘルペスなど)の部位は褥瘡が発生しやすいです。


全身的要因としては

a:低栄養
アルブミン・総リンパ球数・血統・ヘモグロビン・鉄・亜鉛・他ミネラル・ビタミン・摂取カロリー・水分


b:やせ
当然、骨突起部が大きくなります。
また、皮下脂肪が減少し、同一部位により大きな力がかかります。

c:基礎疾患
糖尿病・心不全・血管に伴う疾患・うつ状態など・・・
特に浮腫・手足の冷えがある場合は要注意。

d:内服
ステロイド・精神薬など・・・
動けるのに、動けない状態になっている時がある。
特に昼はあるけるが、夜間微動だにできないぐらい服用している時もある。

社会的要因
a:マンパワーの不足
 質と量の不足。量だけで判断しないほうがよい。

b:経済力
 予防マット・予防に効果がある車椅子やマット・医療器具など

c:情報不足
 褥瘡を予防するための情報の発信



また、個人的には次のようなことも視野に入れるほうがよいと考えています。

a:座位においても円背が強い場合は「90度ルール」は適応外であると考える。
 その為、座位におけるマットの工夫が必要であろう。特に尾骨の観察は怠らない。
b:現実的にはステージ1で判断していけることが予防効果を最大限に引き出せる。
c:踵も要注意である。(特に浮腫・四肢末端の冷えがある場合)
d:栄養は、「亜鉛・鉄分+たんぱく質」を摂取することで予防効果が大きい。
 この方法のメリットは、市販品で購入できるということ。
e:体位交換用マットを過信しないほうがよい。
 乱用することで拘縮を招き、結果として褥瘡誘発部位を増やす結果になる。
f:円座の効果(座面・踵など)は、あまり(まったくと言っていいほど)ない。
 根拠がはっきりしない円座の使用は避けるべきである。
g:拘縮がある場合は、思いもかけない部位に発生することがあるため、
 教科書にある誘発部位だけではなく、拘縮により圧迫されている箇所を特に
 注意して観察する。
h:睡眠を妨げると、様々な疾病にかかりやすくなる。
 ・その疾病から褥瘡のリスクが増える可能性がある。
 ・また、睡眠不足は日中の離床時間の低下を招き、褥瘡のリスクが増える。
 ・抵抗力が下がり、皮膚の細菌感染のリスクが増える。
     と私は考えている。
j:当然ながら、褥瘡予防マットもあくまで「予防」として使用する。
 ・マンパワーの補助としてとらえる。
 ・誰にでも柔らかい褥瘡予防マットが予防効果をあげるとは限らない。
  少しでも痛みにより自動できる場合は、その動きを妨げないマットを
  選択するということも視野に入れる。
 ・柔らかいマットはベッド端座が難しい。
  ⇒離床の妨げや介助者の腰痛を引き起こす。
  ⇒社会的要因を向上させる阻害因子となる。
k:基本的にギャッジアップでの食事は避ける。
 ・離床の際に摩擦・ズレを軽減するトランスファー能力を養う。
 ・スライドボードやスライドシートなどの用具を活用し、社会資源を浪費しない。
l:廃用性症候群は褥瘡のリスクファクターである。


原因を分析し必要な方法を導き出すことで効果的に予防できる。

1:「座位」が栄養摂取・除圧に適している。⇒適切な座位・マットでの離床。
2:汚染を避けるためには排便コントロールを行う。⇒朝食後のトイレ?
3:夜間の体位交換回数を減らし良く眠れる環境を整える。
  ⇒適切な圧力の分散。
   特に骨突起部の除圧を行い、圧力を皮下脂肪の多い部位へ移行させておく。

1〜3の実行を第1選択肢として考え、「一日の生活サイクルの中から予防していく」という視点が大切ではないか?

決して「2時間毎の体位交換が第1選択肢ではない!」と言っているのではありませんが、医療のプロチームである病院でも褥瘡が発生しているのですから・・・

eabbx509 at 02:00│Comments(6)clip!介護福祉 | 介護支援

この記事へのコメント

1. Posted by JUNKO   2006年06月04日 23:49
すごいわ。
生きた介護事典だわ…
2. Posted by 秋風   2006年06月05日 08:53
褥瘡の予防はチーム力を問われる所だと感じています。

それは、栄養・リハ・介護・看護スタッフ一丸となって取り組む必要があること。
昼夜問わず、ケアが必要であること。

そんなことを感じています。
3. Posted by 秋風   2006年06月05日 23:02
あと、mmHgはミリマーキュリーと読みます。
どうでもいいですが(苦笑
4. Posted by ロト6   2006年11月08日 14:09
5 いつも勉強させてもらってます。

朝食後のトイレ?・・・?が気になりました。
あまり深い意味はないのでしょうか?今はオムツの方でも、まずは朝食後だけでもトイレに座ってもらうことが、じょくそう予防でもあり自然な排便のコントロールによい事だと思っていますが、秋風さんの意見をお聞かせください。

ちなみにうちの職場ではそんなことできていませんが・・・。
5. Posted by 秋風   2006年11月08日 21:48
ロト6さんへ

今回の「?」は『褥瘡予防効果のみ』でだと考えてください。

「高齢者なので朝食後のトイレだけではなく、薬や水分量・日常の生活状況など、排便コントロールに必要なことを行うのが大切」ということです。

 “褥瘡予防”に限定した場合、汚染予防には朝食後のトイレ誘導だけで確実な予防効果をきれるものではないといので、「?」という表現にしました。

その他はそれだけで予防効果を得られるはずです。

追記
1つ目は直接的効果。
3つ目は間接的(社会的)効果。
6. Posted by ロト6   2006年11月09日 10:14
ありがとうございます。そうかなぁとは思いながらも、確認できてスッキリしました。

この記事にコメントする

名前:
URL:
  情報を記憶: 評価: 顔   
 
 
 
最新コメント