風土記云△昔△此國有男女△爲夫婦△共長壽△人不知其年齡△容貌壯若如少年△後爲神△今一宮神是也△因稱若狹國云々(倭漢三才圖會七十一)
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若狭一宮の伝承。福井県小浜市です。
ある夫婦が非常に長寿であって、しかもその容貌は若者のようであった、そういう内容ですね。
不老長寿。八百比丘尼伝承とも通じる伝承ですが、こちらは神となっている。
夫婦だったからこそかもしれません。
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北陸に集中的に不老不死伝承や常世国伝承が存在しているのはなぜなのか?
今現在はあまり良い案は浮かびません。
とりあえずウィキで若狭彦神社について調べてみました。
現在では若狭彦=彦火火出見、若狭姫=豊玉姫と見なされているようですが、後付でしょう。
とは言え神社の文様は「宝珠に波」とのことで、所謂シオミチノタマ・シオヒノタマが想起される、と書かれています。
でも海の呪宝、或は海神の神体が珠や石であることは九州から関東まで見られることです。
つまり、上記風土記逸文には全く触れられていませんが、やはり若狭彦・姫の長寿には海の呪力が関わっているらしい。
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社伝が引かれていますが、二神は遠敷郡下根来村白石の里に現れたとか。そして姿は唐人のようであったといいます。
浦島伝承のところでちょっと触れましたが、「伝承に中華風の装いが施されるのには理由がある」という私の発想はここでも間違っていないと思われます。
つまり、不老長寿の源である海中異界は、この世とは違う異国風の世界である、という発想があるのだと思うのです。そして当時の日本人にとって異国風と言えば古代中華的な世界であったと。
「白石」なる土地に示現したといいますが、白い石が変化したとかそういう民間伝承があると面白くなってくるのですが。
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その他メモ的に。
・この神社の神宮寺である若狭神宮寺には東大寺二月堂「お水取り」神事に先立って、「お水送り」神事がある。これは東大寺に旅行に行ったときにもちょっと調べました。
・東大寺ついでに、というわけでもないのでしょうが、良弁杉伝承の良弁も同地の出身?良弁が「鵜の瀬」の水を懐かしんだことから、上記の「お水送り」をするようになった。などという伝承もあるようです。(小浜市HP)
・この若狭彦神社がある福井県小浜市の空印寺には「八百比丘尼入定の洞窟」というものがある。
やはり八百比丘尼伝承の一つの中心地であるようです。
かたや人魚の肉、かたや宝珠に波&唐風の装い。雰囲気が違う気もしますが、深いところでつながりがありそうですね。