五六 狐の飛脚
1殿様のお抱えの飛脚はずば抜けて足が速い。
2周りの者は狐にちがいないと思い、油揚げに毒をもって殺す。
3村人は祟りを恐れて稲荷として祭る。

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「五六 狐の飛脚」
 狐。狐が人に変身する。祟り。寺社縁起。由来。秋田。山形。
 鳥取「経蔵坊」・東京浅草寺「弥惣左ヱ門稲荷」・奈良「源五郎狐」など他地域にもある。

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小松DBより。

・秋田県秋田市
「慶長9年佐竹義宜公が秋田の久保田城へ移転させられた後、毎夜あやしきものにうなされて眠れない。それで法術をかけると疲痩した老狐が現れ「あなた様が築城されて、私は住むべき地を失いました。何処かに住む所を下されば永遠に御遣いします」といい、與治郎の名をもらい、義宜の飛脚になって働いた。狐はあるとき猟師に罠にかかって死に、猟師らは祟られて死んだ。與治郎は城内に稲荷神社として祀られた。」

・秋田県湯沢市雄勝町
「佐竹義宣が使った「おさいんぱたのよじゅうろう」と「さかえのよじ兵衛」の2人の飛脚は誰より早かったが、狐が化けたものだった。茶屋の主人が人間離れした速さを不審に思い、あぶらねずみに毒を盛って出したのを食べて、2人は正体を出して死んでしまった。」

・山形県天童市
「昔天童にきたろうという名の狐がいた。人に化けて山形の殿様に飛脚として仕え、秋田の殿様に手紙を運んだ。飛ぶように速かった。途中にあぶらげを売る店があり、必ずそこに寄ってあぶらげを食べた。その様子から狐ではないかと怪しんだ農鍛冶屋が、ねずみを油で揚げて鉤に引っかけておくと翌朝きたろう狐が引っかかっていた。」

・東京都
「浅草観音の境内に弥惣左ヱ門稲荷という社がある。熊谷弥惣左ヱ門という飛脚が罠に掛かって死に狐となった。これを祀ったものと言う。」

・奈良県宇陀市・三重県伊賀市
「大和国宇多に人の手助けをする源五郎狐がいた。あるとき飛脚に頼まれ文箱を運んでいるとき山中で犬に殺された。伊賀国上野の広禅寺にその妻だと言われる小女郎狐というものがおり、寺の手伝いをしていた。延宝のころのことだがいつの間にかいなくなった。」

・奈良県生駒郡
「明治初年に郵便がはじめて行われたとき、お狐さんの飛脚の仕業だといっていたという。この地にある洞泉寺境内にある源九郎稲荷社は人々の信仰があつかった。」

・鳥取県鳥取市
「経蔵坊は鳥取久松城の山に住んでいた古狐だった。江戸へ2日で飛脚をつとめて非常に重宝がられていた。ある時播磨国を通るとき、焼鼠の香りに心を制しきれず、狐わなにかかって非業の死を遂げた。家中の人がその死を知って憐れみ、小祠を作って祀った。これを狙ったのが玩具の経蔵坊である。」

・島根県簸川郡大社町
「江戸からの飛脚が走ったが帰ってこない。翌日、狐おとしにかかっている飛脚の姿を見つけたが、その正体は白狐だった。」

以上小松DB「狐 飛脚」の検索結果に上ってきた伝承ですが、基本的には人の害になるようなことはしない狐たちだったようです。

秋田の事例は「佐竹義宣」という具体的な人物名を挙げ、報恩譚要素もあり稲荷としても祀られていることから、かなりしっかりと伝承されてきたことがわかります。ただ「あの飛脚の速さは人間離れしている→狐だった」というイメージだけの話ではない。

なぜ佐竹義宣にまつわる話とされているのか?気になります。
他国の情報を知るのが異常に速かった、とか?