1首狩り隊の成員は紡織機や苧麻に触れてはならない。
2首狩り期間は他人の食べ物を借りてはいけない。また他人に食物をあげてはいけない。
3屋内の火鉢は新たに火を起こし、この火は外出して首狩りをしている間は絶やしてはならないし、他人に火を分けてはいけない。
4私通・姦淫・セックスを行ってはならない。
5喧嘩をしたり、騒いだり、汚い言葉を吐いたりしてはならない。
6顔を洗ってはならない。口げんかをしてはならない。結婚式をしてはいけない。他族の結婚式に参加してはならないなど。
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1はよく見る禁忌ですが、首狩りは特に男性の専権事項ということもあり、より強いタブーが発生するということでしょう。
2は首狩り隊成員と他人との関係性。なぜ食べ物の貸し借りがいけないのか?首狩り自体は栄光ある行動なのですから、他者はあやかろうと考えそうなものですが?
これについては「首狩り期間」と「首狩り成功後」の首狩り隊に対する感情や対応の違いについて比較する必要があるような気がします。
3首狩り期間中首狩り参加者の家では火を絶やしてはならないというのは、「陰膳」的な発想なのだと思います。ただここでも他者に火を貸してはいけないと言われます。
2・3で他者との食べ物・火の貸し借りを禁じているのは、穢れが他者に移る事を嫌っているのか?それとも首狩り参加者の家庭のパワーを減じないため、という意味でしょうか?後者の方が強そうな気もしますが、穢れもないとは言えません。
首狩りは英雄的な行為ではあり、現在の原住民もそれを強調する傾向はありそうですが、危険を伴うというのも事実であり、両義的な意味付けもあったはずです。その辺、首狩りを巡る習俗を緻密に見ていく必要があるはずです。
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4性的な禁忌ですが、理由についてもっと詳しい報告が欲しいものです。
5喧嘩の禁止というのは、首狩りの神聖性を考えると納得は行きます。しかし一方で危険な戦闘行動?でもある首狩りにおいて感情のコントロールを重視するのは難しいものです。
6顔を洗ってはいけないというのはありそうですが、理由づけは良くわかりません。
結婚式を開いてはいけない、というのは首狩り期間中結婚適齢期の男性は出払っている可能性が高いですから、そもそも無理な気もします。
他族の結婚式に参加しても行けない、というのは食べ物タブーにみられるような、「内と外」関係と共通するものかもしれませんね。
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やはり首狩り期間とその前後の変化について、儀礼過程を追わなければならないでしょう。それこそターナー的な緻密さをもって。
ただそこでもやはり難しいのは現在ではこの儀礼自体が失われているということです。日本時代の記録ですら、当時の人の記憶をたどったモノでしかありませんから、詳細な研究にはかなりの困難が予想されますね。