2020年01月17日

恩師 芳賀徹先生

昨秋、さる宴席で恩師、芳賀徹先生にお会いした。お目にかかるのは二十数年ぶり。

先生は非常にお元気で、自然、近年の文芸・文芸批評など広範囲に話題は及んだ。その中には、高名な文学者・小説家などに対する辛辣な批評も含まれるが、今話題にしたいのは、そのことではない。

王朝文学について話題になったとき、『枕草子』について、最近私がとても感銘を受けた本があったので、それに言及した。

すると、ほんの二言三言概括的な話をしただけで、「それは山本淳子さんだな」とおっしゃった。私自身は、その本の名(『枕草子のたくらみ』朝日新聞出版)も忘れていて、もちろん著者名も失念していたのに、芳賀先生は、直ちにその本の著者を名指しされたのである。老齢に差し掛かっても、本質を見抜くこの目利きぶり、若い無名の仕事にも目配りを怠らず、その優れた独創性を鋭敏に感知していらっしゃる若々しい知性に、心から敬服した。

もともと先生のお仕事には、興味の赴くところ、どの分野であろうとかまわず跋渉してゆくという文人的な学風があったが、この非凡な新人に対する温かいまなざしに、つくづく人文学の王道を見る思いがする。

かたじけなくも、この学統の末席を汚すことを、私は心から誇りに思う。

今後とも、先生のますますのご活躍を祈念申し上げる。


Posted by easter1916 at 06:21│Comments(0)