川西庸介著『未来を予知する気学』
- カテゴリ:
- オカルト本大集合
今回取り上げるのは、川西庸介著『未来を予知する気学』(ムー・ブックス)。初版は1983年、手元の本はその初版。
ムーブックスの一冊ということなので、予言か超能力の本なのだろうと思って用意したわけなのですが、読み進めるうちに、これは単なる占いの本なのでは……? と気づきました。とはいえ用意した後なので取り上げないわけにもいかず……。
著者は全日本統計気学研究協会会長、国際文化交流協会役員。『週刊サンケイ』誌に命数診断の連載もしていたそう。本書で扱われているのは、一白水星だとか二黒土星だとかの九星気学となっています。
ムーブックスの一冊ということなので、予言か超能力の本なのだろうと思って用意したわけなのですが、読み進めるうちに、これは単なる占いの本なのでは……? と気づきました。とはいえ用意した後なので取り上げないわけにもいかず……。
著者は全日本統計気学研究協会会長、国際文化交流協会役員。『週刊サンケイ』誌に命数診断の連載もしていたそう。本書で扱われているのは、一白水星だとか二黒土星だとかの九星気学となっています。
それでは本文を見ていきましょう。
気学の歴史の話から始まります。年表が載っており、最初は「約4,000年前――古代中国(伝説時代)亀卜と蓍筮の時代」という記述で、「夏時代の禹王(黄河の氾濫で神亀の折文を見る。洛書の原形となる……三元九星学の原形)」と続きます。
九星気学はそれだけ起源が古いと主張したいようです。あとは、孔子が易経を完成させ、朱熹が太極を説き、王陽明が陽明学を説いて、現代の気学につながるそう。
なお、評者は先秦の文献をかなり広く読んだのですが、九星気学の記述なんてまず見かけませんでした。先秦の文献に載っているのは、二進法の周易と、木火土金水の五行、それと十干に十二支くらいだったでしょうか。
この本では、「東洋の思想はその基本に、天・地・人の三元を陰陽に置き、東西南北、光と空気、食物と時間、それに火・水・土が加えられて九つの数となり、万物の根元としています」などと書いてありますが、なにが根拠なのやら。
ここでは天地人にそれぞれ1・2・3、「東西南北」に4、「光と空気」に5、「食物と時間」に6、火・水・土にそれぞれ7・8・9というルビが振られています。実際の中国思想では、最初に一があり、そこから陰陽あるいは天地(乾坤)が生じ、それが発展して木火土金水の五行となります。東西南北はそこに中央を加えることにより、五行にそれぞれ配されるわけで。上の記述は、九星に合わせるために無理な数合わせをしてるなと思うところです。
気学の歴史の話から始まります。年表が載っており、最初は「約4,000年前――古代中国(伝説時代)亀卜と蓍筮の時代」という記述で、「夏時代の禹王(黄河の氾濫で神亀の折文を見る。洛書の原形となる……三元九星学の原形)」と続きます。
九星気学はそれだけ起源が古いと主張したいようです。あとは、孔子が易経を完成させ、朱熹が太極を説き、王陽明が陽明学を説いて、現代の気学につながるそう。
なお、評者は先秦の文献をかなり広く読んだのですが、九星気学の記述なんてまず見かけませんでした。先秦の文献に載っているのは、二進法の周易と、木火土金水の五行、それと十干に十二支くらいだったでしょうか。
この本では、「東洋の思想はその基本に、天・地・人の三元を陰陽に置き、東西南北、光と空気、食物と時間、それに火・水・土が加えられて九つの数となり、万物の根元としています」などと書いてありますが、なにが根拠なのやら。
ここでは天地人にそれぞれ1・2・3、「東西南北」に4、「光と空気」に5、「食物と時間」に6、火・水・土にそれぞれ7・8・9というルビが振られています。実際の中国思想では、最初に一があり、そこから陰陽あるいは天地(乾坤)が生じ、それが発展して木火土金水の五行となります。東西南北はそこに中央を加えることにより、五行にそれぞれ配されるわけで。上の記述は、九星に合わせるために無理な数合わせをしてるなと思うところです。
占いに使うこういった図も多く掲載されているのですが、方向を示すのに十干と十二支を同列に並べた上に乾坤も入れて無理矢理24個揃えたりと、やはり無茶をしております。
ともかく気学を活用すれば未来を予知できるそう。
「現代人にとって、予知能力をもつということは、超能力者の領域に入ることですが、古代人は一般的な「知恵」として、ごく日常的に未来を予知していたのです」
ということなのでこの本も超能力本でありオカルト本であると判断します。
それはともかく、古代人が予知能力を持っていたというのなら、思わぬ天変地異や災厄で苦しんだりすることはなかったのかと疑問に思うところですが。
ともかく気学を活用すれば未来を予知できるそう。
「現代人にとって、予知能力をもつということは、超能力者の領域に入ることですが、古代人は一般的な「知恵」として、ごく日常的に未来を予知していたのです」
ということなのでこの本も超能力本でありオカルト本であると判断します。
それはともかく、古代人が予知能力を持っていたというのなら、思わぬ天変地異や災厄で苦しんだりすることはなかったのかと疑問に思うところですが。
年や月にも九星が配置されており、年によって縁起の悪い方位があったりするそう。
三島由紀夫の自決は「月盤において、五黄は中央に入っていました」
「歴史的に見ると、昭和十六年十二月八日に、日本軍は真珠湾を攻撃しました。これが、太平洋戦争の始まりでしたが、この年は五黄の年でした」
こういうノリは予言本みたいでいいですね。
三島由紀夫の自決は「月盤において、五黄は中央に入っていました」
「歴史的に見ると、昭和十六年十二月八日に、日本軍は真珠湾を攻撃しました。これが、太平洋戦争の始まりでしたが、この年は五黄の年でした」
こういうノリは予言本みたいでいいですね。
運気を良くするには、いい方位に行くといいそう。
「理想的には、祐気取り方位に行って、大地や自然の気にふれることです。そのうえ、井戸の水(太陽にふれない地下水)を飲むことです」
「また、病気で困っている人は、祐気取り方位の土(地表から六尺=約二メートル下のもの)を採取して、寝る時に、患部の下に敷いておくと快方に向かいます」
井戸は刊行当時はまだまだ残っていたにしても、地表から1.8mほど土を掘り下げろというのは無茶な注文なのでは。病人本人ではなく家族や知り合いに頼むにしても、地形が変わりそうですし。
「以上の説明だけを読むと、いとも簡単のように思われますが、実行には大変な根気と努力を要するものです」
簡単のように思ったりなんてしませんって。
「理想的には、祐気取り方位に行って、大地や自然の気にふれることです。そのうえ、井戸の水(太陽にふれない地下水)を飲むことです」
「また、病気で困っている人は、祐気取り方位の土(地表から六尺=約二メートル下のもの)を採取して、寝る時に、患部の下に敷いておくと快方に向かいます」
井戸は刊行当時はまだまだ残っていたにしても、地表から1.8mほど土を掘り下げろというのは無茶な注文なのでは。病人本人ではなく家族や知り合いに頼むにしても、地形が変わりそうですし。
「以上の説明だけを読むと、いとも簡単のように思われますが、実行には大変な根気と努力を要するものです」
簡単のように思ったりなんてしませんって。
下の画像は生まれ月と九星の表なのですが、月に配当される九星は年によって替わっており、複雑なものとなっています。さらにいえばその生まれ月も、厳密には5~6日ずつずれており、1月と表記されているのは1月6日~2月3日、2月は2月4日~3月5日、という具合だそう。
1PWとか3BLとかいうのはこの本独自の省略表記で、一白水星、二黒土星、三碧木星、四緑木星、五黄土星、六白金星、七赤金星、八白土星、九紫火星の数字部分と、色を英字表記した際の頭文字のようです。略しても文字数はあまり変わらない上に無駄にわかりにくくなって、手書きの労力を省略したかっただけでは……と思うところ。
ここでは、それぞれの気の性格診断、そして生まれ年の十二支や、生まれ月の気と合わさった場合の性格について詳細に述べています。
ここでは、それぞれの気の性格診断、そして生まれ年の十二支や、生まれ月の気と合わさった場合の性格について詳細に述べています。
たとえば1PW(一白水星)の基本的な性格は「外見は温和そうで一見気弱そうに見えますが、内面は剛気でプライドが高いのです」。
生年が1PWで生まれ月が4GR(四緑木星)という組み合わせだと、「十八歳までは石橋をたたいて渡るような用心深い性格」、「十九歳ごろから、孤独を好むようになり」、といった風に細かく書かれています。
三碧木星の年で五黄土星2巡目の月生まれだと、「歴史上の大人物はこの核心の生まれの人が多い」とのこと。なおこの本、核心の生まれごとの著名人リストも載っているのですが、その3BL・5G二順目の生まれに載っているのは、今里広記・坂本竜馬・桂米朝・太地喜和子・小林繁の5名。この中で歴史上の大人物といえるのは竜馬くらいでは……?
生年が1PWで生まれ月が4GR(四緑木星)という組み合わせだと、「十八歳までは石橋をたたいて渡るような用心深い性格」、「十九歳ごろから、孤独を好むようになり」、といった風に細かく書かれています。
三碧木星の年で五黄土星2巡目の月生まれだと、「歴史上の大人物はこの核心の生まれの人が多い」とのこと。なおこの本、核心の生まれごとの著名人リストも載っているのですが、その3BL・5G二順目の生まれに載っているのは、今里広記・坂本竜馬・桂米朝・太地喜和子・小林繁の5名。この中で歴史上の大人物といえるのは竜馬くらいでは……?
評者が該当する組み合わせを見てみたところ、独創的で人の真似をするのが嫌いとか、若くして事業を起こすが中年期に失敗とか書かれていて、まったく当たってないなと。むしろ五黄土星の方が、「自我が強く融通のきかない面があるので人づき合いは苦手で、人と会っているより、歴史などに興味をもち、書斎にこもって読書していることのほうを好みます。能力は組織の中では発揮できず(後略)」とか書かれていて、こっちの方がずっと評者に近いなと思う次第です。実際には生年も生まれ月も五黄土星にはかすりもしてませんけど。
なお、各気にはその象徴となる言葉が大体1ページくらいに渡って列挙されており、5G(五黄土星)は画像の通り。他の気だと「天徳」「雄弁」とか良い意味の言葉も入っているのですが、ここだけほとんど悪い意味の言葉ばかり。5G生まれの人が気の毒になってきます。
あとは、九気のうちどれに近い性格かを割り出す、性格診断みたいなテストも載っています。どの気に該当するかは生まれ年や生まれ月で決まるのであって、性格で決まるものではないのでは……?
あとは、九気のうちどれに近い性格かを割り出す、性格診断みたいなテストも載っています。どの気に該当するかは生まれ年や生まれ月で決まるのであって、性格で決まるものではないのでは……?
最後の最後になって、1983年2月から1986年2月までの気学から割り出した予測が掲載されています。ようやく予言っぽいネタが出てきてくれました。
とはいっても、1983年の「社会的に大きな事件の発生する日は、五月八日、十七日、二十六日、六月四日」という風に、簡潔な文章が箇条書きされてるだけですけど。
wikiで日本と世界のその年の出来事を調べたところ、上記の日付に起きたのは「5月26日 - 日本海中部地震(M7.7)。秋田県を中心に北海道・東北地方の日本海側に甚大な被害を出し、104人が死亡(うち津波による死者は100人」というものだけでした。それにこの予測、災害は災害と書いてあるので、当たっているかは微妙なところ。
「競馬、競艇、プロスポーツが活気づく」ともありますが、ミスターシービーはそこまで社会的な人気になりましたかどうか。
「電気商品が活気づく」「各国の軍隊の動きが活発化しはじめる」といった、ひどく漠然としている上に、なにかしら該当する出来事はありそうな予測も。
とはいっても、1983年の「社会的に大きな事件の発生する日は、五月八日、十七日、二十六日、六月四日」という風に、簡潔な文章が箇条書きされてるだけですけど。
wikiで日本と世界のその年の出来事を調べたところ、上記の日付に起きたのは「5月26日 - 日本海中部地震(M7.7)。秋田県を中心に北海道・東北地方の日本海側に甚大な被害を出し、104人が死亡(うち津波による死者は100人」というものだけでした。それにこの予測、災害は災害と書いてあるので、当たっているかは微妙なところ。
「競馬、競艇、プロスポーツが活気づく」ともありますが、ミスターシービーはそこまで社会的な人気になりましたかどうか。
「電気商品が活気づく」「各国の軍隊の動きが活発化しはじめる」といった、ひどく漠然としている上に、なにかしら該当する出来事はありそうな予測も。
1984年の予測では、「地震は、三月、五月、十二月に起こりやすい」。日本で同年の3、5、12月に起きた大きな地震は、3月6日の鳥島近海が震源、最大震度4というのくらいのようです。
「一線級の人が引退する」といった、そりゃ誰かしら引退はするでしょうといったものも。ちょっと検索した限りだと、同年引退で引っかかったのは大相撲の高見山くらいですけど。
「一線級の人が引退する」といった、そりゃ誰かしら引退はするでしょうといったものも。ちょっと検索した限りだと、同年引退で引っかかったのは大相撲の高見山くらいですけど。
1985年の予測では、「新聞の社会面をにぎわす大事件の発生は、六月八日、十七日、二十六日、七月四日」。この日付に起きた出来事は、6月8日に大鳴門橋開通、17日に柔道の山下泰裕が現役引退。それらが社会面をにぎわす大事件かというと疑問です。6月18日だったら豊田商事の永野一男刺殺事件が起きてたんですけどねえ。
こうやって見ると全然当たってないなあ。
こうやって見ると全然当たってないなあ。
さてこの本、ムー・ブックスの一冊でなかったらまず取り上げなかったような本で、この頃はまだ路線も定まってなかったんでしょうか。内容もほぼ九星気学の理論と実践となっており、最後に載っている予測はムー読者へのサービスっぽいですし。裏表紙には「あなたが、本書によって気学の法則をマスターすれば、明日からの自分の運命を、意のままに、あやつることが可能である」とか書いてますけど、自分の運命を操れるようになった読者はいたのでしょうか。