んか、おかしい。



部屋に入った途端すぐわかった。


あたし用のスリッパが靴箱の奥の方に隠されてる。

お泊り用に洗面台に置いていたあたしの歯ブラシが捨ててある。


タオルの折り方があたしと違う。



『部屋の鍵無くしたから、お前に預けてる鍵、一旦返して。』



めんどくさがって借りようとしなかったくせに、DVDショップのレンタルバックがある。


えび、ぼ、く、さー?


何これ。マサキこんなの全然趣味じゃないくせに。


あ、そっか。

誰かが持ってきてくれて、誰かが返してくれるんだ。そゆことか。




「今、マサキの部屋いるよ。今日何時にバイト終わるの?」

『んー。微妙に遅くなりそう。鍵、ポストに入れちゃって!ごめんね!』








意気地なし。別れ話すら出来ないなんて。



捨てられた歯ブラシを見て。


自分の気持ちも捨てられてたんだって思えた。



隠されたスリッパは、そのままにしておいた。仕返し。

新しい彼女が、それに気付いてちょっとでもケンカでもしてしまえばいいんだ。



部屋の鍵をかけ、マンションの下のポストに鍵を落とした。




なんか結構あっけないもんだなって。





ふー、っと深呼吸したら涙あふれてきた。




誰も悪くない。仕方ない。


そう思っても、あっちは2人なのに、あたしは1人。なんか不公平じゃない?って。




泣いてすがるとかが出来ないわたしは、あいつにとっては都合がいい。面倒にならないから。多分今日部屋に戻って、あたしが部屋で待ってないってわかったら安心するんだと思う。





このまま家に帰りたくないな・・・。


っていうか、一人でいたくないな・・・。




携帯を取り出し、電話帳を一件ずつめくる。



あれ?

“大型自動車免許センター”ってなんだ?


あたし、免許なんてとった覚えもないのに・・・。



おもむろに、通話ボタンを押した。