2006年11月21日

海 〔小川洋子〕 3

海
小川 洋子

新潮社 2006-10-28
売り上げランキング : 25415
おすすめ平均

Amazonで詳しく見る
by G-Tools

≪内容≫
キリンはどんなふうにして寝るんだろう―。
『新潮』掲載の表題作ほか、「博士の愛した数式」の前後に書かれた、美しく奥行きの深い全7作品を収録する。
この世界の素晴らしさを伝えてくれる短編集。
(MARCデータベースより)

ほんの数ページで終わってしまう掌編の物語も含めて、七つの物語が収録されています。
小川洋子さんの文章はほんとに美しい。
特別な言葉は出てこないにもかかわらず、その言葉の連なりで豊かなイメージが自然に湧き起こってくる感じ。

「海」では、恋人の「小さな弟」の演奏する鳴鱗琴(メイリンキン)という楽器の音色をあれこれと想像。なんだか、現実から離れた幻想的な雰囲気が漂ってました。

「風薫る〜」では、琴子さんがベッドの上に、まるで特別にあつらえたような置物のように正座する姿。ウィーンの街並みや、自然の風景も目に浮かぶよう。

「バタフライ〜」では、和文タイプを打つ時の手の動き。
「レバーを握り、広い活字盤の中から一つの文字を探す手の動きが、花の蜜を求めて飛ぶ蝶のように見え」るというその動き。優雅で、優美な動きなんだろうなぁ〜と想像が膨らみます。
そして、この作品はちょっと官能的。行間の物語や、その後の物語を想像せずにいられません。

「銀色のかぎ針」「缶入りドロップ」は掌編小説。
にもかかわらず、二つの物語とも鮮やかにその情景が思い浮かびました。何とも穏やかで、ほのぼのと牧歌的。

「ひよこトラック」は、抜け殻のコレクションと、ひよこの積まれたトラック。

「ガイド」は、川下りのできる川、城塞に氷の洞窟、採掘場跡の岩山、牢獄の跡地などという遺跡の風景。
“シャツ屋”や“題名屋”というようなちょっと不思議な職業の人々も登場します。

海にのんびりと浮かぶように、ゆったりと物語の世界に浸って、一つ一つの物語のイメージの世界、想像の世界にたゆたっていたい。そんな心地いい作品集でした。

●収録作●
「海」
結婚の承諾を得るために休暇をとって、泉さんの実家へ泊り掛けの旅。泉さんの両親と九十歳のおばあさんと、十歳下の「小さな弟」が迎えてくれた。

「風薫るウィーンの旅六日間」フリープランでウィーンに滞在する旅で、単身の参加者は私と琴子さんだけ。六十台半ばの、とてもよく太った未亡人である琴子さんと同室になった私は、成り行きで琴子さんの昔の恋人に会いに行くことに。

「バタフライ和文タイプ事務所」
バタフライ和文タイプ事務所は、医学部の大学院生たちの学会発表用の抄録やスライドの原稿を、一字一字和文タイプで原稿に直す仕事を請け負っている。ある日糜爛の「糜」の活字が欠けてしまい、私は活字管理人に新しいのを出してもらうために倉庫に向かう。

「銀色のかぎ針」
岡山駅を出発したマリンライナー。私の向かいに座った老婦人は、電車が動き出して間もなく、編み物をはじめた。

「缶入りドロップ」
四十年間、バスだけを運転してきた男。今は、幼稚園のバスの運転手をしている。

「ひよこトラック」
男の新しい下宿先は、七十の未亡人が孫娘と二人で暮らす一軒家の二階。定年を間近に控えたホテルのドアマンの男と、大きな瞳を持つ、痩せっぽちの六つの少女との交流。

「ガイド」
公認観光ガイドのママが、お客さんたちを集合させるための集合用の旗をなくしてしまった。以来、不運な出来事が続けざまに起こる。街が停電してしまう日に、僕はママのツアーに同行し、ひとりの老紳士と出会う。

単行本
新潮社[2006.10発行]
【読了 2006.11.21】

小川洋子さんのインタビュー記事を見つけました→こちら

ebinote at 21:51コメント(18)トラックバック(9) 
あ行:小川洋子 

トラックバックURL

トラックバック一覧

1. 海 小川洋子  [ 粋な提案 ]   2006年11月22日 01:02
装幀は吉田篤弘・吉田浩美。 2004年を中心に各誌掲載作品7編を収めた短編集。 ・海(掲載誌、新潮) 語り手の僕は、結婚の承諾を得るため、泉さんと彼女の実家を訪ねます。ぎこちない雰囲気の夕食。夜、彼女の弟と一緒に????Q
2.   [ ぼちぼち。 ]   2006年12月09日 22:24
『海』小川洋子(新潮社) 風は目印を見つけたかのように、彼に吸い寄せられる。海を渡る全ての風が、小さな弟の掌の温もりを求めている――。不思議な楽器を演奏する恋人の弟との出会いを暖かな筆致で描く「海」、奇妙な老人から思いがけない人生の秘訣を授かる少年を...
3. 海/小川洋子  [ 仮想本棚&電脳日記 ]   2006年12月15日 22:38
海/小川洋子 「博士の愛した数式」の前後に書かれた小川洋子の短編集です。
4. 海  小川 洋子  [ モンガの独り言 読書日記通信 ]   2007年01月24日 00:36
海 小川 洋子  07−19 ★★★☆☆  【海】 小川 洋子 著  新潮社  《美しく、奥行きの深い物語……小川ワールド》  内容(「MARC」データベースより) キリンはどんなふうにして寝るんだろう-。『新潮』掲載の表題作ほか、「博士の愛した数式」の前...
5. 本「海」  [ <花>の本と映画の感想 ]   2007年03月25日 22:17
海 小川洋子  新潮社 2006年10月 海  鳴麟琴という世界にひとつしかない楽器を演奏する小さな弟。幻想の世界に入って様な感覚だった。 風薫るウィーンの旅六日間 大切なのは昔こんなことがあったという思い出があることなんだと思う。今と...
6. 海/小川洋子 [Book]  [ miyukichin’mu*me*mo* ]   2007年05月07日 00:14
 小川洋子:著 『海』  海新潮社このアイテムの詳細を見る  短編7篇。  冒頭の「海」とラストの「ガイド」がよかったです。  「バタフライ和文タイプ事務所」も、  静かにちょっと淫靡な香り(笑)が好きでした。  「ガイド」  ガイドをしているママに同行するこ...
7. 「海」 小川洋子  [ コンパス・ローズ  compass rose ]   2007年08月13日 11:14
海小川 洋子 / 新潮社(2006/10/28)Amazonランキング:87251位Amazonおすすめ度:Amazonで詳細を見るBooklogでレビューを見る by Booklog この夏一番の暑さとなった今日の札幌の最高温度は34度。もとよりクーラーなどない部屋は、ただ座っているだけでも身体から水分が蒸発...
8. 海<小川洋子>−(本:2007年125冊目)−  [ デコ親父はいつも減量中 ]   2007年10月27日 17:10
海 出版社: 新潮社 (2006/10/28) ISBN-10: 4104013048 評価:78点 微妙に現実離れした不思議で静かな小川ワールドを、7つの短編で堪能できる。そんな優れものです。 最初の「海」を読み進めて行く途中で、おおよそこの短編集の色や匂いはわかると思うので、あとは...
9. 『海』/小川洋子 ◎  [ 蒼のほとりで書に溺れ。 ]   2008年10月23日 22:44
『夜明けの縁をさ迷う人々』を読んだ時に、【今日何読んだ?どうだった??】の麻巳美さんにお勧め頂いた、小川洋子さんの『海』。 麻巳美さんのお勧めなら間違いなし??!と期待満々で読みました。 ・・・おお??、素晴らしい!これはいいです、ホントに。

コメント一覧

1. Posted by 藍色   2006年11月22日 00:59
エビノートさん、こんばんは!
「ミーナの行進」が良かったので、短編集も読んでみました。
豊かなイメージが伝わってくる、素敵な短編集でしたね〜。
「風薫るウィーン−」と「ガイド」が特に好きです。
2. Posted by プリン   2006年11月22日 21:49
あ〜 これも読んでみたいんですよ!
昨日、本屋ですごく迷ったんですが、迷うとついつい長編の方を選んじゃうんですよね、なぜか(^_^;
やっぱり買えばよかった〜(>_<) ってエビノートさんのレビューを見て思いました(^_^;
3. Posted by yori   2006年11月22日 22:43
シンプルすぎるタイトルに惹かれます 笑
小川さんは「博士」しか読んだことがないのですが、何となく短編が良いような気がするのは私の思い込みでしょうか 笑
4. Posted by エビノート   2006年11月23日 20:20
藍色さん
こんばんは!
そうですよね、色々な風景が浮かんでくる素敵な作品集でした。
「風薫る〜」と「ガイド」は街並や風景が特に鮮やかに思い描ける作品でしたね〜
「ガイド」の街は実在しないんでしょうかね?
行ってみたくなるような場所でした
5. Posted by エビノート   2006年11月23日 20:36
プリンさん
こんばんは
わかります!迷っちゃうと長編を選んじゃいますよね。
あと、同じくらいの値段だとページ数で選んじゃったり…
「海」というタイトルどおり、様々な色合いの感じられる味わいのある短編が詰まってましたよ
6. Posted by エビノート   2006年11月23日 20:41
yoriさん
こんばんは
短編はこれが初挑戦だったんですよ〜
色々な味わいがあって良かったです。
3、4ページの短い話もあったんですが、短い中にも小川洋子さんの色を感じることができましたよ
7. Posted by ちきちき   2006年12月09日 22:16
こんばんは。
すごい良かったです。
小川さんの本は気持ちよくちょこっと不思議体験をさせてくれます。なんか、五感で読む感じ。
さすが!ですね。
8. Posted by エビノート   2006年12月10日 09:48
ちきちきさん
こんにちは
まさにそうですよね!五感で読む感じ!
文字から、音も風景も登場人物の心も伝わってきて、それをちゃんとイメージできるんですよね〜
9. Posted by モンガ   2007年01月24日 23:42
こんばんは、エビノートさん。
良かったですね。
いろんな形の小川さんを見れて。
やっぱり、元になる文章が良いから、
どれもがステキに思えるのでしょうか。
10. Posted by エビノート   2007年01月25日 19:51
モンガさんへ♪
こんばんは!
短編ごとにいろんな味わいがあって、深いですよね。
文章の美しさとあいまって、とても素敵でした。
11. Posted by    2007年03月25日 22:22
短いお話の中に、物語が集約されていて、それぞれの長編を読んだような感覚になりました。
「缶入りドロップ」なんて、ほんの3ページなのに、この運転手の人柄の良さが充分わかり、彼の運転手としての人生のすべてを見たような気持ちになりました。
12. Posted by エビノート   2007年03月25日 23:36
花さんへ♪
そうなんですよね〜「缶入りドロップ」など、とっても短いのに
そのときの情景が目に浮かぶようでしたし、
運転手の人柄も伝わってきましたよね〜
どれも良い作品で、印象に残っています♪
13. Posted by miyukichi   2007年05月07日 00:15
 こんばんは♪
 TBさせていただきました。

 小川さんの文章、やさしくあたたかいですよね。
 私も大好きです。
 つかのま非日常に浸ることができました。
14. Posted by エビノート   2007年05月07日 19:22
miyukichiさんへ♪
こんばんは!
小川さんの文章、いいですよね〜
言葉から物語が立ち上ってくる感じがします。
そして、おっしゃるとおり優しくあったかいですよね。
そしてちょっと不思議な感覚も味わえて・・・。

TBありがとうございました♪
15. Posted by 雪芽   2007年08月13日 11:23
エピノートさん、こんにちは!
小川さんの文章は美しいですよね。
言葉のひとつひとつからイメージが湧き上がるようです。
特別なことが起こるわけでもないのに、日常の風景に不思議が紛れ込んでいて、そこで自分もひとりひとりの心にそっと触れた気がします。
しばらく浸っていたくなる短編集でした。
16. Posted by エビノート   2007年08月13日 19:55
雪芽さんへ♪
こんばんは!
小川さんの言葉から紡ぎ出されるイメージ。
その世界が心地良くて、しばらく浸っていたい、私もそう思った短編集でした。
あ〜〜久々に小川さんの作品を読んでみたくなりました♪
17. Posted by 水無月・R   2008年10月23日 23:06
エビノートさん、こんばんは(^^)。
どれも、キラキラしく輝くというよりは、ひっそりと瞬くような、静かな雰囲気の物語で、とても気持ち良く読みました。
「ガイド」の少年の成長が、潔く清々しくて、なんだか「ママ」が羨ましくなりました。
18. Posted by エビノート   2008年10月25日 21:13
水無月・Rさんへ♪
こんばんは。
読んでいる間、すごくリラックスしていたような記憶があります。小川さんの文章を読み、その世界に浸るだけで幸せ〜♪という感じでした。
「ガイド」の少年、ママのためにという気持ちがあたたかかったですよね。こんな男の子、自分の息子にほしいです(笑)

コメントする

名前
 
  絵文字
 
 
プロフィール

エビノート

rssなど
【ほんぶろ】にて、
特集ページを
作成していただきました♪
↓↓
エビノートの特集ページ


Subscribe with livedoor Reader
月別記事
お気に入り
いらっしゃいませ♪
メールはこちらから
アクセス解析
QRコード
QRコード
訪問者数
  • 今日:
  • 昨日:
  • 累計: