2007年03月30日

【新釈】走れメロス 他四篇 〔森見登美彦〕 3

新釈 走れメロス 他四篇新釈 走れメロス 他四篇
森見 登美彦

祥伝社 2007-03-13
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≪内容≫
あの名作が、京の都に甦る!?
異様なテンションで突っ走る表題作をはじめ、先達への敬意が切なさと笑いをさそう、5つの傑作短編を収録。
若き文士・森見登美彦の近代文学リミックス集。
(MARCデータベースより)

最近注目している森見登美彦さんの新作は、そのタイトルのとおり「走れメロス」などの名作を、森見流にアレンジされた作品集でした。
どれも、現代が舞台、そして森見作品ではおなじみの京都が舞台です!
京都に行ってきたばかりだったから、余計に楽しかったというのもあるかもしれません。
観光してきた場所がいろいろ登場するんですもの。
それだけでも、楽しかったです!

★収録作品★
「山月記」(中島敦)
「藪の中」(芥川龍之介)
「走れメロス」(太宰治)
「桜の森の満開の下」(坂口安吾)
「百物語」(森鷗外)
( )の中は、原作者の名前です。

この中で、ちゃんと読んだのは実は2作品しかないんですけど(^_^;)
元の小説の文体のエッセンスを活かしながら、展開される物語はやっぱり森見さんの作品なんですよね〜。
原作と自分の物語を融合させてゆく、その塩梅が上手いなぁ〜と思いました。
「山月記」の李徴の哀切な独白には原作と共通するものを感じたし、
「走れメロス」は、原作をこうまで変えちゃうかぁ〜と呆然としたら、ちゃんと原作を踏まえた展開にしていたりと、工夫が凝らされていましたしね。
爆笑しちゃったのは「走れメロス」でした。
桃色ブリーフですか〜、なんて馬鹿馬鹿しい!と思いながら、京都中を疾走するスピード感溢れる展開が、何とも可笑しくて噴き出してしまいました〜。
詭弁論部や象の尻など、『夜は短し歩けよ乙女』で出てきた小道具もあって、これまた楽しい。
ただし、原作を超えるものになっているかというと、あくまでもリミックス版というか、パロディなので…私は原作の方が好きです。

「桜の森の満開の下」や「百物語」は『きつねのはなし』を思わせるような、ちょっと妖しげな雰囲気を漂わせた、切なさとかほんのちょっぴり怖さも感じさせる作品でした。
「桜の森の満開の下」にあった、桜の花の下から人間を取り去ると恐ろしい景色が広がるという感覚は、何となく分かるなぁ〜って感じがします。
桜の花は美しいけれど、例えば夜の暗闇にぼんやりと白く浮かび上がる桜の花を見ていると、何かそこに潜んでいるような、ゾ〜ッとした雰囲気を感じてしまいます。
夜桜見物に、たった一人で行こうとは思わないもの。

単行本
祥伝社[2007.3発行]
【読了 2007.3.26】

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8. 新釈 走れメロス 他四編  [ 香桑の読書室 ]   2007年07月30日 23:38
 森見登美彦 2007 祥伝社 あ、またパンツ。色合いも字体もレトロな装丁の表紙
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10. 「新釈 走れメロス 他四篇」森見登美彦  [ AOCHAN-Blog ]   2007年10月04日 18:03
タイトル:新釈 走れメロス 他四篇 著者  :森見登美彦 出版社 :祥伝社 読書期間:2007/08/07 - 2007/08/09 お勧め度:★★★ [ Amazon | bk1 | 楽天ブックス ] 異様なテンションで京都の街を突っ走る表題作をはじめ、先達への敬意が切なさと笑いをさそう、五つ...
11. 【新釈】走れメロス他四篇⇔森見登美彦  [ らぶほん−本に埋もれて ]   2007年11月27日 11:11
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〈新釈〉走れメロス 他四篇 森見登美彦 異様なテンションで京都の街を突っ走る表題作をはじめ、先達への敬意が切なさと笑いをさそう、五つの傑作短編。(「BOOK」データベースより) 山月記/ 薮の中/ 走れメロス/ 桜の森の満開の下/ 百物語 正直原作は...
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14. 新釈 走れメロス 他四篇 / 森見登美彦  [ たかこの記憶領域 ]   2009年10月22日 18:05
実は先日の事前準備はこの本のため!森見登美彦の現代版「走れメロス」。リメイク本とでもいうのかな、とにかく面白かった!! 森見さん(勝手に「もりみぃ」と呼んでいる)の本は、「夜は短し歩けよ乙女」をアンソロジーの中でちょっと読んだだけ。京都を舞台にとんでも....

コメント一覧

1. Posted by 藍色   2007年04月04日 16:23
こんにちは。
それぞれの短編のテイストが異なっていて、バラエティ豊かな作品集でしたね。
やっぱり「走れメロス」が一番面白かったですよね。
象の尻が出てきたので「夜は短し歩けよ乙女」(近日レビューアップ予定)の学園祭アナザー・ストーリーの一面も。
鴨川デルタの写真見ていたので、おぉ、あそこが、と感動しました(笑)。


2. Posted by エビノート   2007年04月04日 21:47
藍色さんへ♪
こんばんは!
「走れメロス」はほんと楽しかったですね〜
そうそう!「夜は短し〜」と繋がる部分もあってニヤリとしてしまいました。
京都旅行で行った場所がたくさん出てきたので、さらに好感度アップした面もあるかもしれませんが、京都中を疾走するスピード感あふれる文章が楽しかったです。
「夜は短し〜」の感想も楽しみにしてますね♪
3. Posted by ちきちき   2007年05月21日 23:03
こんばんは。
楽しかったですね〜。
いろいろパロディとして面白おかしく読めました。
「走れメロス」の逃げっぷりは、やっぱり地元なので手に取るようにわかるのでそういう点でもニヤニヤしてしまいました。
4. Posted by エビノート   2007年05月22日 21:46
ちきちきさんへ♪
こんばんは!
そうですよね〜ちきちきさんの地元ですもんね!
登場する場所・地名で、さらに楽しめますよね〜
私も旅行しておいて良かったです!
ああ、あそこか〜♪と風景が目に浮かびました
5. Posted by たまねぎ   2007年06月01日 23:25
エビノートさんこんばんは。
これまで出てきた小道具の山がうまく生きてましたね。
まさかまたあの学祭に入れるとは思ってもいませんでした。
6. Posted by エビノート   2007年06月02日 20:43
たまねぎさんへ♪
こんばんは!
あの学祭の裏でこんなことも起こってたのか!と、楽しく読めました♪
図書館警察長官といい、あの大学にはまだまだ奇想天外なことがありそうですよね〜。
7. Posted by the salaryman   2007年06月16日 13:34
こんにちは。
ばかばかしいんですが、ドリフターズ世代の僕はこのくだらなさがとっても好きでした。
中でも『走れメロス』がダントツですね。
森見作品では、僕はこの『【新釈】走れメロス』と『夜は短し・・・』のタッチが好みです。
8. Posted by エビノート   2007年06月16日 20:59
the salarymanさんへ♪
こんばんは!
ああ、なるほど〜ドリフターズの笑いと共通するものがありますね!
くだらないけれど、読んでいてとっても楽しかったです。
特に「走れメロス」は秀逸。
こういう路線の話ももっと読みたいですよね。
9. Posted by 雪芽   2007年06月17日 16:25
う〜ん、やっぱり京都に行きたくなります。
それしてもなんてとんでもオモシロ大学。薔薇色のキャンパスライフは無理でも、楽しい学生生活が過ごせそうです。
10. Posted by エビノート   2007年06月17日 21:34
雪芽さんへ♪
行ってみたくなりますよね〜京都。
哲学の道の満開の桜は、いつか見てみたいです!
とんでもオモシロ大学、潜りこんでみたいですよね。
学園祭に、サークル活動
楽しいに違いありません!!
11. Posted by きりり   2007年06月19日 23:53
何だか一作目の山月記で、どど〜んと胸に来たため暗く読んでしまいました メロスがなくてはぁ メロスがなくてはぁ読み切れなかったでしょう ホント走れメロスは面白いですね〜 すごく森見さんらしく好きな作品です
12. Posted by エビノート   2007年06月20日 20:59
きりりさんへ♪
「山月記」は、李徴と秀太郎という二人の主人公の姿が上手く重なってましたよね。
だからこそ、秀太郎の姿が何だか切なく、哀しかったです。
「走れメロス」で、気持ちをもち直せたとのこと、良かったです!
ここで登場する学園祭の様子は『夜は短し歩けよ乙女』にも描かれているので、
まだ未読であればぜひ♪
楽しいんですよ〜これが。
13. Posted by ll   2007年07月11日 15:14
本当の山月記との違いはどのようなことだと思いますか?
14. Posted by エビノート   2007年07月11日 22:39
ll さんへ♪
こんばんは!
コメントありがとうございます。
う〜ん、原作の『山月記』との違いですか。難しいです。
文章は似てはいるものの、あくまでも原作の文章をアレンジして書かれた作品なので、中島敦の名文を超えるものにはなってないかなぁという印象でした。
自尊心の高さから虎になってしまった李徴と、この作品の主人公の姿は重なる部分があると思うんですけどね。
15. Posted by 苗坊   2007年08月05日 16:09
こんにちは。
私は森見さん初読作品だったので、他の作品を読むのが楽しみです。
5作品の中で既読なのは「山月記」と「走れメロス」だけなんですよね。
他の実際の作品も読んでみたくなりました。
16. Posted by エビノート   2007年08月06日 00:57
苗坊さんへ♪
こんばんは!
森見さんの作品初だったんですね!
モリミーワールドへようこそ♪
他の作品も是非是非!

私もちゃんと読んでいたのは『山月記』と『走れメロス』だけでした〜。
でも、この作品を読むと原典にあたりたくなりますよね。
17. Posted by らぶほん   2007年11月27日 17:39
こんにちは。
「走れメロス」には驚きました。
森見さんの手にかかると、こんなにも違った作品になってしまうのですね。
後半の2作品は、じんわりとした得体の知れない気味悪さが残りました。
確信を持って行動する人間は、凄みもあるけれど怖い存在でもあるのかもしれません。
18. Posted by エビノート   2007年11月27日 21:27
らぶほんさんへ♪
森見さんバージョンの「走れメロス」には驚きでしたね〜。
こういうアレンジもあるのかと!
ブフフと笑いながら読んでいたら、いつの間にかちゃんと友情の物語になっていたところはすごいなぁ〜と思います。
全く違う方向に行くんだろうなぁと想像していただけに(^_^;)
後半の2作品は、一転妖しさ抜群の話でしたね。
笑える作品も好きだけれど、こういうのも好きです。
19. Posted by しお   2008年02月14日 06:57
ほとんど原作を知らない私ですがとても楽しく読めました。最後2作品は不思議な雰囲気が好きですねぇ。
20. Posted by エビノート   2008年02月16日 20:31
しおさんへ♪
私も読んだときは、原作読んだことない作品の方が多かったです。それでも面白かったですね〜。
そうそう、最後の2作品は不思議な雰囲気が良かったですよね。
21. Posted by 水無月・R   2008年04月27日 00:22
エビノートさん、こんばんは(^^)。
「走れメロス」の桃色ブリーフで踊り狂うその姿が非常にトホホで、ツボでした。
「芹名の友情にこたえるには、逃げ切る!」というのも非常に詭弁論部らしいというか…(笑)。
「百物語」の語り手「森見君」もよかったですね〜。
22. Posted by エビノート   2008年04月27日 21:40
水無月・Rさんへ♪
こんばんは〜☆
桃色ブリーフには笑ってしまいましたねぇ〜。踊りくるう姿には一抹の悲哀も漂ってるんですけど、ついつい吹き出してしまう破壊力がありました〜笑
詭弁論部ならではの友情の表し方、オカシイだろそれ!と突っ込みつつも不覚にもホロリとさせらちゃったり(^_^;)
「森見君」の登場にはにんまりでしたね〜♪
23. Posted by たかこ   2009年10月22日 15:24
やっぱり、「走れメロス」が1番でしたね。

桃色ブリーフにぷぷっとなりました。
でも、京都を逃げ回っている感じが実に躍動感にあふれてて、読んでてどきどきしました。
これは、原典を超えるのでは!?と思ったほどです(笑)
24. Posted by エビノート   2009年10月28日 20:38
たかこさんへ♪
そうそう!「桃色ブリーフ」やら、京都の街並みやら、森見テイストが溢れていて原典に勝るとも劣らない面白さがありました。「走れメロス」で大爆笑しちゃうとは!と、読んでいてとっても楽しかったです♪

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