2008年01月29日

警官の血 上・下 〔佐々木 譲〕 3

警官の血 上巻警官の血 下巻
≪内容≫
戦後闇市に始まり、全共闘、そして現代まで、警官三代の人生、昭和から平成の時代の翳、人々の息づかいを描ききる。
警察小説の最高峰。
(単行本 上巻・帯より)

第138回直木賞候補作。
また、2007年度の各種ランキングでも上位になっていた佐々木譲さんの『警官の血』です。
上・下巻という長さ、そして描かれるのは警官三代の人生と読み応えのある内容でした。

戦後間もない昭和23年、警察官になった安城清二。
共通項のなさそうな「男娼殺害事件」と「国鉄職員殺害事件」を独自に捜査する清二は、天王寺の五重塔が燃えたその夜、跨線橋から転落死する。
父の後を継ぎ、警察官の道を選んだ安城民雄。
父のように制服警官として生きようと志していた彼に命じられたのは北大過激派への潜入捜査だった。任務を果たし、念願の制服警官、駐在所勤務になったものの…。
そして三代目、安城和也は警視庁警察官として採用される。
彼に命じられたのは、問題のある警察官をスパイせよというものだった。

とまあ、簡単な経歴を内容紹介の形にしてみたけれども、もちろんこれだけで全てが語りつくせるはずもなく、何を書いてよいものやら。
戦後間もないころから現代に至るまでの時代背景が興味深かったです。
自分が生まれていないあのころはこんな感じだったのか〜と想像しながら読んでいました。
各時代の様子や事件の様子など淡々と描かれていて、途中飽きてしまうところはちょっとあったけれども。

民雄と和也が主人公になる第二部・第三部では、自らの警察官としての仕事と同時に、何故父親は死んだのか、父親が生前抱えていた何かを探るミステリーにもなっています。
この謎は、あっと驚くようなものではないのだけど、それでも何十年という時を経て真相が明らかになってゆくところではホホ〜ッと唸ってしまいました。
それを自分自身が警察官として生きるために強かに利用する姿には、ウ〜ンそれで良いのか?という疑問を感じはしましたが、自らの信念を貫くためにはキレイごとばかりは言っていられないんだろうなぁ〜とも思えたのでまぁ納得。
一市民としては、出来れば警察官には清廉潔白でいて欲しいのだけども、ね。

単行本
新潮社[2007.9発行]
【読了 2008.1.19】

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ebinote at 20:09コメント(9)トラックバック(8) 
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トラックバック一覧

1. 警官の血  佐々木譲  [ 今更なんですがの本の話 ]   2008年02月01日 01:48
警察小説のもう一冊は佐々木譲さんの『警官の血』です。佐々木さんも以前一冊だけ読んでいて気になっておりました。その時の『制服捜査』は連作短編だったので、今回は長編を。 これも先に読んだ『ビター・ブラッド』同様に親子3代警察官というお話で、実はテーマも少し似....
2. 【佐々木譲】警官の血  [ higeruの大活字読書録 ]   2008年02月26日 02:16
3  ご存知「このミステリーがすごい! 2008年版」1位作品である。《親子三代、それぞれの警官人生が重厚に描かれる警察大河小説》 というのがその紹介記事の見出し。この見出しに嘘は無い。が、そんなに面白いかぁ?というのが偽らざる感想である。 新潮社 2007/9/25 発行...
3. 警官の血 下巻  [ ぼちぼち ]   2008年02月27日 21:41
JUGEMテーマ:読書 汝の父を敬え――制服の誇り、悲劇の殉職。警察官三代を描く、警察小説の最高峰誕生! 昭和二十三年、上野署の巡査となった安城清二。管内で発生した男娼殺害事件と国鉄職員殺害事件に疑念を抱いた清二は、跨線橋から不審な転落死を遂げた。父と同じ道...
4. 本「警官の血」  [ <花>の本と映画の感想 ]   2008年06月24日 20:01
警官の血 佐々木譲 新潮社 2007年9月       昭和二十三年、上野署の巡査となった安城清二は、管内で発生したミドリという男娼殺害事件と国鉄職員田川克三殺害事件に疑念を抱き調べていた。駐在所と敷地が隣り合わせの五重塔が火事の時、不審な男を...
5. 警官の血  [ どくしょ。るーむ。 ]   2008年08月05日 02:17
著者:佐々木 譲 出版社:新潮社 紹介文: 佐々木譲さん、初読みです。 警察小説だから堅いかなと思ってたんですが、面白くてビックリしました。 親子3代の警官の人生と事件を描いた大河小説。 物語は戦後の混乱期から現代まで続きます。 地域に根付いた人情味あふ...
6. 警官の血  [ Akira's VOICE ]   2009年02月05日 11:37
佐々木譲 著 
7. 血脈の暗部  [ 活字の砂漠で溺れたい ]   2010年02月21日 19:07
三代に渡る警察官の家系、 戦後のドサクサから現代平成の御代に至るまで、 脈々と受けるがれる警察官DNA、 血脈というものを意識せざるを得ない、大河小説だった。 小説のタイトルは、そのまま捻りもなく 笑 「警官の血」 遅まきながらも今季の直木賞を受賞した 佐々木譲...
8. 最近読んだ本  [ 京の昼寝〜♪ ]   2012年06月06日 08:17
「警官の血」/佐々木 譲(新潮社刊)   安城清二、民雄、和也・・・。親子三代に渡っての警察官一家。 しかも東京の駐在所勤務。清二の死に息子民雄は疑問を持つ。その周辺を調べながらも、自ら事件に対峙し、父の潔白と自殺ではないことを晴らせずに殉職。そしてその...

コメント一覧

1. Posted by たまねぎ   2008年02月01日 01:37
時代背景や実際の事件との絡め方が興味深かったですよね。警察官としての立ち位置については考えさせられました。最近は警察への不信感が社会的に高まっているだけに特に。
2. Posted by エビノート   2008年02月01日 23:13
たまねぎさんへ♪
大菩薩峠事件とか、こんな事件だったんだ〜と、この本で知ったことが結構多くて興味深かったです。
警察の不祥事が起こるたびに、許せんと思う気持ちになり、同時に不祥事とは関係なくコツコツと仕事をしている他の警察官が気の毒になっちゃいます、私。
3. Posted by ちきちき   2008年02月27日 21:34
こんばんは。
戦後の町の様子とか、現代へと移り変わっていく時代背景は、私も興味深く読むことができました。
世代が進むにつれて、警察組織の黒いところがよく見えてきて、やるせなくなりました。
本当、みんながみんなそうなわけでもないでしょうにね。
4. Posted by エビノート   2008年02月28日 19:53
ちきちきさんへ♪
こんばんは!
昔はこんなだったんだ〜って、興味深かったですね。
警察組織の暗い部分は、現実とも重ね合わせて想像しちゃって、ちょっと苦い感じが残ってしまいました。
5. Posted by    2008年06月24日 20:05
3代に渡る警察官の物語として読み応えがありました。
キレイ事だけではすまされない世界だということ、戸惑いましたが、市民を守るのだという強い信念がそうさせているのだろうということに納得しました。
6. Posted by エビノート   2008年06月24日 21:02
花さんへ♪
3代の警察官の歩み、同じ職業でも時代によって求められるものが変わり、違う生き様を読めましたね。本当に、分量に見合うだけの読み応えがありました。
そうですね〜。戸惑うところもありますが、ゆるぎない信念が感じられましたね。
7. Posted by ia.   2008年08月05日 02:23
こんばんわ。
読み応えのある本でしたね〜。
本当に何と書いてよいのやら。
警官たちの凛々しさ、信念のようなものが伝わってきましたね。
ところで、このミス1位がこれで、2位が「赤朽葉家〜」、
ミステリ界では、大河風が最近のブームなんでしょうか?(笑)
8. Posted by エビノート   2008年08月06日 19:30
ia.さんへ♪
こんばんは。
3代にわたる警察官の生き様、読み応えがありましたね〜。
そういえば「赤朽葉家〜」も3代にわたる物語でした。
2007年は大河小説がブームだったのでしょうかね〜?
どちらも時代の雰囲気とあわせて楽しく読むことができました。
9. Posted by yori   2010年02月22日 22:14
エビノートさん こんばんは
特に一代目、戦後のドサクサを描いた風景が印象的でした。

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