2009年09月30日

悪党 〔薬丸 岳〕 3

悪党悪党

角川書店(角川グループパブリッシング) 2009-07-31
売り上げランキング : 9576
おすすめ平均

Amazonで詳しく見る
by G-Tools

≪内容≫
自らが犯した不祥事で職を追われた元警官の佐伯修一は、今は埼玉の探偵事務所に籍を置いている。決して繁盛しているとはいえない事務所に、ある老夫婦から人捜しの依頼が舞い込んだ。自分たちの息子を殺し、少年院を出て社会復帰しているはずの男を捜し出し、さらに、その男を赦すべきか、赦すべきでないのか、その判断材料を見つけて欲しいというのだ。この仕事に後ろ向きだった佐伯は、所長の命令で渋々調査を開始する。実は、佐伯自身も、かつて身内を殺された犯罪被害者遺族なのだった…。
『天使のナイフ』で江戸川乱歩賞を受賞した著者が、犯罪者と犯罪被害者遺族の心の葛藤を正面から切り込んで描いた、衝撃と感動の傑作社会派ミステリ。
(BOOKデータベースより)

「悪党」「復讐」「形見」「盲目」「慟哭」「帰郷」「今際」という7章の話が描かれる連作短編集ともいえる構成。
けれど、主人公にまつわる長編でもありました。

浮気調査や失踪者の所在調査のほかに「犯罪の被害に遭われた方に。加害者の追跡調査を承ります」というサービスを取り入れた探偵事務所には、様々な事件の被害者や、事件に関わった人物が依頼人となって訪れる。
この探偵事務所に勤める佐伯修一は、それらの依頼に対して複雑な思いを抱きながら調査に当たることになる。
それは、佐伯修一自身が姉をレイプされた上に殺害されたという犯罪被害者遺族だから。

7章、それぞれにいろんな犯罪の加害者、被害者、関係者が登場するので、事件そのものや事件から生じた悲劇とか、読んでいて息苦しくなるものがありました。
どれもこれも嫌〜な気持ちになる事件なんだもの。
章立てで描かれるので、気持ちの切り替えはしやすかったけど。
「犯罪の被害に遭われた方に」対するサービスを取り入れた探偵事務所の所長の拝金主義的な経営方針にもムカムカしちゃったり。
それは、最後まで継続はしないんだけど、途中まではほんとに嫌だったなぁ〜。

幸いにして犯罪の加害者にもまた被害者にもなっていない私だけど、自分がこの作品の中に登場する人物と同じ立場になったときどう考えるだろうか、どう行動するだろうかと思いながらの読書でした。
被害者になったとき、加害者がどういう行動をとればその罪を許そうと思えるようになるのか。
加害者になったとき、何をもって罪を償うといえるのか。
事件の当事者じゃない時、その事件は犯人が逮捕され、起訴され、裁判を経て判決が出るまでで終わったような気になってしまうけれど、当事者(被害者・加害者)にとってはその後もずっと続いていくんですよねぇ。
どこで事件に対する決着を付けるのか、明確に答えが示されるわけではなく、読者に委ねられている感じ。
主人公である佐伯修一はある答えを見つけ出しましたが、それでもそう上手くはいかないだろうという想像は容易にできて、難しいなぁ〜と思う内容でした。

単行本
角川書店[2009.7発行]
【読了 2009.9.5】

にほんブログ村 本ブログへブログランキング(小)

ebinote at 00:00コメント(8)トラックバック(6) 
や・ら・わ行:薬丸岳 

トラックバックURL

トラックバック一覧

1. 「悪党」薬丸岳  [ しんちゃんの買い物帳 ]   2009年09月30日 23:41
悪党(2009/07/31)薬丸 岳商品詳細を見る 細谷夫婦が佐伯修一の勤める探偵事務所を訪ねてきたのは十日前のことだった。依頼は、坂上洋一という男の..
2. (書評)悪党  [ 新・たこの感想文 ]   2009年10月04日 22:16
著者:薬丸岳 悪党(2009/07/31)薬丸 岳商品詳細を見る 「息子を殺した男を捜して欲しい。社会復帰したその男の暮らしぶりを見て、赦すべきか??..
3. 薬丸岳「悪党」  [ 聞いてあげるよ君の話を ]   2009年11月02日 01:06
探偵事務所に勤める佐伯は、子供の頃に姉を殺害されていた ある費、事務所を訪ねてきた夫婦から昔、自分の息子を殺害した犯人を探して欲しいと依頼を受ける そして今その犯人を今もう赦すべきか、赦さざるべきかの判断をして欲しいと頼まれる いったい何をもって赦す、赦....
4. 悪党  [ どくしょ。るーむ。 ]   2009年11月03日 21:30
著者:薬丸 岳 出版社:角川書店 感想: 薬丸岳さんの新作「悪党」は今までとはまた違った味わいの作品。 いつものように犯罪被害者側に立った長編作品ではありますが、複数の犯罪と向き合う連作風の仕上がり。 犯罪被害者の遺族である主人公が私立探偵となり、他の遺族の依...
5. 「天使のナイフ」「悪党」 薬丸 岳  [ ポコアポコヤ ]   2009年11月07日 14:55
未成年者の犯罪を描いた「天使のナイフ」が読みごたえがあったので、薬丸岳さんの新作「悪党」も読んでみました。2冊とも、未成年者による殺人事件の被害者側からの視点で描かれた本でした。
6. 悪党 (薬丸 岳)  [ 花ごよみ ]   2010年01月27日 18:57
不祥事が原因で、 警官を懲戒免職になり、 今は探偵事務所に勤めている、 佐伯修一が主人公。 佐伯は被害者家族。 その加害者に対しての、 おさまることのない復讐心。 佐伯の勤務する探偵事務所にも 佐伯と同じ心を持った、 被害者の依頼がくる。 人を探し出すことによっ...

コメント一覧

1. Posted by しんちゃん   2009年09月30日 23:40
お久しぶりです。
考えさせられる作品だけど、とにかくいい。
今後もこの方向で続けて欲しいです。

話変わるけど、グッドな作家に出会いました。
似鳥鶏さんです。学園ものでは米澤さんを超える?そんな逸材だと思いました。たぶん、エビノートさんも嵌りそうな作家です。そこで一報を。

あと、目に付いたカテゴリに、ぽちぽちっとさせてもらいます♪
2. Posted by エビノート   2009年10月06日 20:33
しんちゃんへ♪
こんばんは。こちらこそ、お久しぶりです。
薬丸さんの作品は、いつも考えさせられるテーマですね。自分の身に降りかかってきたら、私ならどうするだろう?っていつも考え込んでしまいます。
重いテーマなのだけど、最後まで一気に読んでしまうリーダビリティの高さはすごいです。今後も期待大ですね!

おお〜!米澤さんを越える学園ものを書く人ですか〜。似鳥鶏さんですね!さっそくチェックしてみます♪
ありがとうございます♪
3. Posted by きりり   2009年10月26日 00:20
短編をいれながら佐伯自身の事件がながれて最後へと流れるのがウマいな〜と思いました
難しい題材ですよね... やっぱり
私も途中まで所長きらいでした
4. Posted by エビノート   2009年10月28日 21:03
きりりさんへ♪
こんばんは。
作品の構成も上手かったですね。最後まで面白くといっちゃなんですが、惹き込まれて読むことができました。
そして、いろいろ考えさせられましたね。
なかなか答えが出ないテーマに、毎回果敢に挑んでいらっしゃるなぁ〜と思います。
所長は途中まで嫌なやつでしたね〜(笑)
5. Posted by ia.   2009年11月03日 22:12
こんばんは。
寡作ながら一つのテーマでずっと書き続けられるというのは凄いですよね。
テーマがテーマだけに、いつも納得できるような、納得できないような思いが残るのですが、新作が出るとつい読んじゃいます(笑)
6. Posted by エビノート   2009年11月04日 21:12
ia.さんへ♪
薬丸さんの作品では、毎回考えさせられちゃいますね。罪と罰とのバランス、贖罪とは何なのか、答えは簡単に見つからないのですが、考えつづけていかなきゃなぁ〜と毎回思います。
どよよんとなっちゃうこともあるので、このくらいのペースがちょうどいいのかも。
でも、新刊が待ち遠しい作家さんの一人です。
7. Posted by latifa   2009年11月07日 14:40
エビノートさん、こんにちは!
>犯罪の被害に遭われた方に」対するサービスを取り入れた探偵事務所の所長の拝金主義的な経営方針にもムカムカしちゃったり。
 私もー!なんか凄い高額をふっかけて来たりもしてたし、なにこの人〜とか途中までは思ってました。
なんか最後の方は、急に良い人になっちゃって(^^ゞ 意外だったかな。

面白かったのですが、7つに分かれてる分、重みがズドーンと来なくて、やっぱり1つの話を長編で読みたいな〜と思っちゃいました。(いや、重みが来なくてって書いてますが、、充分に読んでいて重苦しいんですけどね・・・)
8. Posted by エビノート   2009年11月11日 20:09
latifaさんへ♪
こんばんは。
やっぱり、所長のやり方はムカムカしちゃいますよね〜。人の痛みをなんだと思ってるんだ!と憤りを感じちゃってました。最後のほうではあれれ?そうゆう人だったの?と意外な姿が見れますが・・・。分かりにくい人ですね、まったく(笑)
7つの短編それぞれに考えさせられるところが多かったですね。短編だった分、重みという点では物足りなかった面もありましたが、ちょうど読んだ時期が重苦しいのはちょっとね・・・という時期だったので、ピッタリでした。

コメントする

名前
 
  絵文字
 
 
プロフィール

エビノート

rssなど
【ほんぶろ】にて、
特集ページを
作成していただきました♪
↓↓
エビノートの特集ページ


Subscribe with livedoor Reader
月別記事
お気に入り
いらっしゃいませ♪
メールはこちらから
アクセス解析
QRコード
QRコード
訪問者数
  • 今日:
  • 昨日:
  • 累計: