薬剤師の地域医療日誌

薬剤師が臨床や地域医療にどのように関われるか、EBMを実践しながら模索しています。このブログは個人的な勉強記録です。医学文献の2次資料データベースとして医師、看護師、薬剤師その他のスタッフや患者様に役立てれば幸いです。情報に関しては知識不足の面から不適切なものも含まれていると思われます。またあくまで個人的な意見も含まれております。掲載の情報は最新の文献等でご確認の上、運用していただければ幸いです。

ご利用ありがとうございます。個人的に気になった論文を紹介しています。

メインブログの「地域医療の見え方」(http://jp.bloguru.com/syuichiao)、「思想的、疫学的医療について」(http://syuichiao.hatenadiary.com/)もよろしくお願い致します。

ご意見、ご質問などは(syuichiao@gmail.com)までお寄せください。

Schroeck JL.et.al. Review of Safety and Efficacy of Sleep Medicines in Older Adults. Clin Ther. 2016 Nov;38(11):2340-2372. PMID: 27751669

https://www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/27751669

 

[目的] 不眠は高齢者にとって大きな問題である。 生活習慣改善介入を行っても適切な反応を示さない場合、薬理学的な選択肢が用いられる。不眠症の治療に使用される薬剤の薬物動態は変化するかもしれない。 このレビューは、不眠症の治療に使用される医薬品の安全性と有効性に重点を置いている。

 

[方法] MedlinePubMedEmbaseを用いて文献検索をおこなった(19661月〜20166月)。本レビューではシステマティックレビュー、ランダム化比較試験、観察研究、および高齢者における不眠症に重点を置いた症例シリーズを含めた。検索用語には、米国食品医薬品局(FDA)の不眠症承認医薬品(ベンゾジアゼピン[トリアゾラム、エスタゾラム、テマゼパム、フルラゼパム、およびクアゼパム]、非ベンゾジアゼピン受容体アゴニスト[BzRA、ザレプロン、ゾルピデム、およびエスゾピクロン]、スボレキサント、ラメルテオン、ドキセピンおよびトラゾドン)や適応外医薬品(抗うつ薬、抗ヒスタミン剤、抗精神病薬、ガバペンチン、プラミペキソール、チアガビン、バレリアン、メラトニン)を含めた。

 

[結果] 認知行動療法および睡眠衛生は、不眠症の初期治療と考えられている。ベンゾジアゼピンは、特に長期使用は、高齢者集団においては推奨されない。非BzRAはベンゾジアゼピンに比べて安全性プロファイルが改善されているが、その副作用には認知症、重傷外傷、骨折などがあり、これらの使用には限界がある。ラメルテオンは最小の副作用プロファイルを持ち、睡眠開始潜時に有効であり、総睡眠時間を増加させるため、貴重な第一選択肢となる。スボレキサントに関するデータは限られているが、この薬剤は睡眠の維持を改善し、副作用は軽微である。 しかし、昼間の鎮静が報告されている。低用量の抗うつ薬の鎮静は、うつ病が合併した場合にのみ不眠症に使用するべきである。抗精神病薬、プラミペキソールおよびチアガビンはすべて不眠症のために使用されているが、高齢者では広範に研究されておらず、いずれもかなりの副作用を有する。ガバペンチンは、不穏下肢症候群または慢性神経因性疼痛および不眠症を有する患者に有用であり得る。ジフェンヒドラミンは、高齢者では避けるべき。バレリアンとメラトニンは、睡眠潜時に与える影響が小さく、残りの鎮静作用を引き起こす可能性のある(薬事的に)規制されていない製品である。

 

[結論] 不眠症の理想的な治療法は、睡眠潜伏期や睡眠時間を改善し、覚醒が制限され、昼間の傾眠や覚醒状態の低下などの重大な副作用がないようにすべきといえる。認知行動療法は常に第一選択治療であるべきである。不眠症治療の将来の方向性は、非薬物的介入、併存疾患の治療、およびベンゾジアゼピンおよび非BzRAを最後の手段として使用することに重点を置くべきである。

 

[コメント]

実は高齢者における不眠は転倒の独立したリスクファクターであることが報告されている。

J Am Geriatr Soc. 2000 Oct;48(10):1234-40.

https://www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/11037010

 

車を運転する高齢者においてベンゾは交通事故リスクに関連

This increased risk was confined to benzodiazepines (relative risk = 1.5; 95% CI 1.2-1.9) and cyclic antidepressants (relative risk = 2.2; 95% CI 1.3-3.5).

Am J Epidemiol.1992 Oct 1; 1367):873-83

https://www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/1442753

 

特に長時間作用型のリスクが高い

The adjusted rate ratio of crash involvement within the first week of long-half-life benzodiazepine use was 1.45 (95% confidence interval [CI], 1.04-2.03).

短時間型では有意差なし

In contrast, there was no increased risk after the initiation of treatment with short-half-life benzodiazepines (rate ratio, 1.04; 95% CI, 0.81-1.34)

JAMA.1997 Jul 2; 2781):27-31

https://www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/9207334

 

 

 

Nossent J.et.al. Asymptomatic hyperuricemia is not an independent risk factor for cardiovascular events or overall mortality in the general population of the Busselton Health Study. BMC Cardiovasc Disord. 2016 Dec 15;16(1):256. PMID: 27978810

https://www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/27978810

 

[背景]尿酸値と心血管疾患及び死亡の関連の影響を調査する。

 

[方法] Busselton Health Surveyのデータより、研究開始時の血清尿酸値を前向きに15年間追跡(解析対象4173例)ベースラインの心血管疾患の有無で層別化。結果は、州全体の病院退院と死亡記録から確認された。Cox回帰を用いて、尿酸値カテゴリ(低、中、高)と心血管イベント、死亡、自己報告による痛風との関連についてハザード比を算出。

 

[結果]年齢、性別で調整後。心血管イベントの既往のない人では、尿酸値の0.1mmol/Lの増加は、死亡リスク (HR 1.19, CI 1.04-1.36), 心血管死亡(HR 1.27, CI 1.03-1.57) 心血管イベントベント初発(HR 1.28, CI 1.13-1.44) の増加に関連。心血管疾患の生物学的、行動的リスク因子による調整でこれらの関連は弱まる。

 

全体の抗尿酸血症有病割合は10.7%、通風既往で層別化すると、心血管イベントを有する人のみで心血管死亡が増加した。 (HR 2.13, CI 1.03-4.43).

 

[結果] 人口の10.7%における高尿酸血症のかなりの罹患率にもかかわらず、尿酸値の単一または時間平均測定値は、心血管疾患または死亡率の事象を独立して予測するものではなかった。高尿酸血症は、痛風および既存の心臓血管疾患を有する参加者においてのみ、心血管死のリスク増加と関連していた。

 

[コメント]抄録のみではわかりにくいが、交絡調整後、尿酸値とアウトカムに関連は見られない。https://www.ncbi.nlm.nih.gov/pmc/articles/PMC5160002/table/Tab2/

つまり、尿酸値は心血管疾患や死亡の独立した危険因子ではない可能性が示唆されている。

 

 

Roughead EE.et.al. Proton pump inhibitors and risk of Clostridium difficile infection: a multi-country study using sequence symmetry analysis. xpert Opin Drug Saf. 2016 Dec;15(12):1589-1595. PMID: 27645304

https://www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/27645304

 

[目的]複数の国におけるPPIの使用とCDIの関連を検討する。

 

[方法] オーストラリアと韓国の全人口、65歳以上のカナダ人、台湾から300万人の無作為標本データをと、日本の労働者保険人口と入院患者/外来のデータが評価された。SSRSequence symmetry analysis)の手法を用いて、バンコマイシンの経口投与との関連が検討された。

 

[結果]54957例が解析に含まれた。有意なリスク増加は、オーストラリアASR2.48 (95% CI 1.90, 3.12),韓国ASR 2.15 (95%CI 2.11, 2.19), カナダASR 1.45 (95% CI 1.16, 1.79), 日本の病院データ ASR 3.21 (95%CI 2.12, 4.55) 日本の労働者保険データ ASR 5.40 (95% CI 2.73, 8.75). で示された。日本と韓国/台湾に限定して解析するとASRはそれぞれ、2.40 (95%CI 1.88, 3.05) 3.16 (95%CI 1.95, 5.10) であった。結果は個々のPPIによって変化しなかった。 時間的分析は、PPI開始の最初の2週間以内に効果を示した。

 

[結論] 我々の研究は、アジア太平洋地域の国々におけるPPI開始とクロストリジウム・ディフィシル感染との関連性が認められる。

 

Kalisch Ellett LM.et.al. Increased risk of hospital admission for dehydration or heat-related illness after initiation of medicines: a sequence symmetry analysis. J Clin Pharm Ther. 2016 Oct;41(5):503-7. PMID: 27378245

https://www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/27378245

 

[目的] いくつかの研究で熱中症のリスクを高める要因が明らかにされているが、医薬品の寄与を評価しているものはほとんどない。このギャップを埋めるため、本家級では薬剤服用開始に続く、脱水もしくは熱中症による入院を評価した。

 

[方法] 200111日から2013630日の間に、脱水症または熱中症(ICD-10-AMコードE86X30T67)により入院した入院患者6700人の処方イベント対称分析PESAprescription event symmetry analysis)の手法を用いた後ろ向き解析。主要アウトカムは薬剤使用開始に続く、脱水もしくは熱中症による入院とした。

 

 [結果] 抗凝固剤、心血管薬、NSAIDs、抗精神病薬、抗うつ薬および抗コリン作動薬の開始後に、脱水または熱中症による入院のリスクが有意に高かった。そのリスクはSSRI1.17からACE阻害薬+利尿剤の併用の2.79であった。抗けいれん剤、抗パーキンソン病薬、睡眠薬、抗不安薬または抗ヒスタミン薬の開始と脱水または熱中症による入院の関連は認めなかった。

 

[結論] 一般に使用されている多くの医薬品は、脱水症や熱中症による入院リスクの増加と関連している。 利尿薬、ACE阻害薬の併用投与の開始は最もリスクが高い。 処方者と患者は、脱水や熱中症のリスク上昇と関連する可能性を意識しておくべきである。

Oja P.et.al. Associations of specific types of sports and exercise with all-cause and cardiovascular-disease mortality: a cohort study of 80306 British adults. Br J Sports Med. 2016 Nov 28. [Epub ahead of print] PMID: 27895075

https://www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/27895075

 

[背景] 特定のスポーツの長期的な健康への影響に関する証拠はほとんどない。したがって、本研究ではスコットランドと、英国のコホートを用いて、6つの運動/スポーツが、総死亡や心血管死亡リスクに与える影響を検討した。

 

[方法]Cox比例ハザード回帰を用いて、各種スポーツと総死亡、心血管死亡の関連を、潜在的な交絡因子で補正して解析。なお対象となったのは80306例で54%が女性、平均年齢は52歳。

 

[結果]

総死亡は、サイクリング(HR=0.85, 95% CI 0.76 to 0.95),水泳 (HR=0.72, 95% CI 0.65 to 0.80), ラケット(テニスやバドミントン等)(HR=0.53, 95% CI 0.40 to 0.69) エアロビクス(HR=0.73, 95% CI 0.63 to 0.85).で低下。フットボールやランニングでは低下せず。

 

心血管死亡は水泳(HR=0.59, 95% CI 0.46 to 0.75), ラケット(HR=0.44, 95% CI 0.24 to 0.83) エアロビクス (HR=0.64, 95% CI 0.45 to 0.92),で低下したが、サイクリング、ランニング、フットボールでは低下せず。

 

[結論] これらの知見は、特定のスポーツへの参加が公衆衛生に大きな利益をもたらすかもしれないことを示している。 今後の研究は、スポーツ特有の疫学的根拠をさらに強化し、スポーツへの参加を促進する方法を理解することを目指すべきである。

 

 

 

↑このページのトップヘ