薬剤師の地域医療日誌

薬剤師が臨床や地域医療にどのように関われるか、EBMを実践しながら模索しています。このブログは個人的な勉強記録です。医学文献の2次資料データベースとして医師、看護師、薬剤師その他のスタッフや患者様に役立てれば幸いです。情報に関しては知識不足の面から不適切なものも含まれていると思われます。またあくまで個人的な意見も含まれております。掲載の情報は最新の文献等でご確認の上、運用していただければ幸いです。

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Lipska KJ, Krumholz H, Soones T.et.al. Polypharmacy in the Aging Patient: A Review of Glycemic Control in Older Adults With Type 2 Diabetes. JAMA. 2016 Mar 8;315(10):1034-45. PMID: 26954412

http://www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/26954412

 

POINT65歳以上の高齢者ではHbA1c7.59%でコントロールすることが最もリスクベネフィットに優れる。

 

高齢2型糖尿病患者における最適な血糖コントロールについて実質的なことは良く分かっていない。高齢者2型糖尿病においてはインスリン抵抗性やβ細胞機能の障害が寄与しており、これらの要因によりさらなる高血糖とインスリン分泌低下を招く。

 

[引用文献]

加齢に伴うインスリン分泌低下、β細胞機能低下

Diabetes Care. 2008 Mar;31(3):539-43. PMID: 18083793

加齢に伴うインスリン抵抗性

Diabetes. 2006 May;55(5):1361-8. PMID: 16644693

高齢者の2型糖尿病危険因子としてのインスリン抵抗性、β細胞機能障害

Am J Epidemiol. 2013 Jun 15;177(12):1418-29. PMID: 23707958

 

また高齢者では糖尿病の典型的な症状である多飲・多尿が起こりにくい。その代わりに、脱水、錯乱、失禁、神経障害や腎障害などの合併症を呈することが多い。

 

[引用文献]

American Diabetes Association.糖尿病の診断と分類

Diabetes Care. 2010 Jan;33 Suppl 1:S62-9. PMID: 20042775

 

一般に厳格血糖コントロールで受けれる恩恵はわずかであり、害の方が大きい。しかし高齢者においては血糖目標や治療計画を個別化する方法について不明確である。

 

■臨床研究における高齢者除外の問題

これまで報告されている主要なランダム化比較試験は平均で53 66 歳(UKPDS,ACCORD,ADVANCE,VADT)の人を対象としており、80歳以上の高齢者が組み入れられることは稀である。

https://www.ncbi.nlm.nih.gov/pmc/articles/PMC4823136/table/T1/

 

[引用文献]

2型糖尿病における進行中の臨床試験での高齢者除外状況

J Am Geriatr Soc. 2013 May;61(5):734-8. PMID: 23590338

糖尿病関連トライアルにおいては年齢の両極端(若年・高齢者)を除外し短期間の研究ばかり

Diabetologia. 2013 Jun;56(6):1226-35. PMID: 23564296

 

■多くの研究で代用のアウトカムの検討に費やされている現状

多くの高齢患者は、寿命が限られているため、サロゲートエンドポイントを使用することは、真のアウトカム改善に寄与しないかもしれない。

 

■どの薬剤が最適化に関する情報が不足している。

特に多併存疾患を有する高齢者における長期使用においては不明なことが多い。

[各薬剤効果の比較]

https://www.ncbi.nlm.nih.gov/pmc/articles/PMC4823136/table/T2/

 

■厳格血糖コントロールについて

ACCORD,ADVANCE,VADTに基づいて考察すれば、厳格な血糖コントロールは少なくとも8年の介入を続けた患者において、細小血管合併症リスクを減少させない。UKPDSを考慮すると815年の間にわずかなベネフィットかあるかもしれないが、本研究は高齢者を除外しているため、結果の一般化が難しい。また大血管合併症については、少なくとも介入から10年間後においては、高齢者の主要な心血管イベントを減少させるために集中的な血糖コントロールを実施することは支持できない。

 

ACCORD,ADVANCE,VADT,UKPDSの4つランダム化比較試験は、集中的な血糖コントロールが重度の低血糖のリスクを増加させることを示している。重度の低血糖は認知機能低下に関連。また年齢、罹病期間、複雑な薬剤数、入院頻度、認知機能障害は低血糖のリスクを高める。またインスリンによる治療は低血糖リスクが高い。高齢者が除外されてしまったランダム化比較試験の結果に基づけば厳格血糖コントロールは低血糖リスクを1.53倍増加させると考えられるが、観察研究でも支持されているため、高齢者においてもこの結果は拡張できる。

 

[引用文献]

認知機能低下と低血糖

Diabetes Care. 2012 Apr;35(4):787-93. PMID: 22374637

J Am Geriatr Soc. 2011 Dec;59(12):2263-72. PMID: 22150156

年齢、罹病期間と糖尿病合併症、低血糖の関連

JAMA Intern Med. 2014 Feb 1;174(2):251-8. PMID: 24322595

重度の低血糖と死亡リスク

N Engl J Med. 2010 Oct 7;363(15):1410-8. PMID: 20925543

低血糖イベントと認知症

JAMA Intern Med. 2013 Jul 22;173(14):1300-6. PMID: 23753199

JAMA. 2009 Apr 15;301(15):1565-72. PMID: 19366776

重度の低血糖リスクファクター(高齢者、多剤併用、頻回の入院で多い)

Arch Intern Med. 1997 Aug 11-25;157(15):1681-6 PMID: 9250229

 

これまでの研究を俯瞰すると、65歳以上の高齢者ではHbA1c7.5%を下回るかもしくは、9%を超えると、ベネフィットよりもリスクが上回ると考えられる。最終的に、最適な目標は、患者要因、目標に到達するために使用される薬、平均寿命、および治療に関する患者の好みに依存する。

 

(参考)2型糖尿病患者のポリファーマシー解消のために

https://www.ncbi.nlm.nih.gov/pmc/articles/PMC4823136/table/T3/

 

Tanabe M.et.al. Prescription of oral hypoglycemic agents for patients with type 2 diabetes mellitus: A retrospective cohort study using a Japanese hospital database. J Diabetes Investig. 2016 Aug 23. [Epub ahead of print] PMID:27549920

http://www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/27549920

 

[目的/イントロダクション]

欧米では2型糖尿病の治療アルゴリズムにおいて、ビグアナイドがファーストライン治療として推奨されている。日本において、様々な経口糖尿病治療薬が利用可能だが、処方パターンについては不明な部分も多い。

 

[方法]

2008年から20013年におけるMedical Data Vision database より2型糖尿病患者7108例(study1)、2655例(study2)が対象となった。Study1は心血管既往のない患者、study2は心血管既往のある患者が対象となっている。本データをもとにファーストラインで選択された経口糖尿病薬とアドヒアランス、HbA1c値を2年にわたり観察。またセカンドラインで選択された薬剤についても調査した。

 

[結果]study1において、HbA1cが低いケースにはαグルコシダーゼ阻害薬、グリニド、チアゾリジンが他の経口糖尿病薬よりも積極的に使用されていた。経口糖尿病薬の中で最もファーストラインで処方されていたのは、ビグアナイドとDPP4阻害薬であった。単剤の継続治療において、一番HbA1c改善に寄与したのはDPP4阻害薬であった。特にビグアナイドがファーストライン治療であった場合、セカンドライン治療で最も選択されたのはDPP4阻害薬であった。Study2において、その傾向はstudy1と同様であった。

 

[結論]日本の2型糖尿病患者においても欧米のアルゴリズムがある程度意識されている。これらの選択は心血管疾患既往に影響されていない。

 

[コメント]最もファーストラインで用いられていたのはメトホルミン(ビグアナイド)26.5%であり、DPP4阻害薬の25.2%が続く。DPP4をファーストラインで用いるケースはかなり多いことがうかがえる。セカンドライン治療では両剤の併用が最上位。

Boyé ND, van der Velde N2, de Vries OJ.et.al. Effectiveness of medication withdrawal in older fallers: results from the Improving Medication Prescribing to reduce Risk Of FALLs (IMPROveFALL) trial. Age Ageing. 2016 Sep 10. [Epub ahead of print] PMID: 27614080

http://www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/27614080

 

[目的]地域在住の転倒既往のある高齢者に対して、通常ケアと転倒リスクを増加させる薬剤(FRIDs)の中止介入の効果を検討したランダム化比較試験。

 

[方法]転倒により救急診療部を受診した620例の高齢者が対象となった。FRIDsの中止介入を行い、自己報告に基づく転倒初発までの時間を一次アウトカムに設定した。二次アウトカムは2回目の転倒およびGPまたはED受診。一次アウトカムについてITT解析を行った。Cox比例ハザードモデルを用いて転倒までの期間についてハザード比を算出。

 

[結果]12か月の追跡期間週、通常ケア群で91例(34%)、介入群で115例(37%)の転倒が発生。ノンコンプライアンスや新規診断のために薬剤追加されたこと、等が原因で中止介入の35%が不成功に終わった。

 

研究開始時と比較して、3剤以上のFRIDSを使用していた患者では介入群も対照群も12か月時点で、変化がなかった。われわれの回遊で転倒初発、2回目の転倒、転倒に関連したGPコンサルテーション、転倒に関連したED受診に明確な差はなかった。

first fall (HR 1.17; 95% confidence interval 0.89-1.54),

second fall (1.19; 0.78-1.82),

fall-related GP-consultation (0.66; 0.42-1.06)

fall-related ED-visit (0.85; 0.43-1.68).

 

[結論]転倒による救急診療部を受診した複雑な多併存疾患を有する集団において、FRIDsの中止介入では転倒を減らすことはできなかった。

Marso SP.et.al. Semaglutide and Cardiovascular Outcomes in Patients with Type 2 Diabetes. N Engl J Med. 2016 Sep 15. [Epub ahead of print] PMID: 27633186

http://www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/27633186

 

 [背景]超過心血管リスクを排除するために、規制指針は2型糖尿病患者への新規糖尿病治療の心血管安全性確立するよう要請している。約1週間の半減期を有するGLP-1アナログ製剤、セマグルチドの心血管影響は2型糖尿病患者において不明である。

 

[方法]標準治療を受けている2型糖尿病患者3297例を、セマグルチド(0.5㎎もしくは1.0㎎)週1回投与とプラセボ週1回投与にランダム化。104週にわたり治療を行った。一次アウトカムは複合アウトカムで心血管死亡、非致死的心筋梗塞、非致死的脳卒中のそれぞれの初発が検討された。セマグルチドはプラセボに比べて非劣性であるという仮説を立て、非劣性マージンをハザード比95%信頼区間上限1.8と設定した。

 

[結果]研究開始時、83%にあたる2735例で心血管疾患、慢性腎臓病、もしくはその両方を有しているハイリスク患者であった。一次アウトカムはセマグルチド群で108/1648(6.6%)、プラセボ群で146/1649例(8.9%)でハザード比は0.74[95%信頼区間0.580.95(非劣性)]であった。

 

非致死的心筋梗塞はセマグルチド群2.9%、プラセボ群3.9%でハザード比0.74[95%信頼区間0.511.08]、非致死的脳卒中は同じく1.6%と2.7%で0.61[9%信頼区間0.380.99] 

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心血管疾患による死亡は2群で同等であった。糖尿病性腎症の新規発症もしくは悪化はセマグルチド群で低かったが、網膜症に関する合併症(硝子体出血、失明、 硝子体内剤や光凝固による治療が必要な状態)は有意に多かった。ハザード比1.76[95%信頼区間1.112.78]セマグルチド群での重篤な有害事象は稀であったが、多くの患者は消化器系の有害事象で治療を中断した。

 

[結論]心血管疾患ハイリスクな2型糖尿病患者において、心血管死亡、非致死的心筋梗塞、非致死的脳卒中の発症はプラセボに比べてセマグルチドで低く、セマグルチドの非劣性が示された。

 

[コメント]

研究デザインはいつもの通り。GLP1-1作動薬はこの手の研究デザインでなかなか好成績を収めているので、是非、仮説検証型のランダム化比較試験でプラセボとガチンコ勝負してほしいところ。

 

■研究デザイン

randomized, double-blind, placebo-controlled, parallel-group trial at 230 sites in 20 countries.

■介入と対照

Patients were randomized in a 1:1:1:1 ratio to receive either 0.5 mg or 1.0 mg of once-weekly subcutaneous semaglutide or volume-matched placebo , which maintained blinding within dose.

■対象患者

Patients with type 2 diabetes and a glycated hemoglobin level of 7% or more were eligible if they had not been treated with an antihyperglycemic drug or had been treated with no more than two oral antihyperglycemic agents, with or without basal or premixed insulin.

■主要組み入れ基準

age of 50 years or more with established cardiovascular disease (previous cardiovascular, cerebrovascular, or peripheral vascular disease), chronic heart failure (New York Heart Association class II or III), or chronic kidney disease of stage 3 or higher or an age of 60 years or more with at least one cardiovascular risk factor

■主要除外基準

treatment with a dipeptidyl-peptidase 4 inhibitor within 30 days before screening or with a GLP-1–receptor agonist or insulin other than basal or premixed within 90 days before screening; a history of an acute coronary or cerebrovascular event within 90 days before randomization; planned revascularization of a coronary, carotid, or peripheral artery; or long-term dialysis.

■評価項目

The primary composite outcome was the first occurrence of death from cardiovascular causes, nonfatal myocardial infarction (including silent), or nonfatal stroke.

■サンプルサイズ

the enrollment of 3260 patients would be required to determine the primary outcome in at least 122 patients and provide a power of 90% to reject a hazard ratio of at least 1.80 at the 0.05 level of significance.

■非劣性マージン

The primary hypothesis was for noninferiority for the primary outcome. Such noninferiority was confirmed if the upper boundary of the two-sided 95% confidence interval of the hazard ratio was below the noninferiority margin of 1.80

■統計解析

All results were analyzed on an intention-to-treat basis that included the full analysis set

■追跡期間

The median observation time was 2.1 years.

■結果

the composite primary outcome occurred in 108 of 1648 patients (6.6%) in the semaglutide group and 146 of 1649 (8.9%) in the placebo group (hazard ratio, 0.74; 95% confidence interval [CI], 0.58 to 0.95; P<0.001 for noninferiority; P=0.02 for superiority)

 

 

Solomon DH, Liu CC, Kuo IH.et.al. Effects of colchicine on risk of cardiovascular events and mortality among patients with gout: a cohort study using electronic medical records linked with Medicare claims. Ann Rheum Dis. 2016 Sep;75(9):1674-9. PMID 26582823

http://www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/26582823

 

[背景]コルヒチンは心血管疾患に対して予後改善効果をもたらすかもしれない。しかし、痛風を有する患者における心血管効果のデータは希薄である。本研究は痛風患者におけるコルヒチンと心血管リスク、総死亡の関連を検討するものである。

 

[方法]痛風と診断された人を対象にメディケアのデータベースを用いた解析。新規コルヒチン使用者と、年齢、性別でマッチされたコルヒチン非使用者が比較され、心筋梗塞、脳卒中もしくはTIAの複合アウトカムが検討された。交絡補正を行いCox比例ハザードモデルを用いてハザード比を算出した。

 

[結果]コルヒチン使用者501例とマッチされた非使用者(同数)を16.5ヵ月追跡。追跡期間中コルヒチン使用群28例で、非使用群82例で心血管イベントが発生。発症率は1000人年あたり35.681.8であった。交絡調整後、コルヒチンは非使用者に比べて、心血管疾患を49%低下(ハザード比0.5195%信頼区間0.300.88]、総死亡を45%低下(ハザード比0.5595%信頼区間0.350.85]させることが示された。

 

[結論]痛風患者において、コルヒチンの使用は心血管イベントを低下させる。

 

 

 

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