薬剤師の地域医療日誌

薬剤師が臨床や地域医療にどのように関われるか、EBMを実践しながら模索しています。このブログは個人的な勉強記録です。医学文献の2次資料データベースとして医師、看護師、薬剤師その他のスタッフや患者様に役立てれば幸いです。情報に関しては知識不足の面から不適切なものも含まれていると思われます。またあくまで個人的な意見も含まれております。掲載の情報は最新の文献等でご確認の上、運用していただければ幸いです。

ご利用ありがとうございます。個人的に気になった論文を紹介しています。

メインブログの「地域医療の見え方」(http://jp.bloguru.com/syuichiao)、「思想的、疫学的医療について」(http://syuichiao.hatenadiary.com/)もよろしくお願い致します。

ご意見、ご質問などは(syuichiao@gmail.com)までお寄せください。


Biétry FA.et.al. Benzodiazepine Use and Risk of Developing Alzheimer's Disease: A Case-Control Study Based on Swiss Claims Data. CNS Drugs. 2017 Jan 11. [Epub ahead of print]. PMID: 28078633

https://www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/28078633

 

[背景] 以前の研究では、ベンゾジアゼピンの使用とアルツハイマー病(AD)との関連性が示唆されている。

 

[目的] スイスの大手健康保険会社、Helsana Groupの請求データを用いて、ベンゾジアゼピンの使用とADリスクとの関連性を検討した。

 

[方法]本研究は2013年~2014年の間に、新規にAD治療薬(例えばドネペジル、リバスチグミン、ガランタミン等のコリンエステラーゼ阻害薬やメマンチン)の使用を開始したAD患者1438例と、年齢、性別、インデックスデータ、居住地でマッチングしたコントロール群を用いた症例対照研究である。初期の認知機能障害において、その前兆症状の対症療法の結果として、AD診断日の直前にベンゾジアゼピンの使用が開始することがあるため、AD診断日の2年前に誘導期間を導入した。さらに診断日以前の処方薬使用期間によって分類をした。条件付きロジスティック回帰分析を用いて、抗うつ薬の使用に合わせて調整オッズ比、95%信頼区間を算出した。

 

[結果]ベンゾジアゼピンによる治療開始のADへの進展リスク(未調整オッズ比[95%信頼区間])は、診断1年前における使用で1.71 (1.17-2.99)、診断3年前における使用で1.19 (0.82-1.72)。前駆症状期間に使用開始されたベンゾジアゼピンを考慮すると、AD発症リスクの増加は認められなかった。30処方以上の長期ベンゾジアゼピン使用におけるADリスクの調整オッズ比は0.78 (0.53-1.14).

 

[結論] 初発症状バイアスを考慮した結果、ベンゾジアゼピンの使用は、AD発症リスクの増加と関連していなかった。

 

[コメント] 初発症状バイアスprotopathic biasとは、疾患の初期症状のために要因に暴露され、そのために要因と疾患との関係が誤って検出されることである。BZDと認知症リスクは2015年あたりの論文報告よりprotopathic biasが指摘されていたが、本研究でも明確な関連性は不明となっている。

 

なお、昨年末に報告されたSystematic Review and Meta-AnalysisNeuroepidemiology. 2016 Dec 24;47(3-4):181-191. PMID: 28013304)では8研究のメタ分析において、ベンゾジアゼピンの使用は、認知症リスク1.8倍増加に関連する可能性が示唆されていた。(OR 1.78; 95% CI 1.33-2.38).この解析結果のI2統計量は99%と非常に異質性が高いことを示しており、研究デザインにより、そのリスクの程度が大きく影響を受けている可能性が示されている。

・sponsored link

Guzmán-Vélez E.et.al. Feelings without memory in Alzheimer disease. Cogn Behav Neurol. 2014 Sep;27(3):117-29. PMID: 25237742

https://www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/25237742

 

[背景]アルツハイマー病(AD)患者は、典型的には、海馬の早期の損傷の結果としての宣言的記憶を損なう。しかし、 感情への影響についてはそれほど理解されていない。

 

[目的]アルツハイマー病患者において、感情の原因となった宣言的記憶(人間の記憶の一種で、事実と経験を保持するもの)が失われた後でさえも、感情を感じることが維持されているかどうかを検討した。

 

[方法]アルツハイマー病患者17人と比較対照の健常者患17人(年齢、性別、教育でマッチング)を対象に、悲しみと幸福の感情を誘発することを意図した2つの映画クリップを見せ、それぞれ、別々に感情誘導の結果を評価した。ベースライン時と誘発後、3回においてリアルタイムで感情評価を行い、各誘導の直後に宣言的記憶のテストを実施した。

 

[結果]予想通り、アルツハイマー病患者では悲しい映画と幸せな映画の両方について宣言的記憶をひどく損なっていた。彼らの記憶障害にもかかわらず、患者は、悲しみと幸福の上昇したレベルを報告し続け、それは映画の記憶をはるかに超えた。この結果は、悲しみ誘発後に特に顕著であり、悲しみの持続的な上昇は、映画の意識的記憶を持たない患者においてさえ、30分以上持続した。

 

[結論]これらの知見は、アルツハイマー病患者は感情を引き起こした事象に対する記憶をはるかに超えた長時間の感情状態を経験することができることを示している。アルツハイマー病患者で明らかに保持された感情は、彼らのケアに重要な意味を持ち、介護者が積極的な感情体験を育む必要性を強調している。

・sponsored link 

Pearl RL.et.al. Association between weight bias internalization and metabolic syndrome among treatment-seeking individuals with obesity. Obesity (Silver Spring). 2017 Feb;25(2):317-322. PMID: 28124502

https://www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/28124502

 

[背景]体重の低下は、心代謝リスクを増加させる慢性的なストレス要因である。肥満を有する人はしばしば、自分のせいだと自分を非難する傾向にある。すなわち体重バイアス(偏見)内在化である。この、過剰体重に対する偏見を自分自身に向けてしまう体重バイアス内在化(weight bias internalization)と、メタボリックシンドロームとの関連を検討する。

 

[方法] 血圧、胴囲、空腹時のグルコース、トリグリセリド、および高密度リポタンパク質コレステロールを、体重減少試験に参加した肥満症の成人178人のベースラインで測定した。高血圧症、脂質異常症、および前糖尿病に対する薬物使用は、メタボリックシンドロームの基準に含まれていた。

 

159例が体重内在化WBIバイアススケール及び、患者の健康質問票 (うつ病徴候を評価するためのPHQ-9).の回答を完了した。 (女性88.1% 、アフリカ系米国人67.3%,平均 BMI=41.1 kg/m2 ) オッズ比および部分相関は、人口統計、BMI、およびPHQ-9スコアを調整して計算した。

 

 

[結果] 51人の参加者(32.1%)がメタボリックシンドロームの基準を満たしていた。  メタボリックシンドロームの判定基準に該当する人は、より高いWBIを有する参加者の方が大きかったが、すべての共変量で調整後は有意差見られず。(OR=1.46, 95% CI=1.00-2.13, P=0.052)より高いWBIは、高トリグリセリドを有するより高い確率を予測した(OR = 1.88,95CI = 1.14-3.09P = 0.043)。WBIの高い人と低い人を比較したところ、WBIは、メタボリックシンドロームおよび高トリグリセリドのより高い確率を予測した(Ps <0.05)。

 

[結論] 自分を責める傾向にある肥満を有する人では、心代謝リスクを高めている可能性がある。 WBIとメタボリックシンドロームを結ぶ生物学的および行動的経路は、さらなる探究を必要とする。

 

 

[コメント] weight bias internalizationという概念が効きなれないが、つまり自分が肥ってるのはわしのせいじゃ、と自分を責める事らしく、その度合いをスコア化して、メタボリックシンドロームとの関連を検討した研究と言えるかもしれない。

 

注意したいのは主解析

We constructed a binary logistic regression model to test our primary hypothesis that participants with higher WBI would exhibit increased odds of having metabolic syndrome.

より高いWBIを有する人が、メタボリックシンドロームを有する確率が高くなるであろう、仮説を検証するためにbinary logistic regression modelを構築したと書かれている。まあ、そもそも仮説検証型研究ではないのだが、主解析はWBIの高低でのメタボリックシンドローム比較検討ではない。

Additionally, we included supplementary analyses in which we constructed the same six logistic regression models, but with WBI defined categorically as “high” versus “low” based on tertiles.

と記載のある通り。かなり紛らわしいが、この研究からWBIが高い人は低い人に比べてメタボリックシンドロームになりやすいとは結論できない。

より高いWBIを持つ人は、メタボリックシンドロームの基準を満たす人が多い傾向が示されているに過ぎない、ということ。(オッズ比1.46 (1.00–2.13)

・sponsored link 

Tsugawa.Y.et.al. Quality of care delivered by general internists in US hospitals who graduated from foreign versus US medical schools: observational study. BMJ 2017;356:j273.

doi: https://doi.org/10.1136/bmj.j273

 

[目的] 米国外の医学部を卒業した一般内科医と米国内の医学部を卒業した一般内科医との間で患者の転帰が異なるかどうかを検討する。

 

[デザイン]観察研究

 

[セッティング]米国メディケア

 

[参加者]2011年~2014年の間に入院した65歳以上のメディケア受給者で、米国内外の医学部を卒業した内科医の治療をうけた、全国データの20%サンプルを用いた。本研究における死亡分析に含まれたのは、44227人の内科医によって治療を受けた1215490件の入院例であった。

 

[評価項目] 入院から30日以内の死亡、退院から30日以内の再入院、及び病院入院時のケア費用。なお、患者、医師、病院の特性を考慮し統計的に調整。

 

[結果]米国内の医学部を卒業した医師により治療された患者に比べて、米国外の医学部を卒業した医師により治療された患者では、わずかに慢性疾患が多かった。患者、医師、病院の特性で補正後、米国外の医学部を卒業した医師による治療を受けた患者で死亡リスクが低下。(調整死亡11.2% 11.6%; 調整オッズ比0.95, 95%信頼区間 0.93 to 0.96; P<0.001) 1日あたりの入院費用は若干高かった。(調整コスト:$1145 (£950; €1080) $1098; 調整差$47, 95% 信頼区間$39 to $55, P<0.001).なお再入院に差はない。同一病院内解析でも同様の患者アウトカムの差異が観察された。患者の死亡の差は、入院期間、支出水準、退院場所の差異によって説明されなかった。

 

[結論] 米国の病院に入院したメディケア受給者の高齢患者データによると、米国外の医学部を卒業した医師の治療を受けた患者は、米国内の医学部を卒業した医師がケアしている患者よりも死亡率が低いことが示された。

 

 

[コメント]ハーバード大、津川先生の論文。男性医師と女性医師の患者転帰を比較した論文がJAMA intern medに掲載されたばかりでしたが、またまた興味深い報告がBMJに掲載。

 

日本ではあまりなじみがないが、米国をはじめ英国、カナダ、オーストラリアでは、国外の医学部を卒業した医師による医療従事が医師職員の1/4を占めると言う。ところが外国人医師によるケアの質をあまり評価しない、いわゆる差別的な状況も一部で散見されるよう。

 

本研究は国内の医学部を卒業した医師と、国外の医学部を卒業した医師において、提供されるケアに差異があるのかを検討したものである。

 

結論を先取りすれば、外国人医師のケアの方が患者の死亡が少ない、ということが示されている。が、個人的にはこの差は実際的有意とは言えない印象だ。確かに慢性疾患をより多く見ていたのは国外医師ではあるが、その点を考慮しても、研究精度が高すぎる故の有意差ではないか。。。(11.2%[11.1%11.3%]11.6%[11.5%11.7%]という差異は薬剤効果であれば、統計的有意差は在れど、臨床的有意とは言い難い)とはいえ、本研究において、外国人医師と国内の医師とで、提供されるケアに明確な質の差異はないとうこと一つ明らかといえるかもしれない。米国で臨床に従事するために必要な外国人医師選定基準は質の高いケアを提供するうえで十分な厳格性を備えていると結論されている。

Weiss J.et.al. Benefits and Harms of Intensive Blood Pressure Treatment in Adults Aged 60 Years or Older: A Systematic Review and Meta-analysis. Ann Intern Med. 2017 Jan 17. [Epub ahead of print]

https://www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/28114673

 

[背景]近年のガイドラインでは、60歳以上の高齢者において収縮期血圧を150mmHgいかにするよう推奨されているが、新規のエビデンスを考慮すると、そのリスクベネフィットについては明確ではない。

 

[目的]高齢者における厳格な血圧コントロールの効果に関するシステマティックレビューを行う。

 

[方法] 血圧の降圧目標または治療強度を比較する21のランダム化比較試験、および害を評価した3つの観察試験を解析に含めた。2人の研究者がデータを抽出し、研究の質を評価し、公表された基準を用いてエビデンスを評価した。

 

[結果]9つの研究で、質が高かったが、血圧を150/90未満でコントロールすると、総死亡

 (相対危険0.90 [95% CI, 0.83 to 0.98]), 心臓イベント(RR, 0.77 [CI, 0.68 to 0.89]), 脳卒中(RR, 0.74 [CI, 0.65 to 0.84])が有意に低下。6研究で質が低~中等度であったが、 ≤140/85 mm Hg でコントロールすると、心臓イベントが低下傾向(RR, 0.82 [CI, 0.64 to 1.00]) 脳卒中が低下(RR, 0.79 [CI, 0.59 to 0.99]) しkし、死亡に差がつかなかった。(RR, 0.86 [CI, 0.69 to 1.06]).低~中等度のエビデンスによると、血圧の低下は、転倒や認知機能障害と関連性を示さなかった。ただし、虚弱高齢者や多併存疾患患者におけるデータは限られている。

 

[結論] 血圧を少なくとも150/90 mmHg未満にする現在のガイドラインの治療は、高齢者の健康状態を大きく改善しうる。120未満を目標とした1研究から、より低い血圧目標が高リスク患者にとって有益であるということは、一貫性の低い証拠はほとんどない。より低い血圧を目指すことは認知機能低下や転倒に影響を及ぼさなかったが、低血圧、失神、薬剤負荷につながる

.

[コメント]

ACPAAFPのガイドラインが公開されている

Pharmacologic Treatment of Hypertension in Adults Aged 60 Years or Older to Higher Versus Lower Blood Pressure Targets. Ann Intern Med. 2017 Jan 17. PMID: 28114616

https://www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/28114616

Pharmacologic Treatment of Hypertension in Adults Aged 60 Years or Older to Higher Versus Lower Blood Pressure Targets: A Clinical Practice Guideline From the American College of Physicians and the American Academy of Family Physicians. Ann Intern Med. 2017 Jan 17.

https://www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/28135725

 

 

基本的には60歳以上の高齢者では収縮期血圧を150mmHg未満を目標としているが、脳卒中の既往のある患者、心臓病、糖尿病、高コレステロール、慢性腎臓病などの他の危険因子がある患者では目標収縮期血圧は140mmHgとなっている。

・sponsored link 

レジデントノート 2016年7月号 Vol.18 No.6 同効薬の使い分け なぜこの薬を選ぶ?~降圧薬・利尿薬など、よく使う薬の患者に合わせた考え方

新品価格
¥2,160から
(2017/2/1 14:51時点)

↑このページのトップヘ