薬剤師の地域医療日誌

薬剤師が臨床や地域医療にどのように関われるか、EBMを実践しながら模索しています。このブログは個人的な勉強記録です。医学文献の2次資料データベースとして医師、看護師、薬剤師その他のスタッフや患者様に役立てれば幸いです。情報に関しては知識不足の面から不適切なものも含まれていると思われます。またあくまで個人的な意見も含まれております。掲載の情報は最新の文献等でご確認の上、運用していただければ幸いです。

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Beutel ME.et.al. Noise Annoyance Is Associated with Depression and Anxiety in the General Population- The Contribution of Aircraft Noise. PLoS One. 2016 May 19;11(5):e0155357. PMID: 27195894

http://www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/27195894

 

[背景]騒音は環境における重要なストレス因子であるが、精神健康状態との関連は不明である、騒音が不安や抑うつに関連しているかどうかを検討した。

 

[方法]ドイツにおけるGutenberg Health Study (GHS),の参加者15010人のデータを用いた横断研究。参加者は35歳~74歳でドイツ中部地方に在住している人であった。騒音は、日中もしくは就寝中の道路交通騒音、航空機騒音、鉄道騒音、産業建設騒音、近隣屋内騒音、近隣屋外騒音にカテゴライズし、騒音が、全くない、少しある、ある、多くある、非常に多くあるの5段階で評価した。抑うつおよび不安はPHQ-9,およびGAD-2を用いて評価した。

 

[結果]騒音レベル上昇に伴い抑うつや不安が増加した。騒音が全くない、に比べて、抑うつ割合、不安割合は騒音がある、で(PR depression 1.20; 95%CI 1.00 to 1.45; PR anxiety 1.42; 95% CI 1.15 to 1.74)、非常に多くある、で(PR depression 1.97; 95%CI 1.62 to 2.39; PR anxiety 2.14; 95% CI 1.71 to 2.67).であった。騒音減としてもっとも大きかったのは航空機騒音であった。

 

[結論]一般人口集団において、強い騒音は抑うつや不安の約2倍上昇に関連していた。騒音と精神疾患の因果関係の検証のため前向き研究が必要である。

Ziad Hijazi,.et.al. Efficacy and Safety of Apixaban Compared With Warfarin in Patients With Atrial Fibrillation in Relation to Renal Function Over Time.Insights From the ARISTOTLE Randomized Clinical Trial. JAMA Cardiol. Published online June 15, 2016. doi:10.1001/jamacardio.2016.1170

[重要]腎障害を有する心房細動患者では脳卒中、出血、死亡リスクが増加する。時間の経過とともに変化した腎機能低下例におけるアピキサバンの有効性、安全性についてはあまり知られていない。

[目的]
アピキサバンとワルファリン治療を比較した心房細動患者におけるランダム化比較試験(ARISTOTLE Randomized ClinicalTrial.)のデータを用いて、中央値1.8年追跡のあいだに時間経過における腎機能変化と、そのアウトカムを検討する。

[方法]脳卒中、その他の塞栓症リスク現象に対するアピキサバンの二重盲検ランダム化比較試験((ARISTOTLE)に参加した18201人のうち血清クレアチニンの測定が可能だった16869人を解析。腎機能悪化は治療期間中e-GFRで20%以上の低下とした。アウトカムと腎機能は時間依存性共変量とともにCox回帰モデルを用いて解析。一次アウトカムは脳卒中、全身塞栓症。安全性アウトカムは大出血、及び死亡。

[結果] 16869人の解析対象者のうち65.2%が男性、年齢中央値は70歳であった。e-GFRが20%以上低下した腎機能悪化例は13.6%にあたる2294人であった。腎機能悪化は、年齢、併存心血管疾患に関連した。

脳卒中/全身塞栓症、大出血、死亡は腎機能悪化例で高かった。

脳卒中/全身塞栓症:ハザード比1.53[95%信頼区間1.17~2.01]
大出血:ハザード比1.56[95%信頼区間1.27~1.93]
死亡:ハザード比2.31[95%信頼区間1.98~2.68]

なお、ワルファリンと比較したアポキサバンの脳卒中/全身塞栓症、死亡に対するベネフィットは、腎機能正常者、腎機能低下者、腎機能悪化者で一致していた。

[結論] 心房細動患者において、腎機能の低下は、高齢者、心血管疾患状態に良く見られ、腎機能悪化は、心血管イベント、及び出血リスクの増加に関連していた。ワルファリンと比較したアピキサバンの有効性、安全性は腎機能が正常例、腎機能低下例、腎機能悪化例で同様だった。

[コメント]

貴重な報告。個人的な経験だが、なぜが80を超えるような超高齢者にアピキサバンの投与は多い。腎排泄型の薬剤ではあるが、その排泄割合があまり高くないせいからか、腎機能低下者にも普通に投与されているケースに多々遭遇する。

超高齢者に対するアピキサバンについては以前考察した。

薬物治療を思考する~超高齢者に対するアピキサバンの有効性・安全性検討~
http://syuichiao.hatenadiary.com/entry/2016/05/09/000000

これまでのエビデンスを踏まえると

「アピキサバンは超高齢者において、リスク/ベネフィットに優れており、腎機能が低下している(当然ながら添付文書上の禁忌を除く)からと言って出血リスクが増大するわけではなく、むしろ出血抑制効果が大きい。」

という仮説が提起されたが、類薬のリバーロキサバンのエビデンスを検討し、そのアナロジーにより

「リバーロキサバンにおいてアピキサバンで提起した仮説が指示されないことを踏まえると、超高齢者、腎機能低下例にアピキサバンを積極的に用いるべきと解釈するのは早々だろう。現時点では安価なワルファリンで問題ないと思われる。」

と結論した。本研究結果は、どちらかと言えば、この結論を支持する

Michael Lehrke.et.al. Safety and efficacy of linagliptin in patients with type 2 diabetes mellitus and coronary artery disease: analysis of pooled events from 19 clinical trials.

DOI: http://dx.doi.org/10.1016/j.jdiacomp.2016.06.015

 

[目的]グローバル臨床試験プログラムにプールされたデータより、冠動脈疾患を有する2型糖尿尿患者におけるリナグリプチンの有効性・安全性を検討する。

 

[方法]リナグリプチン5mg単独もしくは併用療法とプラセボを比較したランダム化比較試験データを用いた。安全性/有効性解析は冠動脈疾患を有する患者を対象に行い、治療期間は12もしくは24週それぞれについて検討した。

 

[結果]安全性解析においては19研究(リナグリプチン451人、プラセボ272人)、有効性解析においては12研究(リナグリプチン328人、プラセボ198人)が解析対象となった。平均治療期間はリナグリプチンで212日、プラセボで171日であった。

 

心臓イベント発症はリナグリプチンとプラセボで同等であった。 (それぞれ9.1% 9.2%)

発症率はリナグリプチン16.6/100人年、プラセボ14.0/100人年であった。全体としての発症率は里奈グルプチんで少なかった。

 

24週後のHbA1c変化は理場グリプチンで-0.64%、プラセボ群で-0.08%であった。(P<.001).

 

[結論]このプールド解析による比較では、冠動脈疾患を有する2型糖尿病患者において、リナグリプチンは心臓イベントを増加させることなく、忍容性、有効性に優れていた。

 

[コメント]この論文における有効性とはglycosylated hemoglobinのことらしい。まあ結局のところ、心臓イベントを減らせるかどうかは分からないというこれまでの知見が覆されるのものではない。

 

 

 

 

Wanner C.et.al. Empagliflozin and Progression of Kidney Disease in Type 2 Diabetes. N Engl J Med. 2016 Jun 14. [Epub ahead of print] PMID: 27299675
http://www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/27299675

[背景]糖尿病は心血管有害事象リスクや腎イベントを増加させる。EMPA-REG OUTCOME trialにおいて、エンパグリフロジン(SGLT-2阻害薬)は心血管イベントハイリスク2型糖尿病患者における主要心血管イベント(MACE)を抑制した。この研究における事前に計画された二次解析で、エンパグリフロジンの腎臓への影響を検討する。

[方法]e-GFRが少なくとも30以上の2型糖尿病患者をエンパグリフロジン(10㎎もしくは25㎎)とプラセボにランダムに割り付けた。あらかじめ計画された腎アウトカムは、腎症(微量アルブミン尿への進行、血清クレアチニン値の倍増、腎代替療法の開始、腎疾患による死亡)の悪化もしくは発症、およびアルブミン尿発症であった。

[結果]腎症悪化はエンパグリフロジンで525人/4124 人(12.7%)、プラセボ群で388 人/2061人 (18.8%)、ハザード比0.61[95%信頼区間0.53~0.70]血清クレアチニン値倍化はエンパグリフロジン群 70 人/ 4645人 (1.5%) 、プラセボ群 60人/2323人 (2.6%) で相対危険は 44%.有意に低下した。腎代替療法開始は、エンパグリフロジン群で13人/ 4687人(0.3%) 、プラセボ群で14人/ 2333 人(0.6%) と相対危険で 55% 低下した。アルブミン尿に明確な差はなかった。

[結論]心血管疾患ハイリスクの2型糖尿病患者において、エンパグリフロジンは腎臓病の進展を抑制し、腎イベントリスクを低下させた。

[コメント]EMPA-REG OUTCOME trialについてはこちらを。
http://syuichiao.blogspot.jp/2015/09/empa-reg-outcome.html
SGLT-2で腎イベントが抑制できるかもという研究。なかなか興味深い。二次解析なので、何とも言えないが、ちょっとSGLT-2には期待してる。個人的にはメトホルミン→SGLT-2というセカンドラインでの推奨。ただ薬価高いなぁ。

Arbel Y.et.al. Bezafibrate for the treatment of dyslipidemia in patients with coronary artery disease: 20-year mortality follow-up of the BIP randomized control trial. Cardiovasc Diabetol. 2016 Jan 22;15:11. PMID: 26794137
http://www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/26794137

[背景]近年のデータは心血管リスク低減における重要な治療目標として、高TG血症に関する新たな関心を支援している。この研究はベースライントリグリセリドで層別化した患者を対象に行われたBIP試験の長期追跡中における総死亡についての問題に対応するためにデザインされた。

[方法]BIP試験は冠動脈疾患を有する3090人を対象にベザフィブラート400mgとプラセボにランダムに割り付けた研究である。20年にわたり追跡された総死亡データはNational Israeli Population Registryより入手した。高TG血症患者(TG200mg以上 458人)も研究に含まれていた。

[結果]追跡期間中、1869人が死亡した(プラセボ952に、ベザフィブラート917人)ベザフィブラートはわずかに死亡を減らした。(ハザード比0.90[95%信頼区間0.82~0.98]有意に死亡リスクが増加した変数は、心筋梗塞既往、糖尿病、NYHAクラス、年齢、BMI、血糖レベルであった。高TG血症患者ではベザフィブラートを服用していると25%の死亡リスク減少が見られた。(ハザード比0.75[95%信頼区間0.60~0.94]しかし、高TG血症の無い患者ではフィブラートの投与と死亡に明確な関連性を認めなかった。

[結論]ベザフィブラートを投与された患者の長期追跡では、わずかではあるものの有意な死亡リスク減少(10%)が見られた。この効果は、高TG血症を有する人でより高かった(25%リスク減少)

[コメント]この研究でもってベザトールええ感じやねん、とするのは早いぜ。そもそもフィブラートはあんまし(まったく)効果がない。TGが高ければ確かに心血管リスクが高い。そんならスタチンつかえや、と言いたくなるのをこらえて、まあこの研究を見ていこう。

そもそもビップ試験ってなんだ。と言う話だが、
『The BIP trial evaluated the effect of bezafibrate versus placebo on major coronary events and mortality in CHD patients.』である。ベザフィブラートの二次予防効果を検討した研究だが、BIP試験ではそもそも一次アウトカム(The primary end point was fatal or nonfatal myocardial infarction or sudden death)に明確な差が出ていない。The frequency of the primary end point was 13. 6% on bezafibrate versus 15.0% on placebo (P=0.26).そんな研究を長期追跡してみた、つーわけだ。ちなみにこのビップ試験(どこらへんがビップ?)、高TG血症患者(も含まれてるけど)ではなく、冠動脈疾患を有する患者が対象となっている。

この研究はBIP試験の参加者コホートを使って、総死亡に影響を与える変数を検討したものであり、ベザフィブラートの効果を検証したものではない。解析の中で、たまたまベザフィブラートを投与された患者で死亡リスクが低かったということが示唆されているにすぎない、と考えた方が無難だ。これまでRCTやそのメタ分析で有効性が示されていない背景を踏まえれば、この研究だけでフィブラートに効果があると解釈するのは大きな誤りだろう。

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