薬剤師の地域医療日誌

薬剤師が臨床や地域医療にどのように関われるか、EBMを実践しながら模索しています。このブログは個人的な勉強記録です。医学文献の2次資料データベースとして医師、看護師、薬剤師その他のスタッフや患者様に役立てれば幸いです。情報に関しては知識不足の面から不適切なものも含まれていると思われます。またあくまで個人的な意見も含まれております。掲載の情報は最新の文献等でご確認の上、運用していただければ幸いです。

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 Thomopoulos C.et.al. Effects of blood pressure lowering treatment in hypertension: 8. Outcome reductions vs. discontinuations because of adverse drug events - meta-analyses of randomized trials. J Hypertens. 2016 Aug;34(8):1451-63. PMID: 27228434
http://www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/27228434

[背景]
これまでに報告されている降圧療法に関するランダム化比較試験のメタ分析は高血圧患者の心血管アウトカム発症リスク低下に関する圧倒的なエビデンスを提示する。しかし、降圧療法における有害イベントについてはシステマティックに検討されていなかった。

[目的]
降圧療法に関するランダム化比較試験において、治療に関連した有害イベントや治療に余®もたらされる死亡や疾病状態のリスク低下ベネフィットに見合う有害事象の負担を検討する。

[方法]降圧療法に関するランダム化比較試験(実薬対プラセボもしくは低用量治療)70研究、255970例を解析対象とした。有害事象の指標としては治療の有害事象に起因する永続的な治療中止とした。収縮期血圧/拡張期血圧=10/5mmHgで標準化したリスク比、95%信頼区間を算出。ランダムエフェクトモデルを用いて、7つ非致死的アウトカムと有害事象による治療中止を検討した。

[結果]
44のランダム化比較試験のデータは有害事象による治療中止もしくは6つ以上の重大なイベントを報告していた。(解析対象179949例)

50のランダム化比較試験において、主要な心血管イベント24%減少は、治療中止の89%増加に関連していた。5年間で1000人当たり、33の主要な心血管イベントを予防する代わり84件の中止をもたらしていた。

Metaregression analysis によれば、アウトカム減少や治療中心増加は、収縮期血圧、拡張期血圧の低下範囲に関連していた。

[結論]降圧療法による有害イベントの増加は血圧低下の圧倒的ベネフィットを否定するものではないが、降圧療法時には常に議論されるべきであろう。

Rasmussen MG.et.al. Associations between Recreational and Commuter Cycling, Changes in Cycling, and Type 2 Diabetes Risk: A Cohort Study of Danish Men and Women. PLoS Med. 2016 Jul 12;13(7):e1002076. PMID: 27403867
http://www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/27403867

[背景]サイクリングは世界の多くの国において、公衆衛生上の問題に対する潜在的な改善をもたらしうる娯楽的な活動であり、通勤スタイルである。本研究の目的は娯楽や通勤におけるサイクリングと2型糖尿病発症リスクの関連をデンマークのDiet, Cancer and Health cohort studyにより検討することである。

[方法と結果]
1993年~1997年において50歳から65歳で2型糖尿病、あるいはその他の慢性疾患を有さない24623人の男性と27890人の女性が検討された。またサイクリング習慣や生活習慣についてアンケート調査された。

Cox比例ハザードモデルを用いて、2型糖尿病発症のリスクファクターで交絡補正し、娯楽や通勤でのサイクリングと糖尿病発症リスクの関連を検討した。

平均14.2年の追跡期間中、6779例が糖尿病を発症した。多変量解析による調整ハザード比(95%信頼区間)は週のサイクリング時間(分)が0, 1-60, 61-150, 151-300, >300で、それぞれ1、0.87 (0.82, 0.93), 0.83 (0.77, 0.89), 0.80 (0.74, 0.86) 0.80 (0.74, 0.87) であった。

サイクリングの季節ごとの解析ではサイクリングをしない人に比べて、夏季0.88 (0.83, 0.94),冬季0.80 (0.76, 0.85)であった。

[結論]通勤や娯楽のためのサイクリングは2型糖尿病発症リスクを低下させる

van Dalem J.et.al. Risk of hypoglycaemia in users of sulphonylureas compared with metformin in relation to renal function and sulphonylurea metabolite group: population based cohort study. BMJ. 2016 Jul 13;354:i3625. PMID: 27413017

http://www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/27413017

 

[目的]腎機能とSU剤代謝関連において、メトホルミン使用と比べたSU剤と低血糖の関連を検討する。

 

[デザイン]英国の一般診療データを用いた人口ベースコホート研究

 

[セッティング]2004年~2012年におけるClinical Practice Research Datalink (CPRD)

 

[参加者]18歳以上で新規にインスリン以外の糖尿病治療薬を使用した120803例。新規処方開始が追跡開始と定義。参加者は低血糖もしくは血中グルコース濃度が3.0 mmol/Lになるまで追跡された。

 

[評価項目]

SU剤の用量と腎機能、SU剤の種類と低血糖リスクの関連をCox比例ハザードモデルと用いて年齢、性別、生活スタイル、併存疾患、薬剤使用で調整し検討した。

 

[結果]

SU剤のみの使用で低血糖リスクは有意に増加した。(調整ハザード比2.5095%信頼区間2.232.82eGFR30 mL/min/1.73 m(2)ではさらにリスクが上昇した。(調整ハザード比4.9695%信頼区間3.766.55])SU剤の用量が高いと低血糖リスクが増加。(調整ハザード比3.1295%信頼区間2.683.62])グリベンクラミドで低血糖リスクが高い。(調整ハザード比7.4895%信頼区間4.8911.44])

 

[結論]腎機能が低い患者では慎重にSU剤を使用すべき。

Leibowitz M.et.al. Association Between Achieved Low-Density Lipoprotein Levels and Major Adverse Cardiac Events in Patients With Stable Ischemic Heart Disease Taking Statin Treatment. JAMA Intern Med. 2016 Jun 20. [Epub ahead of print] PMID: 27322095

http://www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/27322095

 

[重要]

国際的なガイドラインにおいては虚血性心疾患の既往のある患者において、さらなるイン血管イベント発症予防のためにスタチンによる治療が推奨されているが、LDLコレステロール値の目標値については差異がある。このテーマに関する研究データは決定的なものはなくまた観察研究も不足している。

 

[目的]虚血性心疾患の既往のある患者において、スタチン治療におけるLDLコレステロール目標値と心血管イベント関連を評価する。

 

[デザイン、参加者]

イスラエルにおける人口ベースコホート研究。30歳から84歳の虚血性心疾患既往のある患者が組み入れられた。活動性のがんや代謝異常のある患者は除外した。

 

[曝露]スタチン治療開始から1年後の血清LDLコレステロール値を指標LDL値と定義。低グループ(≤70.0 mg/dL)、中等度グループ(70.1-100.0 mg/dL),高グループ(100.1-130.0 mg/dL).とした。

 

[評価項目]急性心筋梗塞、不安定狭心症、脳卒中、血管形成術、バイパス術、総死亡を含む主要な心臓イベントとした。Cox比例ハザードモデルと用いて低グループ対中等度グループ、中等度グループ対、高グループで比較しハザード比を算出。交絡補正および傾向スコアマッチング解析を行った。

 

[結果]少なくとも80%のアドヒアランスを有していた31619例がコホートに組み入れられた。平均76.3歳、27%が女性、29%が低グループ、53%が中グループ、18%が高グループであった。

 

平均1.6年の追跡で9035例イベント発生があった。低グループ対中グループでは明確な差はなかった。(hazard ratio [HR], 1.02; 95% CI, 0.97-1.07; P=.54),しかし、低グループと中グループは高グループに比べてリスクが低かった。(HR, 0.89; 95% CI, 0.84-0.94; P<.001).

少なくとも50%のアドヒアランスを達成した54884例ン解析では低グループ対中グループでハザード比1.06 (95% CI, 1.02-1.10; P=.001) 、中グループ対高グループでハザード比0.87 (95% CI, 0.84-0.91; P=.001)であった。

 

[結論]スタチン投与でLDLコレステロール値が70100/dlでは心血管アウトカムが100130に比べて低いが、70以下にしても追加のベネフィットはない可能性がある。この集団ベースのデータからは、心臓病を有するあらゆる患者のために非常に低い目標LDL-Cレベル達成を推奨する治療ガイドラインをサポートしていない。

 

 

Lynch SJ.et.al. Thumb-Sucking, Nail-Biting, and Atopic Sensitization, Asthma, and Hay Fever. Pediatrics. 2016 Jul 11. pii: e20160443. [Epub ahead of print] PMID: 27401101

http://www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/27401101

 

[背景]衛生仮説(hygiene hypothesis)は出生後早期の微生物曝露がアレルギー反応現象を示唆する。小児において、親指の指しゃぶりと爪を噛む行為は微生物の曝露を増加させるような一般的な行動である。親指の指しゃぶりや爪を噛む行動をする小児ではアトピー、喘息、花粉症のリスクが低下するのではないか、という仮説を成人まで追跡したコホート研究で検討した。

 

[方法]研究対象者は5, 7, 9, 11歳の時に、親指の指しゃぶりと爪を噛む行為の習慣を報告した。アトピー感作は13歳および32歳の時に共通の皮膚ブリックテスト(≥2mmの腫れ)にて行われた。

 

小児期に親指の指しゃぶりや爪を噛む行動とアトピー性感作、喘息、および花粉症の関連を親のアトピー歴、母乳育児、ペット、貧困、社会経済的地位、親の喫煙、年齢、性別や他の潜在的な交絡因子で調整しロジスティック回帰により検討した。

 

[結果]対象小児の31%において、親指しゃぶりと爪を噛む行為が1歳以上の年齢で頻繁にあった。彼らは、13歳時点でアトピー監査が有意に低かった。(オッズ比0.6795%信頼区間0.480.92]また32歳時点でも同様であった。(オッズ比0.6195%信頼区間0.460.81]これらの関連は交絡補正後も維持された。

 

両方の習慣のある小児ではいずれか一つの習慣を持つ小児よりもアトピー感作リスクが低かった。なお喘息や花粉症との関連は認めなかった。

 

[結論]自分の親指をしゃぶったり爪を噛んだりする習慣のある小児では児期および成人期におけるアトピー感作リスクが低い

 

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