薬剤師の地域医療日誌

薬剤師が臨床や地域医療にどのように関われるか、EBMを実践しながら模索しています。このブログは個人的な勉強記録です。医学文献の2次資料データベースとして医師、看護師、薬剤師その他のスタッフや患者様に役立てれば幸いです。情報に関しては知識不足の面から不適切なものも含まれていると思われます。またあくまで個人的な意見も含まれております。掲載の情報は最新の文献等でご確認の上、運用していただければ幸いです。

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Rai SK.et.al. The Dietary Approaches to Stop Hypertension (DASH) diet, Western diet, and risk of gout in men: prospective cohort study. BMJ. 2017 May 9;357:j1794. PMID: 28487277

https://www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/28487277

 

[目的]男性における高血圧を止めるための食事療法(DASH)と、西洋食で痛風のリスク(すなわち、高尿酸血症の臨床的エンドポイント)との関係を調べる。

 

[方法]前向きコホート研究(The Health Professionals Follow-up Study.)。参加者はベースラインで痛風の病歴のない44444人の男性。食品摂取頻度アンケート調査によりDASH食(果物、野菜、ナッツおよびマメの高摂取、低脂肪乳製品および全粒粉、ナトリウム、甘味飲料、赤肉および加工肉に基づく)西洋食(肉および加工肉、フライドポテト、精製穀物、菓子およびデザートの高摂取に基づく)のパターンスコアを算出。BMI、高血圧、利尿剤使用、およびアルコール摂取を含む潜在的な交絡因子で調整を行い、American College of Rheumatology survey criteriaを満たす痛風を検討した。

 

[結果]26年間のフォローアップ期間中、1731例の痛風の痛風が確認された。DASHの食事パターンのスコアが高いほど、痛風のリスクは低い(adjusted relative risk for extreme fifths 0.68, 95% confidence interval 0.57 to 0.80, P value for trend <0.001). 対照的に、より高い西洋食のパターンスコアは、痛風のリスク増加と関連していた(1.42,1.161.74P = 0.005)。

 

[結論]DASH食は、痛風のリスクが低いことと関連し、高尿酸血症患者の尿酸値を低下させる効果が痛風の危険性を低下させることを示唆している。逆に、西洋の食生活は、痛風のリスクが高いという結果につながる。 DASH食は、痛風の危険がある男性にとって魅力的な予防的食事療法を提供する可能性がある。

Bally M.et.al. Risk of acute myocardial infarction with NSAIDs in real world use: bayesian meta-analysis of individual patient data. BMJ. 2017 May 9;357:j1909. PMID: 28487435

https://www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/28487435

 

[目的]経口非ステロイド性抗炎症薬(NSAIDs)の使用に関連する急性心筋梗塞の決定要因、時間経過、およびリスクを特徴付ける。

 

[方法]カナダとヨーロッパの医療データベースの研究のシステマティックレビュー&メタ分析。対象となった研究は、コンピュータ化された薬物処方または医療データベースから得られたものであり、一般または高齢者集団で実施され、心筋梗塞が評価され、選択的シクロオキシゲナーゼ-2阻害剤(ロフェコキシブを含む)および従来NSAIDの研究であり、NSAIDsの使用者と非使用者を比較した研究で、時間依存分析が可能であり、交絡や誤分類の影響を最小限に抑えられた研究であった。

 

薬物曝露は、NSAIDで、その使用時期、使用期間、および用量を組み入れた指標変数としてモデル化した。アウトカムは、インデックスデータ(症例の急性心筋梗塞発症日、対照の一致日)と前年の非使用のNSAID使用の急性心筋梗塞のオッズ比。

 

[結果]446763例のコホートに、急性心筋梗塞61460例が含まれていた。NSAIDs1週間、1か月、もしくはそれ以上の使用は心筋梗塞リスク増加に関連した。17日間使用すると、心筋梗塞リスクの増加の確率(オッズ比> 1.0の事後確率)は、セレコキシブで92%、イブプロフェンで97%、ジクロフェナク、ナプロキセンおよびロフェコキシブで99%であった。対応するオッズ比95%信頼区間はセレコキシブ1.24 (0.91 to 1.82) 、イブプロフェン1.48 (1.00 to 2.26) 、ジクロフェナク1.50 (1.06 to 2.04) 、ナプロキセン1.53 (1.07 to 2.33) 、ロフェコキシブ 1.58 (1.07 to 2.17)

 

高用量のNSAIDについては、心筋梗塞のリスクが高いことが示されている。 1ヶ月を超える使用では、リスクは、より短い期間に関連するリスクを上回っているようには見えなかった

 

[結論]ナプロキセンを含む全てのNSAIDは、急性心筋梗塞のリスク増加と関連していることが判明した。 セレコキシブによる心筋梗塞のリスクは、従来のNSAIDSのそれに匹敵し、ロフェコキシブよりも低かった。 リスクは、NSAID使用の最初の1ヶ月間およびより高い用量で最も大きかった。

Nanri A.et.al. Dietary patterns and all-cause, cancer, and cardiovascular disease mortality in Japanese men and women: The Japan public health center-based prospective study. PLoS One. 2017 Apr 26;12(4):e0174848. PMID: 28445513

https://www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/28445513

 

[背景]メタ分析によれば、健全あるいは健康的な食事パターンと死亡リスクに逆相関を示し、西洋食あるいは非健康的な食事パターンとの関連は示されていない。しかしながら、、日本人の特徴的な食事パターンと死亡率との関連も不明である。本研究では、日本人の食事パターンと全原因、癌、および心臓血管疾患の死亡率との関連を前向きに調査した。

 

[方法]second survey of the Japan Public Health Center-based Prospective Study (1995-1998)に登録している人で重篤な疾患既往の無い45歳~74歳の男性36,737人、女性44,983人が対象となった。食事パターンは、食品頻度アンケートによって確認された134の飲食品の主成分分析から得られた。2012年第2回調査からの死亡のハザード比は、cox比例ハザード回帰分析を使用して推定された。

 

[結果]野菜、果物、大豆製品、ジャガイモ、海藻、キノコ、魚の高摂取を特徴とする健全な食事パターンは、全原因および心血管疾患の死亡率の低下と有意に関連していた。

健全な食事パターンスコアの最高四分位では最低四分位に比べて、総死亡、心血管死亡が低下。多変量調整ハザード比(95%信頼区間)はそれぞれ0.82 (0.77 to 0.86) 0.72 (0.64 to 0.79),であった。食肉、加工肉、パンおよび乳製品の高摂取を特徴とする西洋化された食事パターンもまた、全原因、癌および心臓血管疾患死亡のリスクと逆相関していた。伝統的な日本の食事パターンでは、これらのリスク低下と関連していなかった。

 

[結論]健全な食事パターンあるいは西洋食パターンでは、日本人の全死因および心血管疾患の死亡リスクの低下と関連していた。

 

[コメント]

日本人の平均寿命は戦後、つまり1950年代から急速に上昇し、今や世界トップレベルである。こうした急速な寿命増加には、社会経済的地位、文化的背景、そして日本の食生活が貢献している可能性がある。(Lancet. 2011;378: 1094–1105. pmid:21885105

 

日本食はバランスの取れた栄養面を有しているが、日本人の食生活は経済発展とともに変化していった。俗に言う食の欧米化である。 例えば、全脂肪(特に動物性脂肪)、動物性タンパク質、およびカルシウムの消費は、肉および家禽、ならびに乳製品および乳製品の消費は増加している。戦後のこれらの食物や栄養素の摂取量の増加は1970年代にピークを迎えた(The National Health and Nutrition Survey Japan, 2011. Tokyo: Daiichi-shuppan; 2015.

 

魚や大豆製品の定期的な消費を含む伝統的な食事の側面を維持しながら、幾分西洋化された現代の日本の食生活は、健康に有益な効果をもたらす可能性があると考えられる。

 

食事バランスガイドに基づいたバランスのよい食事では日本人の死亡リスク低下が報告されている。(BMJ. 2016;22: 352: i1209.

 

野菜、果物、魚、鶏、全粒粉、および低脂肪乳製品の高摂取を特徴とした健全もしくは健康的な食事パターンでは、7研究のメタ分析で総死亡(6研究が欧米、1研究がアジア)、6研究のメタ分析で心血管死亡(2研究が欧米、4研究がアジア)が低下することを報告している。(Br J Nutr. 2015;113: 16–24. pmid:25430485

 

本研究では従来的な健康的食事でリスク低下、純日本食では関連性なし、そして欧米食でもリスクが低下することが示されている。純和食=健康、欧米化食=不健康、というのは幻想に過ぎない。

Hoshijima H.et.al. Weekend versus weekday admission and short-term mortality: A meta-analysis of 88 cohort studies including 56,934,649 participants. Medicine (Baltimore). 2017 Apr;96(17):e6685. PMID: 28445269

https://www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/28445269

 

[背景]週末の入院が高い死亡率に関連するということは基本的に存在することが広く受け入れられている。 しかし、週末の入院がある種の診断、地理的地域、および研究のサブタイプに基づいて患者の死亡リスクが高いかどうかを体系的に調査することはなかった。

 

[方法]本メタアナリシスは、疫学における観察研究のメタアナリシス(MOOSE準拠)の報告ガイドラインに従って実施された。文献検索は電子データベースを用いて行われた。 主要アウトカムは、短期(≦30日)の死亡率であった。患者は、サブグループ分析のために7つの地域(北アメリカ、南アメリカ、ヨーロッパ、アジア、オセアニア、アフリカ、および南極)に分けられ、24の主要な診断を評価する7つのカテゴリに分類された。DerSimonianおよびLairdランダム効果モデルを用いてオッズ比(OR)および95%信頼区間を算出した。

 

[結果]短期死亡率は週末、平日の入院の調整オッズ比は、1.1295CI1.07-1.18; I = 97%)および1.1695CI1.14-1.19; I = 97%)であった 。サブグループ分析では、5大陸(北アメリカ、南米、ヨーロッパ、アジア、オセアニア)に住む患者で、週末の死亡リスクが高いことが確認された。しかし、有意な週末の効果は、24の診断グループのうち15でのみ同定された。

 

[結論]週末の入院は5大陸全域での平日の入院と比較して死亡リスクが高かったが、その影響は特定の診断グループと入院のサブタイプに限られていた。週末の効果は非常に異質であり、限られており、さらなる質の高いコホート研究が参考になるかもしれないことを示唆している。

Ohshima S.et.al. Deprescribing Using the Guidelines for Medical Treatment and Its Safety in the Elderly and Changes in Patient QOL and Activities of Daily Living. Yakugaku Zasshi. 2017;137(5):623-633. PMID: 28458294

https://www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/28458294

 

[目的]在宅患者の処方を対象に「「高齢者の安全な薬物療法ガイドライン(2015年改訂版)」を用いた PIMs の検出並びに処方提案を行い,医師とのディスカッションの結果,及び処方変更後の activity of daily livingADL)値,及びQOL 値の測定結果を用いて有用性を検討。

 

[対照患者]鶴ヶ島在宅診療所の訪問診療を受けている患者のうち城西大学薬局毛呂本郷店の薬剤師による居宅療養管理指導及び在宅患者訪問薬剤管理指導を受けている慢性期高齢在宅患者 13

 

[方法]薬剤師による PIMs の検出及び使用を考慮すべき薬剤の決定を 2015 10 月から 11 月に行い,最終的な処方決定のための医師との協議を2015 12 月に実施。薬剤師 2 名が次の 3 step を経て処方変更案を作成。

 

Step 1:医療用医薬品添付文書(以下,添付文書)の適応症,用法・用量等に一致しない薬剤の抽出と提案

Step 2:「改訂ガイドライン」に記載のある処方薬の抽出

Step 3:患者状態を考慮した PIMs 及び開始を考慮すべき薬剤(スタート薬剤)の決定

 

処方変更前及び変更から 3 ヵ月後に,ADL 値及び QOL 値を測定。QOL 値の測定にはSF-36v2を用いた。またDeprescribing 対象者 13 名の処方変更前と処方変更後,及び deprescribing 後にフォローアップした患者の処方変更前後の 1 ヵ月(30 日)の薬剤費を

平成 28 年度 4 月改定の薬価基準を基に算出した。

 

[結果]対象患者の性別及び人数は,男性 3 名,女性 10 名,合計 13 名であった.年

代別人数は,60 歳代が 3 名,70 歳代が 4 名,80 歳代が 4 名,90 歳代が 2 名であった.平均年齢は 79.1 歳であっ

た.平均処方薬剤数は 7.2(最少処方薬剤数 4,最大処方薬剤数 12)であった.疾患数の平均は 3.8であり,3 から 6 の範囲であった.最も多い疾患は8 名が罹患していた高血圧症であり,以下,多い順に,アルツハイマー型認知症が 4 名,うつ病,陳旧性脳梗塞,糖尿病が各 2 名であった.

 

Step 1:添付文書の適応症,用法・用量等に一致しない薬剤

 

添付文書の要件に一致せず,中止の提案に至った薬剤は 13 薬剤,用量の変更が 1 薬剤で

あった.

 

Step 2:「改訂ガイドライン」に記載のある処方薬の抽出

 

「改訂ガイドライン」のリスト及び本文中になんらかの記載があった薬剤は,43 種類(延べ 65 薬剤)であった.処方された薬剤数に対して,延べ数で 70%,種類で 67%の薬剤が「改訂ガイドライン」に記載されていた.

 

Step 3:患者状態を考慮した PIMs 及び「スタート薬剤」の決定

 

PIMs 及び「スタート薬剤」と判断された薬剤は 13 名中 10 名(76.9%)の処方に見い出され,全 18 薬剤であった.このうち,中止を提案したのが 9 薬剤,変更を提案したのが 8 薬剤であった.また,「スタート薬剤」は 1 薬剤であった.全 93 薬剤に対して PIMs 及び「スタート薬剤」は 19.4%であった.

 

処方を変更した 7 名の患者のうち,2 名の患者で症状の悪化がみられた.

 

[結論]

本研究より「高齢者の安全な薬物療法のガイドライン 2015」は薬剤師が PIMs を抽出するために拠って立つべき有力な基準と考えられた.しかしながら,deprescribing 後のフォローアップは必要不可欠であり,今後,フォローアップに関する留意点等の情報の蓄積が望まれる.

 

[コメント]

かなり小規模ですが、QOL評価までしているところはすごいと単純に思いました。ただし、いくつか言いたいことがあります。これは僕がポリファーマシー関連のWSや講演で繰り返しお話ししたことなので、少し言いたい。

deprescribingというのは「非明示的な手法」で、スコットらの論文によると、「残され余命に見合うベネフィットがあるか」というようなチェック項目があります。これは明らかな前景疑問であり、僕はその解決方法にEBMを使ってみたらという提案をしてきました。しかし、この研究チームはガイドラインを使っている。

これは僕の考え方と大きく違うところです。クライテリアやガイドラインを適用することはいわゆる「明示的な手法」と言われているもので、「非明示的な手法」と対をなすものです。どうもそれがごっちゃになっている。deprescribingは機械的な介入プロセスでないところが大きなポイントのはず。。。なにかおかしい。モヤモヤします。

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