薬剤師の地域医療日誌

薬剤師が臨床や地域医療にどのように関われるか、EBMを実践しながら模索しています。このブログは個人的な勉強記録です。医学文献の2次資料データベースとして医師、看護師、薬剤師その他のスタッフや患者様に役立てれば幸いです。情報に関しては知識不足の面から不適切なものも含まれていると思われます。またあくまで個人的な意見も含まれております。掲載の情報は最新の文献等でご確認の上、運用していただければ幸いです。

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Mendes D.et.al. Number needed to treat (NNT) in clinical literature: an appraisal. BMC Med. 2017 Jun 1;15(1):112. PMID: 28571585

https://www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/28571585

 

[背景]治療必要数(NNT)は、医療介入の有益かつ有害な影響を評価するために使用されている絶対的な統計指標である。NNTの計算にはいくつかの方法があり、結果の測定に使用される変数の設計やタイプなど、さまざまな研究特性に応じて適用する必要がある。医学文献に掲載された研究でNNTを計算するために最も推奨される方法が適用されているかどうかは未だ決定されていない。この研究の目的は、医学雑誌に掲載された研究でNNTを計算するために使用された方法が基本的な方法論的推奨に沿っているかどうかを評価することである。

 

[方法]「総合診療あるいは一般内科」カテゴリーでインパクトファクター上位25のジャーナルをスクリーニングし、薬理学的介入およびNNTの報告研究を特定した。研究は、そのデザインと変数のタイプによって分類された。NNTは完全性(ベースラインリスク、追跡期間、および信頼区間[CI])について評価された。選択された研究においてNNTを計算するために使用された方法を、基本的な方法論的推奨と比較した。 データは、記述統計を用いて分析した。

 

[結果]138文献が検索されそのうち51が解析に含められた。 その多くはメタアナリシス(n = 23,45.1%)で、臨床試験(n = 17,33.3%)、コホート研究(n = 9,17.6%)、症例対照研究(n = 2,3.9 )であった。二値変数アウトカム(n=41, 80.4%)は、time-to-eventアウトカム (n=10, 19.6%)よりも一般的であった。

 

36研究(51%)はベネフィットに対するNNTNNTB)のみを報告、14研究(27.5%)はNNTBと害に対するNNHNNTH)の両方を報告、11研究(21.6%)はNNTHのみを報告した。NNTのベースラインリスク (n=37, 72.5%), 追跡期間 (n=38, 74.5%), 信頼区間(n=32, 62.7%) は必ずしも報告されていなかった。15の研究(29.4%)では、NNTを計算するための基本的な方法論的推奨に従わなかった。推奨されない方法を適用した研究の割合は、メタアナリシスでは特に高かった(n = 13,56.5%)

 

[結論]研究のかなりの部分、特にメタアナリシスは、基本的な方法論的推奨に沿っていない方法を適用した。臨床的意思決定を支援する上での有用性にもかかわらず、NNTが不完全に報告された場合、その解釈は不可能であり、計算方法が評価中の設計および変数を研究するには不十分である場合、誤解を招く可能性がある。この知見を確認するためにさらなる研究が必要である。

[コメント]NNTの概念は1988年にLaupacisらが提唱した。(N Engl J Med. 1988 Jun 30;318(26):1728-33.NNTは、定義された期間内において、1人の患者に対して追加のアウトカムを得るために必要な患者の数として解釈される絶対効果測定値である。この測定値は絶対リスク削減の逆数で計算される(BMJ. 1995 Feb 18;310(6977):452-4.

 

結果として得られるNNTの値は、1回の介入による臨床効果の孤立した絶対的な測定ではなく、1回の調査における2つの治療オプションの1回の比較に固有の値である。 したがって、NNTは、特定の比較ではなく、特定の治療の結果に特異的である。さらに、介入と比較の有効性または安全性を超える他の3つの要因が、NNTに影響する。(CMAJ. 2008 Sep 9;179(6):549-53.

 

・ベースラインリスク(イベント発生率)

薬物治療の相対的有効性は、異なるリスクの患者サブグループにわたってしばしば類似しているが、NNTはベースラインリスクと逆相関する。

・時間枠(追跡期間)

たとえ長期療法による相対リスク低下が時間とともに一定であったとしても、事象が発生するにつれてフォローアップが増加し、絶対事象率が増加すると、NNTは減少する。

・アウトカム

Young LA.et.al. Glucose Self-monitoring in Non-Insulin-Treated Patients With Type 2 Diabetes in Primary Care Settings: A Randomized Trial. JAMA Intern Med. 2017 Jun 10. [Epub ahead of print] PMID: 28600913

https://www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/28600913

 

[背景]インスリン非依存型の2型糖尿病患者において、自己血糖測定の価値について議論がある。プライマリケアにおいて、インスリン非依存型2型糖尿病患者での、HbA1cと健康関連QOLについて、自己血糖測定の3つのアプローチを比較する。

 

[方法] 本試験は、ノースカロライナ中部の15のプライマリケアプラクティスで実施された、プラグマティックオープンラベルランダム化試験である。参加者は、20141月から20157月まで間にランダム化された。

 

対象となった2型糖尿病患者は、30歳以上で、プライマリケア医によって診断され、誌クリーニング6か月以内においてHbA1c6.59.5%の間にあり、ランダム化に賛同した人たちであった。適格性について評価された1032のうち、450人がランダム化された。

 

自己血糖測定なし、11回の自己血糖測定、11回の自己血糖測定と自動メッセージによる患者フィードバックを行う3つの介入が比較された。52週でのHbA1cと健康関連QOLが検討された。

 

[結果] 450例がランダム化され、最終的に92.9%にあたる418例が完遂した。HbA1cレベルに3群間で差はなかった。SMBG with messaging vs no SMBG, -0.09%; 95% CI, -0.31% to 0.14%; SMBG vs no SMBG, -0.05%; 95% CI, -0.27% to 0.17%).さらに健康関連QOLにも明確な差を認めず。低血糖頻度、ヘルスケア利用、またはインスリン開始を含む重要な有害事象に顕著な差はなかった。

 

[結論] インスリン非依存型の2型糖尿病の患者では、SMBGを実施した患者とSMBGを実施しなかった患者との間で、血糖コントロールまたはHRQOLに関して臨床的にまたは統計的に有意な差異は観察されなかった。フィードバックメッセージングを通じて提供された自己血糖測定でも、血糖コントロールにおいて利点をもたらさなかった。

 

 

 

Shu Kasama.et.al. Comparative effects of long and short-acting loop diuretics on mortality in patients with chronic heart failure. International Journal of Cardiology

Available online 15 June 2017

DOI: http://dx.doi.org/10.1016/j.ijcard.2017.06.010

 

[背景]短時間作用性フロセミドと比較して、長時間作用型ループ利尿剤アゾセミドが慢性心不全(CHF)患者の心交感神経活動(CSNA)を改善することを以前に報告した。 しかし、その死亡率への影響は決定されていない。

 

[方法]本研究は、左心室駆出率(LVEF)が低下したCHF患者において、アゾセミドがフロセミドと比較して改善されたI123-MIBGシンチグラフィー所見を示した以前に発表された研究のさらなる分析であった。入院を必要とする急性代償不全心不全の病歴により、CHF患者を特定した。合計108人の患者が解析対象となり、アゾセミド(n = 54)またはフロセミド(n = 54)で治療した患者を比較するために傾向スコアマッチングを使用した。

 

[結果]中央値で5.22年の追跡期間中、108例の患者のうち、24例で心臓死亡が発生した。多変量Cox回帰分析の結果、フロセミドによる治療は、心臓イベントの独立した予測因子であった。ハザード比2.62495%信頼区間1.0746.047]カプランマイヤー法による解析では、心臓死亡発生なしの率がアゾセミド群はフロセミド群より有意に高かった(p <0.05)。

 

[結論]これらの知見は、フロセミドと比較して、死亡率の低減におけるアゾセミドの優れた有効性を示している。

 

[コメント]

慢性心不全におけるループ利尿薬の比較は「薬のデギュスタシオン2」第10章(慢性心不全におけるループ利尿薬:フロセミド,トラセミド,アゾセミドの比較)にまとめてある。

薬のデギュスタシオン2 製薬メーカーに頼らずに薬を勉強するために


その結論は、概ね本研究結果に矛盾しない。

Marso SP.et.al. Efficacy and Safety of Degludec versus Glargine in Type 2 Diabetes. N Engl J Med. 2017 Jun 12. [Epub ahead of print] PMID: 28605603

https://www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/28605603

 

[背景]デグルデクは成人~小児の糖尿病患者に適用をもつ、1日1回投与の超長時間作用型の基礎インスリン製剤である。以前のオープンラベル試験では、基礎インスリングラルギンを受けた患者よりも、デグルデクを受けた患者のグルコース低下効果の低下と低血糖の発生率の低下が認められました。 しかし、データはデグルデクの心血管安全性に欠けている。

 

[方法]本研究は2型糖尿病患者7637例を対象に、インスリンデグルデク3818例と、インスリングラルギン3819例を対象とした二重盲検ランダム化比較試験である。インスリンは11回、夕食後から就寝前のあいだに投与された。一次アウトカムは、主要心血管イベント(心血管死亡、非致死的心筋梗塞、非致死的脳卒中)の初発とし、非レッセイマージンは1.3と設定された。二次アウトカムとして、米国糖尿病協会が定義した重度の低血糖を評価した。

 

[結果]ランダム化された患者のうち6509例にあたる85.2%が心血管疾患、慢性腎臓病のいずれかもしくはその両方を有していた。研究開始時の平均年齢は65歳、罹病期間中央値は16.4年、平均HbA1cは8.4%であった。

 

一次アウトカムはデグルデクで325 (8.5%) 、グラルギンで356 (9.3%)で、ハザード比 0.91; 95% confidence interval, 0.78 to 1.06; P<0.001 for noninferiority). と非劣性であった。24か月時点で平均HbAc7.5±1.2% であった。方、平均空腹時血清グルコースレベルは、グラルギン群よりもデグルデク群において有意に低かった(128±56 vs. 136±57 mg per deciliter, P<0.001) 重症低血糖は、デグルデク群187例(4.9%)およびグラルギン群252例(6.6%)で、absolute difference of 1.7 percentage points (rate ratio, 0.60; P<0.001 for superiority; odds ratio, 0.73; P<0.001 for superiority)。有害事象の割合は、2つの群で差異を認めなかった。

 

[結論]心臓血管イベントのリスクが高い2型糖尿病患者の中で、デグルデクは主要な心血管イベントの発生率に関してグラルギンより劣っていなかった。

Neal B.et.al. Canagliflozin and Cardiovascular and Renal Events in Type 2 Diabetes. N Engl J Med. 2017 Jun 12. . [Epub ahead of print] PMID: 28605608

https://www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/28605608

 

[背景]カナグリフロジンは、糖尿病患者の血糖値、血圧、体重、アルブミン尿を減少させるSGLT-2阻害薬である。本研究では、カナグリフロジンによる治療の心血管、腎臓、安全っ世アウトカムについて報告する。

 

[方法]心血管ハイリスク患者で2型糖尿病を有する10142例を含む2つ研究よりCANVAS Program integrated dataを構築。参加者はそれぞれカナグリフロジンとプラセボにランダムに割り付けられ、平均188.2週間追跡された。一次アウトカムは、心血管死亡、非致死的心筋梗塞、非知識的脳卒中の複合アウトカムとした。

 

[結果]参加者の平均年齢は63.3歳、35.8%が女性、罹病期間中央値は13.5年、65.5%で心血管疾患の既往があった。一次アウトカムの発症率はプラセボに比べてカナグリフロジンで低かった(1000人年あたり、26.931.5 ハザード比0.8695%信頼区間0.750.97]非劣性P<0.001、優越性P=0.02

 

事前定義された腎臓アウトカムには統計学的な有意差を認めなかったが、アルブミン尿の進展に関してはカナグリフロジンでベネフィットが認められた。(ハザード比0.7395%信頼区間0.670.79])また、推定糸球体濾過率40%の減少、腎代替療法の必要性、または腎臓の原因による死亡の複合アウトカムも有意に減少(ハザード比0.6095%信頼区間0.470.77])

 

有害反応は、以前に報告されたカナグリフロジンに関連する下肢切断リスクが高かった。(1000人年あたり、6.33.4 ハザード比1.9795%信頼区間1.412.75])切断は主につま先または中足骨のレベルにあった。

 

[結論]2型糖尿病患者および心血管疾患のリスクが高い患者を対象とした2件の試験では、カナグリフロジンで治療した患者は、プラセボを投与した患者よりも心血管イベントのリスクは低いが、主に足指または中足骨のレベルで切断のリスクが高かった。

 

[コメント]カナグリフロジンの心血管安全性を証明するために行われたCANVAS研究。サンプルサイズの拡張が行われず、かわりにCANVASRenal (CANVAS-R)が実施された。本研究はこの2つのRCTの統合解析である。

なぜ2つを統合したか。それは検出力アップに他ならない。

The integrated analysis of CANVAS and CANVAS-R as the CANVAS Program was undertaken to maximize statistical power to detect plausible effects of canagliflozin on cardiovascular, kidney, and safety outcomes as suggested from evolving evidence about SGLT2 inhibitors.

 

P

Participants were men and women with type 2 diabetes (glycated hemoglobin level, 7.0% and 10.5%) and were either 30 years of age or older with a history of symptomatic atherosclerotic cardiovascular disease or 50 years of age or older with two or more of the following risk factors for cardiovascular disease

 

EC

Participants in CANVAS were randomly assigned in a 1:1:1 ratio to receive canagliflozin at a dose of 300 mg, canagliflozin at a dose of 100 mg, or matching placebo,

participants in CANVAS-R were randomly assigned in a 1:1 ratio to receive canagliflozin, administered at an initial dose of 100 mg daily with an optional increase to 300 mg starting from week 13, or matching placebo.

 

O

The primary outcome was a composite of death from cardiovascular causes, nonfatal myocardial infarction, or nonfatal stroke.

Secondary outcomes planned for sequential conditional hypothesis testing were death from any cause, death from cardiovascular causes, progression of albuminuria, and the composite of death from cardiovascular causes and hospitalization for heart failure

 

統計解析

The primary hypothesis test was a test of noninferiority, with the use of a margin of 1.3 for the hazard ratio for the primary outcome with canagliflozin as compared with placebo in the full, integrated data set

本研究は非劣性試験である。

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