薬剤師の地域医療日誌

薬剤師が臨床や地域医療にどのように関われるか、EBMを実践しながら模索しています。このブログは個人的な勉強記録です。医学文献の2次資料データベースとして医師、看護師、薬剤師その他のスタッフや患者様に役立てれば幸いです。情報に関しては知識不足の面から不適切なものも含まれていると思われます。またあくまで個人的な意見も含まれております。掲載の情報は最新の文献等でご確認の上、運用していただければ幸いです。

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Jadwiga A.et,al, Indacaterol–Glycopyrronium versus Salmeterol–Fluticasone for COPD. 
N.Engl.J.Med May 15, 2016.DOI: 10.1056/NEJMoa1516385(編集時PubMed未収載)

[背景]多くのガイドラインは増悪リスクが高いCOPD患者において、第一選択治療として、LAMAとLABAの併用を推奨している。しかし、このような患者においてLAMA-LABAレジメンの治療における役割はあまり明確ではない。

[方法] 52週間にわたる二重盲検ダブルダミーランダム化比較非劣性試験。前年において、少なくとも1回の増悪を経験したCOPD患者が対象となり、インダカテロール(110μg)とグリコピロリニウム(50μg)を1日1回吸入する併用療法群、サルメテロール(50μg)とフルチカゾン(500μg)を1日2回吸入する群に割り付けた。一時アウトカムは全COPD増悪の年率とした。

[結果] 1680人がインダカテロール-グリコピロリニウム群、1682人がサルメテロール-フルチカゾン群に割り付けられた。

全COPDの年間増悪率において、インダカテロール-グリコピロリニウム群はサルメテロール-フルチカゾン群に比べて、非劣性だけでなく、優越性を示した。増悪率はインダカテロール-グリコピロリニウム群で11%低かった。(3.59%対4.03% 発生率比0.89[95%信頼区間0.83~0.96]またインダカテロール-グリコピロリニウム群では増悪の初発までの期間がサルメテロール-フルチカゾン群に比べて長かった。(71日[95%信頼区間60~82]対51日[46~57]ハザード比0.84[95%信頼区間0.78~0.91])

中等度から重度の増悪の年率に関してもインダカテロール-グリコピロリニウム群で低かった。(0.98対1.19 発生率比0.83[95%信頼区間0.75~0.91]また増悪初発までの期間もインダカテロール-グリコピロリニウム群で長かった。(ハザード比0.78[95%信頼区間0.70~0.86]重度の増悪初発に関しても長い傾向にあった。(ハザード比0.81[95%信頼区間0.66~1.00]


この増悪発生率に対する効果は、ベースラインの好酸球の値とは無関係であった。有害事象、死亡は両群で同等であった。肺炎の発症はインダカテロール-グリコピロリニウム群で3.2%、サルメテロール-フルチカゾン群で4.8%と有意に低かった。(P=0.02 )

[結論]インダカテロール-グリコピロリニウムはサルメテロール-フルチカゾンに比べて、COPD増悪既往のある患者において増悪予防に優れた効果を示す。

[コメント] ウルティブロ®(LABA+LAMA)VSアドエア®(LABA+ICS)直接対決。つまりノバルティス、グラクソスミスクライン直接対決論文と言うわけで、結果はノバルティスのウルティブロ®が勝利。グラクソの方を持つわけではないが、(ディオバン問題など個人的に思うことは多々あるが)本論文を批判的に検討してみよう。

まずは分かりやすい利益相反を確認。
「Supported by Novartis.」
「Norbert Ahlers, Michael Larbig, Petter Olsson, and Angel FowlerTaylor from Novartis for their assistance with the trial;」
「The sponsor (Novartis) developed the protocol, with guidance from the first author and advice from the other academic authors.」
本研究はノバルティスのサポートをうけ、実際に社員も関与している。プロトコル作成にも関わっている。まあほぼ完璧な「種まき臨床試験と」言えるだろう。ちゃんと書いてあるので良心的だ。

研究デザインはトレンドの非劣性試験だ。
「The noninferiority margin of 15% (corresponding to a rate ratio for exacerbations with indacaterol–glycopyrronium versus salmeterol–fluticasone of 1.15) was based on a previous study,」
非劣性マージンは15%。過去の研究に基づいている。

サンプル計算も確認しておこう。
「We calculated that a sample of approximately 3332 patients would be required to give the trial more than 95% power to rule out a 15% higher rate of COPD exacerbations of any severity with indacaterol–glycopyrronium than with salmeterol–fluticasone, at a one-sided error rate of 0.025, assuming a rate of dropouts or major protocol deviations of 30%.」

本研究では3362人が参加しており、サンプルサイズは満たしている。統計解析はmodified intention-to-treat population。15%のマージンの妥当性には議論の余地はあるかもしれないが、片側P値で0.025を採用しており、2重盲検、ダブルダミーという研究デザインは、わりとしっかりしている。

対象患者を見ていこう。簡単にいえば40歳以上で増悪既往のある重度のCOPD患者ということになる。なお平均年齢は64.6歳、喫煙者は39.6%であった。
「We enrolled patients 40 years of age or older who had COPD …(中略)…Patients were required to have a documented history of at least one COPD exacerbation during the previous year…」

評価項目は
「the primary objective of this trial was to show whether indacaterol–glycopyrronium would be noninferior to salmeterol–fluticasone in reducing the rate of COPD exacerbations.」
増悪に関しては軽度、中等度、重度を含む全増悪の年率ということになっている。追跡期間は52週である。

結果はPer-Protocol Population、Modified Intention-to-Treat Populationともに非劣性のみならず優越性を達成している。大きく差がついたのは軽度から中等度の増悪で、重度に関しては非劣性を示したにとどまる。(ぎりぎり優越性ともいえる)

増悪と言うアウトカムはどちらかと言えばソフトエンドポイントだが、本研究は2重盲検試験であり、バイアスの入る余地は少ない。また両群の患者背景もほぼ同様のようだ。やや脱落も多い印象だが、解析組み入れ割合は決して低くない。ここまで致命的な問題は見当たらない。ただあくまでも非劣性試験なので、この結果をもってして優越性を結論することはできないだろう。
「The primary objective of this trial was to show whether indacaterol–glycopyrronium would be noninferior to salmeterol–fluticasone in reducing the rate of COPD exacerbations.」

Sharif MR.et.al. Rectal Diclofenac Versus Rectal Paracetamol: Comparison of Antipyretic Effectiveness in Children. Iran Red Crescent Med J. 2016 Jan 13;18(1):e27932. PMID: 26889398

http://www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/26889398

 

[背景]発熱は小児医療において、最もコモンなつらい症状であり、治療が推奨される状況も多い。アセトアミノフェンは解熱鎮痛薬の中でも最もコモンな薬剤であるが、その呼応化とともに毒性など重篤な副作用も併せ持つ。ジクロフェナクは強力なNSAIDsのひとつであるが、解熱剤としての注目は大きくない。

 

[目的]アセトアミノフェン座薬とジクロフェナク座薬を比較する。

 

[方法]本研究は6か月~6歳の小児80人を対象にした二重盲検ランダム化比較試験である。アセトアミノフェン座薬15/kg40人)とジクロフェナク座薬1mg/kg40人)にランダム割り付けされた。直腸温は介入前と介入後に測定され、2グループ間で比較した。

 

[結果]平均直腸温はアセトアミノフェン群で39.6 ± 1.13°C、ジクロフェナク群で9.82 ± 1.07°Cであった。(P = 0.37).介入1時間後の平均直腸温はパラセタモール群38.39 ± 0.89°C、ジクロフェナク群38.95 ± 1.09°Cであった。(P = 0.02).平均体温変化はパラセタモール群で0.65 ± 0.17°Cジクロフェナクと1.73 ± 0.69°Cジクロフェナク群で有意に低下した。(P < 0.001).

 

[結論]介入1時間において、ジクロフェナクはパラセタモールに比べて発熱コントロールに優れていた。

 

[コメント]まあ両群に差があるといっても両者ともに1度前後下がる程度何だなぁ、という感じ。経験的にもこんな感じ。対象小児は平均3歳ちょいという感じ。有意な差があるといってもなんか臨床的には微妙なのだが。有害事象リスクに関してはどうなんだろか。

Zeng J.et.al. Effect of probiotics on the incidence of ventilator-associated pneumonia in critically ill patients: a randomized controlled multicenter trial. Intensive Care Med. 2016 Jun;42(6):1018-28. PMID: 27043237

[背景]人工呼吸器装着患者におけるプロバイオティクスの効果を検討する。

[方法]本研究はオープンラベル多施設ランダム化比較試験であり、ICUで48時間以上人工呼吸器装着が見込まれる235人が対象となった。標準的なVAP対策に加え、介入群ではプロバイオティクスカプセル(Bacillus subtilis and Enterococcus faecalis (Medilac-S) 0.5 g[ビオフェルミン])を1日3回投与された。VAPは毎日評価し、咽頭スワブ、胃吸引はベースライン時、その後は週に1回もしくは2回培養された。

[結果]細菌学的に確認されたVAPはプロバイオティクス群で有意に低かった。(プロバイオティクス群36.4%、標準ケア群50.4% P=0.031) VAP発症までの平均日数もプロバイオティクス群で長かった。(プロバイオティクス群10.4日、標準ケア群7.5日 P=0.022) しかし臨床的なVAPや入院期間、死亡に明確な差はなかった。

[結論]プロバイオティクスはVAP予防に効果があるかもしれない。

[コメント]VAPというアウトカムはソフトエンドポイントと言わざるを得ない。本研究はオープンラベル試験であり、結果の解釈は慎重になるべきであろう。また臨床的VAPや死亡に差が無いことを踏まえれば、プロバイオティクスがVAP予防に有効であると結論することは難しい。ただ、そのコストや有害性を考えたときにルーチン投与もありかなあと思うくらいプロバイオティクスは人に優しい。

Ble A.et.al. Safety and Effectiveness of Statins for Prevention of Recurrent Myocardial Infarction in 12 156 Typical Older Patients: A Quasi-Experimental Study. J Gerontol A Biol Sci Med Sci. 2016 May 4. [Epub ahead of print] PMID: 27146371
http://www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/27146371

[背景]80歳を超えるような患者へのスタチンのリスク及び実効性の根拠は限られている。高齢者において、スタチンの心筋梗塞再発リスク、筋肉関連有害イベント、増分コストを検討した。

[方法] UK Clinical Practice Research Datalink.のプライマリケア電子医療記録を用いて、心筋梗塞再発リスク(一次アウトカム)、転倒、骨折、脳梗塞、認知症、総死亡(60歳以上)を、傾向スコアマッチングにて検討した。(12156人)被験者は10年間追跡された。

[結果]平均76.5歳、女性は45.5%であった。スタチンの使用は心筋梗塞再発リスクを減らした。(subhazard ratio = 0.84, 0.69-1.02, p = .073)60歳から79歳のグループではリスク低下が示唆されたが (0.73, 0.57-0.94) 、80歳を超えるグループでは明確な差が無かった。 (1.06, 0.78-1.44).脳卒中や認知症への効果は不明であった。特に80歳を超えるグループでは、治療最初の2年間で転倒、骨折リスクはそれぞれ増加した。(1.36, 1.17-1.60) 、(1.33, 1.04-1.69) 

治療は総死亡低下と関連した。スタチンは60歳から79歳ではcost savingといえるが、80歳を超えるとhigher costと言える。

[結論]60歳~79歳において、スタチンの心筋梗塞予防効果は介入研究とほぼ同様である。しかし、さらなる高齢グループのエビデンスが必要であろう。超高齢者における転倒、骨折はさらなる調査が必要。

[コメント]すべての被験者が心筋梗塞での入院既往を持つ。つまりスタチンの二次予防効果の検討だ。

「80歳を超える高齢者のスタチン療法」は地域医療の見え方2016.Apr.20;2(65)にまとめてある。http://jp.bloguru.com/syuichiao/265022/2016apr20265

結論として、積極的治療を望む場合、二次予防目的でのスタチン治療は継続を考慮できる
が、積極的治療を望まない場合、二次予防目的でさえもスタチン治療は中止を考慮できると言える。今回の研究はこの結論を支持するものとなっている。様々な考え方もあろうが現時点で二次予防に積極的なスタチン投与は推奨できない。ただし、スタチン服用中に発症した脳卒中後のスタチン投与に関しては異論があるかもしれない。
Stroke. 2007 Oct;38(10):2652-7. PMID: 17761916
Neurology. 2007 Aug 28;69(9):904-10. PMID: 17724294

二次予防とひとくくりにするのではなく、脳梗塞後(スタチン服用中の)か心筋梗塞後かで臨床判断が若干異なると言える。ただまあ80を超える高齢者ということであれば、スタチンを使おうが使うまいが、実際のところ、心血管疾患以外の要因で死亡する確率は高く、スタチンどうのと言う問題でもない気がする。今後のエビデンスをフォローし、必要に応じて考え方をあらためていきたいと思う。

Ide K.et.al. Effects of green tea consumption on cognitive dysfunction in an elderly population: a randomized placebo-controlled study. Nutr J. 2016 May 4;15(1):49. PMID: 27142448
http://www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/27142448

[背景]緑茶は、これまでの基礎実験的研究から認知機能障害に対して潜在的に効果のある飲料であると考えられている。しかし、人間での効果、特にリアルワールドでの摂取量との関連については不明である。

[方法]日本における、認知機能障害(Mini-Mental State Examination Japanese version (MMSE-J) score <28)に対して緑茶摂取の効果を検討した二重盲検ランダム化比較試験。

被験者は緑茶を摂取する群(1日2gの緑茶粉末[カテキン220.2mg含有]、プラセボ[カテキン含有なし]を摂取する群の2群にランダム化され、12か月追跡された。認知機能は3か月ごとにMMSE-Jを用いて評価された。

[結果]認知機能障害を有する33人の特別養護老人ホーム入居者(男性4人、女性29人、平均84.8歳、MMSE-J スコア15.8 )が対象となり、27人が試験を完遂した。1年後のMMSE-J スコア変化は緑茶群とプラセボ群で明確な差が無かった。(差―0.61[95%信頼区間‐2.97~1.74]

[結論]12か月の緑茶摂取ではMMSE-Jによる認知機能にメイクな差を認めない。しかし酸化ストレスを低減することができるかもしれない。追加の研究は効果を明確にするために必要とされている。

[コメント]小規模ながら12か月追跡した貴重な研究。We thus set our total sample size at 32.となっているように、想定されたサンプルサイズを下回っているわけではないので、有意な差が無いということは、想定していたよりも、相当程度小さな効果しかないか、効果が無いことを意味している。

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