薬剤師の地域医療日誌

薬剤師が臨床や地域医療にどのように関われるか、EBMを実践しながら模索しています。このブログは個人的な勉強記録です。医学文献の2次資料データベースとして医師、看護師、薬剤師その他のスタッフや患者様に役立てれば幸いです。情報に関しては知識不足の面から不適切なものも含まれていると思われます。またあくまで個人的な意見も含まれております。掲載の情報は最新の文献等でご確認の上、運用していただければ幸いです。

ご利用ありがとうございます。個人的に気になった論文を紹介しています。

メインブログの「地域医療の見え方」(http://jp.bloguru.com/syuichiao)、「思想的、疫学的医療について」(http://syuichiao.hatenadiary.com/)もよろしくお願い致します。

ご意見、ご質問などは(syuichiao@gmail.com)までお寄せください。

2012年08月

チョコレートの消費と心血管イベント発症リスクに関する報告はいくつか存在する


Chocolate consumption and cardiometabolic disorders

: systematic review and meta-analysis

BMJ. 2011 Aug 26;343:d4488. doi: 10.1136/bmj.d4488.

http://www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed?term=21875885

観察研究を含む7試験のメタ分析で

チョコレートの消費量が最も多い群は最も少ない群に比べて

心疾患リスクRR0.63 (95%CI 0.44 to 0.90)


The effectiveness and cost effectiveness of dark chocolate consumption

as prevention therapy in people at high risk of cardiovascular disease

: best case scenario analysis using a Markov model

BMJ. 2012 May 30;344:e3657. doi: 10.1136/bmj.e3657.

http://www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/22653982

ではダークチョコレートの摂取で1万人当たり

85例の心血管イベント抑制効果だという。ちなみにこの報告では

カカオ・ポリフェノールによるものと思われ、

ミルクチョコレートやホワイトチョコレートでは認められないということだった。


(参照)チョコレート消費量は心疾患リスクに影響するか?


以下の報告はNeurologyに掲載された男性における

チョコレート消費と脳卒中に関する報告である。

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難治性慢性咳嗽にPPIの有効性は、賛否両論だある。

GERDにより喘息の悪化や慢性咳嗽をきたすことがあるのか?

http://www.pariet.jp/alimentary/vol57/no586/sp09-01.html

慢性咳嗽の原因として中枢神経の過敏化が関係していという。

そのような観点から、興味深い論文が報告された。

 

Gabapentin for refractory chronic cough: a randomised, double-blind,

placebo-controlled trial

The Lancet, Early Online Publication, 28 August 2012

doi:10.1016/S0140-6736(12)60776-4

http://www.thelancet.com/journals/lancet/article/PIIS0140-6736%2812%2960776-4/fulltext

 

難治性慢性咳嗽はQOLの低下を招く。

難治性の慢性咳嗽および経障害性の疼痛で起こる中枢神経の過敏化には類似点があり、
gabapentinのような神経超節薬が難治性の慢性咳嗽に有効かもしれないことを示唆する。

 

難治性慢性咳嗽におけるガバペチンの有効性を

2重盲検ランダム化比較試験で検討

 

呼吸器疾患あるいは感染症の無い、

8週間以上持続した難治性慢性咳嗽患者に、

Gabapentin32(最大1800mg /日まで増加)、プラセボ群30例にランダム化し

10週間投与。

主要評価項目は、ベースラインから包括解析によって分析された

治療8週間後のLeicester cough questionnaire [LCQ] score

 

ガバペンチン群で(LCQscoreがプラセボ群に比べ有意に改善

スコア差1·80, 95% CI 0·56—3·04; p=0·004; number needed to treat of 3·58

 

有害事象(吐き気と疲労感)は

ガバペチン群で10例(31%)、プラセボ群で3例(10%)

 

ITT解析されているかどうか抄録からは不明であるし、両群合わせて20例脱落

ということから、結果が覆る可能性もある。

もう少し規模の大きい試験での結果に期待したい。

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EBMの勉強を始めたころLABAlong-acting β2-agonist)の

長期使用と死亡リスクの論文に出合ったことが

より医学論文に引き込まれたきっかけでもある。

Long-acting beta-agonists with and without inhaled corticosteroids

and catastrophic asthma events.

Am J Med. 2010 Apr;123(4):322-8.e2. Epub 2010 Feb 20

http://www.amjmed.com/article/S0002-9343(09)01110-3/abstract

この論文、妥当性の高いランダム化比較試験のメタ分析で

LABAを3カ月以上使用するとステロイドの併用の有無にかかわらず

死亡が多いという結果である。

この論文を通してメタ分析やサブ解析の読み方を学んだのだが・・。

詳細は

LABAの長期使
The Salmeterol Multicenter Asthma Research Trialから学んだこと

を参照していただければ幸いです。


さてLABAを長期で使用することが問題であるならば

ある程度喘息をコントロール出来ればLABAを中止したほうがよいのか

という疑問が生じます。

LABAを中止することで喘息のコントロールに影響がないのか

これは重要な問題です。

この問題に対する興味深い論文が発表されました。

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Spousal depression, anxiety, and suicide after myocardial infarction

Eur Heart J (2012) doi: 10.1093/eurheartj/ehs242 First published online: August 21, 2012

http://eurheartj.oxfordjournals.org/content/early/2012/08/20/eurheartj.ehs242.abstract

 

急性心筋梗塞(AMI)による配偶者の死は耐え難い苦痛を示す。

しかし、配偶者の非致死的または致死的AMIの精神的影響を調査した

研究はほとんどない。

致死的または非致死的AMI患者の配偶者と

年齢及び性別を一致させた非AMI患者の配偶者データを対象

 

致死的AMI患者の配偶者群    16,506人,平均年齢72.5

vs致死的非AMI患者の配偶者群  49,518人,平均年齢72.5

非致死的AMI患者の配偶者群   44,566人,平均年齢64.7

vs非致死的非AMI患者の配偶者群131,564人,平均年齢64.4

 

AMI発症,入院,死亡などのイベント発生の前後1年におけるその配偶者の

抗うつ薬とベンゾジアゼピンの使用、うつ病による入院または救急搬送、自殺

を評価

 

その配偶者が致死的AMI(致死的非AMI原因に対する)で死んだものは、

抗うつ薬とベンゾジアゼピンを増加させた。

peak incidence rate ratio (IRR) 5.7 vs. 3.3, and 46.4 vs. 13.0, respectively; P< 0.001

 

その配偶者が非致死的AMI(非致死的非AMI入院に対する)を持っていたものは、

抗うつ薬およびベンゾジアゼピン服用開始リスクに関連

(IRR 1.5 vs. 1.1, and 6.7 vs. 1.3, respectively, P< 0.001).

 

致死的AMI患者の配偶者は、さらにうつ病リスクと自殺リスクのの増加に関連

その配偶者が致死的または非致死的AMIを持っていた男性の場合は

女性の場合よりうつ病リスクの比較的高い危険に関連。

 

参考までに、近親者の死によって心筋梗塞リスクが上昇するという報告もありました。

Risk of Acute Myocardial Infarction after Death of a Significant Person in One's Life

: The Determinants of MI Onset Study

Circulation. 2012 Jan 24;125(3):491-6. Epub 2012 Jan 9.

http://www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed?term=22230481

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Egg yolk consumption and carotid plaque

Atherosclerosis. 2012 Aug 1. [Epub ahead of print]

http://www.atherosclerosis-journal.com/article/S0021-9150(12)00504-7/abstract

PMID:22882905


高コレステロール摂取、特に卵黄からの潜在的な危険の増加は

微々たるものだと考えられている。

カナダ大学病院の血管予防クリニックに通院する患者の、

総プラーク面積(TPA)と卵の関連を調査。喫煙についても併せて分析


血管予防クリニックにおいて治療継続患者に

超音波検査後、ライフスタイルや薬物治療についてのアンケート調査を実施。

アンケート項目:卵黄の週/年間当たりの摂取量(egg-yolk years).

と1日の喫煙箱数×喫煙年数(pack-years).


平均年齢61.5(±14.8) 女性47%の1262人を対象

頸動脈プラーク面積は40歳以降の加齢とともに直線的に増加。

さらに喫煙のパック年数(pack-years).と

卵黄年間摂取量egg-yolk yearsでは指数関数的に増加。

卵黄の効果量は喫煙の2/3

プラーク面積Plaque areaは

1週間に2個未満摂取(n=388):125±129mm(2)

1週間に3個以上摂取(n=603):132±142mm(2)

(年齢調整後P<0.0001)。

多変量回帰で、卵黄・年は有意に冠動脈疾患リスク要因に関連


卵黄の定期的摂取は心疾患リスクが高い患者では避けるべきと結論。

あくまでプラーク面積は代用のアウトカムなので、心血管リスクや

脳血管疾患にどの程度影響を与えるのか、死亡リスクとの関連は

この結果からは不明です。

日本人の主要死因別粗死亡率年次推http://t.co/7QvyWjZc をみてみると

心疾患は上昇しているが、脳血管疾患は1970年代をピークに減少している。

生活習慣病といわれるこれら疾患の推移は興味深いものがあります。

また食生活の変化http://t.co/aUuIzb7V は戦後から

牛乳・乳製品の供給量が上昇続けています。

肉類も上昇。動物性たんぱくの接種は60年代と比べて

2010年は肉類、牛乳、乳製品が激増しています。

これと主要死因別粗死亡率年次推をすり合わせてみると・・

肉類、牛乳、乳製品による動物性たんぱく摂取増加という

生活習慣があることは事実であり、

それに重なるように脳血管疾患が減少したともいえるのではないでしょうか。

の摂取と心血管疾患リスク、脳血管疾患リスクには賛否両論があると思いますが、
少なくとも食生活の変化での摂取量が増加したということと、

死亡原因で脳血管疾患が減少傾向にあるということは事実として存在します。

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