薬剤師の地域医療日誌

薬剤師が臨床や地域医療にどのように関われるか、EBMを実践しながら模索しています。このブログは個人的な勉強記録です。医学文献の2次資料データベースとして医師、看護師、薬剤師その他のスタッフや患者様に役立てれば幸いです。情報に関しては知識不足の面から不適切なものも含まれていると思われます。またあくまで個人的な意見も含まれております。掲載の情報は最新の文献等でご確認の上、運用していただければ幸いです。

ご利用ありがとうございます。個人的に気になった論文を紹介しています。

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2012年11月

Timing of Stroke in Patients Undergoing Total Hip Replacement and Matched Controls: A Nationwide Cohort Study.

Stroke. 2012 Nov 6.

http://stroke.ahajournals.org/content/early/2012/11/06/STROKEAHA.112.668509.abstract

 

脳卒中は、人工股関節全置換術(THR)の潜在的に致命的な合併症である。しかしながらTHR施行患者の脳卒中の発症タイミングは不明のままである。本研究の目的は、対応対照被験者と比較して、THR患者で脳卒中の発症タイミングを評価することである。

 

1998年~2007年に実施されたデンマークにおけるコホート研究。66583例のTHR施行患者を対象に1症例あたり3例のTHRまたは膝関節全置換を実施していない患者を対照群として、年齢、性別、地域によりマッチさせた。時間依存Coxモデルを用いて病歴や薬物使用で調整を行いハザード比を算出。

 

マッチさせた対照と比較して、THR2週間以内の脳卒中発生リスクは

虚血性脳卒中の4.7倍のリスク増加

(補正ハザード比4.6995CI3.127.06)、

出血性脳卒中の4.4倍のリスク増加

(補正ハザード比4.4095CI2.019.62

虚血性脳卒中リスクは、術後6週まで持続

出血性脳卒中リスクは、術後12週まで持続

外来における抗血小板薬の使用は、術後6週間において70%、虚血性脳卒中のハザード比を下げた。

 

THR患者術後2週間の間には虚血性脳卒中は4.7倍のリスク増加し出血性脳卒中は4.4倍リスクが増加していることをこの研究は示している。 THR施行後の患者における脳卒中のリスクアセスメントは、最初の612週間の間に考慮すべきである

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出生後のアレルゲン回避がその後の喘息症状を減少させる可能性を示唆したランダム化比較試験の報告です。遺伝的にリスクが高いと思われる小児を対象にアレルゲン回避群と通常ケア群を比較し、喘息やアトピー症状を比較検討している興味深い報告です。

 

Multifaceted allergen avoidance during infancy reduces asthma during childhood with the effect persisting until age 18years

Thorax 2012;67:1046-1051

http://thorax.bmj.com/content/67/12/1046.short?rss=1&buffer_share=087e6&utm_source=buffer

 

喘息はしばしば小児期に開始する慢性疾患である。主要なリスク要因は、子どもの生活環境とそれらの遺伝的特性である。本研究の目的は、高リスク患者における喘息の有病率において生後12カ月間に環境改良を行った場合の有効性を評価することであった。

 

120名のアレルギー性疾患のハイリスク患者を対象に、単盲検ランダム化比較試験を実施。介入群の乳児は、母親に対して低アレルゲン食または高度加水分解を行った母乳を使用。さらにハウスダストやダニアレルゲンへの曝露を低減。対照群は標準のアドバイスに従いケア。試験参加小児は1歳、2歳、4歳、8歳、18歳の各時点で喘息やアトピーの存在を評価した。

 

18歳時点において予防群は対照群に比べて喘息症状を低減した。

OR: 0.23, 95% CI 0.08 to 0.70, p=0.01

反復測定分析は、118歳にいて喘息の有病率の全体的な減少があったことを示した。

OR: 0.51, CI 0.32 to 0.81, p=0.04

アトピーの有病率は18歳で2群間に有意差は認められなかった

 

出生後初期のアレルゲンの回避は遺伝によるリスクが高いと考えられる喘息症状の予防に有効である。効果は、早い時期得られ、成人期に至るまで持続する。

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米国では日照の少ない緯度の高い地域での大腸癌、乳癌、卵巣癌、多発性硬化症の相対的な多発が指摘されています。1)日照時間が少ないとビタミンDの生産効率が低下し人体にあまり容易影響を与えないとするビタミンD仮説です。2007年に発表されたメタ分析2)でもビタミンDサプリメントを摂取すると死亡が少ないという結果が出ていました。翌年、米国全国健康栄養調査の情報を用いて、一般住人において17.8ng/ml以下の低血中ビタミンD濃度であることは、全死亡率の増加とは無関係であるとの結論を出しておりその真相は不明のままです。そのような中CMAJからビタミンD低値が長寿と関連するかもしれないという報告です。

 

Levels of 25-hydroxyvitamin D in familial longevity: the Leiden Longevity Study

CMAJ. 2012 Nov 5

http://www.cmaj.ca/content/early/2012/11/05/cmaj.120233.abstract

 

25OH)ビタミンDの低レベルは、様々な加齢関連疾患および死亡率に関連が示唆されているが、因果関係は不明である。自分自身も含めての90歳代の兄弟を持っていた超高齢者の子孫1038例を対象にそのビタミンDレベルを調べ、対照群として彼ら子孫のパートナー461例と比較して加齢に伴う疾患発症や死亡率を調査

 

血中ビタミンD値,副甲状腺ホルモン値,血中ビタミンD値と関連が示唆されている一塩基多型(SNP)を評価した。年齢、性別、体格指数(BMI)、採血を実施した月、食事やサプリメントによるビタミンDの摂取量、クレアチニン値を交絡因子として補正。

 

超高齢者の子孫は、対照群のビタミンDレベル68.4 nmol/Lに比べて

64.3 nmol/Lと低レベルであった。 p = 0.002

グループ間の副甲状腺ホルモンのレベルに差は認められなかった。

さらに検討した3種類の一塩基多型のうち、血中ビタミンD値が高いことに関連する遺伝子変異の検出頻度が低い。

血中ビタミンDの低値と長寿の関連が示唆される。

 

1)   http://www.sunarc.org/

2)   Arch Intern Med. 2007 Sep 10;167(16):1730-7

3)   Arch Intern Med. 2008 Aug 11;168(15):1629-37.

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抗菌薬による下痢症状に対するプロバイオティクスの予防効果をメタ分析で検証した報告1)がありましたが、以下はプロバイオティクスがCDADリスクを減らせるかどうかを検証したメタ分析です。

 

Probiotics for the Prevention of Clostridium difficile–Associated Diarrhea: A Systematic Review and Meta-analysis

Ann Intern Med. 13 November 2012

http://annals.org/article.aspx?articleid=1390418

 

抗生物質による治療は、胃腸内の細菌叢を乱す可能性がある。これは合併症をもたらすかもしれまないが、その中で最も深刻なのは、Clostridium difficile関連性下痢症(CDAD)。

抗菌薬投与を受けている成人及び小児を対象にCDAD予防のためのプロバイオティクスの有効性と安全性を検証。システマテックレビュー・メタ分析。

 

データ成人・小児を対象とした抗菌薬治療に関するランダム化比較試験でCDADが報告されプロバイオティクスとプラセボ又は投与していない群を比較した研究を抽出。2名のレビューアが独自に潜在的に適格な記事を選別し、バイアスのリスクを評価。

 

3818の参加者を含む20試験が、適格基準を満たした。プロバイオティクスはCDADの発症率を減少させた。

66% (pooled relative risk, 0.34 [95% CI, 0.24 to 0.49]; I2 = 0%).

有害事象はプロバイオティクス群で9.3% コントロール群で12.6%だった。

(relative risk, 0.82 [CI, 0.65 to 1.05]; I2 = 17%

妥当性の高いエビデンスが、臨床的に重要な有害事象の増加を伴うことなく、CDADリスク低下というプロバイオティクス予防の結果を示唆している。

(関連)抗菌薬と整腸剤の併用。ルーチン併用で問題ないか?

 

1)JAMA. 2012;307(18):1959-1969

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Primary and secondary prevention with new oral anticoagulant drugs for stroke prevention in atrial fibrillation: indirect comparison analysis

BMJ2012;345:e7097

http://www.bmj.com/content/345/bmj.e7097

 

ダビガトラン、リバロキサバン、アピキサバンの心房細動における脳卒中に関する2次予防、1次予防の効果を間接的に比較検討。二次予防コホートを中心とした心房細動における脳卒中予防のランダム化比較試験の間接比較試験を実施。セカンダリ解析として1次予防についても検討した。

 

2次予防(脳卒中の既往あり)サブグループにおいて有効性と安全性のアウトカムをアピキサバンとダビガトラン(110mg又は150mg12回)を比較すると

■アピキサバンはダビガトラン150mg12回と比べて

心筋梗塞:HR 0.39, 95% CI 0.16 to 0.95

アピキサバン、ダビガトランとリバロキサバンの比較では有効性と安全性に明確な差は無かった。

■ダビガトラン110mg12回とリバロキサバンの比較は

出血性脳卒中:HR 0.15, 95%CI 0.03 to 0.66

血管死亡:HR 0.64, 95%CI 0.42 to 0.99

大出血:HR 0.68, 95%CI 0.47 to 0.99

頭蓋内出血:HR 0.27,95%CI 0.10 to 0.73

 

1次予防においてはアピキサバンは、ダビガトラン110mg12回よりも優れていた

致死的脳卒中:HR 0.59,95%CI  0.36 to 0.97

■ダビガトラン150mg12回と比べてアピキサバンは

脳卒中上昇:HR 1.45,95%CI 1.01 to 2.08

大出血減少:HR 0.75,95%CI 0.60 to 0.94

消化管出血減少:HR 0.61,95%CI 0.42 to 0.89

他の部位の出血減少:HR 0.74,95%CI 0.58 to 0.94

■リバロキサバンに比べてダビガトラン110mg12回はより心筋梗塞が多い。

ダビガトラン150mg12回とリバロキサバンでは明確な有効性安全性の差は無い。

アピキサバンはリバロキサバンに比べて大出血減少HR 0.61,95%CI 0.48 to 0.78

 

血性脳卒中、血管死亡、大出血、頭蓋内出血のエンドポイントはリバロキサバンよりもダビガトラン110 mg12回投与が少なかったものの、二次予防については、アピキサバン、リバロキサバンと、ダビガトランは、主要エンドポイントについて、同等の効果。一次予防では3つの薬は有効性と出血との関係で、いくつかの違いを示した。これらの結果は、仮説でありランダム化比較試験で検討されるべきである。

 

結果だけ見るとその解釈を誤りそうですが、この研究はメタ分析ではないと思われます。あくまで間接比較ですがなかなか興味深いです。結果の詳細はこちらをご参照ください。http://www.bmj.com/content/345/bmj.e7097

ビガトランは心筋梗塞リスク1)が指摘されていますが今回の関節比較試験でも同様の可能性が指摘されています。一方でリバロキサバンではむしろ心血管イベントが抑制されるという報告もあります。2)新規抗凝固薬であるアピキサバン、リバロキサバン、ダビガトランをまとめてワーファリンと比較検討したメタ分析3)全脳卒中や全身塞栓症、総死亡等の減少が示唆されましたが、大出血や消化管出血には有意差がつきませんでした。

 

1)    Arch Intern Med. 2012 Mar 12;172(5):397-402

http://www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/22231617?dopt=Abstract

2)N Engl J Med 2012; 366:9-19

http://www.nejm.org/doi/full/10.1056/NEJMoa1112277

3)Am J Cardiol. 2012 Aug 1;110(3):453-60.

http://www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/22231617?dopt=Abstract

 

(参考)リバロキサンは心疾患イベントを抑制できるか?

(参考)抗凝固薬の安全性と効性(対ワルファリン)

(参考)ダビガトランと筋梗塞リスク

(参考)ダビガトランの適正使用を考える

(関連)患者背景のCHADS2スコアからみた新規抗凝固薬の安全性検討

http://syuichiao.blogspot.jp/2012/06/chads2.html
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