薬剤師の地域医療日誌

薬剤師が臨床や地域医療にどのように関われるか、EBMを実践しながら模索しています。このブログは個人的な勉強記録です。医学文献の2次資料データベースとして医師、看護師、薬剤師その他のスタッフや患者様に役立てれば幸いです。情報に関しては知識不足の面から不適切なものも含まれていると思われます。またあくまで個人的な意見も含まれております。掲載の情報は最新の文献等でご確認の上、運用していただければ幸いです。

ご利用ありがとうございます。個人的に気になった論文を紹介しています。

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2013年01月

Risk of Fetal Death after Pandemic Influenza Virus Infection or Vaccination

January 16, 2013DOI: 10.1056/NEJMoa1207210

http://www.nejm.org/doi/full/10.1056/NEJMoa1207210

 

2009年のA型インフルエンザ(H1N1)パンデミック時に、妊娠中の女性は、インフルエンザ感染リスクにさらされた。この問題はワクチン接種後における胎児死亡の事例報告で提起された妊婦のワクチンの安全性についての疑問を複雑化した。

 

パンデミック発生中またはその前後のインフルエンザの診断、ワクチン接種状況、出産結果、妊娠女性の背景情報を、ノルウェーの国別登録簿と医療相談データをリンクすることにより、妊婦のインフルエンザワクチン接種の安全性を検証。胎児死亡のハザード比を推定するためにCox回帰モデルを用いて解析。

 

2009年~2010年のノルウェーにおける117347例の妊娠女性が解析対象。胎児死亡頻度は1000人当たり4.9人。パンデミック中、第2、第3トリメスター期の妊婦のうち54%が予防接種を受けていた。

■妊娠中のワクチン接種は、実質的にインフルエンザ診断のリスク減少

adjusted hazard ratio, 0.30; 95% CI 0.25 to 0.34

■インフルエンザの診断を受けた妊婦における胎児死亡のリスク上昇

adjusted hazard ratio, 1.91; 95% CI, 1.07 to 3.41

■胎児死亡のリスクは、妊娠中の予防接種で減少傾向がみられたが有意差は無い

adjusted hazard ratio, 0.88; 95% CI, 0.66 to 1.17).

 

娠中のパンデミックインフルエンザウイルス感染は胎児死亡のリスク増加と関連。また妊娠中の予防接種は、インフルエンザの診断のリスクを減少させた。予防接種自体は胎児死亡率の増加と関連していなかったが、パンデミック時インフルエンザ関連胎児死亡のリスクを減少させている可能性がある。

 

母体がインフルエンザの診断を受けると胎児死亡リスクが上昇する点が興味深いです。妊娠中のインフルエンザワクチン接種に関してはベネフィットを報告した文献は多い印象です。インフルエンザワクチンの胎児に与える影響についての安全性報告は昨年もありました。

(参考)妊娠中の新型インフルエンザワクチンA(H1N1)pdm09接種は胎児に悪影響はないか?

(参考)妊娠中のインフルエンザワクチン接種と胎児リスク

妊娠中のadjuvantedインフルエンザA(H1N1)pdm09ワクチン接種は、主要な先天的欠損症、早産あるいは胎児成長に関する悪影響は見られずJAMA. 2012;308(2):165-174. 妊娠中のアジュバント化A/H1N1 2009インフルエンザワクチン接種と胎児死亡は相関しないBMJ2012;344doi: 10.1136ことが報告されています。

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2011年に小児に対するランダム化比較試験が報告され、私も注目していたテーマです。

(参考)吸入ステロイドの連日投与vs間欠投与

この試験では増悪頻度は同等であり、間欠投与レジメン群のほうが連日投与レジメン群よりステロイド暴露量が少ないという結果でした。対象患者を成人まで拡大したメタ分析、コクランから2012年発表です。

 

Intermittent versus daily inhaled corticosteroids for persistent asthma in children and adults

Cochrane Database Syst Rev. 2012 Dec 12;12:CD009611.

http://www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/23235678?dopt=Abstract

 

吸入ステロイド(ICS)の連日吸入は、小児および成人における慢性喘息治療に推奨されている。しかし、しばしば吸入捨ステロイドを発作増悪時のみ使用する間欠的使用も医師によって推奨されることもある。

 

慢性喘息または慢性喘息の疑いのある就学前の小児、成人の管理においてICSを連日使用した場合と間欠的に使用した場合の有効性と安全性をシステマテックレビュー、メタ分析で比較検討。

 

Cochrane Airways Group Specialised RegisterClinicalTrials.govのウェブサイトを201112月まで検索。小児または成人を対象に吸入ステロイドを連日または断続的に使用したものを比較したランダム化比較試験を解析対象

 

2名のレビューアが独自に、方法論的な質、データを抽出し試験を評価。プライマリアウトカムは経口ステロイドを必要とする増悪1回以上を有するの患者数と重篤な有害事象を有する患者数。セカンダリアウトカムは、増悪、肺機能検査、喘息コントロール、副作用、離脱率および炎症マーカー。

 

6試験1211例の患者を対象とした解析が選択基準を満たした。

■経口ステロイドをを必要とする1つ以上の増悪を経験した患者数は統計的に有意な差がなかった。

(1204 patients; RR 1.07; 95% CI 0.87 to 1.32).

患者の年齢、気道閉塞の重症度、増悪・試験期間中に使用されるステップアッププロトコルは有効性の主要転帰に明確な影響を及ぼさなかった

■重篤な有害事象に関してもリスクの差は認められなかった

(1055 patients; RR 0.82; 95% CI 0.33 to 2.03).

連日の吸入治療に比べて間欠的な吸入治療では

■無症状日数の減少:(SMD) -0.15 (95% CI -0.28 to -0.03),

■喘息コントロール日数の減少:-9% (95% CI -14% to -4%),

■β2刺激薬の使用頻度が多い:0.12 puffs/day (95% CI 0 to 0.23)

 

FEV1)、QOL、努力呼気肺活量、気道過敏性、副作用、入院、救急外来の受診に関しては両群で明確な差はないが、小児に関する試験でベースラインからの身長は連日の吸入治療に比べ、間欠的な吸入治療(ブデソニド、ベクロメタゾン)で0.41 cm (532 children; 95% CI 0.13 to 0.69)高いという成長差が出た。

 

慢性喘息あるいは慢性喘息の疑いがある小児、成人では、連日のICS吸入治療が断続的な吸入に比べて経口コルチコステロイドによるレスキューおよび重篤な有害事象割合に明確な差は出なかった。連日のICS吸入治療は肺機能、気道炎症、喘息コントロールと気管支拡張剤使用等の指標で間欠的ICS吸入治療よりも優れていた。両方の治療は安全見えたが、成長抑制がICSの断続吸入に比べて連日使用で関連づけられていた。

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Addition of intravenous aminophylline to inhaled beta2-agonists in adults with acute asthma

Cochrane Database Syst Rev. 2012 Dec 12;12:CD002742.

http://onlinelibrary.wiley.com/doi/10.1002/14651858.CD002742.pub2/abstract

 

喘息患者頻繁に増悪を起こしえる慢性疾患で、救急診療部への受診の原因となる。アミノフィリンは急性喘息の増悪治療に広く使用されているが、その役割は、特に吸入β2刺激薬に追加投与した場合で不明確である

 

救急診療部において成人の急性喘息発作患者への吸入β2刺激薬に加えてアミノフィリン静注の追加投与の効果を検証。

 

Cochrane Airways Group register MEDLINEEMBASECINAHL)とハンドサーチによる呼吸器雑誌や会議抄録から試験を抽出した。2名のレビューアが独立してスクリーニング。レビューは20129月まで検索した。

 

吸入β2刺激薬で治療を受けている成人の急性喘息発作を対象にアミノフィリン静注とプラセボを比較したランダム化比較試験を解析対象とした。吸入ステロイドで治療された患者や、気管支拡張薬で治療されていない患者も含んだ。

 

15研究が前回のレビューに含まれていたが、このレビューにはさらに2つの新たな研究を含んだ。全体的に見て、研究の質は中程度であった。アミノフィリンや他の薬物に関する研究の間で有意な臨床的異質性が確認され喘息発作の重症度にもばらつきがあった。

 

■アミノフィリン静注は入院に対して有意な効果を示さない

OR 0.58; 95% CI 0.30 to 1.12; 6 studies; n = 315

■アミノフィリン静注は動悸/不整脈リスク増加

OR 3.02; 95% CI 1.15 to 7.90; 6 studies; n = 249

■アミノフィリン静注は嘔吐症状が増加

OR 4.21; 95% CI 2.20 to 8.07; 7 studies; n = 321

■アミノフィリン静注は振戦に影響しなかった。

OR 2.60; 95% CI 0.62 to 11.02; 5 studies; n = 249

 

静脈内アミノフィリンの使用は、救急診療部を受診した成人の喘息発作患者の入院のリスクを減らすわけでもない。アミノフィリンによる治療では100人のうち20人が嘔吐し、15人の不整脈や動悸が発生した。静脈内アミノフィリンのリスク・ベネフィットバランスが釣り合っていないという結論。
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タモキシフェンとパロキセチンの併用に関する少し前の報告ですが、なかなか衝撃的でした。ちなみに添付文書の記載を確認してみるとどちらの薬剤のものにも併用注意に該当しており、「本剤の作用が減弱するおそれがある。併用により乳癌による死亡リスクが増加したとの報告がある」との記載があります。

 

Selective serotonin reuptake inhibitors and breast cancer mortality in women receiving tamoxifen: a population based cohort study

BMJ2010;340:c693

http://www.bmj.com/content/340/bmj.c693

 

いくつかの選択的セロトニン再取り込み阻害剤(SSRI)はチトクロームP450 2D6CYP2D6)を阻害することによって、タモキシフェンの有効性を減少させるかどうかをコホート研究で検証。

 

対象患者は1993年~2005年においてオンタリオ州に住むタモキシフェンで治療している66歳以上の乳がん患者の女性でSSRIを単剤併用(2430人)。アウトカムは乳がん死亡。

 

平均2.38年(SD2.59)のフォローアップ期間中、374例(15.4%)が乳がんで死亡した。

年齢、タモキシフェン治療の期間、および他の潜在的な交絡因子で調整した後、パロキセチンとタモキシフェンの併用による乳がん死亡リスクは、

タモキシフェンとSSRI(パロキセチン)の併用期間が25%、50%、75%増加すると、乳癌による死亡リスクがそれぞれ24%、54%、91%上昇する。

これとは対照的に、そのようなリスクは、他の抗うつ薬では見られなかった。

タモキシフェン投与期間の41%をパロキセチンと併用した場合、タモキシフェン中止後5年以内の乳癌による死亡が20人につき1人増加した。

 

現時点では添付文書上併用注意となっておりますが、タモキシフェン治療中のパロキセチンの使用は乳癌女性におけるタモキシフェンの有益性を減弱させるという仮説を支持し、乳がんによる死亡リスクの増加に関連付けられているという結論は衝撃的です。代替薬が使用できるのであれば併用は避けたいなと、思います。

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Effect of Vitamin D Supplementation on Progression of Knee Pain and Cartilage Volume Loss in Patients With Symptomatic Osteoarthritis: A Randomized Controlled Trial

JAMA. 2013;309(2):155-162

http://jama.jamanetwork.com/article.aspx?articleid=1556148


変形性膝関節症(OA)において関節周囲の軟骨と骨の障害は効果的な治療がなく問題となる。いくつかの研究では、ビタミンDが構造的進行を防ぐことが示唆されている


ビタミンDが、変形性膝関節症の症状と構造的進行を抑制させるかどうかをプラセボ対照2重盲検ランダム化比較試験で検討。


P:変形性膝関節症を有する患者146例(平均年齢62.4[SD, 8.5] 女性57[61%],115人が白人[79%]

E:経口ビタミンD製剤の投与(2000IUで投与開始し用量調整)

C:プラセボの投与

O:膝の痛みの重症度[WOMAC] pain scale, 0-20: 0=痛みなし; 20=最高の痛み

セカンダリアウトカムは身体機能、膝の機能WOMAC function scale, 0-68:

0=機能障害なし; 68=機能障害最高

追跡期間2年 追跡率100


2群間のベースラインでの膝の痛みのWOMAC pain scale,

■ビタミンD 6.9; 95% CI, 6.0 to 7.7

■プラセボ群: 5.8; 95% CI, 5.0 to 6.6) (P = .08).

2群間のベースラインでの膝機能WOMAC function scale

■ビタミンD群: 22.7; 95% CI, 19.8 to 25.6)

■プラセボ群: 18.5; 95% CI, 15.8 to 21.2) (P = .04).

治療群でわずかながら膝機能は悪いという患者背景。


血清25 - ヒドロキシビタミンD濃度は

ビタミンD群で平均16.1 ng/mL95CI13.718.6

プラセボ群で平均2.1 mg/mL (95% CI, 0.53.7) (P < .001)


膝の痛みは両群で低下

■ビタミンD群:-2.31 (95% CI, -3.24 to -1.38)

■プラセボ群:-1.46 (95% CI, -2.33 to -0.60)

両群間に有意差は無い。

両群の軟骨体積の減少度は同程度

■ビタミンD群: -4.30; 95% CI, -5.48 to -3.12

■プラセボ群:-4.25; 95% CI, -6.12 to -2.39) (P = .96).

セカンダリアウトカムにも有意な差はつかず。

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