薬剤師の地域医療日誌

薬剤師が臨床や地域医療にどのように関われるか、EBMを実践しながら模索しています。このブログは個人的な勉強記録です。医学文献の2次資料データベースとして医師、看護師、薬剤師その他のスタッフや患者様に役立てれば幸いです。情報に関しては知識不足の面から不適切なものも含まれていると思われます。またあくまで個人的な意見も含まれております。掲載の情報は最新の文献等でご確認の上、運用していただければ幸いです。

ご利用ありがとうございます。個人的に気になった論文を紹介しています。

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2013年04月

市販の保湿剤は高価なものからワセリンなど安価なものまで様々な種類の薬剤があります。アトピー性皮膚炎(AD)に対するOTCの保湿剤(非ステロイド)の臨床的有効性と費用対効果を検証したランダム化比較試験です。

 

【文献タイトル・出典】

An over-the-counter moisturizer is as clinically effective as, and more cost-effective than, prescription barrier creams in the treatment of children with mild-to-moderate atopic dermatitis: a randomized, controlled trial.

J Drugs Dermatol. 2011 May;10(5):531-7. PMID:21533301

【論文は妥当か?】

研究デザイン:ランダム化比較試験

Patient2歳から17歳の軽度から中等度のアトピー性皮膚炎を有する小児39

Exposure1]グリチルリチン酸含有バリアリペアクリーム(BRC-Gly, AtopiclairR13

Exposure2]セラミド主成分のリペアクリーム(BRC-Cer, EpiCeramR)13

ComparisonOTCのワセリン(OTC-Pet, Aquaphor Healing OintmentR13

Outcome]ベースラインから7日および21日のアトピー性皮膚炎の重症度

■患者背景は同等か?▶抄録に記載なし

■盲検化されているか?▶抄録に記載なし

intention-to-treat解析されているか?▶抄録に記載なし

■サンプルサイズは十分か?▶不十分

■追跡期間▶3週間

■追跡率▶抄録に記載なし

【結果は何か?】

ベースラインから7日、21日の各時点で有効性は3グループの間で明確な差が認められなかった。 OTCの保湿剤はAtopiclairREpiCeramRよりも少なくとも47倍費用対効果が高い

【結果は役に立つか?】

39例ではサンプルサイズが十分でないと記載があります。この検討では明確な有効性については不明な部分も多いですが、高価なセラミド含有製剤や、グリチルリチン酸を含む薬剤でもただのワセリンでも有効性はあまり変わらないかもしれません。いずれも海外の市販薬での検討ですが、なかなか興味深い報告です。白色ワセリンはかなり安価ですが、べたつきが少し気になりますね。塗った後、軽くふき取ると大部、べたつき感が軽減されるようです。

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観察研究などでは地中海食と心血管リスクは逆相関にあるといわれているそうです。地中海食と心血管イベント一次予防効果をランダム化比較試験で検討した報告。

【文献タイトル・出典】

Primary prevention of cardiovascular disease with a Mediterranean diet.

N Engl J Med. 2013 Apr 4;368(14):1279-90 PMID:23432189

【論文は妥当か?】

研究デザイン:ランダム化比較試験

Patient心血管疾患を有しない、男性(年齢5580歳)と女性(年齢6080歳)7447例。(2型糖尿病の有病率は約50%程度、平均年齢は67歳前後、高血圧有病率は82%前後、約半数近くにACE阻害薬が投与されている。

Exposure1地中海食群①:エクストラバージンオリーブオイル(週約1L

Exposure2]地中海食群②:ミックスナッツ(130g

Comparison低脂肪食

Outcome心筋梗塞、脳卒中、心血管死亡の複合エンドポイント

■患者背景は同等か?▶ 同等

■盲検化されているか?▶ されていない

intention-to-treat解析されているか?▶されている

■サンプルサイズは十分か?▶サンプルサイズは7400人。

■追跡期間▶4.8年[2.85.8年]

■追跡率▶93

【結果は何か?】

フォローアップ中プライマリアウトカム発生は288

E1地中海食群①エクストラバージンオリーブオイル96件(3.8%)

E2地中海食群②ミックスナッツ83件(3.4%)

C低脂肪食109件(4.4%)

E1群はC群に比べて心筋梗塞、脳卒中、心血管死亡が30%少ない

ハザード比0.70 (95%信頼区間0.53 to 0.91)

E2群はC群に比べて心筋梗塞、脳卒中、心血管死亡が30%少ない

ハザード比0.70 (95%信頼区間, 0.53 to 0.94)

【結果は役に立つか?】

地中海食(オリーブオイルやナッツ類)の摂取で心血管イベントが有意に減ったという報告です。介入試験で一次予防効果を示したというのはなかなか興味深いのではないでしょうか。

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経口ステロイド薬および抗TNFα剤は結核のリスクを増大させることが知られているが、吸入ステロイド薬は不明な部分が多いとしてCOPD患者における吸入ステロイドと結核との関連を検討したコホート研究です

【文献タイトル・出典】

Inhaled corticosteroid is associated with an increased risk of tuberculosis in patients with chronic obstructive pulmonary disease.

Chest.2012 Oct 15. doi: 10.1378/chest.12-1225PMID:23079688

【論文は妥当か?】

研究デザイン:後ろ向きコホート研究

[Patient]200011日から20051231日までに登録されたCOPD患者616

[Exposure]吸入ステロイドの使用(胸部X線により肺結核後遺症あり、正常の肺に分類)

[Comparison]吸入ステロイドの使用なし(胸部X線により肺結核後遺症あり、正常の肺に分類)

[Outcome]肺結核発症

■調整した交絡因子▶抄録に記載なし

■追跡期間▶

【結果は何か?】

結核発症はフォローアップ中20例。

▶胸部X線写真で正常な患者において吸入ステロイドの使用は使用なしと比べて結核リスクが

昇した

ハザード比:9.079, 95%信頼区間1.012-81.431, p=0.049

▶放射線学的な肺結核後遺症を有する患者において吸入ステロイドの使用は使用なしと比べて結核発症リスクが上昇した。

ハザード比:24.946, 95%信頼区間3.090-201.365, p=0.003

【結果は役に立つか?】

胸部X線写真で結核後遺症を有する患者では吸入ステロイドの使用は十分注意すべきかもしれません。呼吸器症状が悪化した際にとりあえずキノロンのだけは少なくとも避けたほうがよいでしょう。結核診断前のキノロンの投与は死亡リスクに関連するなんていう報告もありました

(参考)呼吸器にキノロン。その意外な落とし穴。

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腎臓結石の生涯発症率は男性で約13%、女性7%だそうです。[1][2]その再発率は特定の治療なしの場合5年以内で35%から50%3]であるといわれ、再発予防が重要だといえます。Ann Intern Medから再発性腎結石を防ぐための方法に関するクリニカルガイドラインです。

【文献タイトル・出典】

Medical management to prevent recurrent nephrolithiasis in adults: a systematic review for an american college of physicians clinical guideline

Ann Intern Med.2013 Apr 2;158(7):535-43PMID:23546565

【論文は妥当か?】

研究デザイン:レビュー&メタ分析[クリニカルガイドライン]

[Patient]28件のランダム化比較試験に参加した患者

[Exposure]水分摂取や食習慣の改善、薬物介入

[Comparison]無治療、プラセボ、またはその他のコントロール治療

[Outcome]腎臓結石の再発

■評価者バイアス▶2名のレビューアーが独立して評価

■元論文バイアス▶ランダム化比較試験

■異質性バイアス▶異質性は低い[薬剤介入解析のI2 統計量は0%]

  出版バイアス▶英語文献のみ

【結果は何か?】

■一つのカルシウム結石を過去に有していた患者

水分の摂取

水分の摂取は無治療と比べて腎結石再発リスクを55%低下させる。

相対リスク 0.45 [95% CI, 0.24 to 0.84]

▶ソフトドリンクの摂取量を少なくすることは腎結石再発リスクを17%低下させる

相対リスク0.83 [95%CI, 0.71 to 0.98]

■複数のカルシウム結石を持っていいた患者(すでに多くの患者で水分摂取がなされている)

プラセボまたはコントロールと比較した腎結石再発リスクは

▶サイアザイド利尿薬(5研究):相対リスク 0.52 [95CI, 0.39 to 0.69]

▶クエン酸(4研究)          :相対リスク0.25 [95CI, 0.14 to 0.44]

▶アロプリノール(2研究)     :相対リスク0.59 [95CI, 0.42 to 0.84]

【結果は役に立つか?】

結石が1つの場合は水分摂取の励行、ソフトドリンクを控えるなどの指導が再発防止に有効かもしれません。コストもかからず、有害事象もほとんどのケースで少ないと考えられ薬剤師の服薬指導業務にも有用な情報かと思います。また複数のカルシウム結石を有していた場合はすでに水分摂取の励行が行われていたとするものがほとんどで、それに加え薬物治療も効果的なようです。

1J Urol.2005; 173:848-57

2Kidney Int. 2003; 63:1817-23

3Ann Intern Med 1989;111:1006-9

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経口ステロイドの添付文書には副作用にも「血栓症があらわれることがあるので、観察を十分に行い、異常が認められた場合には投与を中止するなど適切な処置を行うこと。」のような注意分が記載されています。論文のイントロダクションには内因性ステロイドの過剰は静脈血栓塞栓症(VTE)リスクに関連するが、この関係は外因性のステロイドにも言えるかどうかは不明であるとしています。ステロイド薬の使用と静脈血栓症の関連を検討したケースコントロール研究です。

【文献タイトル・出典】

Use of Glucocorticoids and Risk of Venous ThromboembolismA Nationwide Population-Based Case-Control Study

JAMA Intern Med.2013;():1-10. doi:10.1001/jamainternmed.2013.122.

【論文は妥当か?】

研究デザイン:症例対照研究

[Patient]2005年から2011年におけるデンマークの人口ベースのケースコントロール研究

▶症例(ケース):静脈血栓症を発症した38765

▶対照(コントロール):38756

▶マッチング:年齢、性別

[Exposure1]ステロイドの現在使用(90日以内)

[Exposure2]ステロイドの最近使用(91日から365日以内)

[Comparison]過去におけるステロイドの使用(1年以上前)

[Outcome]静脈血栓症発症の罹患比率

■調整した交絡因子:静脈血栓症リスク因子

【結果は何か?】

症例およびコントロールにおけるステロイドの暴露割合から検討した罹患比率は以下の通り

■現在のステロイドの全身投与は静脈血栓リスク上昇に関連するが最近および過去の使用はリスクに関連しなかった。

▶現在使用  :調整罹患比率 2.3195%信頼区間, 2.18-2.45

▶最近の使用:調整罹患比率1.1895%信頼区間1.101.26

▶過去の使用:調整罹患比率0.9495%信頼区間0.900.99

■現在使用では新規、継続にかかわらずリスクに関連した。

▶新規服用:調整罹患比率3.0695%信頼区間2.773.38

▶継続服用:調整罹患比率2.0295%信頼区間1.882.17

■吸入ステロイドでは新規使用でリスクに関連、注腸ステロイドでは新規継続ともに関連

▶吸入ステロイド    :調整罹患比率2.2195%信頼区間 1.722.86

▶新規注腸ステロイド:調整罹患比率2.1795%信頼区間1.273.71

▶継続注腸ステロイド:調整罹患比率1.7695%信頼区間1.222.56

【結果は役に立つか?】

ステロイドの使用は静脈血栓に関連するという結果です。経口ステロイドを長期間服用しなければいけない疾患等では新規、継続にかかわらず注意が必要かもしれません。吸入では新規処方時に注意すべきかもしれません。

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