薬剤師の地域医療日誌

薬剤師が臨床や地域医療にどのように関われるか、EBMを実践しながら模索しています。このブログは個人的な勉強記録です。医学文献の2次資料データベースとして医師、看護師、薬剤師その他のスタッフや患者様に役立てれば幸いです。情報に関しては知識不足の面から不適切なものも含まれていると思われます。またあくまで個人的な意見も含まれております。掲載の情報は最新の文献等でご確認の上、運用していただければ幸いです。

ご利用ありがとうございます。個人的に気になった論文を紹介しています。

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2013年06月

心房細動患者において認知機能低下が脳卒中と独立している可能性を示唆したコホート研究です。

【文献タイトル・出典】

Atrial fibrillation and cognitive declin:A longitudinal cohort study

Neurology 2013 Jun 5 [Equb ahead of print] PMID:23739229

【論文は妥当か?】

 研究デザイン:コミュニティベースのコホート研究

[Patient]参加登録時心房細動及び脳卒中の既往の無い56歳以上の男女5150

[Exposure]心房細動発生

[Comparison]心房細動未発生

[Outcome]認知機能MMSEスコア(Modified Mini-Mental State Examination

■追跡期間▶7

■調整した交絡因子▶抄録に記載なし

【結果は何か?】

■追跡期間中心房細動を発症したのは552例(10.7%)

80から85歳の5年間における認知機能

心房細動未発生▶MMSSE6.4ポイント(95%信頼区間‐7.0~‐5.9

心房細動発生▶MMSE10.3ポイント(95%信頼区間‐11.8~‐8.9

E群とC群の差▶-3.9ポイント(95%信頼区間‐5.3~‐2.5

【結果は役に立つか?】

脳卒中の発症がなかったとしても高齢者では心房細動が発生した場合、心房細動未発生の人と比べて認知機低下に関連する可能性があるとしています。

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糖尿病と慢性閉塞性肺疾患(COPD)を合併している患者において、副腎皮質ステロイドによる治療が糖尿病合併症リスクに関連するか、また用量依存的リスクがあるかどうかを検討した報告です。

【文献タイトル・出典】

Comorbid Diabetes and COPD: Impact of corticosteroid use on diabetes complications.

Diabetes Care.2013 Jun 4. [Epub ahead of print] PMID:23735725

【論文は妥当か?】

  研究デザイン:後ろ向きコホート研究

[Patient]20017月から20086月におけるオーストラリアの退役軍人省Australian Government Department of Veterans’ AffairsのデータよりメトホルミンやSU剤の新規処方が認められかつチオトロピウム、イプラトロピウムを使用していた患者1076

[Exposure]ステロイドの使用(全身、吸入)

[Comparison]ステロイドの使用なし

[Outcome]SU剤メトホルミン投与開始から12カ月後からの

糖尿病合併症による入院までの期間

 

【結果は何か?】

■ステロイド高用量0.83以上DDD/の使用は糖尿病合併症による入院リスクに関連

▶サブハザード比 1.94 [95%信頼区間 1.14–3.28], P = 0.014

ステロイド鄭用量0.83未満DDD/の使用は糖尿病合併症による入院リスクに関連せず

【結果は役に立つか?】

高用量のステロイド使用が糖尿病合併症による入院リスクを増加させる可能性が有るとしています。糖尿病を合併したCOPD患者ではできる限り低用量のステロイドが推奨されるかもしれません。

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レニン‐アンギオテンシン系薬剤の術前投与によるアウトカムを検討した観察研究です

【文献タイトル・出典】

The Effects of Preoperative Renin-Angiotensin System Inhibitors on Outcomes in Patients Undergoing Cardiac Surgery

J Cardiothorac Vasc Anesth 2013 May 31.pii:S1053-0770(13)00020-7 PMID:23731712

【論文は妥当か?】

  研究デザイン:後ろ向きコホート研究

[Patient]20011月から201112月までに心臓手術を受けた患者

[Exposure]術前のレニンアンギオテンシン系薬剤の使用(1239人)

[Comparison]レニン‐アンギオテンシン系薬剤の使用なし(1083人)

[Outcome]急性腎障害 敗血症 手術死亡

■調整した交絡因子▶抄録に記載なし

【結果は何か?】

■急性腎障害はE群で27.2%C群で34%でありE群はC群に比べて23.6%低い

▶オッズ比:0.76495%信頼区間0.6700.873

■敗血症はE群で1.9%、C群で3.5%であり、E群はC群に比べて48.5%低い

▶オッズ比:0.51595%信頼区間0.3480.761

■手術死亡はE群で2.99%、C群で4.62%でありE群はC群に比べて46.1%低い

▶オッズ比:0.53995%信頼区間0.3480.758

【結果は役に立つか?】

腎障害リスクの他にも敗血症リスクや死亡リスクを低下させているところが印象的です。調節した交絡因子の詳細は抄録には記載がありません。これほどの効果が期待できるのかどうかは、現時点でわかりませんが、今後の前向き研究によるエビデンスに注目したいと思います。

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症例報告によればフルオロキノロンの使用は急性腎傷害につながる可能性があることを示しているとして、経口フルオロキノロンと急性腎傷害の関連を研究し、さらにレニン - アンジオテンシン系遮断薬との相互作用を検討した報告です。

【文献タイトル・出典】

Risk of acute kidney injury associated with the use of fluoroquinolones

CMAJ.2013 Jun 3. [Epub ahead of print] PMID:23734036

【論文は妥当か?】

研究デザイン:コホート内症例対照研究

[Patient] 20012011年の間におけるUnited States IMS LifeLink Health Plan Claimsのデータベースから40歳~85歳の男性(平均年齢62歳)

(症例)急性腎傷害のために病院に入院した1292

(対照)急性腎障害ではない疾患で入院した患者

症例1に対して10例のコントロール12651

[Exposure]経口フルオロキノロンの使用(シプロフロキサシン44.5%、レボフロキサシン43.9%、モキシフロキサシン11%、ガチフロキサシン0.5%、ノフロキサシン0.1%、Gemifloxacin0.1

▶現在使用:入院1週間前

▶最近使用:入院8日~60

▶過去使用:入院61日~180

[Comparison]経口キノロンの使用なし

[Outcome]急性腎障害

■患者背景:糖尿病やうっ血性心不全は症例で多い

■調節した交絡因子

過去6か月の 泌尿生殖器、呼吸器、消化管、皮膚、関節や骨の感染症

▶急性腎障害に関連する疾患(癌、慢性閉塞性肺疾患、鬱血性心不全、糖尿病、HIV高血圧)

▶腎毒性を有する薬剤の使用(入院時のループ利尿薬,NSAIDs,レニン-アンジオテンシン系薬)

▶ヘルスケアに関する使用頻度(医療機関受診、服用薬剤数)

【結果は何か?】

■経口キノロンの現在使用はキノロン使用なしと比べて急性腎障害リスクが上昇する

▶現在の使用:調整相対リスク2.18 (95%信頼区間1.74–2.73)

■経口キノロンの最近の使用および過去の使用は急性腎障害リスクに関連しない

▶最近の使用:調整相対リスク0.8795%信頼区間0.66–1.16

▶過去の使用:調整相対リスク0.8695%信頼区間 0.66–1.12

【結果は役に立つか?】

アモキシシリンやアジスロマイシンでは急性腎障害リスクはいずれの使用期間においても有意差が有りませんでした。キノロンでは様々なリスクが報告されています。

▶キノロンと急性肝障害リスク:CMAJ. 2012 Oct 2;184(14):1565-1570.

▶キノロンと網膜剥離リスク:JAMA.2012;307(13):1414-1419

▶キノロンと不整脈リスク:Clin Infect Dis. (2012) 55 (11): 1457-1465

▶キノロンと皮膚黒色腫リスク:Eur J Clin Pharmacol. 2013 Mar 8PMID:23471440

▶キノロンと腱障害リスク:Am J Med. 2012 Dec;125(12):1228.e23-8.

(参考)キノロン系抗菌薬と腱障害リスク

(参考)キノロンやNSAIDsなど光線過敏の副作用のある薬剤は皮膚がんと関連がありますか?
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野菜中心の食生活が死亡リスクを低減するか、十分な根拠は不足しています。体に良さそうな野菜中心の食習慣がどのようなアウトカムをもたらすか、前向きコホート研究の報告です。

【文献タイトル・出典】

Vegetarian Dietary Patterns and Mortality in Adventist Health Study 2

JAMA Intern Med.2013;():1-8 Published online June 3,2013

【論文は妥当か?】

研究デザイン:人口ベースコホート研究

[Patient]北米のAdventist Health Study 2 (AHS-2)を用いたコホートから73308

[Exposure] ベジタリアン

▶ヴィーガン(完全菜食)

▶ラクト・オボ(乳卵菜食)

▶ペスコベジタリアン(魚肉菜食)

▶セミベジタリアン(鶏・魚摂取の半菜食)

[Comparison]非ベジタリアン

[Outcome]全原因死亡、原因別死亡

■調整した交絡因子:重要な人口動態と生活習慣

■追跡期間:5.79

【結果は何か?】

全原因死亡は6.0595%信頼区間、5.826.291000人・年であった。

▶全ベジタリアンは非ベジタリアンに比べて死亡リスクが低下する

調整ハザード比:0.88 (95%信頼区間0.80-0.97)

▶ヴィーガンは非ベジタリアンに比べて死亡リスクが低下する傾向にある

調整ハザード比:0.85 (95%信頼区間, 0.731.01);

ラクト・オバは非ベジタリアンに比べて死亡リスクが低下する傾向にある

調整ハザード比:0.91 (95%,信頼区間0.82-1.00)

ぺスコべジタリアンは非ベジタリアンに比べて死亡リスクが低下する

調整ハザード比0.81 (95%信頼区間, 0.69-0.94)

▶セミベジタリアンは非ベジタリアンに比べて死亡リスクが低下する傾向にある

調整ハザード比:0.92 (95%信頼区間, 0.75-1.13)

【結果は役に立つか?】

心血管死亡や非心血管、非癌死亡、腎臓病死亡、内分泌系疾患死亡も有意に減少したとしています。またこの傾向は女性に比べて男性で顕著であるとしています。

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