薬剤師の地域医療日誌

薬剤師が臨床や地域医療にどのように関われるか、EBMを実践しながら模索しています。このブログは個人的な勉強記録です。医学文献の2次資料データベースとして医師、看護師、薬剤師その他のスタッフや患者様に役立てれば幸いです。情報に関しては知識不足の面から不適切なものも含まれていると思われます。またあくまで個人的な意見も含まれております。掲載の情報は最新の文献等でご確認の上、運用していただければ幸いです。

ご利用ありがとうございます。個人的に気になった論文を紹介しています。

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ご意見、ご質問などは(syuichiao@gmail.com)までお寄せください。

2013年09月

このテーマはなかなか難しい問題です。

(参考)チオトロピウム(スピリーバR)レスピマットの安全性

レスピマットも含めたレビュー

【文献タイトル・出典】

Tiotropium versus placebo for chronic obstructive pulmonary disease.

Cochrane Database Syst Rev.2012 Jul 11;7:CD009285 PMID:22786525

【論文は妥当か?】

研究デザイン:メタ分析

[Patient]22のランダム化比較試験に参加したCOPD患者23309

[Exposure]3カ月以上チオトロピウム吸入(ハンディヘラーおよびレスピマットの使用

3か月~4年)

[Comparison]プラセボの使用

[Outcome]QOL、増悪、入院リスク、総死亡

■元論文バイアス:ランダム化比較試験のメタ分析

■評価者バイアス:Two review authors independently assessed

■出版バイアス:We contacted study authors and trial sponsors for additional information

■異質性バイアス:抄録に記載なし

【結果は何か?】

アウトカム

結果

QOLスコアを改善

平均差:-2.8995% 信頼区間 -3.35 to -2.44)

 

オッズ比:1.5295% 信頼区間 1.38 to 1.68

QOL低下者数の減少

オッズ比:0.6595% 信頼区間 0.59 to 0.72

増悪患者の減少

オッズ比 0.7895% 信頼区間0.70 to 0.87

増悪患者の減少(年間NNT

16人(95%信頼区間 10 to 36)

増悪による入院減少傾向

オッズ比:0.8595信頼区間 0.72 to 1.00

全原因入院は同等

オッズ比:1.0095% 信頼区間 0.88 to 1.13

非致死的重大有害時用

オッズ比:1.0395%信頼区間 0.97 to 1.10

全原因死亡

オッズ比:0.9895%信頼区間 0.86 to 1.11

サブ解析:全原因死亡ハンディヘラー

オッズ比0.9295%信頼区間 0.80 to 1.05)

サブ解析:全原因死亡レスピマット

オッズ比1.4795%信頼区間 1.04 to 2.08)

 

【結果は役に立つか?】

かなり重要な論文です。症状の増悪を防ぐには年間でNNT16凄まじいベネフィットを示しQOLスコアも改善している一方、入院リスクを改善することなくレスピマットではやはり死亡増加を示唆。全体でも総死亡は減らしません。難しい問題は続きます。


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炭水化物の長期的摂取は冠動脈疾患リスクの潜在リスクに影響するのでしょうか。

【文献タイトル・出典】

Dietary Carbohydrates, Refined Grains, Glycemic Load, and Risk of Coronary Heart Disease in Chinese Adults

Am. J. Epidemiol.2013doi:10.1093First published online:September 5, 2013

【論文は妥当か?】

研究デザイン:コホート研究

[Patient]ベースラインで糖尿病、冠動脈疾患、脳卒中、癌の既往の無い中国人117366人(40歳から74歳)

[Exposure]/[Comparison]

食品摂取アンケートによる炭水化物の摂取量(70%が白米。17%が小麦製品)

[Outcome]医療記録による冠動脈疾患の発症

■追跡期間▶女性9.8年、男性5.4

■調節した交絡因子▶抄録に記載なし

【結果は何か?】

平均炭水化物の摂取量は

▶男性:総カロリーの68.5

▶女性:総カロリーの67.5

炭水化物の摂取量、最低4分位から最高4分位の調整ハザードはそれぞれ

1.00reference)、1.382.032.8895%信頼区間1.445.78

【結果は役に立つか?】

抄録から得られる情報は限定的ですが、炭水化物摂取最低4分位にくらべ最高4分位では有意に冠動脈疾患が増加しているようです。少し古い報告ですが、アメリカの前向き研究でも似たような結果が出ている文献が有ります。

A prospective study of dietary glycemic load, carbohydrate intake, and risk of coronary heart disease in US women.

Am J Clin Nutr.2000 Jun;71(6):1455-61. PMID:10837285

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TIOSPIR試験の結果がN Engl J Medに掲載されています。このテーマは過去にも何度か取り上げています。検索ボックスに「チオトロピウム」でサーチをかければ何個か記事がヒットすると思いますが、簡単に背景をおさらいします。

BMJ.2011 Jun 14;342:d3215 PMID:21672999

この論文は僕がEBMの出会いのきっかけとなった論文で、チオトロピウムレスピマットが死亡リスクに関連するというランダム化比較試験のメタ分析でかなり衝撃的なものです。

Thorax.2013 Jan;68(1):48-56 PMID:23042705

のちに報告されたネットワークメタ分析においては間接比較でチオトロピウムハンディヘラーよりレスピマットの方が死亡リスクが高い可能性が示唆されました。

Eur Respir J. 2013 Mar 21.PMID:23520322

さらに観察研究における直接比較でも同様の指摘がなされ、特に心血管疾患リスクの高い患者においてはレスピマット製剤の使用は避けるべきではないかということが示唆されました。

このようにチオトロピウムではレスピマット製剤がハンディヘラー製剤に比べて死亡リスク、特に心血管系への影響を示唆する報告が続き、前向きランダム化比較試験による安全性検討が待たれていました。TIOSPIR試験スピリーバRレスピマットR5μg11回吸入の有効性と安全性について、スピリーバRハンディヘラーR18μg11回吸入と比較した貴重な試験です。

 

【文献タイトル・出典】

Tiotropium Respimat Inhaler and the Risk of Death in COPD

N Engl J Med.2013 Aug 30. [Epub ahead of print] PMID:3992515

試験デザイン:Respir Res.2013 Apr 2;14:40. doi: 10.1186/1465-9921-14-40. PMID:23547660

【論文は妥当か?】

研究デザイン:他施設2重盲ランダム化比較試験

[Patient] 40歳以上のCOPD患者17,135

6か月以内に心筋梗塞を発症、12か月以内の心不全による入院、12か月以内において薬の変更や介入を要する不安定な、あるいは生命を脅かすような不整脈患者を除外

[Exposure]スピリーバRレスピマットR2.5μgまたは5μg11回吸入

[Comparison] スピリーバR吸入用カプセル18μgをハンディヘラーRにより11回吸入

Outcome死亡までの期間(非劣性)、COPDの初回増悪までの期間(優越性)

■ランダム化されているか?: されている

■患者背景は同等か?:抄録に記載なし

■盲検化されているか?:2重盲検

■サンプルサイズは十分か?:抄録に記載なし

■ランダム化は最終解析まで保持されているか?

intention-to-treat解析されているか?

▶追跡率:

■追跡期間:平均観察期間2.3

 

【結果は何か?】

■死亡までの期間:レスピマットはハンディへラーに比べて非劣性

▶レスピマット5μg:ハザード比0.9695%信頼区間0.84-1.09

▶レスピマット2.5μg:ハザード比1.0095%信頼区間0.87-1.14

COPDの初回増悪までの期間:レスピマットはハンディへラーに比べて非優越性

▶レスピマット5μg:ハザード比0.9895%信頼区間0.93-1.03

 

【結果は役に立つか?】

現段階でチオトロピウム製剤の添付文書においては「心不全、心房細動、期外収縮の患者、又はそれらの既往歴のある患者」に慎重投与となっているだけで、明確な注意喚起をしていません。因や主な心血管系の有害事象は3群間で同等で、チオトロピウムレスピマット5μg2.5μgは、ハンディヘラーと比較して安全性・有効性ともに同等であるとしていますが、本試験の除外対象となったような心血管疾患既往を有する患者や心血管疾患ハイリスク患者へのレスピマットの使用を控えるべきと考えます。現段階でチオトロピウムレスピマットが心臓疾患の既往のある患者に安全と言い切るのは時期早々で、その安全性は不明確です。

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Dipeptidyl peptidase-4 inhibitors and Cardiovascular risk : a meta-analysis of randomized clinical trials Diabetes Obes Metab.2013 Feb;15(2):112-20PMID:22925682

Meta-Analysis of Effect of Dipeptidyl Peptidase-4 Inhibitors on Cardiovascular Risk in Type 2 Diabetes Mellitus Am J Cardiol. 2012 Jun 14[Epub ahead of print]PMID:22703861

これら報告ではDPP4阻害薬が心血管イベントを抑制することが示唆されています。しかしながら、大規模なランダム化比較試験の報告は今までありませんでした。EXAMINE試験(アログリプチンの心血管イベントに対する効果)結果がNEJMに掲載されています。

 

【文献タイトル・出典】

Alogliptin after Acute Coronary Syndrome in Patients with Type 2 Diabetes

N Engl J Med.2013 Sep 2. [Epub ahead of print] PMID:23992602

【論文は妥当か?】

試験デザイン:ランダム化比較試験

[Patient] ランダム化前の15日から90日以内に急性心筋梗塞又は入院の必要な不安定狭心症を発症した患者で既にメトホルミンやSU薬、インスリン等の標準治療を受けている患者2型糖尿病患者5380人(平均年齢:61歳、男性67.768%、平均BMI28.7%、高血圧82.5%~83.6%、心筋梗塞発症歴87.5%~88.4%、糖尿病罹病期間:平均7.1から7.3

[Exposure] アログリプチン(腎機能に応じて6.25mg/日~25mg/日)

[Comparison] プラセボ

Outcome]心血管死亡、非致死的心筋梗塞、非致死的脳卒中の複合アウトカム 

■ランダム化されているか?他施設ランダム化比較試験

■患者背景は同等か?:同等

■盲検化されているか?:されている。2重盲検

■サンプルサイズは十分か?:サンプルサイズは5400

■追跡期間:中央値18か月

 

【結果は何か?】

結果は以下の通りです。

アウトカム

E

アログリプチン

2701

C

プラセボ

2679

結果

ハザード比

95%信頼区間]

複合心血管イベント

305

11.3%)

316

11.8%)

0.96

[≦1.16P0.32

 

【結果は役に立つか?】

事前設定の非劣性マージンであるハザード比1.3を下回ったとして、既存の治療に対する心血管安全性の非劣性が証明されたと結論しています。心血管リスク増やさず、安全に血糖コントロールができますよという結論を導いているのですが、心血管リスクがプラセボと同等である、という事を証明して何の意味があるのか全くわかりません。糖尿病の血糖コントロールはあくまで手段であり、細小血管障害、及び心血管イベントのような大血管障害の予防のための治療です。心血管疾患死、心筋梗塞、または脳卒中のリスクを増加させることが前提の薬剤は、もはや薬としての存在意義がありません。ディオバンの論文の捏造が問題となりましたが、今回の論文は心血管イベントをプラセボと同等であると証明しましたよ、という意味の分からない結論を、もっともらしく安全な血糖コントロールができますよと結び付けています。ある意味で捏造よりもひどいかもしれません。

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Dipeptidyl peptidase-4 inhibitors and Cardiovascular risk : a meta-analysis of randomized clinical trials Diabetes Obes Metab.2013 Feb;15(2):112-20PMID:22925682

Meta-Analysis of Effect of Dipeptidyl Peptidase-4 Inhibitors on Cardiovascular Risk in Type 2 Diabetes Mellitus Am J Cardiol. 2012 Jun 14[Epub ahead of print]PMID:22703861

これら報告ではDPP4阻害薬が心血管イベントを抑制することが示唆されています。しかしながら、大規模なランダム化比較試験の報告は今までありませんでした。SAVOR-TIMI53試験(サキサグリプチンの心血管イベントへの効果)の結果がNEJMに掲載されています。

 

【文献タイトル・出典】

Saxagliptin and Cardiovascular Outcomes in Patients with Type 2 Diabetes Mellitus

N Engl J Med.2013 Sep 2. [Epub ahead of print] PMID:23992601

【論文は妥当か?】

試験デザイン:ランダム化比較試験

[Patient] 心血管イベントの既往もしくはリスクを有する2型糖尿病患者16492人(平均年齢:65歳、女性32.733.4%、平均BMI31.131.2、高血圧81.2%~82.4%、心筋梗塞既往37.6%~38%、脂質異常症71.2% 冠血行再建術43.1%、平均糖尿病期間10.3年)

[Exposure] サキサグリプチン5mg/日(腎機能に応じて2.5mg/日)

[Comparison] プラセボ

Outcome]心血管死亡、狭心症、脳卒中の複合心血管アウトカム

■ランダム化されているか?他施設ランダム化比較試験

■患者背景は同等か?:同等

■盲検化されているか?:されている。2重盲検

■サンプルサイズは十分か?:サンプルサイズは1040イベントで満たしている

intention-to-treat解析されているか?:されている

■追跡期間:中央値2.1

■追跡率:28人のロストで99.8

 

【結果は何か?】

結果は以下の通りです。

アウトカム

E

サキサグリプチン

8280

C

プラセボ

8212

結果

ハザード比

95%信頼区間]

複合心血管イベント

613

7.3%)

609

7.2%)

1.00

0.891.12

重症低血糖(※)

 

117

2.1%)

140

1.7%)

P=0.047

(※)プライマリアウトカムではないが重要なアウトカム

 

【結果は役に立つか?】

非劣性ランダム化比較試験で、DPP4阻害薬はプラセボに比べて心血管リスク増加しないか、という仮説に対する検証です。プラセボに対する非劣性試験というデザインは、ややふざけている印象があります。すなわち、この結果は心血管イベントに対する影響をプラセボと比べて変化させず、安全に血糖状態を改善することが証明されたとする意味不明な臨床試験という印象です。このような薬を積極的に使用するメリットは明確に不明となりました。また重症低血糖は有意に増加している点も注目です。重症低血糖に関する報告は深刻です。

 

■重症低血糖で心血管リスクは有意に増加

Severe hypoglycemia and cardiovascular disease: systematic review and meta-analysis with bias analysis BMJ 2013;347:f4533 PMID:23900314

■重症低血糖と死亡リスクは有意に増加

Association of Clinical Symptomatic Hypoglycemia With Cardiovascular Events and Total Mortality in Type 2Diabetes: A nationwide population-based study. Diabetes Care. 2013 Apr;36(4):894-900 PMID:23223349


さらにこの論文のSupplementary Appendix
を確認すると心不全による入院は有意に増加、総死亡も増加傾向にあり、なかなか衝撃的な結果となっています。

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